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セリナと若様 4

 セリナも布団を汚さないため、同じように一番上の服だけ脱いで布団に入った。

「せ、セリナ、本当に…。」

 若様が戸惑った声を上げる。

「しーっ。」

 セリナは若様の唇に指を立てた。彼が頬を染めながら黙った隙に、セリナは顔を近づけて若様の唇に自分の唇を重ね合わせた。

「!」

 若様が声にならない声で(おどろ)く。優しくそっと重ねてから静かに唇を離した。若様が目をまん丸にして、顔から湯気が出そうなほど真っ赤になっていた。とても可愛い。思わずもう一度口づけをする。そうしながら、若様の衣服に手をかけてゆるめ始めた。

(わたし、何やってんの…!?)

 そう思うのに手は止まらない。もう一人の自分がいてやめようとしないのだ。

「せ、セリナ、何をするの?」

 若様が困惑した声を出した。

「しーっ。」

 セリナは言いながら、自分も服を脱ぎ始めた。

「だ、だめだよ、そんなことをしたら、フォーリに怒られるよ。」

 何をしようとしているのか、遅まきながら理解した若様がおろおろした声でやめさせようと試みる。若様に馬乗りになったセリナを優しく押し返して、阻止しようとするが優しすぎて意味がなかった。

(わたし、それはまずいんじゃない?ほんと、フォーリにバレたら、怒られるどころじゃないと思う…!わたし、殺されると思う、絶対に!!)

 必死に止めようとする理性。だが、もう一人のセリナは聞かなかった。

(何を言ってんのよ。今日を逃したらできるわけないじゃない。フォーリにバレたって構わないわ。それに若様がかわいそう。いつ殺されてもおかしくないのよ。)

 体の方はこっちのセリナに支配されていて、セリナの手はまったく止まらなかった。

「…ねえ、セリナ、やっぱり、だめだよ、そんなことしたら。」

 こわごわ言う若様がとても可愛い。そんな若様の顔を見たら、もうどうでも良くなった。今日、死んだって構わないという投げ槍な気持ちになる。理性は完全に敗北し、隅に追いやられる。

「大丈夫よ、わたし、初めてじゃないもの。」

「え、ええ?」

 セリナの発言に目を丸くして若様が(おどろ)く。

「ね、でも…そういうことじゃないよ。」

「心配しないで。若様は何も心配することはないんですから。」

「せ、セリナ、やっぱりだめだよ……。」

 セリナが若様の下着の下に手を入れて、直接素肌に触れたので、若様の言葉が止まった。

「…だめだよ、フォーリに怒られるよ…!……ふぉ、フォーリは怒ったら怖いんだよ!」

「知ってますよ。でも、やめる気はないですからー。」

 若様の耳元で(ささや)くと、声を立てて息を呑み、そのまま固まってしまう。

「もう、可愛いんだからー。」


 その頃、フォーリはベリー医師にもう治ったから、若様の側に行かせてくれと言っていた所だった。フォーリは若様の側で四六時中一緒にいる役目なので、部屋に閉じ込められている上に出ないよう、鍵もかけられていた。もちろん、窓があるとそこから出て行くため、この屋敷にある簡易の牢屋に入れられていたのだ。

 そこなら、他の病人である親衛隊の隊員達からも遠ざけられる。鍵はベリー医師が持っていた。

 フォーリの要求を聞いたベリー医師は沈黙していた。そこには親衛隊の隊長のシークも一緒にいる。彼はなんとか風邪のか、くらいで済んでいた。フォーリにしてみれば、彼の方がひどかったのに、外に出るのが許されているのはおかしいという主張である。

「いや、君の方がややひどかった。彼は一瞬(いっしゅん)の寒気までで済んで薬を飲んですぐに回復したが、君は少しだけ熱も出たし。」

 フォーリはとにかく、若様と離れているので、それが気になっていた。いつもは自分で身辺の安全に気を配れるが、ここの三日ほどはそれができなかった。

 この間の男が言ったことは誰にも話していないが、それも少々気になる。なんせ、ニピ族に関わる話だ。同郷の出身の仲間に調査を依頼している。あの男はしばらくは、直接手を下すのをやめるとは言っていたが、間接的に手を下すのはやめるとは言っていない。何か余計なことをされないか、心配だった。

 それに心配の種は他にもあった。若様の容姿は(うるわ)しい。お手伝いの村娘達も十分に脅威(きょうい)なのだ。そもそも、パルゼ王国の出身者達は男女ともに手がはやいという事で有名だ。ジリナ達一家は違うが、なんせあのジリナの娘のセリナである。何をするか分からない、というのがフォーリの見解だ。

「とにかく、早く出してくれ。若様の側にいないと落ち着かないし、あのじゃじゃ馬娘が何かしでかしていないか、心配だ。」

 これは、フォーリの研ぎ澄まされた猛獣のような勘が働いていたからだろう。ニピ族はそういう勘も鋭い。

「分かったよ。言い合っている時間も惜しいし。さっさと出て行き給え。」

 ベリー医師は面倒になって鍵を開けた。どうせ、もうほとんど治っているし、実際に護衛が側にいないのは問題である。

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