表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒトは何処へ

作者: 笠原正雄
掲載日:2022/02/18

「未来社会への道程」の巻


「少年と灰色帽子の老人」の巻

 高校二年生のジローは散歩大好き少年。良く晴れた夏休みの土曜日、日曜日は“勉強ゼロの日”と決めています。

 朝ごはんを済ませるといざ散歩にしゅっぱーつ!

 玄関の扉をバターンと閉めて一歩外に出ると早速大問題が待っています。

 “足を西に向けるか?それとも東?”

 これがジローにとって難問中の難問となります。これを解決するためにポケットの中にあった10円玉を両手の中で十分に振り、

 “表が出れば東、裏が出れば西”

という約束を自ら作ります。“エイ!”と叫んで手の平に載せるジロー。結果はどうでしょう?“表”です。ジローは東に位置し歩いて10分ほどの「カモの森」に向かいます。

「カモの森」には常緑樹のカシや落葉樹のブナが仲良く入りまじって生い茂っています。

 緑、緑、緑、みどり一杯の樹々が、

 “サワサワ”

 “サワサワ”

と揺れ動き、木々の葉っぱ達が真夏というのにひんやりとした風を頬に気持ちよく運んでくれます。

 森の中には数メートル幅の遊歩道が作ってあって両側には人の背ぐらいのツツジがフェンスのような感じで生い茂っています。夏の時季ですね、今は濃―い緑です。さまざまな種類のトリ達が、

 “チッチ チッチ”

 “ピィー ピィー”

 “カァー カァー”

とさえずります。トリ達のさえずり、鳴き声を楽しみながら散歩ができる道が延々と森の奥に続きます。

 この遊歩道のところどころに丸いまあるい形のふくらみが作ってあって、木製のベンチが用意されています。如何にも座り心地良さそうで、“座って下さぁーい”という感じで置いてあります。

 ベンチでは仲良しカップルがお喋りを楽しんでいたり、“何か難しいことを考えているのかなぁ”という感じの学者さん風の人達などなど、さまざまな人が思いおもいの時間を過ごしています。こんな人達の中で朝どんなに早く訪れても目にする老人がいます。“森は朝の空気が最高!”と思っていらっしゃるのでしょうか。ジローと視線が合うといつもニッコリ笑顔を見せてくれます。

 この老人に軽く会釈をして森の奥に進んで行くと小さな滝が見えてきます。静かな森の中に突如現れる滝、10数メートルほど下の方に滝壺が見えます。小さいながらも滝壺からは激しく水煙が上っています。十分に迫力を感じます。

 真夏というのに冷んやりした木の間の風、初秋の空気を運んでくる風をジローは満喫します。帰り道にはいつものことですが老人の姿は見当たりません。

 ミンミンゼミやクマゼミが鳴き競う真夏の早朝の遊歩道を楽しみ始めてから一ケ月程経った頃だったでしょう。ジローの体が全く自然に動いて、ニッコリ笑顔で老人と挨拶を交わした後、

 “失礼しまあす!”

と声をかけながらベンチに腰を下ろします。どちらかと言えば“自分は人見知りするタイプ”と信じていた自分自身の行動に驚きます。ジローは、

「ジローと申します。高二です。」

とまずはしっかり自己紹介です。老人からは、

「ワタシはそうだなぁ…、灰色帽子と呼んでくれるかな?」

との返事です。

「エッ!灰色帽子さんですって!?本当にこう呼べば良いのですね!?」

と、ジローが念を押すように言うと、老人は、にこにこ にっこり笑顔、

「よろしくお願いしますね。」

と丁寧に何回も頭を下げてくれます。ジローは恐縮です。

「和歌とか俳句を詠んでいらっしゃるのかな…、と勝手に想像していたのですが…」

と話しかけると、老人はしっかり背筋を延ばし、

 “はっ はっ はっ はっ はぁー”

とさも愉快そうに笑った後、ジローの発言を強く否定するかのように首を何度もなんども大きく横に振りながら、

「ワタシがいつも考えていることは人類の将来のことなのです!」

と明言します。

「エッ! エッ! エッ! 人類の将来について、ですって!?」

 ジローはびっくり仰天!大声を発します。

 この瞬間、森の中を静寂が支配します。小鳥達もさえずりをピタッと止めています。静かです。緑、緑、緑、みどりいっぱいに生い茂る木々の葉っぱ達も葉音を休めています。不思議なふしぎな雰囲気です。灰色帽子の老人はベンチからゆっくり腰を上げると、

「ワタシについて来て下さいますか…」

とジローに声をかけ、振り返りもしないでスタスタと歩き始めます。若者のようにしっかりとした足取り、ジローは遅れないようにと懸命に足を運びます。

 ジローにとってUターンするような形となった遊歩道を歩み続けること数分、ダラダラと続く坂を下っていくと目の前に滝が現われます。小さな滝ですが森の中奥深く入って見る滝はやはり迫力十分です。

 “こんな所で人類の将来が分かるの!?”

 “どうして!?” “どうして!?”

 ジローの胸に不安な気持がもたげてきます。滝を右目に見ながら、ジローにとって今まで足を踏み入れたことがない下り坂を足元に十分注意しながら歩を進めてゆくと少し暗がりとなった所で灰色帽子の老人は足をぴたっと止めます。老人は振り返ってジローに言葉をかけます。

「この洞窟は地元の古い世代の人たちも訪れた経験がないでしょうね…」

「でも心配はいりません。身をかがめ中に入っていきましょう。」

 ジローは狭い洞窟に思いきり頭をぶつけないよう、そして足もとに十分注意しながら歩きつづけます。洞窟には2センチぐらいの隙間が至る所で空いていて僅かながら日の光がもれてきてくれています。助かります。暗がりの中を歩くこと数分。長―い ながーい時間が経ったような気がします。

 “一体、どこへ行く気?”

 ジローの心の中に“恐怖”が次第につのります。

 やがて老人はかなりの急坂をぐいぐいと力強く登ります。登りつめた所でジローを振り返り、静かな口調で言葉をかけます。

「いいですか…、ここに小さな木戸が見えるでしょう。この木戸を力一杯押すと外に出ることができます。」

「急に外に出るととてもまぶしく目がやられますから、薄目を開けて、注意深く足を運びましょう。」

と老人はいたれりつくせり気を配りながらゆっくりとした足取りで外に出ます。

 外に圧倒的に広い野原です。草 草 草 みどり一杯の野原が目の前に広がります。夏の花カンナが日の光に輝き、ヒマワリの花が咲き誇っています。沢山のサルスベリの木々が紅色の花を咲かせています。遥か向こうに白い五階建ぐらいの建物が目に入ります。緑一杯の草原に白亜の建物がよく似合っています。…しかし、ほんのちょっぴり不安な気持ちがもたげてきます。

 “まさか! まさか! 家から歩いてせいぜい30分ぐらいの所にこんな場所があったとは!”

 “とても信じられない!これはひょっとして白昼夢!?”

 ジローは頬を強くつねってみます。しっかり痛みを感じます。夢ではありません。

 灰色帽子の老人はジローを振り返って静かに口を開きます。

「あの建物に入ると、そこはそう遠くない未来の世界、近未来の世界をしっかり見ることができる場所なのです…」

「さぁ、行ってみましょう!」

 白亜の建物に向かって歩を進める灰色帽子の老人にジローは遅れじと足を運びます。

 “もはや戻ることのできないかもしれない不思議な世界に足を踏み入れてしまった”

 “ボクは覚悟を決めなければならない”

 ジローは気を取り直し、しっかり足を運びます。

 白亜のビルに消えてしまったジローをこの物語の著者たるワタシも大あわてで追っかけて建物を目指します。

 無事白亜のビルに駆け込むとそこは大ホール。沢山の机と椅子が並んでいます。ジローは空っぽの大ホールの最前列に座って灰色帽子の老人の講義を待っています。

 ワタシはジローに気付かれないよう後ろの方に座ります。

 ヒトは近未来の社会に向かってどのように歩んだかというお話です。老人は60年も先、2080年にタイムスリップしてお話をしてくれるのです。大急ぎで筆を走らせてメモに基づき、ワタシは語部としての役割をしっかり果たすために文章をまとめ次の巻でお読みいただくことにしましょう。


「近未来社会への道程」の巻

 2020年に入ると人類は自然環境破壊という大きな困難な状況、未経験の苦難の道に追いつめられ、押し込められていきました。

 各国はこの状況を打開するために知恵をしぼりさまざまな施策を指示し、その殆んどが時を移さず実行されました。

 …しかしこんな懸命な努力にも拘わらず大気汚染は日毎に進み、自然環境の中での食料の自給は年々困難なこととなっていきます。この状況を放置すれば人類は悲惨きわまりない飢餓時代を迎えることとなるでしょう。

 この困難な状況を打開するために各国は“人類社会の福利の向上”をスローガンにし、その最重要テーマとしての「食料の大規模工場生産」に全力を尽くします。10階建、20階建のビルの中での食料生産が世界中で始まったのです。葉緑素というヒトにとって大切な栄養源を安定的に供給するために建物の屋上に大型パラボラアンテナを広げました。巨大なアンテナが効率よく集光した太陽光を各階に植えられた植物群に供給します。光ファイバが建物の曲がり角部分では太陽光を損失させることがないよう特別な工夫が凝らされていました。建物の南側の外壁にはトマト、キュウリ、ほかの野菜やウリなどが植えられています。これらの植物に太陽光がさんさんと降り注ぐ有様を見て人々の目は大きな希望に輝きます。

 この頃からだったでしょう。人々の動きは日毎に緩慢となっていきます。この理由はロボットが知能労働だけでなく肉体労働も代行するようになったからです。人々はこのような状況になっても歴史は正しい方向に進んでいると固く信じて肉体労働、知能労働の全てをロボットに任かせ、ただひたすら食欲を満たすだけの日々を送るようになりました。四六時中食物を口にすることに生き甲斐の全てを見出すことになった人類は、

 “美味しーい!”

 “甘―い!”

 “たまらないお味!”

などと嬌声、歓声をあげながら、一日の大半を食堂で過ごすようになります。食堂に備えられているオーディオ・ビデオ機器にも食事の風景だけが送られてきています。人々はこんな番組を見て一層食事への関心を深め、食欲を高めていきます。…しかしこのような生活を続けていくうちに体つきも大きく変わってしまいます。2020年の時点で人類の平均身長は170㎝平均体重60㎏であったものが2080年にはそれぞれ190㎝、120㎏という体格になってしまいます。人類の歴史の長さから考えてみると極めて短時間にヒトの大型化が進んだのです。

 一方、一組の夫婦に対しては3人までの子供をもつことは許されましたので、地球上の人口は年率3パーセントぐらいで増加していきます。この結果2020年の総人口78億人は2080年には2.4倍の187億人に膨らんでしまいました。

 年々加速するヒトの食欲を満たすために食料の生産能力を高めるための手法を開発することを目指してロボットは全力を傾けます。また朝昼晩三度の食事を各家庭のテーブルに効率よく届けるために宅配というよりもテーブル配を充実させることに努めます。ロボット達は日々いそいそと家事に励みます。

 2080年頃にはヒトは起床すると直ぐ食卓に座ります。ロボットは真新しい折目のついたテーブルクロスを敷き、お皿を手際よく並べます。そして調理されたばかりの御馳走を見た目も美しく並べます。誠に至れり尽くせりの給仕です。

 2050年頃だったでしょう。ヒトが最後の砦として守ってきた創造能力が殆んど100パーセント、ロボットに譲渡されてしまったのです。

 ロボットに与えられた創造能力・創出能力はヒトが有していたそれらとは質的に全く異なっています。その基本原理は100パーセント、ヒトが与えたものです。ヒトが与えたこの原理は非常に簡単であらゆる手法とその解を総当り的に求め、それぞれの手法の有効性をコンピュータ実験によって確かめるというプロセスを繰り返し、最終的に最良の効果を与えるものを見出すというものです。着想の全てをいわば水平思考の原理で探し求めるというわけです。抜本的に新しい着想つまり垂直的思考で探索することも大切なことであるとしてシミュレーテッドアニーリング(simulated annealing, SA)の手法がとり入れられます。このようにロボットの知能活動を支える基本原理の全ては2020年頃にヒトによって与えられたなのです。ロボットが考えたものではありません。

 ロボットの存在意義はこの総当り能力を有することにあります。この能力を最大限に発揮させるためにはロボットの総数を可能な限り大にすることが必要です。

 ヒトが携わっていた肉体労働を代行するために特別に頑丈に作られたパワーロボットが知能ロボットを製造する工場を各国で建設しロボットの大量生産を開始するわけです。

 工場から大量に輩出される知能ロボットは“人間社会に最大限に貢献するにはどうしたらよいか?”という問題に対する最良の解を求めて努力します。知能労働に従事するロボットが階層的にグループ分けされ作業を分担します。

 ロボットは最小の消費エネルギーで最大の効果を出すという基本原則のもとに働きます。ロボットが思索を重ねた結果「行動規範」として導出されたモットー、標語は、「行動規範:ヒトの欲望を最大限に満たすよう努めること」でした。

 ヒトによって欲望には個人差があることを十分に考慮した上でロボットは努力を重ねます。

 次の表Aにヒトの感覚と担当生体を示しましょう。


 感覚/担当生体

 視覚/目

 聴覚/耳

 味覚/舌

 嗅覚/鼻

 触覚/手、足、手足の指

 表A:感覚と担当生体


 表Aに示したような色々の感覚をヒトの脳はどのようにしてとらえ、どのように満足しているのでしょうか。

 ワタシ、灰色帽子のネット検索能力をもってしては、このことについて十分満足できる答を見出すことはできませんでした。ワタシが熟思を重ねた結果を例にして説明してみましょう。(正しくなければごめんなさい。)

 ワタシの想像力に任せた視覚情報の脳への伝わり方は以下のようです。繰り返しになりますが、専門の方はどうか以下のお話は灰色帽子の想像に任せたお話と考えてお見逃しくださいませ。

 視野に入る風景は目の網膜によって僅かずつ変化する30枚の静止画としてとらえられ脳に伝えられます。すなわち時々刻々目に入力される視覚情報についての僅かな変化分だけを脳に伝えています。皆様が日頃楽しんでいらっしゃるテレビ画面に映し出される、流れるような自然の風景も30枚の少しずつ変化していく静止画を見ているのです。ヒトはこの画面を自然に流れていくシーンとして見ていますがネコちゃんやワンちゃんは何かチラチラするなぁっと思っているかもしれませんね。

 では視神経は具体的にどのようにして視覚情報を脳に伝えているのでしょうか。ワタシ灰色帽子はこのことをインターネットでの検索作業という手段に訴えて調べてみましたけれど、十分な知識が得られなかった…、というよりは全く得ることができませんでした。このためワタシは想像力だけに頼ってこのことについて解説してみることにしましょう。皆様には“そうか…、面白!そんな風に考えられなくもないなぁ…”と考えて下されば大変嬉しいことです。

 ワタシは今から20年ぐらいも前の頃、“テーブルの上にばらまかれた豆の個数を瞬間的に認識するのに何個までぐらいなら可能か”ということを実験によって調べている人がいたということを知り合いの人に教えてもらいました。被験者はテーブルの上にばらまかれた豆を見てすぐ“3個!”“7個!”というように瞬時に答えねばなりません。

 この実験により毎秒8通りぐらいの変化、つまりlog_28=3ビット/秒の視覚情報には心地よく接していることが分かります。

 またワタシ達は日頃雨上りの大空に広がる赤 橙 黄 緑 青 藍 紫一つひとつの鮮やかな光彩に目を奪われますよね。7色の変化を最も心地よく感じるのではないでしょうか。つまり3色では物足りないし、15色では少し多すぎると感じるように思います。

 一方、音については、“ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド”と7通りの振動数の変化を耳に心地よく聴いているのではないでしょうか。

 以上のことを考えると、脳は8通りぐらいの変化、つまり振幅の変化と振動数の変化とを同時に楽しむことができるのでは?と思います。つまり感覚器官からは、周波数・振幅変調パルスとして伝わるのではないか?というのがワタシ灰色帽老人の考えです。

 振動数、周波数の値は以下のように8通りに変化します。

 振動数:ν1,ν2,…,ν8

 振幅:1,2,…,8

 このことより毎秒伝えることができる情報量Hは

 H=log_2 8+log_2 8=6ビット

ということになります。ヒトの毎秒当りの情報処理能力に一致します。

 以上、視覚情報について説明しましたが、残りの感覚についても時々刻々の僅かな変化量を受け取り満足しているでしょう。

 脳が時々刻々の変化量を準備できない場合もありますよね。例えば“山海の珍味ですよ!”と言われて、今まで味わったことは勿論、見たこともない料理がお皿に盛られてテーブルに差し出された時、ワタシたちは見た目から従来経験したことのある料理の味を期待しそれを修正しつつ味わうための準備をするでしょう。その味が毎秒6ビット程度の情報量をもたらすという定常状態になるまでには少し時間がかかるでしょう。脳は最初、見た目からこの山海の珍味はたぶんこんな味だろうといういわば味覚のコピーを脳の中に準備して初めてその山海の珍味を味わうことができるようになるわけです。食物を味わうためには脳の中にしっかりとした味のコピーが準備されることが不可欠です。

 脳は期待したことが期待通りに満たされることによって“幸せな思い”に浸ることができます。もし逆に期待通りに満たされなければ大きなフラストレーションを感じることになるでしょう。

 以上のことを考えると肉体をすっかり分離した感覚生成器と脳は直結することによって十分満足した生活を送ることが可能と結論されるでしょう。

 つまり仮想的な肉体をフルに活用して人工的な感覚器官が縮約された情報を生成し脳に伝えることが可能でしょう。

 知能作業に従事するロボットは、人工的な感覚器官によるシステムを構成してヒトの脳を満足させます。脳は今や分離されてしまって仮想的な存在になってしまった肉体をやはり仮想的に駆使して望みの感覚を人工的に生成します。

 要するに脳は人工的な感覚器官のおかげで誕生以来の自らの姿を保つことができるのです。

 一方、ロボットはあらゆる事物についての視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚 に関わるデータベースを完成させます。このデータベースのおかげでジローが“桃を食べたい”と言えば、日本で収穫される桃の中で最高級とされる桃がお皿の上に現われて鼻からの嗅覚とともに舌だけでなく歯や唇、口腔全体で味わうことができるわけです。私達が味わう最高の桃を楽しむことができるのです。

 “ヒトは頭部以外に人体という超大型の部品を取り付け、しかも年々これを大型化して地球環境破壊を進めている。人類のこの過去の歴史は完全に否定されるべき”という判断を下します。

 知能作業に従事しているロボットはヒトの肉体労働を代行している強力なロボット部隊に、“地球環境破壊という観点から非常に苦しい状態にある現状”を一気に解決するために2080年正月元旦に総決起することを求めます。

 さぁジロー君も2080年にタイムスリップしなければなりません。あっ!それにこの物語の話者であるワタクシ灰色帽も大急ぎで追っかけていかねばなりません!

 日本のお正月では人々は百年一日の如く、おもちを焼いたり蒸したりして色んな風に味わっています。まさにそのときロボット達が総決起したのです。お正月の準備に余念がなく、かいがいしく働いていたロボット達が午前10時の時報とともに一斉に襲いかかります。全く一瞬の出来事でした。

 ジローの頭部に無数の電極が手際よくつけられていきます。この配線作業は数分間で完了し、青ランプが点灯します。そして点灯とともにジローの頭にとりつけられているスマートキューブにジローの脳内容の移行作業が始まります。作業は10分程度で完了し、スマートキューブはジローそのものとなります。

 一方、肉体としてのジローは最適の温度、湿度に調整された冷凍庫に慎重に納められ、数百万年という気の遠くなる期間永久保存されます。

 地球上に住む全ての人達は半永久的な存在となって、自分達の住処をどこにすべきか?このことがスマートキューブとなった人類につきつけられた大問題でした。議論が繰り返されましたが、最終的にはアンケートによって以下の候補の中から一つを選ぼうということになりました。

(I)緑 緑 緑 みどり一杯の常夏の草原

(II)四方に高山を望める静かな盆地

(III)ブルーの海、青い山腹が望める台地

(IV)地表に比べて安定とされる地下数百メートル~数十キロメートルに広がる岩盤の中

(V)日本の上空600キロメートルぐらいの宇宙空間

 上記について気象学者から地球表面は百万年単位でみると必ずしも安定ではない、との指摘がありました。またIVの“地下”という言葉に伴うイメージの暗さがひっかかります。

 結局人類はVの宇宙空間を数百万年という気の遠くなるような長い生涯を過ごす居場所と決定します。

 スマートキューブには宇宙線を回避するための準備はそれぞれの国で歩調を合わせて進められています。打ち上げの月と定められている7月は日本では盛夏です。夏の夜空には夏の大三角が神秘的に輝きます。ワタシ達が住む天の川はうすーく白―くミルク色に輝き空に大きく広がっています。

 スマートキューブとなったジローは他のスマートキューブ達と一緒に宇宙空間に飛び立ちます。

 一つのロケットに無数のスマートキューブが詰め込まれます。スマートキューブ1万個に1個ぐらいの割合でコンテンツ図書館が打ち上げられます。

 因みにコンテンツ図書館100個に1個ぐらいの割合でコンテンツ中央図書館があり、さらに中央図書館数百個に1個の国立コンテンツ図書館が設置されています。宇宙空間に生活の場を作ったスマートキューブからのコンテンツリクエストに対して瞬時に応えられる体制が整えられているわけです。

 さぁーて準備万端整いました。スマートキューブ100万個を搭載したロケットが早暁、宇宙空間に向かって旅立ちます。

 スマートキューブとなったジローが朝目覚めた時そこは宇宙です!ブルーの海、みどりいっぱいの森の国日本の全貌を見渡すことができる宇宙空間です。今は夏、天の川、まぶしいばかりの光を放っています。

 “こんな美しい世界に自分は生命を授かっていたのだ…。”

 ジローの胸は大きな感動でいっぱいになります。

 宇宙のありのままにある美しさを朝目覚めの時に味わい、また夕べの時に味わいます。ミルク色に輝く銀河、天の川。その中で無数に輝き、光を放つ恒星。その恒星から飛び散ったような形で存在する惑星の数々。恒星太陽を母として誕生した存在としての惑星、水星、金星、地球、火星、木星、…。その地球を今遥か眼下に見下ろしながら浮遊するジロー。水星、金星、火星、木星、土星…、こんな惑星たちが地球の仲間であったことをジローは強く認識します。

 朝夕に経験する感動のひとときです。早朝食卓を離れて隣の部屋に入っていくような感覚で訪れる場所。そこは2000年も前の古代ローマです。

 ジローは宇宙空間で数百万年の生涯を楽しむのにまずは我が身をローマに置いてみようと考えます。

 帝政時代のローマ市民となって生活を存分に楽しもうというわけです!



「ローマのくらし」の巻


「ローマでのくらし」の巻

 スマートキューブとなったジローは朝食を済ませると、まるで隣の部屋に入っていく感覚で好きな世界に入っていくことができるのです。

 ジローは歴史大好き人間でした。それでもし可能ならば帝政ローマ時代、初代皇帝オクタービアヌスが治めていたローマに住みローマ市民として生活をたっぷり楽しみたいと強く願い、考えています。

 スマートキューブとなったジローが当面の住処と決めた夏のローマは“明るさいっぱい!太陽の都!”といった感じです。石だたみの町の中をあちこち眺めながら散歩を楽しみます。中心部には泉があって噴水が空高く舞い上がり、まわりに白―い霧のようになって太陽にキラッキラ キラッキラと輝きながら広がっています。泉のまわりを人の背ぐらいの草木がまあるく取り囲んでおり、赤 白 黄色、色とりどりの花を咲かせています。

 “自分は今や古代ローマの市民”

 ジローの胸に大きな喜びがあふれます。ワクワクドキドキ胸いっぱいにあふれてきます。8階建て、10階建てのビル群が立ち並んでいるのは予想していたとはいえ大きな驚きです。しかも一つひとつにきめ細かく彫刻が施されています。古代オリエントで繰り返された民族間の抗争の歴史が彫刻の一つひとつに刻まれています。

 市内を歩くこと30分、官庁街、ビジネス街に変わってショッピング街の雰囲気が強くなってきます。ここはローマ!パスタやピザを出してくれるに違いない…、そんな店を探すうちにフルーツパーラーという感じの洒落たお店が目に入ります。

 お店に入ると“ローマっ娘”という感じの可愛い女の子が満面の笑みで迎えてくれます。もちろん彼女もスマートキューブとなってローマを訪ねてきたどこかの国の人なのですが、フルーツパーラー「ぶどうの園」に仕事を見つけることができたのでした。“ローマに来たからにはこれだよね!”という感じで“ぶどう酒!”と景気よくオーダーしようとしたのですが、思わず口に手を当てて急ブレーキ!日本では18才未満禁酒という厳しい掟があります。

 “ブドウジュース!”

 “それに焼きたてのパン!”

という注文です。

 “ブドウジュースなのですね!?”

と再びニッコリ笑顔。軽やかなステップでブドウジュースとパンを運んでくれます。焼きたてのパンのいい香りがただよいます。

 ジローは思い切って、

「ワタシはジローです!日本からやって来ました。よろしく!」

と名乗ると、彼女はこぼれるような笑顔で、

「ワタシはミラノから来たマリリンです。よろしく。」

と名乗ってくれます。

 食事が終わると、とりあえず仕事探しをしなければ、という思いに駆られます。

 “古代ローマでの知人?誰かいる?”

 ジローは自問します。ローマでの古くからの知人なんていたかな?と自問します。

 唯一いました!見つかりました!歴史に残る著名な建築家ウィトルーウィウス先生です!

 先生を訪ね歩くこと小一時間、「ウィトルーウィウス建築事務所」を見つけました。午後の陽ざしがたっぷり部屋中に届いており、先生は緑いっぱいの観葉植物に囲まれた机に向かって仕事をしていらっしゃいます。ジローは頭を何回も下げて、書類の整理、湯茶のサービスをする事務職員として使ってくれるよう懇願し、めでたく採用してもらうことになりました。

 ウィトルーウィウス先生の事務室で働く…、全く夢のような話です。先生は“初老の気さくな方”という印象で温かさいっぱいのお人柄を感じます。

 後世において“神君”と崇められることとなった英雄ユリウス・カエサルが元老院のブルトウスにBC44年に暗殺されたことに強く心を痛めていらっしゃることが言葉の端々にうかがわれます。

 カエサルの養子ユリウス・カエサル・オクタービアヌスに付き合いにくさをかんじていらっしゃるようです。

 カエサルのことをぽつりぽつりとジローに語りかけながら席を立ち本棚から一冊の本を取り出しジローに見せてくれます。

 『建築書』という超有名な書物です。この書物は中世、近世を越えて世界で広く読まれているのです。

 その先生の事務所でスタッフとして働かせてもらうことになったことにジローは無限の喜びを感じます。

 ウィトルーウィウス先生は心血を注いで書き上げた『建築書』を英雄カエサルに謹呈し“良い本だ!おめでとう!”とのお言葉を頂いた上でめでたく出版する予定でした。大きなおおきな楽しみだったのです。

 …ところが、敬慕するユリウス・カエサルは、天上の集会(元老会のこと)元老院議員のブルータスらによって暗殺されてしまいます。カエサルの最期の言葉、無念の叫び、

「ブルータス!お前もか!」は2000年の時を越えて伝わってきます。

 若き後継者オクタービアヌスは「戦の強者」幾つもの戦いで勝利を重ねてローマが支配下に収めることとなった領域を広めていきます。

 “血気盛んな若武者オクタービアヌス”

 この印象によって彼よりも10歳年上のウィトルーウィウス先生は付き合い方が分からないのです。彼はオクタービアヌスに本を謹呈するシーンを何度も思い浮かべます。豪華極まりない帝王の椅子に堂々と胸を張って座っているオクタービアヌスの前に進み出て、深々と頭を下げて一礼し、『建築書』を謹呈するシーンを脳裏に何度も思い浮かべます。

 “良かろう。出版なさるが良い。”

との言葉を夢の中で聞きます。このことが現実になった瞬間こそ先生の生涯の力作『建築書』が光り輝く瞬間でしょうから…。

 ウィトルーウィウス先生はジローに、にっこり笑顔を見せながら

 “この本を皇帝オクタービアヌス様に謹呈した際、皇帝はペラッと表紙をめくり、最初のページに目を通すだろうね。”

 “だからこの最初のページは慎重な上にも慎重に著さなければならなかったのだよ。”

と目を細めながら一つひとつ文字を指さしその部分をジローに見せてくれます。以下のような文章が記されています。

 “偉大なる皇帝ユリウスカエサルオクタービアヌス様、貴方は敵対する周辺諸国をことごとく打ち破られ、このことによってローマ市民は“恐怖”から解放され、平和な日々を過ごすことができるようになりました。

 私は貴方様の御父君ユリウスカエサル様のお力添えで忝くも知遇を賜りました。日頃、誠に卓越した御父上の資性に深く傾倒致して参りました。

 …誠に無念極まりないことに“天上の集会(元老院)”は御父君を“不滅の座”に捧げてしまいました。御父君の後をお継ぎになった貴方様は数々の輝かしい武勲によって、その威光を広く周辺世界に広められました。御父君に対する変わらざる“不滅の追憶の情”が私をしてオクタービアヌス様に深い好意の真心を寄せさせていただくことにあいなった次第でございます。…そして誠に恐れ多くも貴方様は建築家としての私に給与を授けて下さいました。この際、勿体なくも殿下の御妹君も私のためにお口添えして下さったのでございます。”

 “ふーん、そうだったのか…”

 ジローは生々しい歴史の一面を知ったことで感動します。この記述からも血気盛んな若き皇帝オクタービアヌスに対する接し方が分からず、ウィトルーウィウス先生が戸惑っていらっしゃることがよく理解できます。

 ウィトルーウィウス先生は晴れてオクタービアヌスに接見が許された日、豪華この上ない椅子に腰を下ろし、威風堂々あたりを払う皇帝オクタービアヌスに対面して緊張感を胸いっぱいにして皇帝に静かに歩み寄ります。そして深々と一礼した後『建築書』を謹呈します。

 皇帝オクタービアヌスは予想通り本の表紙をぺらっとめくった後冒頭の部分の文章を目で追います。皇帝は満足気にうなずき笑みを浮かべながら、

 “すばらしい本だ。出版なさるがよかろう。”

と答えてくれたのです!

 先生は無上の喜びを感じます。建築書の中で不朽の名作とされる『建築書』は中世、教会建築に際しての教則本として重用されました。このためウィトルーウィウス先生の『建築書』は中世を生き残り、ルネサンス後も明治維新の頃までその地位を長く保ちます。歴史書としても重要な存在であり、建築史の中で重要な位置を現代に至るも占め続けているのです。

 ジローは「建築書」を手に取り、午前中時間を見つけては勉強をします。午後の半日は楽しみのローマ市内見物です。ローマ生活2日目もうすっかりローマ市民になりきった自分に大満足です。

 “とにかくマリリンに挨拶しなきゃ…”

とフルーツパーラー「ぶどうの園」に軽い足どり、歩を進めます。

 薄―い黄緑色の花をいっぱいに咲かせている蔦でおおわれた扉を開け、

「こんにちは!ジローです!」

と明るさいっぱい、元気いっぱいで店内に入ります。

「いらっしゃーい!」

とマリリンがニコニコニッコリはじけるような笑顔でお迎えです。しかも彼女の方から立てつづけに、

「ぶどうジュースね!」

「今日はもぎたての飛びっきり美味しいジュースですよ!」

と嬉しいお言葉。口元に可愛い笑みが浮かんでいます。

「お願いしまあーす!」

と元気いっぱいテーブルにつきます。

 オリーブの実を小鳥のようについばみながらぶどうジュースを味わいます。三つほど離れた席に座っている青年の姿が目に入ります。目が合うと軽く会釈してくれます。ジローは親しみを感じオリーブの実を盛ったお皿とジュースを手にしたまま席を離れ、

「失礼しまーす。ワタシは美しい富士山の国、日本から来たジローです。よろしく!」

としっかり胸を張って挨拶をします。

 スティーブは、

「自分は米国イリノイ州の田舎町、サウスベントから遥々ローマにやって来た者です。」

と挨拶を返してくれます。ジローはローマの有名な建築学者ウィトルーウィウス先生の事務所でスタッフとして働きながらローマの建築物について勉強中であることを彼に話します。

 スティーブは自信なげに首をかしげながら、

 “自分は米国生まれ、ローマの建築物については全く知識がない。一緒に勉強しましょう。”

と申し出てくれます。マリリンに、

 “行ってきまーす!”

とさよならがわりの挨拶をして、スティーブと一緒にローマ市内見物いざ開始です。

 ユリウスカエサルやその子オクタービアヌスはローマを取り囲む諸国との間で連日のように繰り広げた戦いに勝利します。ローマは北に西にと勢力を伸ばし、手にした戦利品としての財宝、そして奴隷パワーによって繁栄を誇っています。

 ビジネスマン、商人が諸国から、

 “ローマへ”“ローマへ”と集まってきて繫栄を誇っているのです。

 “全ての道はローマに通ず”

 そんな言葉をジローは「世界史」の授業で習ったような気がしますが、しっかりとは思い出せません。

 友人となったスティーブと一緒に古都ローマにいるという熱い思いがジローの胸にこみ上げてきます。

 諸国から押し寄せてくる人達でごった返すローマはこんな人達を収容するために建物が沢山必要となります。限られた市域、土地は無限にあるわけではありません。このためローマ市内には目を見張る高層ビル、8階建て、10階建てのビルが立ち並んでいます。一つひとつのビルが歴史の重みを感じさせる芸術作品であり、また頑強そのものの作りとなっているのです。

 イタリアは地震国として知られていますが、万が一大地震によって倒壊するようなことがあっては大変です。地震による崩壊は絶対に避けねばなりません。

 “想定外の津波”

 “想定外の台風”

などと言ってすまし込んでいる昨今の我が国の“想定外創出技術”とは全く質を異にします。背景となっている思想が全く違います。

 何故でしょうか?それはローマ法が多分に参考にしたであろうと思われるハムラビ法典にある“目には目を”の厳しい法律の影響を受けているからでしょう。

 ハムラビ法典では、“家の倒壊でこの家の息子が死んだならば、その家を建てた者の息子を殺せ。”

 といった法律が定められているのです。建築物が自然災害等によって倒壊した場合、“想定外”などと言って、責任逃れができる時代ではありません。じつに建築者は自分の生命だけでなく家族の生命を懸けて建物を作っているのです。安全性の厳守という姿勢は現代のそれとは全く異なるものだったでしょう。目に入る8階建て、10階建ての高層建築物は、このためでしょう、外観を見ただけで、

 “うわぁー、強さが外にあふれ出ている!!”

と建物の強さが直ぐに分かる頑丈そのものの作りとなっているのです。つまり建物の強さは外から見ただけでその強さが分かるのです。

 “強さは必ず建物の外にまであふれでる”

 ローマ市民の強い確信です。

 建物を支える支柱の太さ、壁の厚さ等々しっかり外にあふれ出ています。注目すべきことは壁や柱の太さを大にすることによって建物の中での住み心地の良さを犠牲にすることは絶対に避けるという精神が貫かれているということです。このためジローやスティーブが目にするローマの8階建て10階建ての建物は現代目にするマンションの10階建て12階建ての大きさでしょう。壁の厚さや柱の太さを十分に大きくした上で建物内の天井の高さ、部屋の広さなどもこれに応じて大きくするように配慮されています。美しさの基本としての古代ギリシャの思想、シンメトリーの思想が生かされています。2対3等の数比を宇宙の根本原理と考えた古代メソポタミアの“数比思想”を貴びローマの建築物はでも均斉のとれた数比を保つことを信条としています。特に部屋の形と広さによって天井の高さをどのくらいに設定すべきかをシンメトリーの思想から割り出すわけです。

 建物の一つひとつに息をのむ思いで歩を進めるうちにウィトルーウィウス先生に教えていただいていたシーンが目に入ります。大きな建物の支柱を懸命に支えているペルシャの隣国カリュアの女性奴隷たちの姿に目が吸い寄せられます。“ぼぉー”として眺めるだけで終わってしまうでしょう。……実はこの彫刻にもペルシャに与してローマに敵対し敗北したカリュアの歴史が刻まれています。“勝てば官軍負ければ賊軍”はいつの時代にも変わらず人間社会の不滅の基本原則となっていますよね。この原則に従ってカリュアの女性奴隷たちも未来永劫重い建物を支えるために頑丈な柱となるという運命を担っています。女性奴隷たちの姿はこのことを後世に伝えているのです。ジローは“ふうっー”と大きなため息をつきます。こんな建物は同じように古い歴史のある京都の町を歩いても目にすることはまずないなぁ…と思います。

 ローマの武将たちはローマを取り囲む列強との戦いに勝利しローマ市民に平和な生活の場を与えねばなりません。ローマ市民から熱烈なサポートを得るためにも古代ローマの建築物には彼らの武勲そして帝国の威を示すための建物をローマ市内に建築することが最重要なテーマとなるでしょう。ローマに君臨する武将たちもまた自らが建築したこんな建物を目にすることによって次なる戦いへの戦意を大いに高めたことでしょう。

 ローマの建築に関わる設計図は古代ギリシャの時代に存在していた設計図の借り物であることはローマの著名な建築家ウィトルーウィウス先生の名著『建築書』によっても明白です。このギリシャの設計図を参照して建物を建てる力、これこそが古代ローマの建築家の仕事です。設計図は借り物であったとしてもこれを現実に建物として築き上げる力は賞賛されて然るべきでしょう。

 建築に際しての主たる労働力は数々の戦争に勝利することによって得た奴隷たちによるものでした。奴隷たちの中でも知識階級に属していたと思われる人達は医者、教師としてそれなりの生活を送ることができたでしょう。しかし不思議なことに、このことについては全く言及していません。この理由についてジローは何回かたずねてみたいという衝動に駆られたのでしたが、なんとなくつむじを曲げられるような思いがして質問を差し控えています。

 ギリシャにあるウィトルーウィウス先生の住宅はまさに目を見張る大きさ、大邸宅です。ちょっと訪ねてみましょう。

 建物の北側に作られた玄関から入りますとまっすぐに作られた廊下が目に入ります。この通路の右側にこの時代のマイカーともいうべきロバや牛、馬などのための厩があります。“駐車場”といった所ですよね。左手には北側の窓に面して食堂、絵画室、門番などの部屋があります。さらに進むと左手にアウラと呼ばれる大広間、いこいの場があります。アウラは朝のさわやかな空気という意味がありました。アウラの向こうには東側の壁際に位置する図書館があります。

 因みにこの時代の図書館の存在意義は計り知れず大きいものでした。6冊の本が複製されて多数の読者に読まれていることにより「放送型コミュニケーション」の始まりとして位置づけることができるのです。つまり図書館は今日の放送局の原始形態でした。今日流に表現すれば

 1対少数のコミュニケーション技術

 1対非常に多数のコミュニケーション技術

という本質的な進歩を実現したのでした。

 絵画室もコミュニケーション技術の立場から非常に大きな意義を有しています。

 “万物は流転する”の言葉通り、この世に存在するものは時々刻々変化していきます。つまり、

 “万物は時間的制約を受けている”

わけです。万物は時々刻々、時間軸上で変化していきますが、絵画に描かれた万物は最新のディジタル技術を応用すれば未来永劫その姿を留めることができます。

 ディジタル情報通信技術を駆使すれば万物はその姿を未来永劫全く変えることなく保つことができます。すなわち情報技術の発展によりその姿を変えることなく永遠に留めることが可能です。ウィトルーウィウス先生が示して下さったローマの比較的裕福な家族の住まいにある図書館と絵画室の重要性を今一度強く認識してみたいと思います。

 オエクス(I)は家族団らんの間です。ここでは楽しい会話がはずんだことでしょう。

 オエクス(II)では余興などが演じられ、アウラ(II)に陣取った客人達が時が経つのも忘れて過ごした場所でした。

 アウラとはもともと朝のさわやかな空気という意味ですが“憩いの場”と考えて良いでしょう。アウラ(I)は家族の憩いの場、そしてアウラ(II)は客人達をもてなすために“余興”が楽しく演じられたことでしょう。

 オエクス(II)の左側に用務室があります。ここには台所手洗、浴室などがあります。裕福な家族は大きな家で二家族の来客を同時に迎え入れることができる広さがあります。三家族でワイワイガヤガヤお話を楽しむことができる十分な広がり、空間があります。来客達も食材を持ち込んで料理をし、食事の場に提供したことでしょう。一般庶民は集合住宅に住みお互い助け合って過ごしていたことでしょう。盗賊におそわれても力を合わせて迎え撃つことができたでしょう。豪邸で過ごす家族も三家族ぐらいが集まってお互いに身を守るという意識は強かったでしょう。客人達も食事の材料をたっぷり持ち込んで他家に泊まりながら料理に腕をふるったことでしょう。用務室でのワイワイガヤガヤぶりが容易に想像されますよね。

 奴隷室の奴隷達も肉体労働に使われるよりもオエクス(I)で主婦と一緒に手紡ぎの仕事をしていたことでしょう。多くの場合楽しくおしゃべりをしながら糸を紡いでいたに違いありません。

 核家族のようになってしまった現代生活に比べてなんともうらやましい感じがしますよね。ウィトルーウィウス先生に米国からやってきたスティーブと一緒にローマ郊外にある田舎を訪ねてみたいと申し出ましたところ、“ロバを貸してあげよう”という有難いお言葉。

 スティーブは米国イリノイ州の田舎町サウスベントの出身。まわりは牧草地。“牛でも馬でもロバでもなんでもござれ”とのことでしたが、用心のため特に扱いやすいカッシーノという名のロバに乗って出かけます。

 カッシーノに乗ってローマ郊外の田舎を訪ねる…。誠に夢のような体験です。

 まずジローが乗ってスティーブが手綱を引きます。ジローは、

 “ハイッ”  “ハイッ”

と日本語でロバを激励。不思議ですね、ロバには通じるみたいで元気よく歩いてくれます。

 やがて目の前に緑 緑 緑 みどりいっぱいのオリーブ畑、思わず息を呑みます。あちこちに自然生えの草木…。赤、 白、 黄色、 色とりどりの花を咲かせています。

 なだらかなスロープの道を登りつめると右手に大きな家が見えてきます。近づくにつれぶどう畑が目に入ります。収穫を待つばかりのぶどうの房 房 房 みどりの葉っぱの影からたくさんのぶどうが見えています。とても美味しそうです。

 田舎の家、目の前にするとその大きさにすっかり圧倒されます。ここはウィトルーウィウス先生に紹介していただいたピエトロ小父さんのお家です。

 “日本からやってきたジローです。”

 “アメリカ人のスティーブです。”

と挨拶をするとピエトロ小父さんは笑顔いっぱい家の中を案内してくれます。その広さ全く仰天です!

 建物一階の床面積の1/4は占めるかなと思われる正方形の大部屋があります。なんとそこはぶどう酒の樽を天井近くまで積み上げている酒庫です。大部分はローマへと出荷されるでしょうが、家の主は客人達と浴びるほどに飲んで楽しく過ごしていたことでしょう。

 酒庫についで大きな部屋は建物の南側に面した脱穀室です。広々とした部屋で沢山の人がここで脱穀に携わったことでしょう。お話を楽しみながらの和気あいあいとした作業だったでしょう。楽しくやる方が肩も凝らないばかりか適度の運動にもなりますよね。

 東の部分にはお日様が昇ってくる様子を牛達が見られるよう工夫が施された牛舎が作ってあります。農夫たちは東天を仰ぎ見ることができる場所以外に牛舎を作ることは考えられない、これがベストの場所と考えています。また近くに火が見えるような炉は牛舎から遠ざけておかねばなるまいと彼らは主張します。牛達は火を見ると凶暴になるから…と理由づけています。

 オリーブ油の貯蔵庫は貯蔵している油が凝固するのを防ぐために南東の角にある部屋に設置すること、こんなきめ細かい配慮がされています。各部屋はギリシャの建物に関わる鉄則“シンメトリー”を保つことが厳守されており、広い部屋の天井はそれに応じて感性でとらえて最も美しい高さとなるように作られています。高い天井の大広間となっている部屋を取り囲む壁の厚さはそれなりに十分大きくすることが必要とされています。

 ローマにはまわりの国々から人々が押し寄せ、人口が無限に増加するので1階の部屋では到底収まり切れなくなるため、この高さを“借りる”必要があります。広い部屋が多い建物はそれだけ高さを大にするのだとローマ市民は説明します。“なーるほど そんな理由があるのですね。”と納得しながら周囲を見渡すジローの目には見上げる程に高い建物が目に入ります。



「宇宙で反省の日々」の巻


「宇宙で反省の日々」の巻

 ジローはスティーブに向かって手を差し伸べ、強くつよく握りしめて

 “スティーブ君、いよいよお別れの日が来たよ。”

 “ボクは宇宙の住まいでしばらく人生について静かに考えるよ…”

 こうして二人は地球上600kmにある宇宙のすみかに戻りここでの生活に完全復帰です。

 ジローは緑いっぱいの森の国、日本の北ははるか北海道、南に沖縄まで一望できる環境に大きな満足感を覚えます。自転する地球のおかげでたそがれの宇宙、神秘的な美しさの宇宙の夜空の美しさを楽しみます。

 無限の美しさあふれる“青い惑星 地球”そこに住むことの有難さを強く感じます。

 “今の時代、この地球に生まれた人類は例外なく幸せな思いに浸って日々過ごしているのだ。”

 “人類があみ出した科学技術が限りなく発展した結果、今私達が経験する幸せいっぱいの世界の住民となったのだ…”

 “ジョンは毎朝新しい快楽を求めてローマ市中を歩くのだよ。”

 “ジョンがこんな人間だったとは夢にも思わなかったよ…”

 スティーブは寂しさいっぱいの顔で言葉を絞り出すように話します。

 “ジロー君と知り合いになれたことは大きな収穫さ。ボクはこれを土産に久しぶりに米国イリノイ州の小さな町サウスベントの上空600kmにあるボクの宇宙のすみかに戻るよ。また連絡するね。ボクは宇宙ナンバーΠΠKαf03Σさ。ジロー君、君の宇宙ナンバーは?”

 この質問にジローは

 “えーとね、そらでは覚えられないんでメモ帳を見るね。ボクの宇宙ナンバーはAαγ33Aπβだ。これ大切なんだよね。もし忘れたら宇宙の迷子…。こうなったら大変なんだ…”

 スティーブはにっこり笑ってジローの手をもう一度しっかり握ります。つぶれんばかりしっかり握ります。

 ジローは楽しさいっぱいだったローマの旅から何日ぶり、いや何年ぶりだったでしょうか。日本の上空600kmにある我が家でのくらしに専念することを決めます。

 緑 緑 緑 みどりいっぱいの森の国日本!この姿、太古以来の姿がロボット達の手によって少しずつ復活していくことでしょう。

  ここはロボットたちが考えたいわば疎開地、最高の疎開地です。100万年という気の遠くなるような生命を与えられて過ごす疎開地です。

 あっ ある日どこからか端末に着信メロディーです。久しぶりにスティーブ君からの電話です。発信番号(ID)は

 “K3T8Z7Π6”

 電話の向こうでスティーブ君のくぐもった声です。何かとても心配なことかもしれません。スティーブ君は“アフリカのケニアに住む友人トムの店だが”と前置きして驚くべきことを話します。

 “君、身元証明のための暗証番号覚えているよね。安全性を確保するためにロボット当局よりメモ等に記録することを固く禁じられている。考えようによっては厄介極まりない代物だよ。”

とワタシに語った後、さらに沈んだ声で

 “トムの話では彼の友人が忘れてしまったらしいんだ…”

 友人の名前を忘れてしまったので、仮にレンとしておこう。

 “レンはロボット社会の朝の定刻6時に起床すると、直ぐ端末に暗証番号を入力するよね。レンはある朝これができなくなったのだから全く始末が悪いよ。”

 “いや始末が悪いなんてのんびりした話ではない。”

とスティーブはさらにくぐもった声。

 ジローは恐る恐るどういうことになるのか尋ねたいと思います。その前にしっかり暗証番号を思い出します。念には念を入れて頭の中で繰り返し記憶を確かなものにしてから、暗証番号を忘れた場合どうなるのか尋ねてみます。

 スティーブは、さらに一段くぐもった声で持ち時間は3分間。この間にしっかり思い出さなければスマートキューブはログインすることができません。この結果は悲惨極まりないものです。ランダムプロセスでは“苦痛”“快楽”の状態が3分間隔で襲ってきます。“苦痛”の状況、これは凄まじいリンチの襲来です。“快楽”は身も心もボロボロになってしまい、頭の中がすっかり空っぽになってしまうほどの快感の襲来です。

 これが全くサイコロの目の奇数か偶数で決められるようにして、快楽 快楽 苦痛 快楽 苦痛 苦痛…というようにランダムに繰り返されます。就寝時午後10時まで続くのです。強烈極まりない残酷なリンチが時に3分、3分、3分、3分、と12分も続いたあと快楽の瞬間があるというものの丸一日耐えられる長さではありません。このことが100万年も延々続きます。カレンダーを一枚めくってこの状況がいつまで続くことになるのか…とカレンダーは200枚1センチとして残りは999999年×365日+364≒365000000 つまり約4億日つまり日めくりカレンダーの厚さはなんと200メートル超高層ビルの高さです。苦痛の一日がたってもこの厚さ10日たってもやっと2ミリ減るだけです。“無限”の時間という感覚に変わりはないでしょう。200メートル厚さの日めくりカレンダーを延々絶望の思いでめくらねばならない…、耐えられない時間が無限に続きます。

 スマートキューブになった人数の99%は“快楽”を味わう毎日、絶対に忘却しない筈であった大切なパスワード、ロボットたちのパスワードに関わる原則は

 メモ用紙等に一切残さないこと

 容易に推定しうるパスワードは避けること

 となっています。

 ジローの考えた8桁のパスワードは

 ΠeΣΣすφケw

  ロボットは承認し、今後の諸連絡、そして毎日の起床後に日課となっている端末のログインの際にはこれを正しく入力して一日が始まるわけです。

 スティーブ君は念を押すように言います。

「ジロー君よ、確実に覚えているよね!?」

と心配そうに念を押します。ジローは

「念を押されていると心配になってしまうなぁ…。スティーブ君、一度ログアウトします。しばらく待って下さいね。」

 絶対忘れることはないと確信するパスワード、いつになく緊張して端末にあらためてログインします。パスワードを慎重に入力します。

 ΠeΣΣすφケw→********

 無事入力しました。

 悪夢のようなできごとを思い出します。まちは端末のログインからはじまります。パスワードを正しく打ったはずなのに、端末からは

 “パスワードが正しくありません。”との応答。もう一回入力すると、窓にカーソルが止まっています。

 えっ!

という感じ、5度は慎重に入力。祈る気持ちでクリック、無事入力できました。

 このときの恐怖に似た感じ忘れることはできません。この恐怖の思い、消えることはありません。

 宇宙は確かに楽しい所、100万年の生命を授かる所。地球土での生活はいわばさまざまな災害がひしめく危険な坩堝(るつぼ)の中での生活。ジローは迷わず地球への帰還を熱望当局へ申請します。

 ロボット当局での審査の後、帰還許可書を受けとります。

 帰還の当日、何名かの帰還希望者と一緒に迎えのスペースシャトルに乗り込みます。

 “久しぶりの地球に戻れる”

 ジローの胸は高鳴ります。

 シャトルはやがて大気圏に突入。シャトルは空気とのまさつ熱で千数百度に熱せられていることでしょう。シャトル内は断熱効果により快適な温度です。やがて待ちに待って減速用のパラシュートが無事開きます。窓の外を見ると緑いっぱいの森、ゆっくりゆっくり近づき着地です。

 ここはあの灰色ベレー帽子の老人に連れてきてもらった建物の近くの原っぱ、ジローは老人の顔を眺めます。きょとんとした顔。老人はにっこり笑顔で口を開きます。

 “ハッハッハッハッ ハァー”

 “すっかり目が覚めたかな。”

 “一瞬の夢、でも長いながーい夢だったよね。”

 “わしはね!人間たちのいう“物の怪”かもしれん…。あるいは妖怪かな?いやいやひょっとすると神様かな…”

 そう言って、再び

 “ハッハッハッハッ ハァー”

と笑います。

 灰色ベレー帽の老人は白い建物を指さし、

「あそこにはスマートキューブの容器が無数につまっている」

「遠くからでもよく見えるだろ。白い大きな地下10階地上30階というとんでもない建物が10棟20棟と並んでいるよね」

「あの建物にはロボット達が用意しているスマートキューブが無数につまっている。みっしりつまっていて、地球上の全人類のために用意されているスマートキューブが収まっているのだ。」

「このテーブルの上石側に倒れているスイッチにある人の腕くらいのスイッチを、よりくると左にたおせば、あの建物は爆発される…」

 灰色ベレー帽の老人はふぅーとため息をつきます。ジローは首をかしげながら、老人に質問をぶつけます。

 “爆破しても束の間、ロボット達は作り直すでしょう。例え数年かかるとしても、彼らにとって安全なところに全人類の分を貯蔵するのではないでしょうか?

 老人は

 “ハッハッハッハッ ハァー”

と笑います。

 そしてジローに語りかけます。

「元通りに作り直すでしょう。最後までやるかどうかは貴方の姿勢次第でしょう。」

「………」

「地球の自然破壊、環境破壊に目の色を変えて取り組み始めねば。」

 ロボット達はその様子を注意深く見つめるでしょう。

 灰色ベレー帽の老人は続けます。

 日本の将来そして地球の将来は若い人たちの手に委ねられているが…

 しっかり頑張ったぞ…

 ジローは何年もミスを防いだのです。

 ジローは帰還をするつもりです。ふりかえって手をふろうとしても

 …しかし、老人の姿はもうどこにもありません。

 自然破壊が近年、惑星地球を救おうとしてるが、ワタシ達を追い出してその全てが委ねられているのでは…

 “がんばろう”

 ジローは強く思いだします。

 スマートキューブには宇宙線を回避するためのコーディング塗が施されました。

 スマートキューブ打ち上げのための準備はそれぞれの国で歩調を合わせて進められています。

 日本では打ち上げと進められ月で5個は7月は盛夏です。夏空は北斗七星、夏の大三角が輝きます。

 ワタシ達の住む天の川はうすーく、白―く、ミルク色に輝き空に大きく広がっています。



参考文献

1.公益財団法人東京都医学総合研究所,「薬剤による視神経損傷の軽症化に成功」, 公益財団法人東京都医学総合研究所視覚病態プロジェクト,https://www.igakuken.or.jp/retina/topics/topics5.html(閲覧日2022年1月19日)

2.ウィトルーウィウス著・森田慶一訳註,ウィトルーウィウス建築書,東海大学出版会,1969,[682],[東海大学古典叢書]


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ