24.サマーガール
「桜ちゃん、お揃いの水着買おーよー」
私達は駅前のショッピングモールで水着を見ている。
「まだ水着あるのにお金もったいないじゃん」
「お金のこと気にしてるの?」
「え? まぁ・・・」
この流れはまずいぞ。いつかの服を買ってもらった時みたいになってしまう。
「じゃあ、お姉さんが買ってあげよう!」
やっぱり・・・。将来が不安になってくる。
お願いだから悪い男には引っかからないでね? さくらお姉ちゃんとの約束だよ?
「あのねぇ、美桜ちゃん。そこに直りなさい!」
「どうしたの急に!?」
「いいから!」
ここはビシッと言わないとね!
「こほん。美桜ちゃん」
「はい」
「私とお揃いの水着を着たい気持ちは分かるよ?」
「分かってくれるの!?」
食い気味に美桜ちゃんが言う。
「お黙り!」
私がそう言うとシュンと縮こまった。
「まず同じ水着わ買おうって聞くのはいいよ? でも、そのあとすぐに買ってあげようかはおかしいでしょ!」
美桜ちゃんはそうなの?という顔をしている。金持ちの家だと金銭感覚が狂うのかな・・・。
「・・・だって一緒の着たいから」
「だとしてもです! 買ってくれるのはそりゃ嬉しいけど、毎回毎回買ってもらうわけにはいかないでしょ?」
私が美桜ちゃんを紐扱いしてるみたいだし。いや、してないし思ったこともないからね? 本当にしてないよ!
「私が買ってあげるって言ってるからいいじゃん。なんでダメなの?」
なんでちょっとキレ気味?
どうしてダメなのか教えないといけないか・・・。
「なんでって・・・。そんなすぐホイホイ物を買ってあげるのはダメなのです! 分かった!?」
「分かった」
大きく頷きながら言ってるけど、本当に分かってるのかなぁ・・・。
「桜ちゃんにだけにするね!」
両手をグッと握りしめながら、高々と宣言する。
うんうん。分かってくれて良かった!
「って、そうじゃなくて!」
「違うの?」
全く理解してないじゃないか!!! 天然か!? 天然なのか!?
「・・・頭痛が痛い」
「日本語おかしくない?」
そんなの分かってるよ!
「桜ちゃんは私と一緒の水着を着るの嫌・・・?」
はい出ましたー。お得意のそれね。もう狙ってやってるでしょ。
どうして上目遣いで言う必要があるのだろうか!
「いや、そうじゃなくてね・・・」
「桜ちゃんにしか買わないからお願い! お願いお願いお願い!!!」
この人本当に私より年上なのだろうか?
たまに不安になる。いや、いつも不安だったわ。
「はぁ・・・。じゃあ、あまり高くないやつで、肌の露出少なくて、派手じゃないやつね」
「注文多くない!?」
「そんなこと言うならいらなーい!!!」
「あーん! 分かったからぁ! 言う通りの水着選ぶからぁ!」
結局こうなるんだよなぁ。
美桜ちゃんへのお返しがどんどん溜まってく・・・。もう体で返そうかしら・・・。
お返し欲しさに買ってくれてるわけではないだろうけど、私が嫌なんだよな・・・。
「はぁ。じゃあ選びますか」
夏ということもあり、水着を買いに来ている客がちらほらといる。
私と美桜ちゃんは、しばらく店内を見て回った。
いくつか水着の候補を出すものの、ことごとく私に却下されていた。
「桜ちゃんの審査がきーびーしーいー」
「肌の露出が少ないのって言ってるでしょー? なんで生地の面積が少ないのばっか選ぶのさ」
「だって可愛いかったんだもん!」
このままでは日が暮れてしまう。
なんかいい感じの水着はないものか。
私は今すぐ欲しいわけではないし、今日は諦めて違う店で探すかな。
「桜ちゃーん! こっち来てー!」
諦めモードに入っていると美桜ちゃんが私を呼ぶ。
「なんかいいのあったの?」
「うん! これはどう!?」
「どれどれー?」
美桜ちゃんが見せてきた水着は、濃いめの青色の水着だった。
胸元の部分はティアードフリルになっていて、下はパレオ付きだ。
「これなら露出少ないんじゃない?」
「ふーむ。確かに。胸元もフリルでいい感じだ」
パレオとか初めてだけどこれでいいかな。
「いいでしょう。合格です」
「ありがとうございます!」
いつの間にか、水着評論家みたいになっていた。
「試着しよっか!」
試着室に入った私はある悩みに直面していた。
私、水着の試着ってしたことないんだけど。どうすればいいんだ? 下着の上から着るの?
うーん。美桜ちゃんと同じ試着室に入れば良かった。
「ねぇー、美桜ちゃーん!」
「なぁに?」
「水着って下着の上から着るの?」
「そうだよ!」
やっぱそうなのか。売り物だし、普通に考えたら直接着るのはダメだよね。
ギブスが外れたので、着替えで手間取らなくなった。自由っていいね。
着替え終わった私は、鏡で自分の姿を確認する。
・・・夏の女って感じがする。
広い海! 眩しい太陽! 煌めく笑顔!
サマーガール橋本さくらです!!!
鏡の前で完璧なポーズをとる。・・・決まった!!!
「何してるの桜ちゃん」
「ひゃっ!?」
美桜ちゃんがカーテンの隙間から覗いていた。
「み、見た!?」
「・・・・・・何を?」
なんだ今の間は!!! 絶対見てただろ!!!
「記憶から抹消しないならこの水着は着ない。いいね?」
「あれれー? ここ1分ぐらいの記憶がないぞー?」
やっぱり見てたのか。
「あのー。お客様ー? いかがでしょうか・・・?」
店員さんが少し気まずそうに聞いてきた。
「す、すいません! 大丈夫です! この水着買います!」
バカみたいなやりとりを店員さんにまで見られてしまうとは・・・。
「ありがとうございましたー」
購入を済ませた私達は店をあとにする。
「ありがとね」
「いいえ! これ着て海行くの楽しみだね! 早く旅行の日にならないかなー!」
美桜ちゃんはかなりご機嫌の様子。
あーあ。お揃いコレクションがまた一つ追加されてしまったよ。一体、どこまで増えることやら・・・。
「せっかく買ってくれたし、着てあげますか」
「桜ちゃん似合ってたよ! サマーガール橋本さくらって感じ!」
「美桜ちゃーん??? 記憶消されたいのかなー???」
骨をボキボキ鳴らして美桜ちゃんを脅す。
「わ、私今なんか言ってたかなー? 覚えてないやー! あはは!」
・・・全くもう。
でも、ちょっと水着着るの楽しみかも。
私も少しばかり気分が高まった。




