23.真実はいつも・・・?
「大丈夫そうですね。ギブスを外しても構いません」
7月の終わり、私は病院に来ていた。
「完治するまであとどれぐらいかかりますか?」
「この調子なら8月末には普通に生活できるようになるでしょう。ただ、それまではテニスはもちろん、手を使った運動をしないように」
「分かりました。ありがとうございました」
9月中旬に行われる引退試合までにはなんとかなりそうだ。
診察室を出ると、すぐに美桜ちゃんが駆け寄ってきた。
「どうだった?」
「この通り、ギブスは外れたよ」
右手を洗う時以外は、常にギブスをしていたし、解放感がたまらなく気持ちいい。
「テニスはまだダメだって?」
「うん。8月末に検査があるから、それで判断するんじゃないかな?」
「そっか。それまではテニス我慢だね」
痛みもだいぶ引いてきたし、ちゃんと安静にしていれば9月からは部活にも参加できそうかな。
「一応、安静にしとかなきゃいけないんでしょ? もうしばらくは体洗ったりするの続けるね」
「えー。やらしー。本当は私の体触りたいだけなんじゃないのー?」
そんなことはないんだろうけど、どうしてもからかってしまいたくなる。
「そ、そんなわけないでしょ! バカなこと言ってないで行くよ!」
「本当にそんなわけないのー? なんなら前も洗うでござるかー?」
「ござるって・・・。桜ちゃんが前は自分で洗うって言ったんでしょ!」
そうでした。さすがに前を洗ってもらうわけにはいかない。
「まぁなんでもいいけど、このあとは水着買いに行くんだっけ?」
「うん! 新しいの買わないと! 桜ちゃんは買わないの?」
「私はいいかなー。サイズ変わってないだろうし」
自分の胸を見下ろす。虚しい。
胸が大きくなったりしたら、もっと可愛いのとか買ったりするんですけどね・・・。
「どんな水着なの?」
「スクール水着でさくらって刺繍が入ってる」
「・・・嘘でしょ?」
美桜ちゃんが立ち止まり、ありえないという表情をしている。
「さぁー、どうだろうねー」
「そこ隠す必要ある!?」
もちろん嘘だけど。でも大した水着じゃない。ワンピーススタイルだし。
「そんなに気になるの?」
「うん。少し・・・」
そんなもんなのかなぁ。私は着れればなんでもいいんだけど。
「本当はふんどしだよ」
「絶対嘘」
さすがにこれは分かるか。
「本当に新しいの買わないの? せっかく水着見に行くんだよ?」
「うーん。買わないかなぁ」
「そっかー・・・」
なぜか美桜ちゃんが落ち込んでいる。そんなに落ち込むことか?
「何か言いたそうね」
「え? いや・・・別に?」
なんだかこの感じ・・・。以前にも似たようなことがあったな。
ははーん。さてはあれだな?
「怪しい」
「な、なんも怪しくないよ?」
「美桜ちゃんと何ヶ月も一緒にいれば、大抵のことは分かるのだよ私は」
見た目も頭脳も子供の名探偵さくらの登場だ!
「へ、へぇー。じゃあ推理してみてよ」
「私、この難事件解決しちゃうよ? いいのかな?」
「なんで事件になってるの」
私はかけてもいない眼鏡をクイッと指で持ち上げる。
そして某アニメの犯人が明かされるシーンのメロディーを口ずさむ。
「美桜さん。あなたは私とお揃いの水着を着たいと思っている! 違いますか!?」
「ど、どうしてそれを!?」
美桜ちゃんがガクッと膝をつく。ノリいいなこの人。
「簡単です。それは以前にも同じようなことがあったからだ!!!」
「・・・そうです。着たかったんです・・・。一緒の水着を・・・。だから私は・・・私は!!!」
犯人がついに白状した。
これいつまでやるんだろ。
そろそろ周りの見る目が辛くなってきた。
「はーい。じゃあ行きますよー」
「ちょっと桜ちゃん!?」
急に終わらせたことに焦った美桜ちゃんが、走って追いかけてくる。
「せっかく付き合ってあげたのに!」
「いや、周りからの視線に耐えられなくなった」
「自分からやり始めたくせに!!!」
美桜ちゃんがワーワー言うのを適当に受け流しながら、私達はショッピングモールへと向かうのだった。




