18.私の番
「以上、私の苦い恋の思い出でしたっ」
話しを終えた美桜ちゃんは、暗い雰囲気を嫌ったのか明るく振る舞う。
しかし、そう見えるのは表面だけであって、辛そうにしているのがひしひしと伝わってきた。
「なんかごめんね。こんな話聞きたくないよね」
「ううん」
私は恋愛経験がないしなんとも言えないけど、美桜ちゃんがこの恋を忘れたい、その人のようになりたくないと思っていることだけは分かった。
好きになった初恋の人が色々な人に手を出していた。そして、気持ちを伝えたらめんどくさいと突き放される。
私がその場にいたらその先輩の頬を引っ叩くのに。
「まぁ、最悪な思い出だったけど、逆にいい経験になったかな。私は絶対にそうならないようにしようって思えたから」
「好きな人には優しくして、その人の気持ちをちゃんと考えて、傷つけないようにしようって。あれからずっと、自分に言い聞かせてるんだ」
美桜ちゃんが私を見つめながら言う。
まるで私に・・・。いや、今は考えるのをよそう。
「美桜ちゃんは優しいし、そんな最低な先輩みたいにならないよ」
「・・・うん。ありがと」
えへへと笑う美桜ちゃん。その表情には、まだどこか切なさが残る。
「美桜ちゃん隣座って」
「え? ・・・うん」
美桜ちゃんが少し遠慮気味に私の隣に座る。
私は美桜ちゃんの肩を掴み、ゆっくりと膝の上に寝かせた。
「ちょっ! 桜ちゃん・・・?」
「いいからそのまま」
私が弱ってる時、いつも支えてくれたんだ。次は私が支えてあげる番。
「ぁ・・・」
美桜ちゃんの頭を優しく撫でる。
「辛かったね」
「・・・うん」
「話してくれてありがと」
「・・・うん」
「つらい時は我慢しないで泣けばいいよ」
「・・・・・・うん」
部屋に美桜ちゃんの泣き声が静かに響く。
恋ってこんなにつらいものなのか。
こんなにつらい思いをするなら、恋なんてしない方がいいんじゃないかと思ってしまう。
それでも、人は恋をするんだろうな。
傷つく度に誰かの優しさを求め、その傷を癒してもらう。
そしてまた傷つく。
時には自分が相手を傷つけることもある。
それなのにまた恋をする。
きっと、1人でいるのがつらいからなんだろうな。
私もそうなのかもしれない。
美桜ちゃんが好きという感情はないけど、そばにいてほしいと思っているし。
・・・恋って難しいな。
くぼちゃんは、こういったことを学べって言いたいのかな。
「私のこと嫌いになっちゃう?」
なるわけがない。
何を心配しているのか分からない。けど、私が美桜ちゃんを嫌いになる理由はどこにもない。
「ならないよ。だから安心して」
「本当?」
「本当だよ」
「本当に本当に本当?」
「本当だってば」
美桜ちゃんは安心したのか、私に抱きついた。
「誰にも話せなかったからなんかスッキリした」
「それは良かったね」
「スッキリしたらお腹減ってきちゃった! 今日のご飯はなんだろね?」
起き上がった美桜ちゃんは、いつも通りに戻っていた。
多少無理してるんだろうけど、私が心配しないようにしてるのかな。それなら私も明るく接してあげよう。
「牛乳、魚、チーズ、納豆」
「カルシウム・・・。早く骨折良くなるといいね」
「美桜ちゃん、代わりに骨折して」
「それは無理だよー」
私も骨折して気持ちが沈んでいたけど、美桜ちゃんと一緒なら元気が湧いてくる。
「ありがとう」
「ん? 何が?」
「んー。なんでもなーい」
「何よー! 教えてー!」
私はこの日から、恋について真剣に考えるようになった。




