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恋の案内人  作者: 翁
出会い
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7.入部初日

 授業をうわの空で受けていると、いつのまにか放課後になっていた。


「おーい。さくらー」


 生きてっかーと顔の前で手を振るのはひかりだ。


「ねぇ、ひかり。私って普通だよね?」


「何言ってんだ? その質問自体普通じゃないぞ」


 むっ。普通じゃないと言われた。

 なんかひかりに言われるとムカつく。

 でも寝てる時の夢?のような出来事をひかりに話しても、バカにされるだけだよなぁ・・・。


「ひかりは悩み事とかあんまなさそうで羨ましいよ」


「失礼な。悩み事いっぱいあるぞ」


「へぇ。どんな悩み事?」


 どうせろくでもない悩み事なのは分かりきっている。

 例えば今日の夜ご飯何かなとか。


「今日の夜ご飯はなんだろうとか」


 ほら当たった。

 他には帰りのコンビニでなんのお菓子買おうとか?


「帰りにお菓子何買おうとか」


 私は心が読めるらしい。

 フフフ、ひかりガール。ユーの心は丸見えデース!

 ・・・おっといけない。私はこんなキャラじゃなかった。    


「私のもよろしく。それじゃ、今日からソフトテニス部入るからまた明日ね」


「おー。ポンポン入ったのか。じゃあなー」


 またポンポンって言ってる。

 ひかりと別れの挨拶を交わし、教室をあとにする。



 今日から正式に入部か。

 入部したからにはラケット買わなきゃいけないよね。

 いつまでもうさぎ先輩のを借りてるわけにはいかないし、週末の休みに買いに行くかな。

 でも、どんなラケットを買えばいいのか分からないんだよなぁ。

 あとでうさぎ先輩に聞いてみよう。


 さてと。部室に到着したけど、もう入部したからノックはしなくてもいいよね?

 部室の中は電気がついている。鍵も開いてるみたいなので、ドアを開けて部室へ入る。


「こんにちはー」


「あっ! さくらちゃん!」


 中にはうさぎ先輩しかおらず、まだ他の部員は来ていないみたいだった。


「今日からよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくね。一緒に頑張ろうね!」


 なんかすごい機嫌が良さそうだ。

 いいことでもあったのかな?

 とりあえず、着替えようかなと思ったけど、ラケットのことを聞いてみることにした。


「あの、うさぎ・・・じゃなくて部長」


「うさぎ・・・? 部長じゃなくて、名前で呼んでほしいな!」


 危ない危ない。ついうさぎ先輩と呼んでしまいそうになってしまう。というか手でうさぎの耳を作らないで。


「佐藤先輩」


「ちーがーくーてー!」


 なぜか頬を膨らまし、ムスッとした顔になる。もううさぎにしか見えない。


「私の名前、美桜って言うの」


 そういえば、フルネーム聞いていなかったな。


「それで・・・なんですか?」


 何を言いたいか分かってはいるがあえてとぼける。


「なんですかってわかるでしょー!」


 ほらほらとうさぎ先輩が肩を揺すってくる。えぇい、鬱陶しい。


「えっと、みお・・・先輩・・・」


「よろしい」


 なんでこの人こんな偉そうなんだ。

 先輩だし年齢的には偉いかもしれないけど、先輩って感じが一切しない。

 それよりも、いきなり下の名前で呼んで大丈夫なのかな? 周りの人が変に思わないかしら。

 でも、本人がそう呼べって言ったからにはそうするしかない。


「ちなみにだけど、漢字では美しい桜で美桜って言うんだよ」


 私と一緒の『桜』が入っている。

 まぁ、私の名前の表記は平仮名だけど。

 昔、母親になんで平仮名なのって聞いたら、特に理由ないわよと言われた。

 挙句の果て、漢字で書いても問題ないんじゃないと適当な答えが返ってきた。私、あなたの娘だよね?


「そうなんですね。私は平仮名で書きますけど、母親曰く漢字で書いてもいいって言われてます。もう平仮名で慣れちゃいましたけど」


「え? そうなの? じゃあさじゃあさ、部活では漢字にしちゃおうよ!」


 おぉ・・・めっちゃグイグイくる・・・。

 前のめりになりながら、うさぎ先輩が名前を漢字にしようと提案してくる。

 ここは一回断って反応を楽しもう。


「なんでですか嫌ですよ絶対」


 ガーン! という効果音が聞こえてきそうな感じで、うさぎ先輩が膝から崩れ落ちる。


「そ、そんなに嫌なの?」


 今にも泣きそうな顔になっている。この人本当に先輩なのかな?

 ・・・まぁ、特に断る理由もないし、漢字でもいいかな?


「嘘ですよ。別に漢字でもいいですけど」


「ホント!? じゃあ『桜』が一緒でお揃いになるね!」


 さっきの落ち込みようが嘘のようにものすごく喜んでいる。あまりにも単純すぎて少し不安になってくる。


 そんなことより、ラケットのことを聞こうとしたんだった。


「ちょっとラケットのことで聞きたいんですけど」


「ラケット? どうしたの?」


「み、美桜先輩から借りたままってわけにはいかないので、買おうと思ってるんですけど・・・」


「あ、そういうことね」


「はい。でもどんなの買えばいいのかさっぱり分からないので・・・」


「ふむふむ」


 うさぎ先輩は腕を組み、何かを考え始める。


 しばらく沈黙が続く。


「あ、あの、どんなの買えばいいか教えてもらうだけで、いいんですけど・・・」


 一体何を考えているんだ?


「・・・よし!」


 急にうさぎ先輩が何かを決心したかのように言う。


「今週の休みに一緒に買いに行こう!」


「・・・えぇ」


 こうして、うさぎ先輩とラケットを買いに行くことになってしまった。

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