表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の案内人  作者: 翁
過去からの解放
84/255

14.先輩達の青春

 私や花恋ちゃん達が出場する、個人戦の県大会まであと1週間。

 昨日、団体の県予選が行われ、1回戦こそ勝利したものの、次の2回戦で敗退に終わった。

 美桜ちゃん以外の3年生は最後の公式戦。

 泣いてる先輩達を見ていると、私も泣きそうになったが、なんとなく我慢した。

 それでも、先輩達は最後には笑顔になり、お互いの3年間の活動を称えあっていた。

 その先輩達の姿はまさに青春そのものだった。

 やっぱり、私達1年生は出なくて正解だったと思う。

 仮に出ていたら、先輩達に心残りや、やりきれない気持ちがあったかもしれない。だからこれで良かったはずだ。

 結果こそ残念だったが、私は最後まで諦めない先輩達の姿をしっかりと目に焼き付けた。

 公式戦が終わってすぐに引退というわけではなく、9月に部内での引退試合があるため、先輩達は引き続き練習に参加することとなっている。


「まずは団体戦お疲れ様。部長以外の3年生は公式戦が終わってしまったけれど、部内での引退試合までは、後輩達に色々と教えてあげてもらえると嬉しいわ。3年間、よく頑張ったわね。本当にお疲れ様」


 桜木先生が3年生を労う。

 あと、3ヶ月ぐらいしか一緒に活動できないと思うと寂しいな。


「今日からは気持ちを切り替えていくわよ。個人戦に出るペアは、気を引き締めて練習に取り組むように」


「はい!!!」


「私からは以上よ。練習、始めましょうか」



 練習が始まり、私は美桜ちゃんと乱打をしていた。


「桜ちゃーん! 強めに打っていいよー!」


「オッケー!」


 私は美桜ちゃんからのボールを強く打ち込む。

 ・・・?


「今日もいい感じだね!」


 美桜ちゃんからはそう言われるけど、何かいつもと違うような気がする。

 もう一度、強めにボールを打ってみる。・・・やはり変だ。

 確かにスイートスポットに当たっているし、音もいつもの音だ。

 でもなんだろう? 打った時に力がいつもより入ってないというか、なんというか・・・。

 私はガットの張りを確かめる。特に弛んでる感じはしない。

 ・・・気のせいかな?

 もう一球強く打ってみるといつもの感覚を感じた。やっぱり気のせいか。

 ちょっとだけ当たる位置がズレてただけかもな。しっかりボール見ながら打たないと。


 そのあとの練習では、最初に感じた違和感は出なかった。

 しかし、定休日の日に咲蘭ちゃんの家で練習していると、またもやあの違和感を感じた。


「うーん。なんだー?」


 私は打つのを一旦止める。


「どうしたのさくらちゃん?」


「なんか月曜日から打つ時に変な感じするんだよね」


「どんな感じなの?」


「たまになるんだけど、強く打った時に力が入った感じがしないみたいな? ボールに体重が乗ってる感じしないんだよね」


 どこか痛いってわけじゃないしなぁ。


「ガットってまだ1回も張り替えてないの?」


「これは美桜ちゃんのラケットだから、最後に替えたのがいつか分からないんだよね」


 美桜ちゃんに聞いておけば良かったな。


「とりあえず、ガット張り替えてみたら?」


「どうしたんですの?」


 私達の会話が気になったのか、咲蘭ちゃんも会話に加わる。

 私は花恋ちゃんに話したことを、咲蘭ちゃんにも話した。


「ガットを張り替えるのでしたら、これから行きましょう。まだ閉まる時間でもないですし、宮下に車を出させますわ」


 宮下さんに車を出してもらい、スポーツショップでガットを張り替えに行く。

 しかし、混んでいたせいか、明日の受け取りになるらしい。

 仕方がないので今日はこのまま解散となった。



 翌日、ラケットを取りに行ってから練習に参加となる私は、スポーツショップが入っている駅前のモールへと急いだ。

 県大会まで時間ないし、少しの時間も惜しい。早く取りに行かないと。

 ガットさえ張り替えれば、いつもの感覚に戻る──。


「きゃっ!」


 携帯を見ながら運転していた自転車とぶつかりそうになる。咄嗟に避けよたものの、足が縺れて転んでしまう。


「いったー」


「す、すいません! 大丈夫ですか?」


「あー、大丈夫ですけど、携帯見ながらは危ないので気を付けてください」


 自転車に乗った人は何度も謝ってきたので、許してあげることにした。

 まったく! これで怪我でもしたらどうしてくれるんだ!


「そんなことより急がなきゃ」



 ラケットを受け取り、学校に戻った私は、すぐに着替えて練習に参加した。


「おかえり桜ちゃん! ガットは完璧?」


「うん! これで大丈夫なはず!」


 今は打ち込みの練習の最中。私も加わることにした。

 よーし、気合い入れてくぞー!


「桜ちゃんいくよー!」


「はーい!」


 美桜ちゃんが球出ししたボールを思い切り打ち込む。


 ──パーン!!!


 おぉ! そうそうこの感覚!

 やっぱりガットのせいだったのかしら。


「ナイスボール!」


 次のボールも完璧な位置で打とうとした瞬間──。


 ズキッ!


「痛っ!!!」


 ボールを打とうとグリップを握る手に力を入れた瞬間、とてつもない痛みに襲われる。

 痛みに耐えきれない私は、右手を抑えてその場に蹲った。


「桜ちゃん!?」


 美桜ちゃんがネットを飛び越えて、猛ダッシュで近付いてくる。


「どうしたの桜ちゃん!?」


「み、右手が・・・」


「誰か桜木先生呼んできて! 桜ちゃん! とりあえず部室戻って冷やそう!」


 美桜ちゃんの肩を借りて立ち上がるが、痛みで視界が揺らぐ。


「うっ・・・」


「ゆっくりでいいよ!」


「さくらちゃん大丈夫!?」


 花恋ちゃんや咲蘭ちゃんも心配そうに私を見つめていた。


「だ、大丈夫・・・」


 ど、どうしよう・・・。県大会近いのに・・・。

 私は頭の中が真っ白になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ