13.相談
団体の県予選が来週に迫った。
桜木先生から言われた通り、個人戦の結果を踏まえて団体のレギュラーを決めることになっている。
つまり、私と美桜ちゃんペア、花恋ちゃんと咲蘭ちゃんはレギュラー確定。
1年生の私達が、他の先輩達を差し置いて出ていいものなのか美桜ちゃんに聞いたが、大丈夫だから心配しないでと言われた。
しかし、大会が近づくにつれ、本当に大丈夫なのかと考えるようになってしまった。
確かに私達は、個人戦で優勝と3位という結果を残した。
でも、私や花恋ちゃん達は今回出なくても、まだ出れるチャンスが残っている。
だったら今年最後の3年生の中から、出てもらった方がいいような気がしていた。
絶対に出たいなんて私は思ってないし、花恋ちゃんもきっとそうだろう。咲蘭ちゃんがどう思っているかは分からないけど。
・・・2人に相談してみようかな。
今日は水曜で部活は定休日。放課後は恒例となっている咲蘭ちゃんの家での練習がある。その時に相談してみることにしよう。
──放課後、二階堂邸
「それでなんですの? 相談って」
私達は大広間でお茶をしながら話していた。
「あー、うん」
「なんかさくらちゃんが真剣な感じで相談って珍しいね」
ちょっと花恋さん? 私のことどう思ってるのかしら?
「来週の団体戦の予選なんだけどさ──」
私は今思ってる気持ちを隠さずに全て話した。
2人は私が話し終わるまで、途中で遮ったりせずに最後まで聞いてくれた。
「だから私は、桜木先生に私以外を選んでくださいって言うつもり。別にこれは強制じゃないし、2人が試合に出たいって言うなら私は止めない」
あくまでも、出るか出ないかは花恋ちゃん達に任せる、という形にした。
ここで強制してしまうは、私の考えの押し付けだし、何より自分達で決めてほしい。
「なるほどね。さくらちゃんの言いたいことはわかったよ。咲蘭ちゃんはどう思う?」
花恋ちゃんが咲蘭ちゃんに意見を求める。
「・・・さくらさんの言う通り、わたくし達にはまだ時間がありますし、わたくしも絶対出たいとは思っていませんわ。なので、花恋さんの判断にお任せしますわ」
やっぱり咲蘭ちゃんは花恋ちゃんに委ねたか。
「私がもし3年生だったら出たいって思うし、さくらちゃんの案に賛成かな。団体戦に出ないとなれば、個人戦に集中できるしね」
「そっか。じゃあ私達は団体戦に出ないってことで、私から桜木先生に伝えておくね」
「うん。よろしくね。でもさ、一つ問題があるけど・・・」
「ありますわね」
問題? 何かあったっけ?
「問題って?」
思い当たる節が見つからず、花恋ちゃんに聞くことにした。
「私達はいいけど、美桜先輩にはこのこと話したの?」
・・・あ。
このまま話を進めて、勝手に決めたりしたら怒ってしまうかもしれない。
「ま、まだ・・・」
「やっぱり。桜木先生に言う前にまずは美桜先輩に言わなきゃダメだよ。さくらちゃんのペアなんだし」
そうだよなぁ・・・。
私が出ないってなると、美桜ちゃんは他の部員とペアを組むことになる。
別にそれは問題ではないけど、勝手に話を進めて決めることに問題がある。
「言わないとダメだよね・・・」
「当たり前でしょ」
言いづらいなぁ・・・。美桜ちゃんは私と出る気満々でいるだろうし・・・。
「そんなに言いにくいんでしたら、わたくし達もその時一緒にいますわ」
・・・え?
私は耳を疑った。
咲蘭ちゃんの口から、そんな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。
「ねぇ、本当に咲蘭ちゃん?」
「どういう意味ですの!?」
最近、少しずつ感じていたけど、咲蘭ちゃんは変わった。人間関係でこんなにも変われるのか。
「咲蘭ちゃんが言ったように、話すとき一緒にいるから大丈夫だよ」
「・・・ありがとう」
2人がいてくれるなら心強い。それに2人も一緒なら、美桜ちゃんも分かってくれるはずだ。
「明日の部活の前に時間もらって伝えよう」
「そうだね。もう時間もないし、早めの方がいいよね。美桜ちゃんに伝えたらすぐに桜木先生にも伝える」
「決まりですわね。では、話はこれくらいにして練習を始めましょう」
そのあとの練習は、悩み事が解消できたおかげで集中して練習に取り組むことができた。
──翌日、部活前
「美桜ちゃん。ちょっと話したいことあるんだけど」
「なになに? どうしたの?」
私が美桜ちゃんを呼び止めると、花恋ちゃん達も近付いてきた。
「花恋ちゃん達も?」
「うん。ちょっと真面目な話」
「ちょ、ちょっと待って!? もしかして、皆部活辞めるとか言い出さないよね・・・?」
どうしてその考えになるの。
「違う違う。それなら黙って辞めてるから」
「黙って辞めるんだ!?」
今日はツッコミが激しい美桜ちゃんですね。
「辞めないから安心して。団体戦についてなんだけど」
「団体戦? 来週の?」
「うん。私達、団体戦は出ないつもりでいるんだ」
「・・・え?」
美桜ちゃんは驚いていた。まぁ、急に言われたらそうなるよね。
「ちゃんと理由があるの。今から話すね。これは私達で決めたことなんだ」
「うん」
「前に1年生の私達が3年生を差し置いて、試合出てもいいのかなって話したよね?」
「したね。でも、気にする人いないし大丈夫だよって言ったけど」
この部活の先輩達はいい人ばっかだし、なんで私が出れないの!なんて思う先輩はいないと思う。だけど・・・。
「言ってたね。でも、あれから考えたんだ。もし、私が3年生の立場だったら、やっぱり出たいと思うかなぁって。それは花恋ちゃん達も一緒」
「それに私達はまだ1年。この先、2年も時間ある。だから、私達が出るんじゃなくて先輩達に出てほしい」
「・・・・・・」
美桜ちゃんは黙ったままで何も言わない。
やっぱり納得いかないのかなぁ・・・。
「桜ちゃんはさ」
「うん」
「桜ちゃんは・・・私と出たくないの?」
・・・私と出れないのがそんなに嫌なのかな。
「そんなことないよ。私のペアはこの先も美桜ちゃんしかいないと思ってる」
「本当?」
「本当だよ」
私がそう言うと安心したのか胸を撫で下ろしていた。
「そっか。桜ちゃん達は優しいね。桜木先生にはこれから話すの?」
「うん。そのつもり」
「私が伝えておいてあげるよ」
「いいの?」
そうしてくれると非常に助かる。
「いいよ。桜ちゃん達の分まで頑張るね!」
「うん!」
「良かったですわね。わたくしは先に行ってますわ」
自分の役目は終わったと感じたのか、咲蘭ちゃんは部室を出ていった。それに続くように花恋ちゃんも部室から出ていく。
「ありがとね美桜ちゃん」
「ううん。桜ちゃんらしいなぁって思った」
私らしいか・・・。自分ではよく分からないけど。
「私達も行こっか。桜木先生に伝えてからすぐ行くから、先にランニング行ってて」
「わかった。よろしくね」
美桜ちゃんを残し、私は部室をあとにした。
ちゃんと話せて良かった。美桜ちゃんはもっと嫌がるかと思ったけど。
試合当日は全力で応援しよう。




