10.優勝後の約束
祝勝会が終わり、私と美桜ちゃんは部屋でゆっくりしていた。花恋ちゃん達は既に帰っている。
「つーかーれーたー」
「疲れたねー。頑張ったもんね」
今まで生きてきた中で一番頑張ったような気がする。まだ15年しか生きてないけど。
「うん。ワタシ、ガンバッタ、エライ」
「なんでカタコトなの」
いやー、本当に疲れた。
これは美桜ちゃんのマシュマロボディに癒してもらわないといけませんね。
「美桜ちゃんもベッド来て」
私はおいでおいでと美桜ちゃんを呼ぶ。
「・・・来たけど」
「疲れたからギューしてくれたまえ」
「甘えん坊だ」
なんとでも言いなさい。
美桜ちゃんが優しく私を抱きしめる。
何度こうしてもらっているか分からないけど、やっぱり落ち着く。そして安定の眠くなるという。
「・・・眠い」
「えー、寝ちゃうのー?」
いつもなら寝ていいよとか言うのに、寝てほしくなさそうじゃないか。
「ダメなのー?」
「ダメじゃないけど・・・さ」
ん? けどなんだ?
「どしたん?」
「・・・いや、その・・・ね?」
なんだなんだ? 急にモジモジし始めたぞこの子。
あ、私が寝たら話し相手がいなくなるから寂しいってことか。
「寝たら寂しいんだね。仕方ないから寝ないであげよう」
「いや、そうじゃなくて・・・」
んー? じゃあなんだ? お風呂? お風呂なのか?
「わかった! お風呂入ろうってことだね!」
「お風呂はあとで入るよ」
「じゃあなにさ」
さくらお手上げー! もう分からない!
女心って難しいのね。私も女だけど。
「・・・ほら、私達優勝したじゃん?」
「うん。したね。わーい!」
私は両手を上げて子供のように喜んでみせた。
「・・・うん。わーい! なんだけどさ」
「なんかさっきから奥歯に物が挟まったような言い方ね」
ハッキリしない女は嫌われちゃうぞ!
と言ってみるものの、美桜ちゃんを嫌いになることなんてこの先一生ないような気がする。やーん、一生を共にしちゃうだなんてー。そうじゃないか。
「優勝したからさ・・・」
「したから?」
嬉しいね。え? それ以外なんかあるの?
「桜ちゃん忘れてるの?」
「え? 何が?」
なんかあったっけ? 宿題?
いや、宿題は出てないはずだ。てか、宿題全く関係ないじゃん。
「やっぱり忘れてる」
「なんか約束したっけ?」
ド忘れしてしまったらしい。
約束したっけなー。思い出せない。
「むー」
あれ? 美桜さん? なんか拗ねてません?
「えっと・・・。ごめん忘れちゃったから教えて?」
「お、教えるの恥ずかしい」
えー。教えてくれないと分からないじゃないですかー。
「恥ずかしくないから大丈夫! ほら教えて!」
美桜ちゃんはモジモジしたまま、言うの恥ずかしがっている。それから少し間を置いてから教えてくれた。
「・・・ゆ、優勝したら、その・・・チューしてくれるって・・・」
・・・あ。
そういえばそんな約束したわ。
美桜ちゃんの顔がみるみるうちに赤くなり、私から目を逸らしてしまう。
「な、なーんだ! 全然恥ずかしいことじゃなかったねー!」
「恥ずかしいでしょバカ!」
そう言いながら頬を膨らましてる。リスっぽい美桜ちゃん、可愛い。
「・・・えっと、じゃあ、チューしますか?」
「・・・・・・雰囲気台無し」
そんなこと言われましても・・・。
「ご、ごめん」
「本当に悪いと思ってるのー?」
美桜さん結構ご立腹な感じでしょうか? 困ったなー。
「思ってる! 忘れててごめんね! ほら、試合に集中してから・・・」
「ふーん」
目を細くしながらそう言うと、美桜ちゃんは私から離れてベッドから出る。
「トイレ行ってきます」
「は、はぁ。ごゆっくりどうぞ・・・」
「いーい? 戻って来るまでにちゃんと反省して、雰囲気を作る努力をするように」
雰囲気を作る努力ってなんですか・・・。
「わ、分かりました」
──バタン
美桜ちゃんはツンケンしながら部屋を出ていってしまった。
今までで一番拗ねてるかもしれない・・・。これはやっちゃったなぁ。
「・・・・・・」
さて、どうしたものか。
私はベッドの上に胡座を組み、どうするか悩むのだった。




