9.これから
「乾杯!」
地区予選から帰宅した私達は、美桜ちゃんの家で祝勝会を開いていた。
「2人とも本当によくやったな! 教えて良かったよ。高橋さん達も3位おめでとう!」
祝勝会には花恋ちゃんと咲蘭ちゃんも参加している。
咲蘭ちゃんは来ないと思っていたが、花恋ちゃんに誘われた手前断れなかったようだ。
地区予選の結果は、私と美桜ちゃんのペアが優勝、花恋ちゃん達が3位となった。
他のペアは全滅で、残念ながら県大会に出場することができなかった。
「ありがとうございます。美桜ちゃんと美桜パパの特訓、美桜ママの美味しいご飯があったからこそ、優勝できたんだと思います」
「何を言ってるんだ。さくらちゃんと美桜が頑張ったからだよ」
「それでも、教えてもらってなければ優勝どころか、県大会すら行けてたかどうか・・・。それと──」
私はそこで一旦話すのを止め、咲蘭ちゃんの方を見る。
「な、なんですの?」
「それと、咲蘭ちゃんが練習に誘ってくれたことにも感謝してる。ありがとう」
私は咲蘭ちゃんに頭を下げた。
「・・・な! か、顔を上げてくださる!? べ、別にわたくしの練習相手に相応しいと思っただけですわ! 勘違いしないでもらえます!?」
「一緒に練習できて良かったね、咲蘭ちゃん。本当はこちらこそありがとうって言いたいんだよね?」
「か、花恋さん!?」
咲蘭ちゃんが恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「まぁ、なんにせよ! 今日は皆よく頑張った! 来月もこの調子で頑張ろう!」
「はい!」
地区予選が終わったからか、張り詰めていたものが切れて一気に疲れが押し寄せてきた。
「ふぅ・・・」
私は小さく息をつく。それが美桜ちゃんには聞こえていたらしく、私の顔を覗き込むように聞いてきた。
「どうしたの桜ちゃん?」
「いや、なんか一気に疲れが」
「いっぱい試合したもんね」
一体、何試合したんだ? 昨日と今日合わせて6試合・・・いや、7試合か? そりゃ疲れるよな。
「勝つのは嬉しいけど、勝ち進むのも体力がいるね」
「うん。県大会に向けて、スタミナも強化しないといけないね」
「美桜先輩。ランニングの量、増やしませんか?」
私達の話を聞いていた花恋ちゃんが話に入ってきた。
「そうだね。少し増やしてもいいかもね」
「あと、私だけでもいいので、振り回しの量も増やしてほしいです」
昨日のスタミナ切れを引きずってるのかな。
「いいけど、やりすぎはよくないからね? 徐々に増やしていこう。県大会まではまだ時間あるし」
「そうですわ花恋さん。焦る必要はありませんわ」
自分のせいで負けたと責任を感じているからこそ、どうにかしなきゃと焦ってしまっているんだろう。
「花恋さん1人で試合をするわけではないですのよ? 一緒に頑張りましょう」
「咲蘭ちゃん・・・。そう・・・だよね。私焦ってたみたい」
「分かればいいんですの」
2人はこれから、もっといいペアになるだろうな。
・・・これからか。
美桜ちゃんが引退したら、私はどうすればいいんだろう。
正直、美桜ちゃんの引退後について、何も考えていなかった。目の前のことに集中していたしな。
・・・うーん。
実際、美桜ちゃん以外とペアを組んで、試合している素がを想像できない。
今の私は、美桜ちゃんがいるからこそ、力を発揮できているような気がする。
多分、他の人とペアを組んでも、今みたいに楽しくテニスをできる自信がない。
花恋ちゃんと組めれば一番いいかもしれないけど、咲蘭ちゃんというパートナーができてしまったからには、邪魔をしたくない。
・・・美桜ちゃんが引退すると同時に私も部活辞める? 美桜ちゃんがダメって言いそうだけど。
でも、楽しくやれないのに無理してまでやりたくない。
「桜ちゃん?」
「え?」
「お寿司を箸で持ったまま止まってたから」
「あー、疲れてボーッとしてたみたい」
今考えても仕方ないか。その時になったら考えよう。
「大丈夫? 部屋行く?」
「大丈夫大丈夫。お寿司食べたいもん! よーし! 食べるぞー!」
「あ! それはわたくしのいくらですわ!」
美桜ちゃんはまだ心配そうに私を見ていたが、本当に大丈夫だからと言って納得してもらった。
昨日今日と疲れたけど、優勝できて良かった。
今日ぐらいは優勝の余韻に浸ろう。




