3.ファーストポイント
前の試合が終わり、いよいよ私達の出番となる。
「2人とも、油断だけはしないようにね。最初から全力で行きなさい」
「はい!」
試合前の乱打が始まった。
美桜ちゃんが言うには、乱打で力を見せておくと、相手が萎縮することがあるらしい。
その話を聞いた私は、乱打から本気を出すことにした。
部活であの会心のショットが出たあと、スイートスポットに当てる練習を続けてきた。
そのおかげか、打つ度に快音が出るようになってきている。
とりあえず、一発お見舞いしておくか。
──パーン!!!
相手は一歩も動けず、ボールが自分の横を通り過ぎていくのを見つめるだけ。少しは効いたかな。
「いいよさくらちゃん!」
「頑張れー!」
他の部員の応援にも熱が入っているようだ。その応援に応えなきゃな。
「レディ」
審判のコールで乱打が終わる。
「──レシーブサイド、佐藤・橋本ペア 7ゲームマッチプレイボール」
トスの結果、私達はレシーブとなった。
──試合が始まる。
1ポイント目、既に美桜ちゃんとどうするか決めている。
レシーブをロブで返し、ストレート展開へ。
そして、相手側の1球目をポーチに出てボレーで叩く。
例えクロスに抜かれてしまっても、美桜ちゃんが移動することになっているので、私は後ろを気にせずボレーを完璧に狙うまでだ。
さて、この通りに上手くいくか。
いや、絶対決める。
「1本先行ー!」
私は念の為に備え、サービスライン付近で待機する。
美桜ちゃんだからほぼほぼないが、仮に前衛にボールがかかってしまった場合の保険だ。
──パン!
相手のファーストサービスがきっちりと入る。
それを確認した私は、すぐさまネットに詰めた。
予定通り、美桜ちゃんがしっかりとストレート展開に持っていく。
さぁ来い。1ポイント目は私が奪ってやる。
美桜ちゃんの絶妙な中ロブに、相手の後衛が走りながらバックで返してくる。
私は一度、相手が打つ前にクロスケアをするフェイントを入れた。
そして相手のラケットに当たる瞬間に、一気にポーチに出る。
相手が打ち返したボールを、私は強烈なボレーで迷いなくクロスに打ち込んだ。
──パーン!
相手の後衛が追いかける前に、ワンバウンドしたボールはコートから出ていく。
よし! まずは1ポイント!
「ナイス桜ちゃん!!!」
私は美桜ちゃんに駆け寄り、ハイタッチを交わす。
「ナイスレシーブ! この調子でいこ!」
「うん!!!」
イメージ通りにポイントが取れた。これは幸先がいい。
ただ、まだ1ポイント取っただけだ。油断は禁物。
「ナイスボレー!」
「その調子でもう一本!」
・・・応援されながら試合するの気持ちがいいな。何より力になる。
次は私のレシーブ。ここでさらにエンジンをかけておきたい。
相手の前衛を抜くパッシングショットでいこう。
「0-1」
審判のコールで相手の後衛がサーブを打つが、ボールがネットにかかってしまう。
「フォルト」
セカンドサービスはどうしても甘くなりがちだ。これはチャンス。
相手の後衛のセカンドサービスは、アンダーからのカットサーブ。
──パサッ
「ダブルフォルト」
またしてもネットにかかり、ダブルフォルトで2ポイント目。
「ラッキーだね! でも集中していこ!」
少し拍子抜けだったが、美桜ちゃんの言う通りに集中していこう。
相手の前衛のサーブに変わったが、ここからなんと3連続でダブルフォルト。難なく1ゲーム目を奪取した。
「相手も緊張してるみたいだね。緊張が和らぐ前に叩いちゃお」
「そうだね」
次は私達のサーブだ。こちらもダブルフォルトに気をつけないと。
「ゲームカウント0-1」
美桜ちゃんのファーストサーブ。部の中で一番の正確性がある。
サービスライン内に入れば取るのは難しいだろう。
チャンスボールが来るかもしれないし、スマッシュの準備をしておくか。
──パンッ!
美桜ちゃんのラケットから放たれたサーブは、相手のサービスラインのセンター付近に飛んでいく。
相手の後衛は逆を突かれたのか、反応できずにサービスエースとなった。
「ナイスサーブ美桜ちゃん!!!」
「もう一本いくよ!」
「いいぞ美桜ー!」
美桜パパの声が聞こえる。
「もうパパったら!」
よし。完璧にこっちのペースだ。
この調子でいくぞ!




