閑話.笑顔でいられますように
もしかしたら、ありえるかもしれない。
大人になったさくらと美桜のお話。
昨日投稿した「閑話.初めての年越し」に続く2話目です。
「・・・ん。さぶっ」
寒さで目が覚める。
ワインを飲むペースが早かったせいか、いつの間にか眠ってしまったらしい。
美桜ちゃんもくぼちゃんも、炬燵に入ったまま眠っている。
時計を見ると既に年が明けていて、夜中の2時を回っていた。
・・・寝たまま年越ししちゃったか。
このまま寝ていたら風邪引くし、とりあえず美桜ちゃんは起こすか。くぼちゃんは軽いから運べばいい。
「美桜ちゃん、美桜ちゃん起きて」
起きないとイタズラしちゃうぞー。
「・・・・・・どうしたのー?」
「風邪引くからベッドで寝よ」
「はーい。・・・桜ちゃん。ちょっとこっちきて」
美桜ちゃんが目を閉じたまま私を呼ぶ。
「何ー?」
「あけおめ」
そう言って、頬にキスをしてきた。
「あ、あけおめ。今年もよろしくね」
ふ、不意打ちはずるいぞ!
「桜ちゃん。私にも」
美桜ちゃんが頬を突き出したきた。
「や、やだ」
「じゃなきゃ炬燵で寝るもん」
子供か! はぁ・・・。仕方ないな。
──チュ
「はい。よくできました。今年もよろしくね」
美桜ちゃんは気が済んだのか、フラフラと寝室へ向かっていった。
・・・まったく。
さて、くぼちゃんを運びますか。
「よいしょ」
相変わらず軽いな。片手で持てるぐらい軽いぞ。
「新年早々お熱いですね」
「なっ! 起きてたの!?」
びっくりしたぁ。
「はしもとさんが起きた時に起きました」
寝てると思ったのに! 私はくぼちゃんを降ろす。
「み、見た?」
「バッチリと。ボクからもしましょうか?」
「結構です! もう! 自分で寝室行きなよ」
私はしっしっとくぼちゃんを追い払った。
「それでは、おやすみなさい」
「おやすみ」
うーん。なんだか目が覚めちゃったな。
片方けしてから寝ようかな。テーブルの上は散らかったままだし。
また今日から1年が始まる。
今年の夏は、美桜ちゃんと沖縄旅行に行く予定があったり楽しみだ。半年以上先の話なんだけどね。
去年も色々な場所へ行ったけど、今年はもっと行きたいな。
くぼちゃんも連れていってあげよう。
片付けを終え、私も寝室に戻ることにした。
明日・・・というか今日は、10時ぐらいに起きればいいかな。初詣は午後から行くだろうし。
私は2人を起こさないよう、ベッドの中に静かに入る。
・・・あったかいなぁ。
美桜ちゃんとくぼちゃんの温もりを感じる。
これならすぐに眠れそうだ・・・。
「おやすみ」
眠っている美桜ちゃんの頬にキスをして、私は目を閉じた。
「はいできた」
私達は初詣に行く準備をしていた。
美桜ちゃんに振袖を着付けてもらい、ちょうど終わったところ。
「2人ともお似合いですね」
私は赤、美桜ちゃんはピンクの振袖を着ている。
「でしょー? 桜ちゃんもすごく綺麗」
「あ、ありがとう」
ところで・・・。
「なんでくぼちゃんは巫女の格好しているの」
「ダメですか?」
「いや、ダメってわけじゃないけどさ・・・」
可愛いし、似合ってるんだけど・・・。一緒に歩くの少し恥ずかしい。
「いいじゃん。可愛いし」
「おみくじもありますけど引きますか?」
「いや引かないしどっから出てきた」
そんなくぼちゃんは、自分でおみくじを引いていた。
「おー。大吉ですね」
大吉以外入ってなさそう。
「そろそろ行こっか」
「美桜ママ達は夜に帰ってくるの?」
「そうみたい。空港まで迎えに行こうかって言ったんだけど、ご飯作って待っててだってさ」
「そっか」
久しぶりに美桜ママの手料理が食べれるのは楽しみだな。肉じゃがとか食べたい。
「おぉ。人がいっぱいですね」
近所の神社へ到着。元旦とだけあって人が多い。
「くぼちゃん、はぐれないように手繋いでおこうか」
美桜ちゃんはすっかりお姉さんだな。
「桜ちゃんも」
「私は大丈夫だし」
「私が繋ぎたいの」
しょうがない子ね。繋いであげますか。
それにしても、神様は正月忙しいだろうな。こんなにたくさんの人に色々なお願いされるんだから。
その中で一体どれぐらいの願いが叶うのだろうか。
私は神様の存在を信じている。
くぼちゃんみたいに、正体不明な存在がいるぐらいだからね。神様がいてもおかしくない。
「私達も並ぼうか」
うーむ。何をお願いしようかな・・・。
去年は大金持ちになれますようにとふざけてしまったから、今年は真面目なお願いをしよう。神様怒ってないよね?
「くぼちゃんは何お願いするの?」
「ボクは別にしませんよ。強いて願うとするなら、2人がいつまでも幸せでいてくれることですかね」
ほーう。
「たまにはいいこと言うじゃん」
ワシャワシャとくぼちゃんの頭を撫でる。
「桜ちゃんは何にするか決めた?」
「まだ。美桜ちゃんは?」
「私はもう決まってるよ」
美桜ちゃんのことだから、昨日の内に決めていたのだろう。多分私関係のお願いだと思うけど。
「はしもとさん。素直に思ってることでいいと思いますよ」
素直に思っていることね・・・。
私は美桜ちゃんを見る。
その視線に気付いた美桜ちゃんがニコッと笑う。
それを見て、私も自然と笑顔になった。
・・・決めた。
私達の順番になったので、ご神前に進み会釈をする。
お賽銭をして、二礼二拍手したところでお祈りをする。
私が願うのは・・・。
・・・・・・美桜ちゃんといつまでも、一緒に笑顔でいれますように。あ、ついでにくぼちゃんも。
チラッと横を見ると、美桜ちゃんはまだお祈りをしていた。
私は一礼してから列を外れる。
「くぼちゃん。ずっと何を見てたの?」
美桜ちゃんを見た時にくぼちゃんも視界に入ったが、上の方をずっと見つめていた。特に上に何かがあるというわけではなかったと思うけど・・・。
「秘密ですよ」
「出た秘密」
くぼちゃんと出会ってから秘密だらけだが、唯一分かっているのはよく食べることだ。いや、他にもなんかあるか。知らんけど。
「お待たせ! くぼちゃん何か食べよっか!」
「食べましょう」
それからは屋台で焼きそばやら、りんご飴など食べたりして過ごした。
相変わらずくぼちゃんはよく食べる。その小さな体でどんな胃袋しているんだか。
「おみくじも引いたし、そろそろ帰ろうか」
私も美桜ちゃんもおみくじは大吉だった。幸先いいな。
恋愛については、今の関係を大切にとか書いてあった。
「今日のご飯どうする? 何が食べたいか聞かなかったの?」
「あ、聞いてないや。連絡しておくね」
「よろしくー」
「ボクはそろそろ失礼します」
出口に近付いたところでくぼちゃんとはお別れらしい。
「そう? 途中まで一緒じゃなくて大丈夫なの?」
「はい。また会いましょう」
「気をつけてね!」
「さよーならー」
くぼちゃんは鳥居をくぐり、走り去っていった。
・・・今もそうだったけど、帰る時も鳥居の真ん中を普通に歩いてたよな。
まぁ、鳥居のくぐり方なんて知らない人の方が多いだろうけど・・・。
「ねぇ、美桜ちゃん」
「なぁに?」
「鳥居のくぐり方知ってる?」
一応美桜ちゃんに聞いてみる。
「真ん中はなるべく通るなって言うのは知ってるけど、細かいところまでは知らないかな。どうして?」
美桜ちゃんは知ってるのか。
「いや、別に。ちょっと聞いてみただけ」
うーん。考えすぎなのかな。
でも、参拝の時も何もお祈りしないで、何かを見つめていたし、鳥居は真ん中通っていたし・・・。
鳥居の真ん中は神様の通り道と言われている。
実はくぼちゃんは神様だったりして。
・・・いや、ないな。
ちょっと不思議な力が使えて、無限の胃袋を持つ食いしん坊な女の子だ。・・・それだけでもだいぶ変なんだよなぁ。
「くぼちゃんは何者なんだろうな」
もう何年も疑問に思っている。
果たして、正体が判明する日は来るのだろうか? ・・・来なそうだなぁ。
「なんか言った?」
「ううん」
謎が多いけど、悪い子ではないことは確かだ。・・・あんま気にしないでおくか。
「美桜ちゃん。手繋ご」
「桜ちゃんから言うなんて、珍しいこともあるもんだね」
「たまには・・・ね。これからもずっとずっとよろしくね」
「うん! ずっと一緒にいようね!」
これから先、大変なことがあったり、たまに喧嘩したりすることもあるかもしれない。
それでも、最後には一緒に笑顔でいられたらいいな。
そして、大好きな美桜ちゃんと、たくさんの思い出を作っていきたい。
今年も素敵な1年になりますように。
あけましておめでとうございます。
今年も恋の案内人をよろしくお願いします。




