閑話.初めての年越し
※本編とは関連の無い話です。(多分)
もしかしたら、ありえるかもしれない。
大人になったさくらと美桜のお話。
明日、1月1日に更新される話に続く2話構成です。
恋の案内人を読んでいただいている皆様。
数ある作品の中から、この小説を読んでいただき、ありがとうございます。
とても嬉しく思っています。
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を!
「桜ちゃん。年越しはどうする? どっかのカウントダウンイベントでも行く?」
「人混みやだー。家でゆっくりしよ」
年内の仕事も終わり、今年も残すところ今日を入れてあと2日だ。
「じゃあ、家でなんか美味しい物でも食べて、新年を迎えますか」
「そうしますか」
美桜ちゃんと付き合うようになってからは、毎年一緒に年越ししている。
ただ、今年はいつもと違うところがある。
「もうすぐこの家で一緒に暮らし始めて1年経つね」
「そうだね。あっという間だ」
高校の頃からよく泊まっていたが、就職してからすぐに美桜ちゃんの家に引っ越してきた。
今、この家には私と美桜ちゃんの2人で暮らしている。
美桜パパが海外に転勤となり、美桜ママも一緒に海外へ。
美桜ちゃんは既に就職していたこともあり、日本に残った。
それにしても、海外で社長ってすごいな。チートみたいな人だとは思っていたけど・・・。
そんな美桜ちゃんの両親は、年明けてからすぐに日本へ帰ってくるらしい。お姉さんも顔出せそうなら出すみたいだ。
「今年は桜ちゃんと一緒に暮らしてから、初めての年越しだよ」
いつもと違うのがこのことだ。
「そうだね。なんか特別なことやっちゃう?」
「特別なことって例えば?」
そう言われるとすぐには思い付かないな・・・。
「美桜ちゃんの腹踊りとか?」
「絶対に嫌」
即却下されてしまった。
「逆に美桜ちゃんはなんかないの?」
「うーん。人混み嫌って言われたら、出掛けるのも難しいし・・・」
なんか私が悪いみたいじゃないか。
「ちょっと奮発してご馳走を用意するとかは」
「それならちょっと特別感あるかな? ワインとか買っちゃう?」
「いいね。美桜ちゃんは一気飲みね」
「それじゃ雰囲気が台無しになるでしょ」
美桜ちゃんはあまりお酒が強くないし、一気飲みなんかしたらすぐに潰れてしまいそうだ。
「あ。なんかお互いプレゼントを用意するのもいいんじゃないの? ついこの前あげたばっかだけど」
美桜ちゃんの誕生日が24日で私は25日。誕生日兼クリスマスプレゼントを交換しあったばかりだ。
「じゃあさ、家になんか置ける物、それか飾れる物を買えばいいんじゃないかな?」
「なるほど。それなら明日は駅前のモール行きますか」
「そうしよっか」
──翌日
私達は駅前のモールに来ていた。
「年末だから人いっぱいだね。人混みに酔いそうになったらすぐ言うんだよ?」
「うん。でも1人じゃないから多分大丈夫」
もしダメそうならおんぶしてもらおう。
「じゃあ、まずはフォトフレーム買いに行こうか」
昨日、あれから話し合った結果、大きめのフォトフレームを買おうということになった。
今までたくさん写真撮ってきたし、家に2人の写真飾るのもいいかなと。
「桜ちゃんはどんなのがいいとかある?」
「んー。一応考えて、いいかなと思うのはあるんだけど・・・」
「あるんだけど?」
なんか言うの恥ずかしいんだよな。
「その・・・、2人の名前にちなんだデザイン・・・」
「2人の名前? ・・・桜?」
「う、うん」
恥ずかしくなった私はそっぽを向く。
「桜ちゃん可愛い」
「うるさいバカ」
「でもさ、季節的に桜のデザインあるかな?」
あ・・・。それは考えてなかった。
「まぁ、一応探してみよう」
とは言ったものの、やはり季節的に雪のデザインや、冬をイメージしたデザインが多い。
うーん。やっぱりないのかな・・・。
桜のデザインは諦めて、違うのにするかな。
「桜ちゃーん!」
諦めモードに入っていると、美桜ちゃんに呼ばれる。
「どうしたの?」
「桜のデザインあったよ!」
「本当?」
美桜ちゃんがこっちこっちと手招きする。
「あ、本当だ。しかも色々種類あるね」
「うんうん! どれにしようか?」
普通の紙のフォトフレームや、アクリルやガラスなど様々な種類がある。
「桜グラスフレーム・・・」
私の目に止まったのは、アクリルのフォトフレームだ。桜の花びらが華やかに散りばめられている。
「私これがいいかも」
「どれどれー?」
美桜ちゃんが私の隣から覗き込む。
「いいじゃん! 可愛いね! これにしよっか」
「うん!」
可愛いのが見つかって良かった。
「お買い上げありがとうございます。こちらのフォトフレームをお買い上げのお客様には、ミニフォトフレームも付けさせていだたいております」
店員さんがどちらにしますかと、ミニフォトフレームのサンプルの写真を見せてきた。
片方は紫陽花がメインのフォトフレーム。紫や緑の色がベースになっている。
もう片方は桜と薔薇のフォトフレームだ。
「こちらはプリザーブドフラワーを使用しています」
「どうしよっか?」
一応美桜ちゃんに聞いてみる。
「じゃあさ、せーので指差そ」
「いいよ。じゃあ・・・せーの!」
私は桜と薔薇のフォトフレームを指差す。
予想はしていたが、美桜ちゃんも同じ物を指差していた。
「だよね」
そう言って2人で笑う。
「では用意しますので、少々お待ちください」
「せーのってやる意味なかったね」
「そうだね。美桜ちゃんが紫陽花選んでたら、もう別れてたかも」
まぁ、嘘だし別れないけど。
「えー!? それはひどいよー」
「でも、桜の方選ぶの分かってたし」
「まぁね」
「お待たせしました。ラッピングはどうしますか?」
店員さんが戻ってきた。せっかくならしてもらおうかな。
「お願いします」
「かしこまりました」
ラッピングも大切に残しておこう。
「ねぇねぇ、どの写真飾る?」
「小さい方はクリスマスに撮ったやつでいいんじゃない?」
「そうだね。じゃあ大きい方は付き合った時に撮ったやつにする?」
「べ、別にそれでいいけど」
あの写真か・・・。
美桜ちゃんがどうしても記念に残ることしたいって言った時に撮った写真。
その写真というのは、2人でウェディングドレスを着た写真だ。
別にそれでもいいんだけどさ・・・。
「なぁに? あの写真が一番いいでしょ?」
私がどう思ってるか分かっててわざわざ聞いてくる。
「そう・・・だけど」
「お待たせしました。こちら商品です。お気をつけてお持ち帰りください。ありがとうございました」
ちょうどラッピングが終わり、商品を受け取る。
「ほ、ほら行くよ!」
「待ってよ桜ちゃーん!」
フォトフレームを買い終えた私達は、食品売り場へと移動していた。
「何買おっか? やっぱ肉?」
「肉でもいいけど、何作るの?」
ステーキとかでもいいけど、寒いから鍋とかがいいよね。
となると・・・。
「すき焼きかね」
「いいね。すき焼き」
「すき焼き用の肉で一番高いの買っちゃお」
今年も1年お疲れ様ということで、たまにはいいよね。
「クリスマスにいいお肉食べたばっかだけどね」
全然たまにはじゃなかった。
「いいのいいのー。霜降り和牛あるから、これにしよ」
あとは適当に野菜を買ってと。
「お寿司も買っちゃおっか」
「いくらだけ入ってるのはないと思うよー?」
「普通のでいい」
いくら大好きだけど、他のネタも普通に食べるし。
「あとワインでしょ。スパークリングワインがいいなぁ」
「一気飲みはしないからね」
「えー」
一気飲みしたらどうなるのかは少し気になる。
潰れるのは間違いないとは思うけど、変わったりするのかな? でも、救急車呼ぶことになったりしたら怖いから、やっぱり一気飲みはやめておこう。お酒は美味しく飲むのが一番。
買い物を済ませ、家へ帰っている最中、突然後ろから声を掛けられた。
「はしもとさん」
振り向くと、そこにはくぼちゃんがいた。
「おぉ、くぼちゃん」
「久しぶりだねー」
「さとうさんもこんばんは」
あることをきっかけに、美桜ちゃんもくぼちゃんと知り合いになった。
そのあることとは、まぁ・・・私達が付き合うことになったっていうことだけど。
くぼちゃんがいなければ、美桜ちゃんと仲良くなることもなかったし、付き合うこともなかった。
それまでの経緯は長いので、ここでは割愛する。
「あんたその格好で寒くないの?」
くぼちゃんはいつも通りのワンピースを着ている。
「大丈夫です」
「ならいいんだけどさ。それで今日はどうしたの?」
「何やらご馳走を食べると言っていましたので」
どこから聞いたんだその情報は。・・・私か。
「だってさ、美桜ちゃん」
「くぼちゃんも一緒にご飯食べる?」
美桜ちゃんはくぼちゃんに甘々なので、私がどうこう言っても無駄なのだ。
「食べましょー!」
「言っとくけど、全部くぼちゃんのじゃないんだから、少しは遠慮してよね」
「分かりました」
本当に分かっているのかしら。
結局、くぼちゃんも私達の家に来ることになった。
「ただいまー」
「早くご飯食べましょう!」
まあまあ、そう慌てるでない。ご飯は逃げないよ。
「まずは手洗いうがいをしてください」
「私がご飯の準備するから、桜ちゃんはくぼちゃんと遊んでてよ」
えー。
「あ、とりあえずフォトフレームに写真入れとくね」
「はーい」
私はラッピングを綺麗に剥がし、フォトフレームを取り出す。
「何か飾るんですか?」
くぼちゃんがフォトフレームを見ながら聞いてくる。
「うん。写真をね」
私はアルバムからクリスマスに撮った写真と、ウェディングドレスの写真を取り出す。
「これは2人が付き合ったばかりの頃の写真ですね」
「うん。あー、ありがとね」
「何がでしょうか」
「くぼちゃんのおかげで今があるからさ」
結構感謝してる。くぼちゃんには高校の頃から色々お世話になったし。
「ボクは案内人ですからね」
「そうだね。この時、くぼちゃんも一緒にいれば良かったね」
「・・・ふむふむ」
くぼちゃんが何か考えている。
「ちょっと写真を貸してもらえますか」
「いいけど」
私はウェディングドレスの写真をくぼちゃんに渡した。
「はしもとさん。ちょっと後ろ向いててください」
「え? あー、うん」
なんでまた急に。私は言われるがままに後ろを向いたが──。
「もういいですよ」
え? もういいの?
ほんの数秒で前を向いていいと言われる。後ろ向く意味あった?
「どうぞ」
くぼちゃんが写真を返してきたので、私はそれを受け取る。
なんだったのだろうか。
変なのと思いながら、写真を見ると──。
「・・・え?」
私と美桜ちゃんの間に、ブーケを持ってウェディングドレスを着たくぼちゃんが写っていた。
「えぇぇぇぇ!?」
「何!? どうしたの!?」
慌てて美桜ちゃんがこっちに飛んでくる。
「しゃ、しゃし!」
私は驚きながら、美桜ちゃんと写真を交互に見る。
「写真がどうかしたの?」
美桜ちゃんに写真を渡す。
「うーん・・・? あれ!? くぼちゃんがいる!」
「あんたこれどうやってやったの!?」
「ふふふ、それは秘密ですよ」
だから後ろ向かせたのか。
「くぼちゃんのウェディングドレス姿可愛いね」
確かに可愛いけど、美桜ちゃん受け入れるの早くない? 相変わらず謎が多いなくぼちゃんは。
「これではしもとさんのお望み通りになりましたね」
「そうだけどさ」
「なんか私達の子供みたいだね」
よくもまぁ恥ずかしげもなく・・・。
とりあえず、フォトフレームに写真を入れて飾る。
・・・うん。いい感じだ。
小さいフォトフレームも隣に飾った。
「なかなかいいですね」
「そうだね。あ、くぼちゃん今日泊まってく?」
「泊まっていきましょう」
くぼちゃんと知り合って随分経つけど、未だにどこに住んでいるのか分からない。何度聞いても教えてくれないんだよね・・・。
「ちなみに明日の昼間、初詣行くけどどうする?」
「屋台は出ていますかね」
「あんたは食べることしか考えてないのか。出てると思うけど」
「じゃあ行きましょう。せっかくなので振袖で行きますかね」
あれか。ぱぁーってやるやつ。どうやって変身してるんだろう。
「桜ちゃん。私達も振袖で行こうよ」
「えー。美桜ちゃんが着付けてくれるならいいけど」
「いいよ。あとで出しとかなきゃね」
「さとうさん、ご飯はまだでしょうか」
くぼちゃんはさっきから、お腹をグーグー鳴らしている。どうしたらそんなに大きな音が出るんだ。
「もう少し待っててね」
どうやら今年の年越しは賑やかになりそうだ。
私は飾ったフォトフレームを見る。
照れてる私を笑顔で見つめる美桜ちゃん。
そこに新たにくぼちゃんも加わった。
うん。・・・いい写真だな。
今年も色々とありがとう。
来年も仲良しでいようね。
つづく




