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恋の案内人  作者: 翁
出会い
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4.入部届け

「失礼しまーす」


 翌日の放課後、入部届けを出しに職員室へ来た。

 ひかりも一緒に行くぞーとついてきたはずなのに、気付いたらいなくなっていた。なんなんだアイツは。


 入学してから職員室に来たのは初めてだ。と言っても用がなければそうそう立ち寄る場所でもないんだけど。


「桜木先生いらっしゃいますか?」


 近くにいた先生に声を掛け、いるかなーと職員室を見渡してみる。


「職員室にはいなさそうだね。準備室の方にいるかもしれないから行ってみて」


 声を掛けた先生にそう言われ、職員室をあとにする。


 職員室からちょっと離れた場所に準備室はあるらしい。

 準備室ってなんだ? 英語の授業を準備する為の教室なのかな。


 しばらく歩くと準備室と書かれた教室が見えてくる。

 教室の前に立ち、ドアをノックをすると中からはーいと返事があったので準備室へ入る。


「失礼しまーす」


 あ、部室の時と同じのいい匂いがする。

 この匂いなんだろ? 香水とは違った匂いみたいだけど。


「あら、橋本さん? だったかしら」


「はい。あの、ソフトテニス部に入部しようと思って、入部届けを出しにきました」


 そう伝え、先生に入部届けを渡す。


「そう。これからよろしくね。毎回顔出すってわけじゃないけど、なるべく見に行くようにするから」


「はい。よろしくお願いします」


 やっぱり授業の準備やらなんやらで忙しいのかな。3年の担任って言ってたし。

 そんなことを考えながらボーッと立っていると


「とりあえず座ったら? お茶出してあげるわ」


「あ、はい」


 特に用事ないんだけどなぁと思いつつ、ソファーに腰掛ける。

 準備室って言うぐらいだから、ごちゃごちゃしてるのかと思いきや、整理整頓もされていて綺麗だった。


「紅茶でいいかしら?」


「はい」


 なんか気まずいというか、緊張するというか。

 すぐ飲んで帰らせてもらおう。


 茶葉のいい香りが部屋を包む。

 先生は鼻歌を歌いながら、紅茶を淹れている。なんだっけこの曲。


「どうぞ。熱いから火傷しないよう気をつけてね。良かったら砂糖も使っていいわよ」


「ありがとうございます。いただきます」


 桜木先生も私の正面へと腰掛ける。

 何話せばいいかなーと考えていると


「ソフトテニスは中学でもやっていたのかしら?」


「いえ、中学では陸上部でした」


「そうなのね。なんでまたソフトテニス部に入ろうと思ったの?」


 んー、どう答えればいいのかな?

 なんとなく・・・じゃダメだよね?


「球技系の部活をやってみようかなぁと思ってたので」


 当たり障りのない回答をする。


「そう。新しい事に挑戦することはいいことよ。ソフトテニス部はそんな厳しい部活ではないから、気軽に楽しめばいいと思うわ」


「はい」


 紅茶に口をつける。

 あちち。猫舌だから急いで飲めない。

 これは飲み終わるのに時間かかりそうだ。


 お互い無言の時間が続き、なんだか居心地が悪くなってくる。

 先生はとチラっと見てみるが、そんな様子はなさそうだ。


 ・・・気まずい。


 紅茶に視線を落としていると、先生が急にソファーから立ち上がり前屈みになる。


「あら。髪の毛にゴミついてるわよ」


 そう言われて顔をあげると、先生の顔が目の前にあった。

 同時にフワッと花のような香りが、鼻腔を擽る。


「あっ」


 顔が近すぎて思わず声が出る。


「はい。取れたわよ」


「あ、ああありがとうございます」


 びっくりして吃ってしまった。

 急に近付いてきた先生の顔をまじまじと見てしまった。

 唇がとても綺麗で柔らかそうで、今にもプルンと音を立てそうだった。そしてとてもいい匂いがする。

 髪についたゴミを取ってもらっただけなのに、なぜか心臓がドキドキしていた。

 急に顔が近づいてきたから? 唇が柔らかそうだったから?


 ・・・何を考えてるんだ私は。

 恥ずかしくなり俯いていると


「紅茶のおかわりいる?」


 中身が少なくなったカップに気付いたのか、先生がおかわりを聞いてきた。


「も、もう大丈夫です。そ、そろそろ帰ろうかなー。アハハ」


「そう? じゃあ明日から頑張ってね。気をつけて帰るのよ」


「は、はい。失礼します」


 ペコペコとお辞儀を何回かして、慌てて準備室を出る。



 学校からの帰り道。

 私はまだドキドキしていた。

 あれからしばらく経ったはずなのに一体どうしたんだろ。

 まぁ、先生綺麗だしいい匂いするし、多分その場の空気みたいなのが私をおかしくしたのかな?

 おかしかったかどうかもよく分からないけど。


 ・・・うーん。


 これが男性の先生ならまだ説明がつくけど女性だからなぁ。

 顔が目の前に来たとき唇が綺麗って思ったけど、それとは別に胸の谷間も見えてドギマギしていた。

 初めて会ったときも思ったけど、どうしたらあんなに大きくなるんだろ。

 自分のない胸を見下ろし、溜息をつく。

 胸が大きくなると言われている、食べ物とか飲み物を摂取すれば自分の胸も大きくなるのかな。あ、あとはマッサージとか?

 なんか揉めば大きくなるって聞いたことがある。

 でも、自分で揉むのはちょっとなぁ・・・。

 先生は自分でマッサージしてるのかな? それとも彼氏とか? というか彼氏いるのかな? いたらどんな風に・・・。


 いやいやいやいや!

 恥ずかしくなったきたから想像するのはやめよう。

 たまに、頭のネジが外れて変なことを考えてしまう。


 そんなこんなで私帰宅。


「ただいまー」


 はぁ・・・、なんかどっと疲れた。

 もう一度自分の胸を見る。

 ・・・今日はお風呂上がりに豆乳を飲もうかな。

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