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恋の案内人  作者: 翁
出会い
59/255

45.地区予選前夜

 地区予選前最後の練習を終え、私は部室で着替えていた。


「みんなちょっといい? 着替えながらでいいから、聞いてもらえるかしら」


 桜木先生から話があるようだ。


「いよいよ明日、地区予選ね。今日までみんな一生懸命練習してきたはずよ。勝っても負けても、悔いの残らないように全力を出し切ってほしいと思っているわ」


 私含め部員は着替えを中断して、桜木先生の言葉に耳を傾ける。


「特に3年生。個人戦は泣いても笑っても最後の大会になるわ。目一杯楽しんで」


「はい!!!」


「それと来月の団体戦のレギュラーメンバーは、個人戦の結果を踏まえて決めるからそのつもりでいるように。部長。あなたからも一言お願いするわ」


 美桜ちゃんが先生の隣に立つ。


「まずは・・・。私のわがままで、一部の1年生の面倒を見させてもらったことに感謝しています。本当にありがとう。そして、練習についてきてくれた、桜ちゃん、花恋ちゃん、二階堂さん。本当に頑張ったね。明日は練習の成果を出し切るだけだよ! 頑張ろうね! みんなも明日は頑張ろう!!!」


「おー!!!」


 なんか美桜ちゃんかっこいいな。すごい部長してる。


「ありがとう。シード枠の2人。あなた達には期待しているわ。県大会・・・いえ、全国目指して頑張ってね」


「はい!!」


「お話はこれでおしまい。明日は現地集合よ。遅刻厳禁だから、夜更かししないでちゃんと寝るように。じゃあ、お疲れ様」


「お疲れ様でした!!!」



 いよいよ明日か・・・。

 私はラケットを取り出し、眺める。


「桜ちゃん。明日は私のラケットで試合するの?」


「うん。少し前に貸してもらってからもう慣れたし、これで出たい」


「そっか。使ってくれて嬉しいな。ありがとう」


 私は少し前から、美桜ちゃんの前衛用のラケットを使って練習していた。


「ううん。私がこのラケットで試合に出たかったし」


 美桜ちゃんのラケットよ。明日は頼むぞ。


「じゃあ帰ろっか」


「うん」


 美桜ちゃんの家へ向かってる最中、明日必要なゼッケンを、家に置いてきてしまったことに気付く。


「美桜ちゃん。先に帰っててくれない? 家にゼッケン忘れたから取りに行ってくる」


「それは取りに行かなきゃまずいね。荷物貸して。持っててあげるから」


「いや、それは悪いしいいよ」


「いいのいいの。ほら貸して」


 強制的に荷物を奪われてしまう。


「じゃあ、お願いします。家着く頃また連絡するね」


「はいはーい! またあとでね」


 私は一旦、ゼッケンを取りに自分の家へ向かう。

 こんなことなら、家出る時にちゃんと確認すれば良かったなぁ。

 でも、気付いて良かった。明日忘れて出場できませんじゃシャレにならないしな。

 それから10分程で家に着く。

 机の上に置いてあったゼッケンを回収。念の為、他に忘れ物がないか確認しておくことにした。

 ・・・他は大丈夫そうだな。

 私は家を出て、美桜ちゃんの家へと急いだ。


 美桜ちゃんの家向かう途中、後ろを歩く人が同じ歩調で歩いてることが気になり、チラッと振り向く。


「やっと振り向いてくれましたか」


 私の後ろを歩いていたのはくぼちゃんだった。


「普通に声掛ければいいじゃないの」


 小さい女の子にストーカーされてるって不自然すぎるでしょ。


「気付くまで待ってみました」


「いつからつけてたの」


「はしもとさんが家を出てからです」


 随分と最初の方じゃないか。


「今度からは普通に声掛けるように」


「・・・分かりました」


 なんだ今の間は。


「それでどうしたの」


「いよいよ明日ですね。トーナメントはいいブロックに入ったみたいで」


「そんなことまで知ってるのね」


 知らないことないんじゃないの。


「今日まで頑張って練習してきたんです。きっと明日はいい結果がでるでしょう」


「とりあえずは優勝目指して頑張るよ」


「ボクも明日見に行きますので」


「え? 見に来るの?」


「はい。はしもとさんに声掛けたりはしないのでご安心を」


 それなら別にいいけど。


「では、頑張ってください。さよーならー」


 そう言ってくぼちゃんは、いつものように走り去っていった。

 今日は応援しに来てくれたかな。

 見に来るなら良いとこ見せてやるかー。


「さてと。美桜ちゃんも待ってるだろうし、急ぎますか」



 美桜ちゃんの家に着くと、既に夕食が用意されていた。  


「明日はパパもママも応援に行くからな! 試合会場まで車で行こう」


「お弁当作るわね」


 美桜パパには結果で恩を返さなきゃ。


「ありがとうございます。美桜ちゃん、美桜パパのおかげで上手くなれました。それに美桜ママのお弁当もあれば、もう無敵になれそうです」


「あら。嬉しいわね。お弁当張り切って作るわ」


「さくらちゃんの成長は著しかったからな。期待してるぞ」


「はい! 頑張ります!」


 いい結果を残せるよう、全力を出し切ろう!


「頑張ろうね桜ちゃん!」


「うん!」



 寝る準備を済ました私達はベッドに横になっていた。


「桜ちゃん」


「ん?」


「緊張してる?」


 緊張か・・・。してないけど、してることにしとくか。


「まぁ、少しだけ?」


「じゃあ、緊張ほぐしてあげようか」


「どうやって?」


「おいで」


 美桜ちゃんはそう言うと、腕を広げた。


「えぇー。美桜ちゃんがギューってしたいだけじゃないのー?」


「ち、違うし! 緊張和らげばいいなって」


 ふーん。しょうがないから抱きしめられてあげるか。


「じゃあそのまま寝る」


「電気消す?」


「うん」


 ・・・美桜ちゃんの胸の鼓動が聞こえる。なんか落ち着くな。


「少しは落ち着いた?」


「おっぱい柔らかくて落ち着く」


「ば、ばか!」


「嘘。落ち着く」


 これならぐっすり眠れそうだ。


「明日、優勝しようね」


「もう目標が優勝になったんだね」


「桜ちゃんとなら優勝できそうだからさ」


 そう言ってくれるのは嬉しい。


「私の大活躍で美桜ちゃんの出番ないかもよ」


「全然いいよ。いっぱいポイント決めちゃって」


「任せなさい。・・・ふぁー」


 もう寝てしまいそうだ。


「いいよ。このまま寝ても」


「・・・うん。美桜ちゃん」


「なぁに」


「おやすみ」


「うん。おやすみ」


 明日、全力を出せますように。

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