44.決起会
月曜日のミーティングで地区予選のトーナメント表が配布された。
出場ペアは全部で158ペア。美桜ちゃんの予想通り、150ペアを超えていた。
ペア数が多いこともあり、18時までに全ての試合が終わらない場合は、翌日に残りの試合を行うらしい。
私と美桜ちゃんのペアは1回戦シード。2回戦で勝利すれば県大会に出場となる。こちらも美桜ちゃんの予想した通りだった。
「橋本さん。1回勝てば県大会だけど、気を抜かないように頑張るのよ。応援してるわ」
桜木先生から激励の言葉をいただく。
トーナメント戦は一発勝負。先生の言う通り、気を抜かないようにしなきゃ。
今日は水曜日で部活が定休日となっている。
私、美桜ちゃん、花恋ちゃんの3人は、咲蘭ちゃんの家に来ていた。
「咲蘭ちゃん。練習するんじゃないの?」
テニスコートではなく、家の方へ案内される。
「練習もしますわよ」
まずはお茶でもするのかしら。お上品にしなくてはいけませんわね。
「桜ちゃん桜ちゃん。二階堂さんの家すごいね」
「そうだね」
こんなに家が大きいと、使用してない部屋がいくつもありそうだ。どれか私の部屋にしてくれないかなぁ。
何回か来ているものの、この家の大きさに未だに慣れずにキョロキョロしてしまう。
荷物をメイドに預け、咲蘭ちゃんに大広間へと案内される。
「地区予選も近くなりましたし、決起会をやろうと思いますわ!」
なるほど。それで美桜ちゃん達も呼んだと言うわけか。
席に着くと、高そうなティーカップに紅茶が注がれる。紅茶はあまり詳しくないけど、きっと茶葉も高級なんだろうな。
紅茶の他に、クッキーやケーキなども用意されていた。
「では」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
え? 何か言うんじゃないの?
「花恋さん。何を言えばいいんですの?」
「何も考えてなかったの? とりあえず、頑張ろーとかでいいんじゃないかな?」
間違ってはいないと思うけど、それでいいのかな・・・。
「そうなんですわね。では、地区予選頑張りましょう」
そうして、ティーカップを掲げる。
「お、おー!」
美桜ちゃんはこれでいいかな? みたいな感じで私を見てくる。
なんか思ってた決起会と違うけど、気にしないでおこう。
「なんだか決起会っていうより、ただのお茶会だね」
花恋ちゃん! 私は気にしないようにしていたのに!
「そうなんですの!?」
気付いていなかったのは咲蘭ちゃんだけのようだ。
決起会ならぬお茶会が終わったあと、練習をするためにコートへ移動。
「地区予選前の部活も、明日と明後日だけかー」
「やれることはやってきたんだし、あとは調整ぐらいの気持ちでいればいいと思うよ」
それもそうか。追い込みかけて試合前に怪我なんかしたら最悪だし、今までの努力が水の泡となる。
「美桜ちゃんはさ、実際どれぐらいまで勝ち進めると思う?」
美桜ちゃんが言うには、私達のブロックはそこまで強いブロックではないらしい。
「うーん。ぶっちゃけ優勝狙ってるよ」
美桜ちゃんがそんな強気に出るとは・・・。
「私もできることなら優勝したいとは思うけど・・・」
「けど?」
「私が足引っ張らないか少し不安」
上達はしているはずだ。しかし、不安がない訳ではない。
「桜ちゃん。いっぱい練習してすごく上手くなってるんだから、もっと自信持って! 私達は最強のペアなんだから!」
「そう・・・だよね。自信持たないとダメだよね。優勝目指して頑張る!」
「うん! その意気だよ!」
「盛り上がっているところ申し訳ないですが、わたくし達を忘れられては困りますわ」
咲蘭ちゃんが会話に割って入ってくる。
「そうだね! 私達も頑張ってきたもんね!」
そんな花恋ちゃんペアは、1回戦勝ったとしても2回戦では第1シードと当たってしまう。
その第1シードのペアは、去年のインターハイには出場できなかったものの、県大会ベスト16のペアだ。
「誰と当たろうと倒すまでですわ。さくらさん達は反対の山でしたわよね。決勝で待ってますわ!」
すごい自信だな。私にもあれぐらいの自信が常に持てればいいのに。
「二階堂さんのあのスマッシュがあればきっと大丈夫だよ。お互い頑張ろうね!」
咲蘭ちゃんには、美桜ちゃんも苦しめた強力なスマッシュがある。あれを攻略するのは至難の業だろう。
「私達も負けてられないね! 桜ちゃん!」
「そうだね! 優勝目指して頑張ろ!」
「じゃあ、練習始めよっか!」
私達は気合十分に練習を始めた。
地区予選まで、残り3日。




