43.橋本さくらの誓い
地区予選前最後の日曜日。この日の部活は練習試合を中心に行った。
8試合の内、私と美桜ちゃんのペアは見事全ての試合で勝利を収める。
その中で唯一、苦戦したペアが花恋ちゃんと咲蘭ちゃんのペア。ファイナルゲームまでもつれ込む大熱戦だった。
咲蘭ちゃんは、自分の家のコートで毎日練習していることもあり、更に上手くなっていた。
特に、咲蘭ちゃんの武器であるスマッシュは、手をつけられない程になっている。そのスマッシュを封じた私達の方が一枚、いや二枚程上手だった。
「地区予選で当たったら絶対負けませんわ! それまであなた達も負けることは許しませんわ」
花恋ちゃん達のペアも、もしかしたらもしかするかもしれない。
「いやー、危なかったね。ロブを上げるとスマッシュ絶対狙ってくるし大変だったよ」
美桜ちゃんが展開を変えようとロブを上げると、咲蘭ちゃんはすかさずスマッシュを狙いにきていた。
「深くロブを上げてもジャンピングスマッシュ打ってくるし、あれはやっかいだね」
確かにやっかいだった。私もスマッシュを当てられるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
しかし、そこはさすがの美桜ちゃんの対応力で、ロブをあまり使わない戦い方にすぐさまシフトチェンジしていた。
「それにしても・・・花恋ちゃんはパワーこそないものの、めっちゃボールに食らいつくね」
「そうだね。花恋ちゃんが繋いで繋いで繋ぎまくる。そして二階堂さんがスマッシュを決める。いい戦略だと思うよ。パパもべた褒めしてたし」
二階堂さんのスマッシュは確かに脅威だったが、その分ボレーでのミスも多い。
以前と比べて減ってはいるものの、まだ大振りすることが多いので、アウトになったり空振りしたりしてポイントを失っている。ボレーまで完璧になったら、とんでもない選手になりそうだ。
ともあれ、地区予選前に全勝できたのはかなり大きい。
自信にもなったし、試合数をこなすことによって、試合慣れすることもできた。
「トーナメント表って明日?」
「うん。先生が明日には分かるって。多分、ミーティングの時に配られるんじゃないかな」
少し緊張するな。強い所と当たらなきゃいいけど。
「シードとかってあるの?」
「今年はやり方が変わるみたいだし、どうなんだろうね?」
去年まで、横浜の地区予選は3つに分かれていたらしい。それが今年はまとめられたという形だ。
「最低でも3回勝たなきゃいけないんだよね・・・?」
「先生はそう言ってたけど、もしかしたら2回、最低でも1回で大丈夫かもしれないよ」
え? そうなの?
「もし例年通りシードがある場合、去年私は県大会に行ったから、うちの高校で1ペアはシードの枠に入ると思うんだ。多分ね。もしそうだとしたら、先生は私達をシードのペアにすると思う。だから今言った通りになるなら、去年の地区予選1位と初戦で当たるとかはまずないよ」
「シードなら1回少なくなるのか!」
「うん。横浜市はペア数多いし、まとめてやるなら150ペアは超えるんじゃないかな? そこから64ペアぐらいが、県大会に行くことになると思うよ」
それなら県大会行けるかもしれないな。
「つまり、シードだったら1回勝てばいいってことになるんだね」
「そうなるね」
シードがあるかどうかは、明日にならないと分からない。まだ落ち着けないな・・・。
まぁ、どんなトーナメント表だろうと、勝ち続ければいいだけ。
私は結構というかかなり負けず嫌いだし、狙えるなら優勝したい。
「県大会は、よっぽどのことがない限り行けると思うし、自信持ってプレーしようね」
「そうだね。県大会はやっぱりレベル高いの?」
「強い高校はすごい強いね。私は去年の県大会の優勝校と、2回戦で当たってストレートで負けちゃった。でも、それからはだいぶ上手くなったはずだし、県大会でも上位目指したいな」
あの美桜ちゃんがストレート負けだなんて・・・。
「全国は何ペア行けるの?」
「神奈川は8ペアだね。ペア数によるけど、4回は勝たないといけないかな」
県大会に行けたとしても、地区予選で上位の順位でなければ、すぐに強豪と当たる可能性があるよね。
「とりあえずは県大会目指して頑張る」
「そうだね。今の桜ちゃんなら大丈夫! 後ろは私に任せて、桜ちゃんはポイントをバンバン決めちゃって!」
そう言ってくれるのは心強い。
「うん。地区予選まで残り少ないけど追い込みかける!」
「・・・やっぱり、桜ちゃんとペア組めて良かった。本当にありがとうね」
お礼を言いたいのはこっちだ。美桜ちゃんと美桜パパのおかげでここまで来れたんだから。
「こちらこそ。組んでくれてありがとう」
「うん! じゃあ、帰ろっか! 今日のご飯なんだろね?」
美桜ちゃんとペアを組みたいって言って本当に良かった。
そして何より、私とペアを組んでくれてありがとう。絶対に結果で恩返しするからね。
私はそう心に誓った。




