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恋の案内人  作者: 翁
出会い
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49/255

37.自然教室 3日目

 昨日は歩き疲れたこともあってか、ベッドに入ってからすぐに寝てしまった。

 ちなみに夕食は、願いが通じたのかすき焼き懐石だった。


 3日目となる自然教室は、今日で最終日となる。

 10時にホテルを出て駅へ移動。そこからはグループで自由行動だ。

 花恋ちゃんからはどこに行くのか聞いてないが、まあ大丈夫だろう。お土産をちゃんと選べるならどこでもいいや。

 15時に帰りの新幹線に乗ることになっている。地元に着くのは17時過ぎになりそうだ。

 私は真っ直ぐ家には帰らず、美桜ちゃんにお土産を渡しに行く予定。

 次の日に部活で渡せるんだけど、美桜ちゃんは私に会いたくてしょうがないだろうからね。

 本当は家に泊まりたいけど、さすがにその日は帰らないと母親に怒られる。明日は泊まろうっと。久しぶりにあのベッドで寝れる。

 そんなことを考えながらホテルを出る準備をしていると、花恋ちゃんが慌てながら部屋に入ってきた。


「さくらちゃん! もう10時になるよ!」


 どうやらのんびりと準備しすぎたようだ。急いで部屋を出た。



 駅に到着してから改めて集合時間についての説明があった。遅れた人は置いていくらしい。


「二階堂さん。集合時間ギリギリになってから、勝手な行動しないでね」


 置いていかれるのだけはごめんだ。


「それなら大丈夫ですわ! 宮下の車に乗れば問題ありませんわ!」


「ダメだよ咲蘭ちゃん。新幹線代も親が払ってるんだから」


 確かにそうだ。


「あら、そうなんですの? それなら新幹線に乗った方がいいですわね」


 納得してもらえたようだ。


「花恋ちゃん。最初はどこ行くの?」


「白糸の滝行くよ」


「え?」


 私の聞き間違いかな? 今白糸の滝って聞こえたような・・・。

 確かにいい場所だったけど、2日連続で行くの? 嘘でしょ?


「嘘だよ」


 なんだよ嘘かよ。花恋ちゃんも冗談言うんだな。


「じゃあ白糸の滝行こっか!」


 私は少し意地悪をしてみた。


「私も行きますわー!」


「さ、さくらちゃん! 咲蘭ちゃんも! 嘘だから!」


「ちょっとからかっただけ。それでどこ行くの?」


「もう!!!」


 花恋ちゃんが最初に嘘ついたんでしょ・・・。


「チョコレートのお店に行こうと思ってるよ。工場も兼ねてるらしくて面白そうだなって」


 自然教室関係ないような。チョコレート好きだから行きたいけどさ。


「お土産にも良さそうだね。美桜ちゃんに買ってこうかな」


「出来たての商品とかあるみたいだよ」


 それは美味しそうだ。


「チョコレート食べに行きますの?」


「そうだよ。咲蘭ちゃんもチョコ好きでしょ」


「好きですわー!」


 最初に行くのはそのチョコレートのお店で決まりだな。



 駅から歩くこと15分。チョコレートのお店に到着。

 店内に入るとチョコレートのいい香りが漂っていた。


「わー! 可愛い!」


 女性にとても人気がありそうな店だな。

 味はもちろんのこと、包装など見た目もとても可愛らしい。

 さらにイートインでは、ソフトクリームが食べられるらしい。

 チョコレートのお店のチョコソフトクリームとか、絶対美味しいに決まってる。是非ともいただきたい。


「花恋ちゃん。イートインでソフトクリーム食べれるらしいから、チョコ買ったら食べようよ」


「食べるー!」


 店内を見て回ると、ガラス越しにチョコレートを製造している様子も見れた。

 こういった製造過程を見れる店は、あまり見掛けないからおもしろいな。

 ところで、二階堂さんが一旦店を出てから、戻ってこないけどどうしたんだろ。そのうち戻ってくるだろうし、まぁいっか。


 さてさて、美桜ちゃんにはどのチョコレート買ってあげようかなぁ。

 この店で人気なのは、小さなボールみたいなチョコレートらしい。

 色々な味が入ってるやつにしようかな。その方が楽しめるよね。

 その人気商品を美桜ちゃんに買っていくことにした。


「二階堂さん全然来ないけどどうする?」


「どこ行っちゃったんだろうね? 電話も繋がらないし」


 私達はイートインスペースで二階堂さんを待っていた。


「とりあえず先にソフトクリーム食べちゃお」


「そうだね。さくらちゃんはどれにするの?」


「チョコレートかな」


 きっと濃厚で美味しいはず。


「私はチョコバニラにしようかな」


「わたくしはチョコとバニラ両方ですわ」


 いつの間に戻ってきたんだ。


「どこ行ってたの?」


「宮下に電話して、チョコレート全種類3個ずつ買わせてましたわ」


 宮下さん、めっちゃこき使われてる・・・。しかも全種類って。


「商品全部買い占めてなくて安心したよ」


「あら。買えますけどさすがにそこまでしませんわ」


 買えるんかい!


「咲蘭ちゃん、お腹壊すからソフトクリームはどっちか1つにしときなよ」


「分かりましたわ」


 チョコレート味のソフトクリームは、予想通りとても濃厚で美味しかった。

 甘さもちょうど良かった。お風呂上がりに食べたら格別に美味しいだろうな。

 ソフトクリームを食べ終え、次の場所へ移動することに。


「次はどこに行くの?」


「お土産をゆっくり選びたいから、旧軽井沢銀座通りかな! お昼もどこか入って食べよ」


 おやきとキーホルダーは、そこで買うことになりそうだ。家には適当に漬物とかでいいや。



 GWということもあり、旧軽井沢銀座通りはとても賑わっていた。

 多くの人が行き交うメインストリートは、緩やかな上り坂となっている。


「人多いね」


「GWだし、普段よりも多いかもね」


 どっかに入ってお昼を食べるのもいいけど、ゆっくり食べ歩きするのも悪くなさそうだ。


「お昼どうしよっか?」


「食べ歩きとかでもいいんじゃない?」


「それもいいね! そうしよっか!」


 ということで、食べ歩きしながら見て回ることにした。

 老舗の甘味処や美味しそうなパン屋など色々な店がある。

 二階堂さんはあれもこれもいいですわーと興奮気味のご様子。またたくさん買いそうだなぁ・・・。

 私はおやきが売られている店を中心に見て回る。

 今見ている漬物のお店では、野沢菜のおやきが人気。そのおやきは店内でも食べられるらしい。

 ちょっと食べてみようかな。それで美味しかったらお土産に買って帰ろう。

 私は野沢菜のおやきを注文した。


「熱いから気を付けてね」


 店員から手渡されたおやきは確かに熱そう。

 一緒にどうぞと、お茶ももらうことができた。

 おやきを半分に割ると、中には野沢菜がたっぷり詰まっている。熱いうちにいただくことにした。

 さすが漬物屋ということもあり、野沢菜もとても美味しい。味噌との相性も抜群だ。

 おやきはこれでいいか。もう一種類あるし、両方買っていこう。

 とりあえず、美桜ちゃんの家族分買うことにした。

 ・・・あ、くぼちゃんのお土産。忘れるところだった。

 野沢菜のおやきをもう1つ買っておくか。

 あとは、私用に買ったチョコを分けてあげればいいや。


 そのあとも、花恋ちゃん達と色々な店を回ったりして楽しんだ。

 キーホルダーを探していた私は、雑貨屋の前で足を止める。


「キーホルダーにネームプレートをいれることができます」


 そう書かれた看板が目に入ったからだ。

 ネームプレートか・・・。美桜ちゃんがいかにも喜びそうだな。

 私はその雑貨屋に入ることにした。

 店内は広く、なんでも揃いそうなぐらい商品が並んでいる。

 どんなキーホルダーにしようかな・・・。

 あまり派手すぎるのアレだし、シンプルな物がいいよね。

 装飾が少ないキーホルダーを選んでレジへと持っていく。


「あの、ネームプレートいれたいんですけど」


「じゃあ、この紙にいれたい文字と字体を決めてね」


 文字どうしようかな・・・。

 少しだけ悩んだ末、名前のイニシャルに決める。紙にM&Sと書いた。


「字体は筆記体でお願いします」


「少し待っててね」


 店員は慣れた手つきで作業を進めていく。

 5分程待つと、出来上がったキーホルダーを渡された。


「ありがとうね。片方は彼氏さんの名前かい?」


 か、彼氏!?


「ち、違います。お世話になってる先輩にお土産で」


「そうなんだねぇ。その先輩に喜んでもらえるといいねぇ」


「は、はい。あの、ありがとうございました」


「今度はその先輩とおいでねぇ」


 なんだか勘違いされてしまったようだ。

 あの感じだと、先輩も男だと思われてるだろうな。

 出来上がったキーホルダーは、シンプルながらもネームが入ったことにより、オシャレな感じを醸し出していた。


「喜んでくれるといいな」



 キーホルダーを買ってからぶらぶらと歩いていると、メインストリートも終わりに差し掛かる。


「そろそろ駅に戻ろっか」


 気付けば集合時間が近付いていた。


「二階堂さんは何も買わなかったの?」


「買いましたわよ。全部宮下に持ち帰らせましたわ」


 そ、そうですか。宮下さん。お疲れ様です。

 それにしてもかなりの大荷物になった。

 美桜ちゃんや美桜ちゃんの両親、自分用にももちろん買っている。

 家族へのお土産は、おやきを買った店で漬物を買っておいた。

 私にも使用人がいたら、持って帰ってくれるんだろうなぁ。

 そんな有り得もしないことを妄想しながら駅へと向かった。


「楽しかったね」


「うん。意外と」


 次いつ来るかは分からないけど、また来れたら来たい。



 集合時間には余裕を持って到着することができた。

 少し名残惜しい気持ちを胸に新幹線に乗る。

 最初はそれほど楽しみにしていなかった自然教室も、振り返ってみればとても充実していて楽しかった。

 花恋ちゃんはもちろん、一応二階堂さんとも仲良く?なれたような気がする。


「長野か」


 いい所だったな。


 帰りの新幹線では疲れていたこともあり、寝て過ごした。

 新幹線を降りた後、途中まで花恋ちゃん達と一緒だったが、地元に着く頃には1人になっていた。


「帰ってきたー」


 なんだかんだ楽しかったな。

 地元に着く前に美桜ちゃんに連絡をしておいた。

 既読はついたが返信がなかったので、そのまま美桜ちゃんの家の方向へ歩く。

 駅を出てから数分、前の方から手を振りながら誰かが走って近付いてくる。美桜ちゃんだ。


「桜ちゃーーーん!」


 わざわざ迎えに来てくれたらしい。

 私は荷物で両手が塞がっているので、頷いて反応した。


「おかえり!!!」


 そう言って、美桜ちゃんは私を抱きしめた。

 両手を塞がってるのをいいことに・・・。まぁ、寂しかったんだろうな。


「ただいま」


「楽しかった?」


「まぁ、楽しかったかな」


「そっかそっか! なら良かった!」


 そろそろ離れてくれないかしら。他の人からの視線がですね・・・。


「美桜ちゃん。そろそろ離れてくれなきゃお土産あげないよ」


「あっ、ごめんね」


 私はおやきやらジャムやら、買ったお土産を美桜ちゃんに渡す。


「こんなにいっぱい!?」


「美桜ちゃんの両親にはお世話になってるしね」


 あとはキーホルダーなんだけど・・・。

 なんだか渡すのが恥ずかしい。


「あ、あと・・・」


「なぁに?」


「これ、キーホルダー」


 プレゼント用に包んでもらったキーホルダーを美桜ちゃんに渡す。


「わぁ! ありがとう! 開けてもいい?」


「い、いいけど」


 美桜ちゃんが早速包みを開ける。


「M&S・・・」


 恥ずかしくなった私は俯いて顔を隠す。


「ふふっ」


「なんで笑ってるの」


「いや、桜ちゃんが私のこと考えながら、これを買ってくれたと思うと嬉しくて」


「べ、別に。お願いされたから買っただけだし」


 そんなに嬉しそうにされるとさらに恥ずかしくなる。喜んでもらえて嬉しいけど。


「桜ちゃんも同じやつ?」


「そうだよ」


「そっか。大事にするね!」


「う、うん。じゃあ、私帰るから」


 恥ずかしいから一刻も早くこの場を立ち去りたい。


「荷物、桜ちゃんの家まで持っていくの手伝うよ」


「え? いや、悪いからいいよ」


「疲れてるでしょ? ほら、片方の荷物貸して」


 無理矢理荷物を奪われてしまった。


「じゃあ、お願いします」


「はーい。自然教室のこともっと詳しく聞かせてよ! まずは1日目から!」


「えぇ・・・」


 仕方ないなぁ。聞かせてあげようじゃないか。




「荷物ありがとうね」


「ううん! お土産たくさんありがと!」


「明日の部活のあと、泊まりに行くね」


 待っててね! ふかふかのベッド!


「わかった! 部活頑張ろうね!」


「うん。じゃあバイバイ」


「バイバーイ!」


 私は美桜ちゃんに見送られながら帰宅した。



「ただいまー」


 ・・・・・・。


 返事がない。

 なんだよ。誰もいないのかよ。

 お土産を冷蔵庫に入れて、自分の部屋に向かう。


「あー、疲れた」


 ──ガチャ


 ドアを開けると同時に部屋の中から声がした。


「おかえりなさい」


 くぼちゃんが私のベッドの上にちょこんと座っていた。

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