31.くぼちゃんからの応援
翌日、美桜ちゃんは至って普通に接してきた。
てっきり、動揺しているものだと思っていたので、肩透かしを食らったような気分だ。
一緒に登校している時も部活の話などしたりして、昨夜の件については特に触れることがなかった。
結局、部活後もすぐに解散し、その日は何も言ってこないまま1日が終わった。
金曜日からまた、美桜ちゃんの家に泊まることになっていたが、入浴時や就寝時も変わった様子がなく、そのまま土曜日の朝を迎える。
その日の朝は、覚醒したようにパッチリと目が覚めた。
昨日も一昨日も何も言ってこないけど、気にしてるの私だけなのか!?
なんで美桜ちゃんは平然としているんだ・・・?
こうなったら直接聞いてみる?
で、でも逆に、意識してるのー?とか聞いてきそうだな・・・。
そうなったらなんかムカつくしやっぱり却下。
ま、まぁ別に意識してないし? あの時は仕方なーくしてあげただけ・・・。
美桜ちゃんも何か言ってくるわけじゃないし、もう気にするのはやめよう。
今日から美桜パパの特訓も始まるし、余計なことは考えないほうがいいな。
土日は午前中に部活があり、午後からは美桜パパの特訓を受けることとなっている。
ちなみに美桜パパは午前中から練習を見てくれるらしい。
二度寝できそうにない私は、美桜ちゃんを起こさないように静かにベッドからる。
庭で朝日でも浴びようかな。
私にしては珍しく、かなり早起きだ。
今日は長時間練習だし、帰宅した頃には疲れきって早い時間に眠くなりそう。
美桜ちゃんの両親もまだ起きていないみたいなので、そーっと玄関から庭へ出る。
夏至も近付いてきたこともあり、5時過ぎでも既に外は明るくなっていた。
私はぐーっと天へ腕を伸ばし、背伸びをする。
・・・いい陽気。絶好のテニス日和だ。
「おはようございます」
「おはよー・・・ってくぼちゃん!?」
「はい。くぼちゃんです」
「あんたいつも急に現れるのね」
玄関から出た時、庭には誰もいなかったはず・・・。
「てか、久しぶりだね」
「1週間程ですよ」
「そんなもん?」
なんだかかなり会ってない感じがした。
というか、この1週間は慌ただしくてすっかりくぼちゃんの存在を忘れていた。
「勝手に庭へ入ったりして、美桜ママとか起きたらどうするのさ」
「うさぎ先輩のご両親は、あと52分経たないと起きてこないので大丈夫です」
こ、細かいな。てかなんで起床時間分かるんだよ。
「今日もなんか言いにきたの?」
「はい。色々とモヤモヤしているようですが、それはいいとして」
「な、なんのことかなぁ?」
くぼちゃんには全てお見通しらしい。
「順調に仲良くなれてるみたいで何よりです」
「ま、まぁね」
コクリとくぼちゃんが頷く。
「来月は大会がありますね」
「大会? あぁ、ソフトテニスのね」
本当になんでも知ってるんだな。
「大会まで時間がないと思いますが、頑張って練習してください」
「一応そのつもりだけど」
「はしもとさんの努力次第で、結果も大いに変わってくるはずです。ですから、今日から集中して練習に取り組むことをおすすめします」
くぼちゃんは大会の結果がどうなるのか知っているのかな。まぁ、知ってても教えてくれないだろうけど。
「美桜パパが特訓してくれるらしいし、頑張るよ」
「今日はそれを言いに来ました」
「え? それだけ?」
他にも何かあるのかと思った。もっとこうすごい重要なこと。例えば世界が──。
「はい。はしもとさんの努力の分だけ、必ず報われますので頑張ってください。陰ながら応援しています」
本当にそれだけらしい。世界についてはまたの機会にしよう。
「ありがとう。頑張るよ」
「あと、自然教室のお土産、期待していますので」
「いつ現れるか分からないのに買ってこいと?」
一応覚えておくか。私やっさしー。
「帰ってきたらまた会いに来ます」
「あんま驚かすような感じで現れないでね」
「分かりました。では、ボクはそろそろ失礼します。練習頑張ってください」
「またねー」
そうしてくぼちゃんは走り去ってしまった。
神出鬼没だな、くぼちゃんは。
「桜ちゃん、今日早起きだったね」
「なんか目が覚めちゃって。帰ってくる頃には、多分クタクタだろうなぁ」
私達は学校へ向かっていた。
美桜パパも一緒だと思ったけど、10時頃に顔出すらしい。
「練習長時間だけど頑張ろうね!」
「美桜ちゃんより上手くなったらごめんね」
それぐらいの気持ちで臨まないとね!
「期待してるね!」
「うん!」
部活が始まり、ランニングとストレッチを各自で行う。
それが終わると、全体練習組と特訓組で分かれることになっている。
特訓組の私、花恋ちゃん、二階堂さんは美桜ちゃんの周りに集まっていた。
「今日から私のパパが練習見てくれることになってるよ。午後も練習あるけど、それについては自由参加だから、花恋ちゃんと二階堂さんも参加したかったら教えてね」
「さくらさんは参加するのかしら?」
私の名前がなかったからか、二階堂さんが参加するか聞いてきた。
「私は最初から参加って決まってるよ」
「でしたら、わたくしも参加させていただきますわ」
無理して参加されなくてもよろしいですのよ、おほほほほ。
「花恋ちゃんは?」
「私も参加するつもりだよ」
全員参加となるようだ。
「午後の練習は、前衛と後衛に分かれてやるから、そのつもりでいてね。後衛は私が見て、前衛はパパが見てくれるから」
美桜パパに直接教えてもらうんだ。色々吸収できるよう頑張ろう。
「じゃあ、まずはサーキットからね」
「おーーーい! 美桜ー!」
さぁ、練習開始というところで美桜パパが到着する。
隣のコートが美桜パパ登場により、一気に騒がしくなった。モテモテですなぁ。
「さくらちゃん達も頑張ってなー! ママが弁当作ってくれたぞ!」
さすが美桜ママだ。ありがたやーありがたやー。
さてさて、私も頑張りますかね!
午前の練習が始まる。




