30.仕返し
美桜ちゃんにからかわれたせいもあってか、ご飯の味がよく分からなかった。
一緒にお風呂にも入っても前回の時とは違い、美桜ちゃんはとても落ち着いていた。
平然を装っているのか?
それとも私の反応を楽しんでる・・・?
どちらにせよ、このままやり返さずに黙っているわけにはいかない。
今まであんな風にやり返されたことがなかったからか、かなり動揺してしている自分がいる。
な、なかなかやるじゃん美桜ちゃん。
そっちがその気なら、寝る時にやり返してやるんだから! 見てろよー。
「明日は何時に起きるの?」
「7時だよー。8時過ぎに家出る!」
現在22時。いっぱい寝れるな。
「そうなんだ。もうベッドに横になろっと」
美桜ちゃんは特に変わった様子はなしか・・・。
「美桜ちゃん」
「どうしたの?」
「こっちおいでー」
フフフ、さっきのお返しの時間だ!
「えー? どうしよっかなぁ」
「いいから早くしなさい」
主導権は握らせない!
「え? 怒ってるの?」
「怒ってないから早く来てー」
美桜ちゃんもベッドに横になる。
「今日は甘えん坊さんなの?」
何言ってんだこの人。
「それは美桜ちゃんでしょ?」
「私は違うもーん」
どの口が言うか!
さて、どうやって仕返ししてやろうかしら。
今はお互い向き合っている状態だ。
とりあえず、ずっと見つめてみるか。
「・・・」
「桜ちゃん?」
「・・・・・・」
黙ったまま美桜ちゃんを見つめる。
「あ、あの桜ちゃん?」
「・・・・・・」
もう少しこのまま見ていれば・・・。
「え、えっと」
美桜ちゃんの目がキョロキョロと動く。
よし、そろそろ次のフェーズへ移行だ。
「あ、ごめんね? お風呂上がりの美桜ちゃんが綺麗で、つい見とれてた」
「き、綺麗?」
「うん。綺麗。あと可愛い」
さぁ、いつものように動揺しなさい!
「ふ、ふーん。そっかぁー」
「私が男だったら、美桜ちゃんを狙っていたかも」
そう言って、美桜ちゃんの頬に手を添える。
「さ、桜ちゃん!?」
あらあら、赤くなっちゃって。
「顔赤くしてどうしたの?」
「べ、別に?」
頬に添えた手を耳へと移動させる。
「や、やだ」
「耳触っただけだよー?」
もう耳が弱点なのは調べがついてるんだ!
「美桜ちゃんは耳弱いもんね」
「・・・弱くないし」
それならもっと触っても問題ないね。
「もっと触ってほしい?」
「い、いい!」
「触っていいってこと?」
「違う! 触らないでってこと!」
なるほど。もっと触ってほしいってことか。
「でも、気持ちよくてゾクゾクするんでしょ?」
「しないよ!」
いつもの美桜ちゃんになってきたな。
さらに攻めてみるか。
「美桜ちゃん」
私は耳元で囁いた。
「ッ!!!」
いい反応するじゃん。可愛い。
「ねぇ、美桜ちゃんってば」
吐息混じりの甘い声で囁く。
「耳元で囁かないで!」
「じゃあ、これは?」
──ペロッ
「ひゃあ!? な、何してるの桜ちゃん!」
「美桜ちゃんの耳を舐めたんだけど?」
シャンプーのいい香りがして、なんだか変な気分になってくる。
──チュッ
美桜ちゃんの耳たぶにキスをする。
「さささささ桜ちゃん!?」
「なぁに?」
今、美桜ちゃんの瞳に映っている私は、どんな表情をしているのだろうか。
「ど、どうしたの!?」
「どうもこうも、さっき美桜ちゃんが、私に意地悪したからでしょ?」
そう。美桜ちゃんのせい。
「あれは先に桜ちゃんが!」
「私のせいにするのー?」
私は美桜ちゃんの耳に息を吹きかける。
「んんッ、やだぁ・・・」
何その声可愛い。
「可愛い」
いつもわがままだし、外でもベッタリしてくるけど、たまに頼りになるし、可愛いし綺麗だ。
「ねぇ、美桜ちゃん」
「な、何?」
「さっき、私の耳に息吹きかけたあと、何しようとしたの?」
教えないなら、おしおきしちゃうんだから。
「し、知らない!」
「ふーん。じゃあおしおきだ」
私は美桜ちゃんの耳の中に、自分の舌を入れた。
「んぁッ・・・さ、桜ちゃん、ダメ・・・」
「美桜ちゃんのその顔と声、エッチだね」
また耳に息を吹きかける。
「・・・ッ」
「ねぇ、美桜ちゃん。私・・・変な気分になってきちゃった」
ちょっと仕返ししようとしただけなんだけどなぁ・・・。
どんどん大胆になってくる。
どうしちゃったんだろ私。
──バサッ
私は美桜ちゃんに馬乗りになる。
ハァハァと美桜ちゃんは吐息を漏らしている。
その姿を見てさらに興奮してしまう。
漫画で女の子同士がキスしたり、エッチなことをしてるのは見たことある。
今の私は、それと同じことをしたいと思っている。
でも、無理矢理は良くないし、一応美桜ちゃんに聞いてからの方がいいかな?
「美桜ちゃん。このあと何されたい?」
「・・・・・・」
美桜ちゃんは私を見つめたまま黙っている。
「ねぇ、美桜ちゃんってば」
顔を近づけ、返事を急かす。
「・・・桜ちゃんの・・・好きにしていいよ・・・」
その瞬間、私の中で何かが弾けたような気がした。
私は美桜ちゃんの唇に、自分の唇を重ね──。
「美桜ー? さくらちゃんー? 明日お弁当作るけど、何か入れてほしい物はあるかしら?」
「・・・」
「・・・・・・」
「美桜ー?」
──ガチャ
「あら。2人とももう寝ちゃってたのね。電気消しとくわよ」
──バタン
「・・・・・・」
「・・・あ、あははー。どうだった私の仕返し?」
私はあくまでも、さっきの仕返しということにした。
「キスされると思ったー? そんなわけないじゃん。や、やだなー」
「・・・・・・」
美桜ちゃんは黙ったままだ。
「み、美桜ちゃん?」
私は美桜ちゃんに向き直った。
「桜ちゃんのバカっ」
「もしかして、キスされなくて拗ねてるの?」
「ち、違うし! もう寝るよ! おやすみ!」
美桜ちゃんはそう言うと私に背を向けた。
うーん。ちょっと私もどうかしてたな。
でも、美桜ちゃんがあんな表情するのがいけないんだからね!
「・・・・・・」
・・・ちょっとだけキス、したかったかも・・・。
「美桜ちゃん。ちょっとこっち向いてよ」
「や、やだ」
「おーねーがーいー」
「もう・・・寝るんだか──」
──チュッ
振り向いた美桜ちゃんの唇にキスをした。
「お、おやすみ」
急いで美桜ちゃんに背を向ける。
背中に視線を感じたが、恥ずかしくて振り向くことができなかった。
──。
───。
────。
そのあと、どれぐらい時間が経ったか分からなかったけど、心臓の鼓動が高鳴ったままで全然寝付けなかった。




