28.ライバル登場?
翌日、未だかつて経験したことがないほどの筋肉痛に襲われる。
これラケット振れるのか? 腕をあげるのもつらい。
部活までに腕のストレッチとかして、少しでも動かせるようにしておこう。
今日の部活が終われば、明日は定休日で休みになる。
美桜ちゃんの家に行って、あのベッドで癒されようかな。
金曜日まで待てないし、思い出すだけで眠くなりそうだ。
あとで美桜ちゃんに、明日の放課後遊びに行っていいか聞いてみよう。
HRが終わると同時に、教室のドアが勢いよく開く。
「さくらさんはいらっしゃるかしら?」
げっ。二階堂さん・・・。なんで私の教室に・・・。
「ど、どうしたの二階堂さん」
とりあえず要件を伺いましょう・・・。
「あなた、花恋さんと二人で特別指導を受けているらしいじゃありませんか」
は、はぁ。
「そうだけど、それがどうかした?」
「今日からソフトテニス部に入部するので、わたくしも特別指導を受けさせていただきますわ!」
まぁ、こうなることは予想していたし、驚きもしない。
「いいんじゃない? よ、よろしくね」
「あなたには負けませんわ!」
えぇ・・・。勝手に勝負始めないで・・・。
「それでは失礼しますわ」
そう言って教室から出ていってしまった。
わざわざそれだけの為に言いに来たの・・・?
・・・昨日の発言は撤回しよう。やっぱり仲良くなれる気がしない。
二階堂さんに勝手にライバル扱いされてしまい、一気に部活に行く気が失せてしまう。
ダラダラと向かう準備していると、美桜ちゃんからメッセージが届く。
『今日も頑張ろうね!』
これぐらいの内容なら、あとで直接言えばいいのに。
美桜ちゃんらしいといえば、美桜ちゃんらしいけど。一応返事返しておくか。
「頑張る!」
結局、あれから5分程教室でボーッとしていた。
部室に近付くと、なんだか人だかりができている。何かあったのかな?
部室のドアの前に集まっている先輩達に聞いてみる。
「部室の中で何かあったんですか?」
「新しく入る1年生の子いるでしょ? その子が中にいるんだけどさ・・・」
あぁ。二階堂さんのことか。
中にいるだけなのに、どうして皆集まってるんだ?
私も部室の中を覗いてみる。
中には花恋ちゃんと二階堂さんが話していた。
特に変わった様子はないと──。
部活では特に派手じゃなかったり、だらしくなれければ服装に制限はない。
私は基本、学校のジャージ着てるし、先輩とかはテニスウェアを着たりしている。
二階堂さんもテニスウェアを着ているんだけど・・・。
その姿が有名なテニス漫画に出てくる、夫人そのままだったのだ。
頭にはピンクのリボンを付けていて、上下白のシャツとスコートまでしっかり履いている。
元々金髪ということもあり、もうまんまあの夫人だ。絶対漫画読んだだろ・・・。
どうやら二階堂さんは形から入るタイプらしい。
私に気付いた二階堂さんが声を掛けてきた。
「あら、さくらさん。遅かったですわね」
見た目だけであれば、テニスが上手そうに見える。
「見てくださいませこのラケット。お母様に買っていただきましたわ」
「そ、そうなんだ。良かったね」
なんか皆が使ってるラケットと、ちょっと違う感じするけど、多分高いラケットなんだろうな。
「さ、咲蘭ちゃん?」
「花恋さん、どうかしましたの?」
「そのラケットなんだけど・・・」
花恋ちゃんが何か言いたそうにしている。
だが、なんだか様子が変だ。
「お母様にお願いして、いい物を買っていただきましたの」
一体いくらのラケットを買ったのだろうか。
「・・・あのね? そ、それ軟式用じゃなくて、硬式用のラケットだよ・・・」
なるほど。だからラケットに違和感があったのか。
二階堂さんは花恋ちゃんの言ったことを理解できていないようだ。
「なんですの? 硬式用というのは」
そこからなのか・・・。
そんな私も、最初は違いが分からなかったし、人のこと言えないんだけど・・・。
「えっとね、テニスには硬式用と軟式用でラケットが別なの。咲蘭ちゃんが買ったのは硬式用で、硬いボールを打つ方だよ」
「このラケットを使ってはダメなのかしら?」
「う、うん・・・」
なんだろう。この漫画みたいな展開。
そしてこのあとに続く言葉は・・・。
「なんですってー!!!」
やっぱりね。そうだよね。
「今日は私のラケット使いなよ。2本持ってるし」
「花恋さんのラケットはお借りできませんわ!」
「え、どうして?」
花恋ちゃんの問いを無視して、二階堂さんは携帯を取り出す。どこかへ電話を掛けているらしい。
「もしもし、宮下? 今すぐ迎えに来てもらえるかしら。スポーツショップへ行きますわ!」
「あ、あの咲蘭ちゃん?」
「ごめんなさい花恋さん。わたくしは軟式用のラケットを買いに行きますので、今日の部活は不参加でお願いしますわ」
一方的に花恋ちゃんなそう伝えると、二階堂さんは着替えて部室から去ってしまった。
お、お嬢様すごいな・・・。
昨日の今日でまたラケットを買うなんて・・・。
「行っちゃったね。二階堂さん」
「う、うん」
「・・・私達も着替えよっか」
「・・・そうだね」
二階堂さんが部活に参加するのは木曜日からになりそうだ。
・・・今日も練習頑張ろ。




