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恋の案内人  作者: 翁
出会い
33/255

24.お泊まり会 PART3

 心地よい暖かさを感じながら目を覚ます。

 私は美桜先輩に抱きついていた。

 そういえば、抱きついたまま寝たっけな。

 こんなにも寝心地がいいとは・・・。

 ふかふかベッドと、美桜先輩のふんわりボディ、恐るべし。

 暖かく感じたのは、美桜先輩も私を抱きしめていたからだ。

 昨日、私がお風呂で抱きついた時は、あんなに慌てていたのに、美桜先輩も抱きついたまま寝てるじゃん。変なの。


「すぅ・・・・・・」


 美桜先輩の寝息が微かに聞こえる。

 別の寝息も聞こえる。花恋ちゃんも寝ているようだ。

 カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。

 時間は分からないが、まだ早い時間だと思われる。

 ・・・もう少し寝ようかな。


「・・・・・・」


 美桜先輩の寝顔を見る。

 まつ毛長いなぁ。あと唇がアヒルみたいになっている。

 こう見るとやっぱり美桜先輩は可愛い。

 普段なら抱きつかれるのは嫌だけど、今は逆にこのままでいたい。なんか落ち着く。


「・・・・・・」


 私は抱きつく力を少し強めた。

 あー。ずっとこうして寝てたいなぁ。

 ふかふかのベッドで美桜先輩に抱きしめられながら寝るのは、控えめに言って最高だ。

 これから毎週、こうしてもらえるんだから、美桜先輩にご褒美あげちゃうか。

 起きてる時だと色々要求されそうだし、今寝てるこのタイミングにしよう。


 さて、何してあげようか・・・。


「・・・・・・」


 ・・・うーん。頬っぺたにチューでいいかな。

 私は寝ている美桜先輩の頬に唇をつけた。

 そこで眠さの限界を迎えたのか、また眠ってしまった。



 二度寝から目を覚ますと、美桜先輩も起きていて座ったまま私を見つめていた。


「・・・おはよう美桜ちゃん」


「お、おはよ」


「ふぁぁぁ」


 私は大きな欠伸をして、花恋ちゃんの方を向く。


「可愛い寝顔だ」


 花恋ちゃんはまだ寝ていた。


「今何時ー?」


「9時過ぎたぐらいだよ」


 まだBBQまでには時間あるなぁ。

 ちょっと早く起きすぎたかな。あと1時間は寝れる。

 というわけで。


「美桜ちゃーん」


 私は美桜先輩においでおいでと手招きをする。


「ど、どうしたの?」


「あと1時間寝るからギューってして」


「えぇ!?」


 なんで驚いてるの。昨日寝る時もしてたんだから、もう今更だと思うんだけど。


「わ、私はもう起きるよ」


「ダメー」


 私は座っている美桜先輩に抱きつき、無理矢理押し倒す。


「ちょっと桜ちゃん!?」


 ベッドに倒れると、美桜先輩の顔がすぐ近くにあった。


「じゃあ1時間後起こしてね」


「1時間このままなの!?」


 ちょっと美桜さん? あんまりうるさいと寝れないじゃない。


「美桜ちゃん」


「は、はい」


「静かにしないとその口塞いじゃうよ」


 私はいつしか漫画で見たセリフをそのまま言ってみた。


「ッ!!!」


 美桜先輩がみるみる赤くなっていく。

 ほほう。漫画と同じように赤くなるね。


「なななななっ!」


 今にも頭から煙が出てきそうだ。

 漫画の続きを試してみよっと。


「悪さをしている口はこの口かな?」


 私は美桜先輩の顎を持ち上げた。いわゆる顎クイってやつだ。


「ちょっ!!」


 そして私は美桜先輩に顔を近づけ──。


 ニヤッ。


 私は寸前で動きを止めた。


「やっぱ起きようかなー」


 美桜先輩は顔を真っ赤にして、口をパクパクしている。


「なぁに。美桜ちゃん。キスされると思ったのー?」


「・・・桜ちゃんのバカー!!!」


 ウゲッ。

 枕を投げられ、顔面に直撃する。


「・・・どうしたんですかぁ」


 うるさくしていたせいか、花恋ちゃんが起きる。


「おはよー、花恋ちゃん。美桜ちゃんが朝から暴れてるんだよー。本当に困った子だよねー」


「だ、誰のせいよ!」


 うーん・・・。誰だろう?

 私かな? 私じゃないよ。私だよ。


「美桜ちゃんが勝手に興奮してただけじゃん」


「あ、あんなことされたら誰だってあーなるよ!」


 あんなこととは一体何のことだろうー。


「あんなことってなーに? 詳しく教えてー」


「う、うるさい! 顔洗ってくる!」


 そう言うと美桜先輩は荒々しく部屋を出ていってしまった。


「また意地悪したの?」


 ちょっと花恋ちゃん? あれはご褒美だよ?


「意地悪じゃないよ。お口が悪さしてたから、顎クイしてキスするふりをしただけだよ」


「どこでそんなの覚えたの。それ意地悪だよ」


 私は意地悪したつもりはないぞ!

 今頃、顔を洗いながら喜んでいるはず!


 結局寝ることを諦めた私は、歯を磨き顔を洗う。

 それからBBQの時間まで美桜先輩達とおしゃべりしていた。


「そういえばさ、5月に自然教室?みたいのあるらしいんだけど」


「あぁ。あるね。私の時は2泊3日で静岡だったよ」


「へぇ。私達も2泊3日だけど、どこ泊まるんだっけ? 横浜がいいなぁ」


「ここ横浜でしょう? 長野行くらしいよ」


「なんだ、中華街じゃないのかぁ」


「もう自然教室でもなんでもないじゃん」


 なんでよ! 北京ダックとか食べて、生物という自然に感謝するんだよ!

 毎年同じ場所かと思ったけど、その年によって行く場所が違うらしい。


「もうグループ決めとかしたの?」


「まだだけど」


「決め方が変わっていなければ、学年全員体育館に集まって、グループ決めると思うよ」


 なにそれめんどくさそう。


「クラスで決めればいいのにー」


「でも、他のクラスの子と仲良くなれるチャンスだし楽しそう!」


 私は別にいいかなー。

 そんな大人数でグループ決めるとか、絶対溢れる人とか出てきそうだけど・・・。


「人数とか決まってるの?」


「確か4人から6人だったかな?」


 まぁ、大体そのぐらいか。


「じゃあ花恋ちゃん一緒のグループになろうよ」


「うん! いいよ!」


 ひかりも入れてあと1人か。


「私の友達1人入れるから、花恋ちゃんも友達も呼んでよ。あと1人呼べばそれでグループできるし」


「わかった! 声掛けてみるね」


 これで私のグループはできたも同然だ。


「私も桜ちゃんと旅行したいなぁ」


 旅行かぁ。

 お金かかるし、学生にはきつそうだけど。


「美桜ちゃんが全部セッティングして、旅費も出してくれるならいいけど」


「が、頑張るね!」


「美桜先輩! 頑張らなくていいです!」


 花恋ちゃんが心配な眼差しを美桜先輩に向ける。

 あぁは言ったものの、本当に頑張っちゃいそうで私も心配になってくる。

 私と行けるなら、なりふり構わずって感じになりそう。


「そろそろ時間じゃないですか?」


「本当だ。じゃあ行こっか!」


 私達は庭へ行くことにした。



 靴を履き替え玄関から庭へ行くと、既に色々と準備されていた。


「みんなおはよう!」


 美桜パパが元気よく挨拶してきた。爽やかイケメンだな・・・。


「おはようございます。お邪魔させていただいてます」


「そんな堅くならなくていいぞ! お腹空いただろ? 美味しい肉用意したからいっぱい食べてくれよ!」


「ちょっとパパ! そんな張り切らないでよ!」


 張り切っている美桜パパを見られるのを、美桜先輩が恥ずかしがる。


「たまにはいいじゃないか! ほら、美桜は割り箸とか2人に渡しなさい」


 いいじゃんいいじゃん美桜パパ。

 休日はいつも寝て食ってぐーたらしてる私の父親とは大違いだ。

 まったく! 娘が真似したらどうするんだ!

 とりあえず、来週から毎週お世話になるし、ちゃんと挨拶しておくか。


「あの」


「どうした? 君がさくらちゃんだろ? 美桜が口を開く度、さくらちゃんさくらちゃんって言ってるぞ」


「パパまでやめてよ!!!」


 どうやら美桜先輩の頭の中は、私で埋め尽くされてるらしい。


「来週から、毎週週末に泊まらせてもらいます。ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします」


「ママから聞いたよ。美桜と仲良くしてやってな!」


「はい」


 これで大丈夫だな。

 あとは心ゆくまであのベッドを味わえばいい。


「そんなしっかり言わなくてもいいのに」


「そこはしっかりするよー。態度悪いから泊まらせないなんて言われたくないし」


「そんなこと言わないと思うけどな」


 ほら、私しっかり者だからさ。そこらへんはね? ちゃんとしちゃうのよ。


「肉焼けたぞー!」


 待ってましたー!


「全部食べてやるー!」


「ダメだよ! ちゃんと野菜も食べて!」


 なんか親みたいなこと言いますね美桜さん。


「花恋ちゃん、ちゃんと野菜食べなきゃ大きくならないよ! だから私の分の野菜も食べてね!」


「そんなこと言うなら、さくらちゃんはお肉食べちゃダメだからね」


 それは困るからやっぱり野菜も食べることにしよう。


「久しぶりにワイワイと食事ができて楽しいわね」


「そうだな。お姉ちゃんが家を出てからは、こうやって庭で食事することも少なくなったからな。美桜が友達を連れて来る時ぐらいだな」


 お姉さんか・・・。


「お姉さんって、どんな方だったんですか?」


「い、いいよそんなこと聞かなくて」


 あらあら美桜ちゃん。聞かれたくないことでもあるのかなー?


「いいじゃん別にー」


「そうだなー。とにかく面倒見が良かったな。美桜の面倒をよく見てくれて助かっていたよ」


「そうね。美桜はいつもお姉ちゃんにくっついてたわね」


 それって・・・。

 なんか今の私、お姉さんの代わりにされてるのでは・・・?


「や、やめてよ! いいでしょ私の話は!」


「もっと美桜ちゃんの小さい頃の話聞きたーい!」


「私も聞いてみたいです!」


 やっぱり、今みたいに元気な感じだったのかな? あと男子からモテてそう。


「小さい頃の美桜は、今と違って引っ込み思案だったな」


 え、意外すぎる。

 気が弱い美桜先輩。なんか想像できない。


「いつもお姉ちゃんの後ろに隠れてたわね」


「わ、私トイレ行ってくる!」


 自分の過去の話で恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、美桜先輩が家の中へと逃げていく。


「なんか今の美桜ちゃん見ると想像できないです」


「お姉ちゃんが大学に進学して、1人暮らしを始めた頃からかしらね」


「そうだなー」


 いつも一緒だったお姉さんが、いなくなってから変わったのか。


「お姉ちゃんに何言われたかは話さないけれど、それがきっかけで変わったわね」


「だいぶ明るくなって、自分から色々やるようになったな。最初はぎこちなかったけども」


 美桜先輩にもそんな過去があったのか。

 もしかしたら、服の時も過去の自分を重ねていたのだろうか。

 もしそうだなら、改めて感謝を伝えようかな。

 でも、あの時の話題を出すのは私としてもちょっとばかし恥ずかしい・・・。


「いつもさくらちゃんのことばっかり話しているけど、美桜のやつベタベタしたりしてないか?」


 やはり親は親だ。子供のことは何でも分かるらしい。


「そ、それは・・・。あはは・・・」


 私は思わず苦笑いになってしまう。


「ごめんねさくらちゃん。迷惑だったら言っていいのよ?」


 まぁ、出会ったばっかの時はかなりウザいと思ったけど・・・。

 今は別に大丈夫かな。

 ここで迷惑とか言ったら泊まりにくくなる。


「美桜ちゃんには色々お世話になってますし、そんなことないですよ。いつも仲良しです」


「そう? なら良かったわ」


 ジー・・・。


 ・・・おやおやー?

 なんだか、隣からの視線が気になるぞー???

 その視線の主の花恋ちゃんを見る。


「いつも意地悪ばっかしてるくせに」


 美桜パパママに聞こえないぐらいの声で花恋ちゃんが言う。


「そんなことないよー」


 すっとぼけると花恋ちゃんは溜息をついていた。


「これからも美桜と仲良くしてあげてな?」


「はい。もうずっと仲良くしちゃいます」


「さくらちゃーん?」


 花恋さん? 今日なんか刺々しくないですか?

 心配しなくても何も企んでないですよ? 養ってもらおうかなと思ってるぐらい!

 小さい頃の話が終わったことを察知したのか、当の本人が戻ってきた。


「お、終わった?」


「終わったよー」


 私は美桜先輩に向き直る。


「美桜ちゃんありがと。これからもよろしくね」


「えぇ!? 急にどうしたの!?」


 服の件のお礼はこれで終わりということで。

 本当に感謝してる。

 ありがとう。『美桜ちゃん』。



 BBQが終わり、部屋に戻った私達はこのあとどうしようかと話していた。

 時刻は13時を回ったところ。

 夕方に帰ることとなっているがまだ時間がある。


「どうしよっか」


「寝る」


 お腹もいっぱいになったことだし、寝るしかないでしょ! さぁ、寝よう!


「さくらちゃん。食べてすぐ寝たら牛になっちゃうよ」


 それよくお母さんに言われてたな。


「大丈夫。みんなで寝れば怖くない」


「赤信号、みんなで渡れば怖くないみたいに言わないの」


 赤信号はみんなで渡っても、普通に怖いと思うのは私だけ?


「えー。じゃあ何するのー。寝るー?」


「一旦寝ることから離れなさい!」


 今、このベッドで寝とかないと金曜日まで寝れないんだよ! 分かってるの!?


「そういえば総体の予選っていつからなんですか?」


 早退の予選? 何の大会だそれ。


「何それ」


「総体ってゆうのは総合体育大会、インターハイのことだよ」


 あぁ。インターハイか。

 うちの部活は弱いからあんまり縁がないのでは?


「全国目指しちゃいます?」


「無理無理。多分5月の中旬ぐらいかなー」


 約1ヶ月後か。

 私達も予選出るのかな?


「1年生も出るの?」


「出るよー。でも、誰か一人は2年生か3年生と組むことになるかな」


 今年の1年は私含めて5名だ。ダブルスだから1人余ることになる。


「ペアって誰が決めるんですか?」


 花恋ちゃんはかなり興味があるみたいだ。


「基本的には私と桜木先生が決めるけど、一応誰と組みたいかは皆に聞いていくよ」


 そこらへんはしっかりしてるんだな。


「美桜ちゃんは組みたい人決まってるの?」


 部活の練習試合では副部長と組んでいたけど。


「うーん。それが特に決まってないんだよね。ほら、うちの部活弱いじゃん? だからみんな楽しめればいいって感じで、固定でペア組んでる人少ないんだよね」


 楽しむことがモットーならそれでいいとは思うけど、真剣な部活だったら絶対ありえないだろうな。


「そうなんですね」


 花恋ちゃんは中学から前衛やってるって言ってたっけなぁ。

 私もどちらかと言えば、前衛の方がやりやすい気がする。後衛は振り回されたら移動が大変すぎ。

 そういえば、確か美桜ちゃんは後衛だよな・・・。


「ねぇねぇ美桜ちゃん」


「ん?」


「私とペア組もうよ」


 美桜ちゃんと一緒なら楽しく試合できそうだし。

 でも、組むとなったら、短期間でまともに試合できるぐらいにならなきゃいけない。


「えぇ!?」


「さくらちゃん大丈夫? さすがにキツいんじゃないかな?」


 それは分かっているけど、私は美桜ちゃんがいい。


「頑張って練習する」


 言ったからには、明日の部活からちゃんと練習しなきゃなぁ。


「まぁ、美桜ちゃんが嫌じゃなければだけど・・・」


 普通なら高校からソフトテニスを始めた人と、組みたいとは思わないはず。ましてや先輩が、だ。


「じゃあ、練習一緒に頑張ろうね。私の最後の大会、桜ちゃんに前衛やってもらうね」


 な、なんか頼もしく見える・・・。

 さすが部長と言ったところか。


「本当にいいんですか?」


 花恋ちゃん。心配はいらないよ。

 私達、最強になるから。


「うん。私も桜ちゃんと組めたらなぁって思ってたし」


 なんだ相思相愛じゃないか。頼むぜ相棒!


「目指せ全国制覇ー!」


 やっぱり目標は大きく掲げなきゃね!


「それは無理だと思うけど・・・」


 美桜ちゃんと花恋ちゃんが、声を揃えて言うのだった。

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