佐藤美桜と高橋花恋の動揺
──3人でお風呂に入ることとなった直後。
どうしよどうしよどうしよ!!!
いや、色々と嬉しいよ? 嬉しいんだけど!
素直にワンピース着てくれたり、毎週週末泊まるって言い出したり、お風呂一緒に入りましょうって桜ちゃんから言ってきたり・・・。
嬉しいんだけどさ、本当にどうなってるの!? もしかして私、明日死ぬ??? 頭の中がパニック状態になっていた。
時間は少し前に遡る。
──桜ちゃんの家にて
「さ、桜ちゃんもあのワンピース着よ?」
桜ちゃんに買ってあげたワンピースを着てきた私は、ダメ元で聞いてみた。
「いいですよ」
「そうだよね。やっぱダメだよね。・・・え?」
え、いいの・・・?
まさかこんなにもあっさりと着てくれるなんて思わなかった。何か企んでるとしか思えない・・・。
いいですよと言ってからやっぱりやめたみたいなことを言って、上げて落とされると思ったから、すぐにワンピースに着替えた桜ちゃんが意外すぎた。
──その後、私の家にて
問題はここからだった。
「決めました。私は今日からここで暮らすことにします」
桜ちゃんがそう言ってくれたのは嬉しかったけど、どうせ冗談だろうと思っていた。
私としては桜ちゃんと毎日一緒なら嬉しいけど、さすがにそれが無理なのは分かっている。
「ちょっと聞いてきます」
桜ちゃんはそう言って、急に部屋を飛び出してしまう。
「ちょ、え?どこ行くの?」
私と花恋ちゃんは急いで桜ちゃんを追う。
やっぱり今日の桜ちゃんは変だよ!
リビングへ行くと、お母さんと桜ちゃんが話していた。
「あの、お願いがありまして・・・」
お母さんにお願い・・・?
「なぁに? 夜ご飯に何か食べたい物でもあるの?」
「いえ、そうじゃないんですけど、これから週末泊まりに来てもいいですか? 必要であれば料理とか手伝いますので」
「あら」
「えぇ!?」
どういうこと!?
桜ちゃん何言ってるの!?
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美桜先輩とお揃いの服を素直に着たことも驚いたけど、まさかさくらちゃんがあんなことを言い出すとは思いもしなかった。
「これから週末泊まりに来てもいいですか?」
「えぇ!?」
さくらちゃん一体どうしちゃったの!?
いつも美桜先輩に意地悪ばかりしてるさくらちゃんが、今日はどうもおかしい。
あのさくらちゃんが、自分から進んで美桜先輩の家に泊まりたいだなんて、絶対何か企んでいるとしか思えないよ。
「さくらちゃんの親御さんは大丈夫なのかしら? 私としては大歓迎だけど」
「それは大丈夫です。ちゃんと言います」
大丈夫なんだ!?
そんなにさくらちゃんの家ってゆるいの?
美桜先輩のお母さんも悩むことなく、大歓迎って言っているけど・・・。
「美桜はお姉ちゃんが一人暮らしを始めてから寂しそうだったし嬉しいわ」
「ちょ、ちょっとお母さんやめてよ!」
確かに寂しがりそう。
それでさくらちゃんで寂しさ紛らわしてるのかな?
「ありがとうございます! 今何か手伝うことはありますか? なんでも手伝います!」
「なんかすごいやる気になってる!?」
別人じゃないのかと疑いたくなるぐらい、さくらちゃんがやる気に満ち溢れている。
美桜先輩のお母さんと話し終えると、さくらちゃんは鼻歌交じりで部屋に戻っていった。
さくらちゃん、何を考えてるの・・・?
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桜ちゃんとお母さんのやりとりを見た私達は、しばらくその場で呆然としていた。
「ねぇ、花恋ちゃん」
「・・・はい」
「あれは本当に桜ちゃんなのかな・・・? 私ちょっと怖くなってきたよ・・・」
「どうでしょう・・・。見た目はさくらちゃんですが・・・」
花恋ちゃんも私と同じく動揺している様子だった。
「さくらちゃんが毎週泊まりたいだなんて、美桜はとっても好かれてるのね」
「え!?」
桜ちゃんが私のことすすす好き!?
確かに今日の桜ちゃんは変だ。
お揃いのワンピースを着てくれたり、急に毎週泊まりたいと言ってみたり・・・。
もしかして、私と一緒にいたいから泊まりたいってこと?
一緒にいたいってことはつまり好きってこと!?
で、でも、桜ちゃんは直接私にそういう素振りを見せたわけじゃないし、まだそうと決めつけるには早いような・・・。
「桜ちゃんが私のことを・・・好き?」
フヘヘとニヤける私を、花恋ちゃんが心配そうに見つめている。
「美桜先輩。今は間違ってもさくらちゃんに聞かないでくださいね」
花恋ちゃんは不安になったのか釘を指してきた。
「わ、わかってる」
でもさ、本当に桜ちゃんどうしちゃったんだろ!?
これから毎週、週末に桜ちゃんが泊まりに来てくれるのは嬉しいけど・・・。
「美桜? ご飯はまだできないから先にお風呂入っちゃいなさい」
「う、うん。わかった。花恋ちゃん、部屋に戻ろっか」
「はい」
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まだ動揺しているのか、美桜先輩は無言のまま階段を上る。
「桜ちゃん、お母さんが・・・あぁ!!!」
ドアを開けた美桜先輩が急に叫ぶ。
「み、見ないで!!!」
物凄いスピードで何かを剥がしているみたいだけど・・・。
「先輩。なんで私に買ってくれたワンピースのレシートを壁に貼ってるんですか?」
どうやらレシートみたい。
でも、なんで壁にレシートなんか貼ってるんだろ? 私もさくらちゃんと同じく疑問に思った。
「そ、それはその・・・」
「まさか私に後日請求しようとしたんですか?」
え? 美桜先輩・・・それはさすがに・・・。
「え? ち、違うよ!」
だよね。良かった。もし、そうだったとしたら私も美桜先輩を軽蔑してしまうところだった。
「ならどうして貼ってるんですか?」
「え、えっと、その・・・、き、記念に・・・」
「記念ってなんですか?」
「ほ、ほら。桜ちゃんワンピース着てくれたでしょ?」
あぁ、そういうことか。
私はどうして美桜先輩がレシートを大事に残し、壁に貼っているかが分かった。
「う、嬉しかったから記念に残しておこうかと・・・」
美桜先輩は乙女だなぁ。
照れてる姿が可愛い。
「先輩って変な人ですね」
「え? そ、そう?」
さくらちゃんには理解ができないらしい。
「美桜先輩にとっては大事な物なんですね」
一応さくらちゃんにも、それが大事な物なんだよと分かるように言ってあげる。
「なんだかよく分からないですけどそうなんですね」
「そ、そうなの!」
記念に残す気持ちは分かるけど、ちょっと過剰な気がしたりもする・・・。さくらちゃんのことがお気に入りなのは分かるんだけど。
でも、そのレシート捨てられなくて良かったですね・・・。さくらちゃんならやりかねない。
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レシートの一件が落ち着くと、桜ちゃんがさっきの話をしてきた。
「これから毎週、週末に泊まりに来るのでよろしくお願いしますね。金曜日は部活終わったらそのまま行きます」
「ほ、本当にいいの?」
「はい。このベッドで寝れますし」
ん? ベッドで寝れるから? そんなにいいベッドかな?
まぁ、気に入ってくれたなら良かった!
「桜ちゃんがいいならいいんだけどさ」
「私もたまに泊まりに来てもいいですか? 毎週はお母さんにダメって言われると思うので」
花恋ちゃんも泊まりたいらしい。断る理由などない。
「もちろん!」
私はお母さんから、先にお風呂入るように言われたことを思い出した。
「あ、そういえば、お母さんがまだご飯出来ないから先にお風呂入ってって」
入る順番はどうしようかな?
私は最後でいいから、どっちかにまず入ってもらおう。
「先輩一緒に入りましょ」
一瞬、何を言われたか理解できず固まる。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
本当に桜ちゃんどうしたの!? 熱でもあるの!?
桜ちゃんから一緒にお風呂入ろうって言われるなんて・・・。花恋ちゃんも驚いてるし!
「先輩うるさいです。何を驚いてるんですか?」
逆に何で驚かないと思ってるの!?
「だだだだだって一緒にお風呂入るって!」
「え? なんかおかしいですか? 花恋ちゃん私おかしいかな?」
「えっ? ど、どうだろ?おかしくないかな?」
あれ? おかしくないの?
修学旅行とかでみんなで入ったりしたことはあるけど、家のお風呂では小さい頃に両親以外と入ったことないよ!? お姉ちゃんですらないのに!
で、でも二人ともおかしくないって言ってるし、おかしくないのかな・・・?
「そ、そうだよね。べ、別におかしくは・・・ないかな?」
「じゃあ入りましょ」
ちょちょちょちょっと待って!!! 本当に一緒に入るの!? 私にも心の準備というものが!
いきなり桜ちゃんと2人きりでお風呂なんて絶対無理無理無理!!!
「か、花恋ちゃんも一緒に入ろ!?」
「え? 私もですか?」
「うん!!!」
私は全力で頷いた。
今日の桜ちゃん本当にどうしたのー!?
視点の順番
佐藤美桜→高橋花恋→佐藤美桜→高橋花恋→佐藤美桜




