22.お泊まり会 PART1
美桜先輩の家に泊まることとなり、準備を進めていた。
「桜ちゃん。今日は何着ていくのー?」
「え? 普通に楽な格好で行こうかと」
「えー!」
え? ダメなの? 泊まりに行くだけだよね?
「なんですか? 泊まるだけならなんでもいいじゃない・・・」
ん?
んー??
美桜先輩を見ると、見覚えのある服を着ている。
「先輩。その服」
「桜ちゃんと一緒の買っちゃった!」
そうかそうか買っちゃったかー! なんでだよ。
「え、なんでですか」
「桜ちゃんが着てくれて嬉しかったから、私も欲しくなっちゃった!」
欲しくなっちゃった! じゃないよ。
あぁ、どんどん美桜先輩とのお揃いが増えていく・・・。私達双子なの?
「わざわざ一緒の買わなくていいのに」
えへへと美桜先輩が照れている。照れるところなのか疑問だったが無視する。
「それで、服がなんですか?」
「え、えっと、ほら、私今日着てきたからさ」
ははーん。私も一緒のを着ろと。
「フッ」
「な、何?」
「べっつにー」
美桜先輩の口からちゃんと言ってもらった上で丁重に断ってあげよう。いや、待てよ・・・。逆にいいですよと言って反応楽しむのも面白そうだ。
「ちょっとさくらちゃん」
花恋ちゃんがヒソヒソと話し掛けてくる。
「あんまり意地悪したら可哀想だよ」
意地悪? 花恋ちゃん。こんなの意地悪じゃないんだよ。美桜先輩にはご褒美みたいなものなんだよ!
「美桜先輩。『私今日着てきたからさ』のあとはなんですか? 私バカだから分かんなーい」
なんだろー?とすっとぼけている私を見て、花恋ちゃんが若干引いている。
「さくらちゃん・・・」
ちょっと花恋さん? そんな引かないで? あと真顔やめて真顔。
「さ、桜ちゃんもあのワンピース着よ?」
「いいですよ」
「そうだよね。やっぱダメだよね。・・・え?」
「え?」
美桜先輩も花恋ちゃんも私を見つめる。
「いいの?」
「いいですよ」
「・・・さくらちゃん何か企んでるでしょ?」
花恋ちゃんが疑いの目を向けてくる。
美桜先輩もうんうんと頷いている。
いやだなー、何も企んでないですよー。
「じゃあ着なくていいんですか?」
「やだ!」
ですよねぇー。
まぁ、こんな時ぐらいしか着る機会ないからな。着てあげようじゃないか。やだ私超優しい。
「桜ちゃんがこうもあっさり着てくれるとは・・・。明日は季節外れの雪が降るかもしれない!」
「なんか言いました?」
雪ではなく雷落としましょうか。
「な、なんでもないよ!」
「着替えるので先輩は後ろ向いてください」
「え? なんで?」
「いやらしい目で見るからです」
「み、見ないし!」
「いいから向いてください」
納得いかなーいと言いながら美桜先輩が後ろを向く。それを確認した私はワンピースに着替える。
「わー! さくらちゃん可愛い! 似合ってる!」
今花恋ちゃんが私を可愛いって言った!?
花恋ちゃんが可愛いって言うってことは、もしかして私可愛いのか!?
「ありがとう花恋ちゃん。嬉しい!」
でも花恋ちゃんの方がもっと可愛いよ!
「本当に可愛いよ桜ちゃん!」
「あーはいはい。ありがとうございまーす」
「温度差が激しすぎじゃない!?」
「わー! 先輩ありがとうございます! これでいいですか? 準備できたし行きますよ」
「やっぱり納得いない・・・」
準備ができた私達は家を出ることした。
美桜先輩の家は駅の近くにあるらしい。
私の家とは反対方向だけど、案外近かったんだな。
あれ? となると中学も一緒だったのかな?
「先輩。もしかして中学って・・・」
「ううん。私は高校入る前にこっちに引っ越してきたから違うよ」
「そうなんですか」
「なになにー? 中学も一緒が良かったの?」
「は? なんでですか? 中学から目つけられてたら今頃ノイローゼになってるので一緒じゃなくて良かったです」
「ひ、ひどい・・・」
美桜先輩が落ち込んでいる。ちょっと言い過ぎちゃったかな。うふ!
「さくらちゃん」
花恋ちゃんが目で言い過ぎと訴えてくる。
「ま、まぁ、高校から知り合ってちょうどいいかなって思ってるんで。色々お世話になってますし」
「・・・桜ちゃん!」
嬉しかったのか腕にしがみついてくる。
「ちょっと先輩近いです」
「えー。いいでしょー」
助けてーと花恋ちゃんを見るが、さくらちゃんが悪いんでしょと言わんばかりに知らんぷりされてしまった。
それから20分程歩き、美桜先輩の家に到着する。
「庭がひろーい!」
花恋ちゃんがそう言いながら庭を駆け回る。
おぉ。なんかとても絵になっている。今にも物語が始まりそうな感じがする。
次回作のタイトルは、『癒し系ドールに恋をした』にすることとしよう。
花恋ちゃんの言う通り、確かに庭が広くBBQなんかも大人数でできそうだ。
「お母さんただいまー!」
美桜先輩は先に玄関へ向かっていた。
私達もそのあとに続く。
「おかえりなさい。あら、この子が噂のさくらちゃんね」
噂の? 私そんなに噂になってるの?
そういえば最近くしゃみが多かったな。ただの花粉症だけど。
「あ、橋本さくらです。今日はお邪魔させてもらいます」
「さくらちゃんの話はよく美桜から聞いているわ。いつも娘が迷惑かけてない?」
「ちょ、ちょっとお母さんやめてよ!」
「いえ、いつも先輩にはよくしてもらってます」
「あら、そうなのね。これからも美桜のことよろしくね」
「はい」
「それでそちらのお人形さんみたいに可愛い子も後輩の子?」
やっぱりそう見えるよね。
「高橋花恋です。お邪魔します」
「二人とも上がっちゃって」
美桜先輩のお母さんは、とても綺麗でおしとやかな感じがした。
なのに・・・どうして娘はあんな風になってしまったんだろ・・・。
私が哀れんだ目で見ていると、美桜先輩が私の視線に気付く。
「桜ちゃん。なんか失礼なこと考えてるでしょ」
「いえ、別に」
自分の選んだ下着を着てもらいたいって、後輩に言ったりしてるのを知ったらと思うと、いたたまれない気持ちになった。
「じゃあご飯出来たらまた呼ぶわね」
「はーい。じゃあ私の部屋行こっか」
美桜先輩の部屋は2階にあるらしい。
くぼちゃんが言うには、ベッドがふかふからしいので楽しみだ。
「どうぞ」
美桜先輩が部屋のドアを開く。
部屋に入った私はすぐにベッドへダイブ!
「桜ちゃん!?」
おぉ・・・。これはなんとも・・・。
くぼちゃんが言ってたことは本当だった。
しかもダブルベッドなので広い。
「ふかふかだー。ふかふかー」
もうここから動きたくない・・・。
ご飯もここで食べる!
学校もこのまま行きたいから移動式ベッドに改造してもらおう!
「決めました。私は今日からここで暮らすことにします」
「えぇ!?」
美桜先輩と花恋ちゃんが声を揃えて驚く。
「わ、私は桜ちゃんがここで暮らしたいなら大歓迎だよ?」
「あ、先輩は別の部屋に移動してくださいね」
「どうして!? ここ私の家で私の部屋なんだけど!?」
それにしてもこんなふかふかだなんて、一体このベッドはおいくら万円するんだろ。
「まぁ・・・暮らすのは・・・お母さんに・・・怒られそうなので・・・」
早くも微睡み始めた。
「・・・毎日・・・寝に・・・・・・」
「・・・・・・」
「えっと・・・桜ちゃん?」
「寝ちゃいましたね」
「どうしよ。今寝ちゃうとご飯の時に起こすの大変だよ」
「・・・・・・起きてますよ」
危うく寝るところだった。
お腹いっぱいになってから寝たほうが、もっと気持ちいいはずだから今は我慢しよう。
「いいベッドですね。毎日このベッドで寝たいです」
「毎日泊まりに来てもいいよ!」
本当に毎日泊まりたいくらいだ。
ただ、学校もあるしそうはいかない。
うーん、金曜日の夜から泊まって、月曜日はそのまま学校行けばいいのかな?
私の家は外泊とかそこまでうるさくないので、迷惑かけるなよと言われるぐらいで済むはず。
問題なのは、週末に美桜先輩と常に過ごさなきゃいけないということだけど・・・。
私はふかふかのベッドと美桜先輩を天秤にかける。
・・・ベッドだな。美桜先輩は適当にあしらえばいい。
美桜先輩は毎日泊まりに来ていいって言ってるからあとは・・・。
「ちょっと聞いてきます」
私は部屋を出て、美桜先輩のお母さんに許可をもらいにいくことにした。
「ちょ、え? どこ行くの?」
慌てて美桜先輩と花恋ちゃんがついてくる。
リビングへ行くと美桜先輩のお母さんはご飯の支度中だった。
「あら、さくらちゃん。どうしたの?」
「あの、お願いがありまして・・・」
「なぁに? 夜ご飯に何か食べたい物でもあるの?」
「いえ、そうじゃないんですけど、これから週末泊まりに来てもいいですか? 必要であれば料理とか手伝いますので」
「あら」
「えぇ!?」
美桜先輩も花恋ちゃんも驚いている。
「さくらちゃんの親御さんは大丈夫なのかしら? 私としては大歓迎だけど」
「それは大丈夫です。ちゃんと言います」
「ならパパにも言わなきゃね。美桜はお姉ちゃんが1人暮らしを始めてから寂しそうだったし嬉しいわ」
「ちょ、ちょっとお母さんやめてよ!」
お姉さんいたんだ。
「ありがとうございます! 何か手伝うことはありますか? なんでも手伝います!」
「なんかすごいやる気になってる!?」
美桜先輩がちょいちょいツッコミを入れてくる。
「今日は大丈夫よ。ご飯楽しみにしててね」
「分かりました」
やった! やったやった!
これから毎週あのベッドで寝れる!
週末を楽しみに勉強も部活も頑張れそうだ!
「部屋戻りましょ!」
私は鼻歌交じりに上機嫌で部屋へと戻った。
部屋に戻った私は、ベッドの上に座りながら部屋を見渡す。
ダブルベッドがあるにも関わらず、部屋がとても広く感じる。私の部屋の倍ぐらい広いかも?
勉強机の上も綺麗に整理されていて、常に掃除や整理整頓をしっかりしているのが分かる。
壁も特に飾ったりしていなくて、今時のJKにしては綺麗な部屋だ。
それにしても2人が中々部屋に戻ってこない。何してるんだろう。
「ん?」
遅いなーと部屋を眺めていると、机の横の壁にポツンと何か貼られているのに気付く。近付いて見てみる。
「なんだこれ?」
それはどこかのショップのレシートだった。
「なんでレシートが・・・?」
日付は先週の土曜日だ。
先週の土曜日といえば、美桜先輩とラケットを買いに行った時だ。
「ワンピース・・・」
レシートの購入の項目にはワンピースと印字されている。
「私に服を買ってくれた時のレシートか」
でもなんでこんなの壁に貼ってるんだ?
まさか! いつか私に請求しようとしてるのでは・・・!?
「あぁ!!!」
急に大声で叫ぶ声が聞こえる。
びっくりして振り返ると、美桜先輩と花恋ちゃんが部屋に戻ってきていた。
「な、なんですか? 先輩うるさいです」
「み、見ないで!!!」
私が見ていたレシートを急いで壁から剥がす。
「先輩。なんで私に買ってくれたワンピースのレシートを壁に貼ってるんですか?」
「そ、それはその・・・」
「まさか私に後日請求しようとしたんですか?」
「え? ち、違うよ! そんなことしないし!」
違うの? じゃあなんでわざわざ貼ってるんだ?
「ならどうして貼ってるんですか?」
「え、えっと、その・・・、き、記念に・・・」
記念? なんの?
「記念ってなんですか?」
「ほ、ほら。桜ちゃんワンピース着てくれたでしょ?」
「はい」
「う、嬉しかったから記念に残しておこうかと・・・」
「はぁ、そうですか」
なんだそんな理由か。お金払えって言われなくて良かったよ。
それにしても、レシートを壁に貼るなんて変な人だな。
「先輩って変な人ですね」
「え? そ、そう?」
「美桜先輩にとっては大事な物なんですね」
花恋ちゃんがなんとなくその気持ち分かりますと言っているが、わたしにはよく分からない。乙女心って難しいのね。・・・私も一応乙女なんだけどなぁ。
「なんだかよく分からないですけどそうなんですね」
「そ、そうなの!」
美桜先輩は物を大事にしそうだし、きっとレシートもそうなんだろうな。・・・本当にそうなの? レシートだよ? 私はレシートなんかすぐに捨てちゃうなぁ。
「あ、それよりさっきのことですけど」
「え?」
「これから毎週、週末に泊まりに来るのでよろしくお願いしますね。金曜日は部活終わったらそのまま行きます」
「ほ、本当にいいの?」
「はい。このベッドで寝れますし」
本当は毎日寝たいけど仕方ない。週3日で我慢しよう。
「桜ちゃんがいいならいいんだけどさ」
「私もたまに泊まりに来てもいいですか? 毎週はお母さんにダメって言われると思うので」
「もちろん!」
「あ、そういえば、お母さんがまだご飯出来ないから、先にお風呂入ってって」
お風呂かぁ。髪洗うのめんどくさいし、乾かすのめんどくさいなぁ。
・・・あ! 美桜先輩に全部やってもらえばいいのか!
「先輩一緒に入りましょ」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
え、何? めっちゃうるさい。
そんな大声で叫ばないでいただきたい。
「先輩うるさいです。何を驚いてるんですか?」
「だだだだだって一緒にお風呂入るって!」
「え? なんかおかしいですか? 花恋ちゃん私おかしいかな?」
女の子同士でお風呂入るのってそんなにおかしいの?
「えっ? ど、どうだろ? おかしくないかな?」
ほら、花恋ちゃんもおかしくないって言ってる。
「そ、そうだよね。べ、別におかしくは・・・ないかな?」
「じゃあ入りましょ」
「か、花恋ちゃんも一緒に入ろ!?」
「え? 私もですか?」
「うん!!!」
美桜先輩がすごい勢いで頷いている。首外れない? 大丈夫?
結局、3人でお風呂に入ることになった。




