21.Girls talk -Mio&Karen-
「まぁ、なんでもいいですけど私は寝ます。夕方になったら起こしてください。おやすみなさい」
冗談だと思っていたけど、桜ちゃんが寝る体勢に入った。
「本当に寝るの?」
「・・・・・・」
返事が返ってこない。
「さすがにゴロゴロするだけじゃないですか?」
「それならいいんだけど、桜ちゃんなら寝かねないかも・・・」
この子寝るの大好きみたいだし。しかも、睡眠の邪魔をするとかなり怒る。
そうして、数分もしない内に桜ちゃんが寝息を立て始めた。え? 本当に寝たの? 早くない?
「花恋ちゃん。桜ちゃん本当に寝ちゃったよ」
桜ちゃんが寝てしまったので小声で話す。
「本当ですか? ついさっきまで起きてたじゃないですか」
「寝るの大好きなんだね。・・・あ、ねぇ見て見て。桜ちゃんの寝顔可愛い」
私がそう言うと花恋ちゃんも桜ちゃんの顔を覗き込む。
「可愛いですね。すごい気持ちよさそうに寝てます」
今なら桜ちゃんに色々できるかもしれない。とりあえずほっぺをつついてみることにした。
──プニ。
うわぁ。柔らかい。
私が遠慮しないでつついていると花恋ちゃんが注意する。
「美桜先輩。起きちゃいますよ。また怒られても知らないですからね」
それは嫌だ。
名残惜しいがつつくのをやめる。
「あ」
いいこと思いついちゃった。
「どうしたんですか?」
私は静かにベッドから降りて、バッグの中から携帯を取り出す。
「先輩?」
私はシー、と花恋ちゃんに静かにするように言い、カメラを起動する。
「ちょっと美桜先輩! それはさすがにマズイんじゃないですか!」
ヒソヒソ声ながらも強めにそう言って、花恋ちゃんが止めに入る。
「大丈夫だから!」
私は念の為、桜ちゃんがちゃんと寝ているか確認する。
スースーと気持ちよさそうに寝息を立てている。・・・よし、寝てる。
「撮ってるのバレて、口聞いてもらえなくなったらどうするんですか」
花恋ちゃんが必死に止めようとする。
こんなに可愛い寝顔を見れて、しかも撮影できるチャンスは滅多にない。
「絶対起きないから大丈夫」
私は撮影しやすい位置へとゆっくりベッドの上を移動する。
ベストポジションを見つけ、シャッターボタンを押す。
──カシャ
桜ちゃんは微動だせず、寝息を立てている。
「ほら、大丈夫って言ったでしょ?」
「本当に知らないんですからね」
私は撮影した画像を確認する。
「キャー! もう可愛いすぎー! 見て見て花恋ちゃん!」
「ヨダレ垂れてますね。これ本当にバレたらやばいですよ」
大丈夫大丈夫と言いながら写真を眺める。
うーん・・・待ち受けにしちゃおうかな!
寝顔をもう一度間近で見てから、起こさないようにベッドから降りる。
「美桜先輩は本当にさくらちゃんがお気に入りなんですね」
「そうだよー。あ、ラケット買いに行った時にプリクラ撮ったの」
花恋ちゃんにプリクラを渡す。
この時の桜ちゃんは照れてて可愛かったなぁ。
「あれ? さくらちゃんのこの服・・・?」
花恋ちゃんがプリクラを見て何かに気付く。
「美桜先輩が今日着てるのと一緒ですね」
「そうなのー! 桜ちゃんに買ってあげたんだけど、そのあと私も買いに行っちゃったの。桜ちゃんは今日の私を見てまだ気付いてないみたいだけど」
「服まで買ってあげちゃうなんて、よっぽどさくらちゃんのこと好きなんですね」
「この時はわざわざこの服に着替えてくれたんだ。まさかそんなことまでしてくれると思わなくて、すごく嬉しかったの!」
「あのさくらちゃんが・・・。意外です」
「あ、このこと話したっていうのは内緒だからね。また怒られちゃうかもしれないから」
「わかりました」
このプリクラは私の大切な宝物だ。ずっと大事にしよう。
桜ちゃんと撮ったプリクラをにやけながら眺める。
「さくらちゃん寝ちゃいましたけどどうします?」
「うーん。どうしよっか」
「起きるまでは寝かしておいた方がいいと思いますけど」
「そうだね。無理矢理起こしたら絶対怒るからね」
気持ちよさそうに寝てることだしね。
「私は美桜先輩の家に泊まるつもりで準備してきましたけど、桜ちゃんは泊まってくれますかね?」
「泊まりに来てほしいけど、嫌がりそうなんだよねぇ。なんかいい作戦ないかな?」
「普通にお願いしても来てくれないですよね?」
「来ないだろうね。家から出たくないとか言いそう。これが部活後とかなら可能性あるんだけどね・・・」
「さくらちゃんの家に泊まるのもダメって言われましたしね」
「そうなんだよー。このベッドなら3人で寝れそうなのになぁ」
何か桜ちゃんが私の家に泊まってくれる方法がないか考える。
・・・・・・。
「あ」
「どうしました?」
「いや、思いついたんだけどさ・・・」
「どんな作戦ですか?」
うーん・・・。この作戦は本当に奥の手になってしまうし、桜ちゃんが怒る可能性があるよね・・・。
「さっきさ、桜ちゃんの寝顔撮ったでしょ?」
「はい。起きないかヒヤヒヤしました」
「・・・」
「まさか美桜先輩・・・」
花恋ちゃんが何かに気付き、両手で口元を覆う。
「ダメですよ! 絶対怒りますよ!」
「・・・だよね」
「さくらちゃんに嫌われてもいいんですか?」
「それは絶対嫌!」
でも、これぐらいしか思いつかない・・・。
「もしもの時はこの奥の手で・・・」
「私は知りませんからね!」
「うーん。何か他に方法を考えよう」
そのあとも花恋ちゃんと考えを巡らせて意見を出し合ったけど、どれも断られそうという結論に至ってしまう。
作戦を考えている内に、いつの間にか桜ちゃんが言ってきそうなことを予想したりしていた。
「じゃあ次は・・・夜ご飯はハンバーグにしてもらうようにお願いするからっていうのはどうですか?」
「いや、ハンバーグこの前先輩と食べたじゃないですか。そんな毎回食べたいわけじゃないですし、食べたいなら先輩だけ食べればいいじゃないですか」
「アハハ! 言いそうです!」
「だよねだよね!」
自分で言っててちょっと虚しくなった。
他にはどんなこと言いそうかなぁ・・・。
「美桜先輩。私の寝顔撮りましたね。今すぐ消してください」
急に桜ちゃんが話し掛けてきてびっくりする。一瞬、心臓が飛び出そうになった。
起きてたの!? 起きた気配感じなかったよ!?
「な、ななななんでそれを知ってるの!? 起きてたの!?」
私は助けを求めようと花恋ちゃんを見る。
私を巻き込まないでください!とでも言っているかのように、全力で首を振っている。花恋ちゃん助けてよ・・・。
「消してくれますよね?」
桜ちゃんがベッドの上に立ち上がり、鬼のような形相で私を見下ろしてくる。
どうしよどうしよどうしよ!!!
どうにかこの場を乗り切れないかと考える。
・・・あ! 奥の手を逆に利用すればいいのか!
「じゃ、じゃあ、このあと私の家に泊まってくれるなら消すけどー?」
撮ったことを認めることになるけど、これしか今を乗り切る術はない!
しかし、そう簡単にはいかない。
「行きませんよ。家から出たくないですし」
お、終わった・・・。
このままでは桜ちゃんに嫌われてしまうし、私の家にも泊まりに来てくれない・・・。
今にも泣き出しそうになる私を救ってくれたのは花恋ちゃんだった。
「さくらちゃん。私は美桜先輩の家に泊まる準備してきたし、せっかくだから泊まろう?」
か、花恋ちゃん!!!
この子はなんていい子なんだ・・・。天使だ・・・。
桜ちゃんが少し考える素振りを見せる。
「ま、まぁそれなら行ってあげなくもないけど」
奇跡の大逆転が起きる。
花恋ちゃん本当にありがとう・・・。
「やったー!」
花恋ちゃんも喜んでいる。
あれ・・・? ちょっと待って?
私の時は頑なに拒んでたのに、花恋ちゃんが言うとこんなにもあっさりと承諾するの?
少しムッとなった私は桜ちゃんに文句を言う。
「私がお願いしたらすぐ断るのにー!」
「うるさい先輩うるさいです」
やっぱり私の扱い酷くない・・・?
ま、まぁでも! 泊まることになったからよしとしよう。ちょっと納得いかないけどね!




