佐藤美桜の想い
桜ちゃんを見送り、私も帰ろうかなと思ったところで声が聞こえ振り返る。
桜ちゃんが小さい女の子と話していた。
・・・近所の子かな?
小さい子にも慕われるなんて、桜ちゃんはやっぱりいい子だなぁ。
でも、変なこと教えたりしないかちょっと心配。
「かーえろっと」
今日は嬉しいことがたくさんあって、本当に楽しかったし幸せだった。
桜ちゃんの新たな一面も見れて、今日だけで生きてる内の幸せを全て使い果たしたんじゃないかと思うぐらい。それはちょっと大袈裟かな? でもそれぐらい幸せだったってこと!
「もう何なのあの子! 可愛すぎ!」
歩きながらクネクネしているとすれ違った人に驚かれる。
そんなことは一切気にせず歩き、今日のことを思い出す。
まずはラケットの色がお揃いになったことでしょー、色んな服を桜ちゃんに着てもらって目の保養になったことでしょー、買ってあげた服も受け取ってもらったしー。
「・・・・・・」
でも、まさか・・・その買ってあげた服に着替えてくれるなんて思わなかった。
いつか、桜ちゃんに着る勇気が出る時まで、気長に待っていればいいって、そう思っていた。
あの様子だと相当な勇気を振り絞ったに違いない。そしてたくさんの不安があったはず。
それでも、桜ちゃんは着てくれた。
そんな桜ちゃんを見て、気付いた時には抱き締めていた。
本当に可愛くて可愛くて、愛おしくてたまらなかった。
本当に・・・本当に大好きだ。
それに多分、少しだけ心を開いてくれたような気がした。
いっぱい笑ってくれたり、いっぱい話してくれたり、いっぱい意地悪もされたけど。
帰り道、桜ちゃんが私に言った言葉。
「どんだけ私のこと好きなんですか」
この言葉にもちろん『好き』と返した。
桜ちゃんがこれを『後輩として好き』って捉えてるのは分かっている。
桜ちゃんに私の本当の気持ちを知ってもらいたい。
でも、それは今すぐにじゃない。
ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて知ってもらえればいい。
影法師が長く、長く伸びている。
私は、茜色に染まる空を見上げた。
「大好きだよ。桜ちゃん」
静かにそう、呟いた。




