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30.花火大会前日 二階堂咲蘭の場合
「ちょっと宮下! なんですのこの浴衣の色は!」
「何かまずかったでしょうか?」
まずいも何も、お願いした色と違いますわ!
「黒の浴衣をお願いしたはずですわ! どうしてピンクですの!」
「そうでしたか? これはこれは、大変失礼しました」
「今すぐ黒の浴衣を用意させなさい!」
「お嬢様。今はこの浴衣しかございません。店で買うとしてもこの時間ですとどこも閉まっていますよ」
時刻は22時を回っている。
「どうにかなりませんの!?」
「なりません。なので、是非とも明日はその浴衣を着ていただければと思います」
明日は場所取りもありますし、早い時間に出ることになっていますわ。
別の浴衣を用意する時間はなさそうですわね・・・。
「・・・仕方ないですわね。我慢しますわ」
「ありがとうございます。きっと明日になれば、お嬢様もその浴衣で良かったと思うかもしれません」
「それはどういった意味ですの?」
「ほほほ。明日のお楽しみですよ」
「なんですのー!」
「お嬢様。そろそろお休みの時間です」
気になって寝れませんわ!
「・・・わかってますわ! おやすみなさい!」
──バタン!
勢いよく部屋のドアが閉まる。
「花恋様とお揃いの色となれば、きっとお嬢様も喜ぶことでしょう」
「おやすみなさい。お嬢様」




