二階堂咲蘭の嬉々
「おかえりなさいませ。お嬢様」
「えぇ。宮下。いつもご苦労様ですわ」
おや? こんな風に私を労うとは、何かいい事があったのでしょうか。
「お嬢様。今日は機嫌が宜しいですね」
「そうかしら? いつも通りですわ」
そうは言っていますが、鼻歌まで歌っていますよお嬢様。
「先程の電話の件ですが、当日は道路の混雑が予想されますので、早めに向かった方が良いかと思われます」
「なるほど。では、さくらさん達にもそう伝えておきますわ。それと浴衣ですが──」
あぁ、そういう事でしたか。
花火大会に誘われたのが、余程嬉しかったのですね。
こんなにも楽しみにしているお嬢様を見るのはいつぶりでしょうか。
さくら様と親しくなられてから、更に明るくなり、その日の出来事を楽しそうに話すようにもなりました。
これもさくら様のおかげですね。さくら様、ありがとうございます。
「咲蘭様」
「なんですの? 名前で呼ぶなんて珍しいですわね」
「とても良いご友人をお持ちになられましたね」
こちらまで幸せな気持ちになります。
「な、なんのことですの! 仕方なく仲良くしてるだけですわ!」
すぐに照れ隠しをするのは、昔から変わりません。
「そうですか。咲蘭様、ご友人はこれからも大事にしてください」
「わ、分かってますわ!」
それからの咲蘭様は、1日経つ度に花火大会の日を何度も確認してきました。
とても楽しみにされているんでしょう。
楽しみにされているその姿は、まるで小さい頃の咲蘭様を見ているようで、とても懐かしく思えました。




