26.熱海旅行 2日目
「桜ちゃん、桜ちゃん」
「ほえ?」
「もうすぐ日の出だよ」
そういえば、日の出を見るから起こしてとお願いしていたんだった。
・・・・・・眠い。
私以外は皆起きていた。
「おはようさくらちゃん」
「おはようございます・・・」
眠い目を擦りながら、私も窓際へのそのそと移動する。
外を見ると、ちょうど太陽が水平線から顔を覗かしていた。
「おぉー」
これはこれは。こんなに綺麗に日の出が見えるとは。空もオレンジ色に染まっている。
「綺麗だねー」
「そうだね。早起きして良かったね」
「うん。でもまだ眠いから、もう一眠りすることにします」
目的を果たした私は、またのそのそと布団の中に戻った。
「もうちょっとぐらい感動の余韻に──」
「おやすみー」
美桜ちゃんの言葉に被せ気味に言って、私はまた眠りについた。
「んぅ・・・」
「あ、やっと起きた。おはよう桜ちゃん」
「おはよ・・・。今何時・・・?」
「9時半だよ。ママ達は温泉に入ってる」
朝風呂かー。気持ちよさそうだな。
「ずっと起きてたの?」
「ううん。私もあのあと少し寝たよ」
「そうなんだ。起こしてくれてありがとう」
日の出綺麗だったなぁ。写真撮っとけば良かった。
「いいえ」
「美桜ちゃんは日の出の写真撮った?」
「撮ったよ! 送ってあげようか?」
「お願いしまーす」
すぐに美桜ちゃんから、日の出の写真が送られてくる。
うん。いい感じに撮れている。
もう一枚美桜ちゃんから送られてくる。
私の後ろ姿が写った写真だった。
「撮ってたの気付かなかった」
「すごくいい写真。待ち受けにしちゃおうかな」
「うわぁ・・・」
私の写真を待ち受けにするとかもうファンじゃん。さくらファンクラブ設立しようかな。
「ちょっと! 引かないでよ!」
「待ち受けにしてはいけません。ちゃんと事務所通してもらわないと」
「いつから事務所に所属してるんだし」
そんな会話をしながら、海に行く準備を始めた。
旅館からも歩いて行ける場所に海水浴場がある。
夏休みということもあり、家族連れなど多くの人で賑わっていた。
「桜ちゃん、日焼け止め塗るよー」
「変なところ触ったら海に沈めるからね」
「すごい物騒だ!?」
セメント用意しとくべきだったかな。
私はシートの上にうつ伏せになる。
「じゃあ塗っていきますねー」
「ひゃっ!」
クーラーボックスに入れていたせいか、日焼け止めが冷たくなっている。その冷たさに思わず声が出てしまった。
「あら、冷たかった?」
そう言いながらまた垂らしきた。
「ちょっと冷たい! わざとやってるでしょ!」
「えー? わざとじゃないよー?」
絶対わざとだ。本当に海に沈めてやろうかしら。
ある程度背中に塗ってもらってから塗るのを交代する。
「はい寝そべってー」
「お願いしまーす」
さてと。どうやって塗ってやろうか。
美桜ママ達は、かき氷を買いに行っている。2人が戻ってこない間に・・・。
私は美桜ちゃんの背中に、たっぷりと日焼け止めを垂らす。
「冷たーい!」
そして立ち上がり・・・。
「はーい、塗っていきますよー」
──ベタッ
「ちょ、ちょっと桜ちゃん!? なんで足でやってるの!?」
「えー? 足でやってるように見えるー?」
なんだかいけない気分になってくる。ちょっとハマりそうかも。
「見えるんじゃなくて、足でやってるじゃん!」
美桜ちゃんが起き上がろうとしたので、足に力を入れてそれを阻止する。
「おっと、美桜ちゃん。まだ塗り終わってないよ?」
「や、やめてー! 私が悪かったから!」
「やめなーい! あははは!」
圧倒的な支配を感じながら、足で日焼け止めを塗り続ける。ふはははは! ひれ伏せー!!! あ、もうひれ伏してるか。
「まったく! このえっろいおしり!」
──ペチン!!!
美桜ちゃんのおしりを引っぱたく。いい音しやがるぜ!
「おしり引っぱたかないで!」
「いいケツしてるね姉ちゃん。揉み心地も最高だ」
「誰!? 揉み心地とか言わないで!」
おっと。ちょっと悪ノリが過ぎたようだ。
これ以上は何か目覚めてしまいそうなので、ここら辺で終わりにしておこう。え? もう手遅れ? そんなことないよー。
「はい終わり」
「もうっ! 桜ちゃんのバカ!」
ちょうど塗り終えた頃に、美桜ママ達が戻ってきた。
「かき氷買ってきたぞー!」
「美桜ちゃんの分も私が食べまーす!」
「なんでよ! 私も食べるもん!」
「あんまり沖の方まで行くなよー!」
「はーい!」
かき氷を食べ終えた私達は、早速海へと繰り出す。
「こうやって、ちゃんと海で遊ぶの久々だなー」
「これからは毎年、海とかプールで遊ぼうよ!」
「えー。どうしよっかなー」
まぁ、遊んであげてもいい──。
──バシャ!
「っぷあ! しょっぱ!!!」
美桜ちゃんが私に海水をかけてきた。
「やったなー!」
私もお返ししてやろう!!!
しかし、美桜ちゃんはそれを予想していたのか身構えている。
それなら・・・。
「もうこれから絶対絶対ぜーーーったい遊んであげなーい!」
私は腕を組んで拗ねてるフリをする。
「やだー!!! ごめんね桜ちゃん!」
「本当にそう思ってるのー?」
「思ってるよ! だから遊ぼ?」
さて、どうしようかな。
「じゃあ、両手を後ろに回して、目を瞑ってください」
「え? なんで?」
「いいから!」
「は、はい!」
私の言う通りに手を後ろに回し目を瞑る。
フフフ、ちゃんとお返しはさせてもらうよ。
私は美桜ちゃんの顔に思いっきり海水をかけた。
「ッ!!!」
「アハハハ!!! 引っかかったー!」
「ついでにワカメも乗せちゃえ!」
ぷっ! ワカメが乗った美桜ちゃん面白い!
「さーくーらーちゃーん!!!」
「わー! 逃げろー!」
私は海の中へ逃げる。
「待てー!」
「待てと言われて待つバカは美桜ちゃんだけだよー!」
「ひどい!」
しかし、余裕をかましすぎたせいで、あえなく美桜ちゃんに捕まってしまう。
「捕まえたー!」
美桜ちゃんが後ろから抱きつく。
やはり水着だからだろうか、豊満な胸の感触が背中に伝わる。
「ねぇ、美桜ちゃん」
「なぁに? 離さなさいぞー!」
「おっぱいムニュムニュしないで」
「なっ!!!」
私から勢いよく離れ、両手で胸を隠す。
「おっぱいに殺されるー!」
私はまた逃げた。
「ちょっと!!! 声大きいから!!!」
追いかけっこに疲れた私達は、砂で山を作っていた。
「目標は富士山超え!」
「絶対無理だよ?」
「美桜ちゃん。諦めたらそこで試合終了だよ?」
私はチッチッチッと指を振る。
「なんの試合よ」
そう言いつつも、山を作るのを手伝っている。
──数分後
砂遊びに飽きてきてしまう。
「おりゃー!」
「あ!!! ちょっと!」
私は作った山を一気に壊した。
「あーあ。せっかく作ったのに」
「試合終了です」
「さっきのセリフはなんだったの・・・」
そのあとも、美桜ちゃんを砂に埋めて放置したり、カニを美桜ちゃんに押し付けたりして遊んだ。
私、美桜ちゃんに嫌がらせしかしてないな。まぁ、楽しいからいっか!
どれくらい時間が経ったか分からないが、お腹が減ってきたので、一旦美桜ママ達の所へ戻る。
「2人とも元気だなー! 美桜が埋められてる写真、遠目からだが撮っといたぞ!」
「その写真、あとでください!」
私はサムズアップをしながらお願いする。
「任せろ!」
美桜パパもサムズアップで返してくる。ついでにウインク付き。
「送っちゃダメ! パパも消して!!!」
「ダメだよ美桜ちゃん。面白いんだから。というか、そんなことは置いといて、お腹空きましたね。何か買ってきましょうか?」
美桜ちゃんがワーワー言うのを無視しながら、お昼をどうするか聞く。
「じゃあ、お願いしてもいいか? ママは何食べる?」
「焼きそばをお願いしようかしら」
「じゃあパパ達は焼きそばで!」
「わかりました。ほら、美桜ちゃんも行くよ!」
「桜ちゃん! 絶対パパから写真もらっちゃダメだからね!」
「まだ言ってるのー? 私の待ち受けにしようとしたのに」
「え・・・。桜ちゃんが私を待ち受けに・・・。それは悩むな・・・」
何に悩むんだよ。
とりあえず、焼きそばが冷めないうちに早く戻ろう。
「ねーねー! そこのお揃いの水着の子!」
後ろから誰かに声を掛けられる。私と美桜ちゃんが同時に振り向く。
お揃いの水着を着ていたので、思わず反応してしまった。
「げっ」
そこには、いかにもチャラそうな男2人組がニヤニヤしていた。
「なんですか?」
「今から焼きそば食べるの? なら俺らと食べようよ! 酒もあるし!」
うわぁ・・・。ガチのナンパじゃん。
「私達未成年なので結構です。行こう美桜ちゃん」
「えーなになに! その子美桜ちゃんって言うの? 美桜ちゃん俺らと遊ぼうよ!」
「え、いや・・・」
チャラ男が美桜ちゃんの肩に手を触れようとしたその時──。
「娘達に何か用か?」
チャラ男の手を美桜パパが掴んでいた。
「あ? なんだおま・・・。・・・い、いやぁー。なんつーか、アハハ・・・」
「私が遊び相手になろうか?」
「だ、大丈夫っす!!!」
チャラ男達は逃げるように去っていった。
美桜パパかっこいい・・・。私惚れちゃう・・・。
「大丈夫か2人とも?」
「う、うん。パパありがと」
「ありがとうございます」
「何もされなくて良かった。さぁ、ママが待ってるし戻ろう!」
私が美桜パパと同い年ぐらいだったら、絶対結婚したいとそう思った。
──チャポン
「いっぱい遊んだねー!」
「うん。遊び過ぎて疲れた」
海から旅館に戻り、露天風呂でゆっくりと疲れを癒していた。
「美桜ちゃんの家のお風呂も好きだけど、露天風呂もいいねー」
「そうだねー」
このまま寝てしまいたい。のぼせちゃうけど。
「今日の夕食なんだろうね?」
「なんだろねー」
「・・・・・・」
「明日お土産買わないとね」
「そだねー」
「・・・・・・」
お風呂が気持ちよくボーッとしてしまう。
「気持ちいいねー」
「そだねー」
「・・・・・・」
「あの・・・あれだよ? 喋るのめんどくさいとかじゃなくて、気持ちよくて、ね?」
「分かってるよー」
美桜ちゃんも同じような感じらしい。
「花恋ちゃん達に何買ってこうかなー」
「私も部活に買っていかなきゃー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
──チャポン
「いい湯だねー」
「そだねー」
その後、ゆっくりし過ぎて2人とものぼせたのだった。




