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恋の案内人  作者: 翁
過去からの解放
100/255

25.熱海旅行 1日目

100話目です。

いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価していただけると大変励みになります。


またまだ文章技術など拙いですが、これからも恋の案内人をよろしくお願いします。









「海だー!」


 今日は美桜ちゃんの家族と旅行で熱海に来ている。

 美桜パパが運転する車からは、広大な海が見えていた。


「テンション上がるね桜ちゃん!」


「いや? 普通だけど」


「つい今さっき、海だー!って言ってたじゃん!」


「うるさい美桜ちゃんうるさい」


「ひどい!!!」


 海で遊ぶのはいつぶりだろうか。多分、小学生以来?

 中学生の頃は部活に明け暮れてたしな。


「パパー! 今日は海行かない?」


「そうだな。行くなら明日にしよう」


「はーい」


 どうせなら長い時間遊びたいし、明日の方がいいだろう。


「今日は何するの?」


「とりあえず、旅館に車を置いてご飯を食べに行こう。そこから軽く観光だな」


「ほっけ食べたーい!!!」


 この前話してたお店か。私も早く食べてみたい。


「もちろん、今日のお昼はそこで食べるつもりよ」


「やったー!」


「美桜ちゃん小学生みたい」


 おっと、心の中で言ったつもりが、つい口に出てしまった。


「だって嬉しいんだもん!」


「そうかそうか、良かったねー美桜ちゃん」


 私は美桜ちゃんの頭をよしよしと撫でた。


「・・・」


 あれ? いつもなら子供扱いしないでって怒るのに。今日は素直に撫でられるんだな。


「今日は怒らないの?」


「もっと撫でて」


 まさかのおかわりですか? 両親いるのに大胆ね!


「美桜ママ、この子甘えん坊なんですけど・・・どうしましょうか?」


「そうねー。困ったわねー」


 絶対困ってない言い方だ。


「わがまま言うなら、水着は着ないでおこうかな・・・」


「絶対に嫌!!!」


 まるで駄々っ子。育てた親の顔が見てみたい! すぐ近くにいました。


「どんな水着にしたのかしら?」


「秘密ー!」


 そこ秘密にする必要があるの? 彼氏に見せるわけでもないのに。


「美桜ちゃんがお揃いの水着じゃなきゃ嫌ってうるさかったんです」


「そうなの? ごめんねさくらちゃん。美桜はわがままだから大変でしょ?」


「そりゃあもう、大変で大変で」


 今までどれだけのわがままを聞いてきたことか。その分私も聞いてもらってるけど。


「ちょっと桜ちゃん!?」


「ハハハ! 賑やかでいいなぁ! よーし! パパも飛ばすぞ!」


「パパ? さくらちゃんはまだ怪我治ってないんだから、安全運転でお願いします」


「あ、あぁ・・・。そうだな・・・」


 どれぐらい飛ばすかちょっと楽しみだったけど、自分が怪我人だったことをすっかり忘れていた。


「パパ怒られてるー!」


 そのあとの美桜パパはしっかり安全運転だった。



「お待ちしておりました。佐藤様」


 旅館に着いた私達は、女将さんに部屋へと案内してもらう。


「わー! 部屋広ーい!」


 美桜ちゃんの言う通りとても広い部屋だ。

 そして、窓からは広大な海を一望できる。いい眺め。


「こちらのお部屋は、日の出がとても綺麗に見れますので、是非早起きしてご覧になってみてください」


 へー。それは見てみたい。美桜ちゃんに起こしてもらわないと!


「夕食はお部屋にお持ちいたします。では、どうぞごゆっくりお過ごしください」


 こんなにいい旅館に泊まったのは初めてだ。というか家族で旅館に泊まったことってあったけ。


「とてもいい部屋ですね」


「そうだろ? 前にも泊まりに来たことがあるんだ」


「あら? 一体誰と来たのかしらね?」


 美桜ママとじゃないのか。てっきり2人で泊まりに来たのかと。


「パパ、もしかして浮気してるの!?」


「ち、違う違う! 会社の旅行でだよ!」


「本当かしらー?」


 美桜ママの鋭い眼光が美桜パパに突き刺さる。


「ほ、本当だよ! ママにもお土産買っていっただろ?」


「そうね。冗談よ。フフフ」


 み、美桜ママ・・・。新たな一面を見たような気がした。女って怖い。

 私は窓際へ移動し、外を眺める。

 とてもいい旅館なのは間違いない。しかし、気になるのは値段だ。

 部屋も広い、景色も良い、しかも露天風呂付き。きっとお高いんでしょー?

 でも、美桜ちゃんにお金の心配するの禁止と言われたから、聞くこともできない。

 なので、ここは値段のことを気にせず感謝しておく。美桜パパ! ありがとう!!!


「じゃあお昼食べに行こうか!」



 熱海の駅から少し歩いた場所に、私達が行く定食屋さんがある。


「やっぱお昼だから並んでるねー」


 美桜パパが順番待ちの用紙に名前を書いて戻ってきた。


「結構待つかもしれないな。もしかしたら1時間近く待つかもな」


 そんなに待つのか・・・。私のお腹、我慢できるかしら。


「それぐらい待ってでも食べたくなるお店だし、仕方ないわね」


 そんな美桜ママも絶賛しているお店の外観は、宿のようなな作りになっている。

 お店の入口からは、魚を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。


「桜ちゃん! このお店ネットにホームページあるから、そこで写真付きのメニュー見たりできるよ!」


「へー。これなんて読むの?」


 店名で読めない漢字があった。


「それはね"いろり"って読むんだよ!」


 なんか聞いたことあるけどなんだっけ? 囲炉裏について調べてみる。


「屋内に設けられる炉の一種」


 写真を見て、あぁーなるほどと合点。昔話でよく出てくるやつだ!

 店内も昔ながらって感じなの作りかな?

 お店のホームページを見てみると、確かに囲炉裏があった。


「なんかいい感じの雰囲気のお店だね」


「でしょでしょ? 昔の人の気分を味わえるのがいいよね!」


 お店の雰囲気の写真からメニューの写真へと目を移す。人気メニューの金目鯛の煮付けがとても美味しそうだ。


「どれも美味しそうで悩むなー」


「そうなんだよねー。私も悩んじゃうんだー。だからなるべく、お店に入る前にこうやってホームページでメニュー見てる!」


 まだ案内されるまで時間あるだろうし、ゆっくり決めるとしよう。


 ──5分後


 ひとまず全てのメニューに目を通す。

 美桜ちゃんはほっけが美味しいって言っていた。

 あんなに美味しいと言ってたし、是非食べてみたい。

 でも、刺身も食べたいんだよなぁ・・・。

 ほっけだけの定食にするか、ほっけと刺身両方楽しめる定食にするか・・・。普通に考えれば後者だけど・・・。


 ──10分後


 ほっけも美味しそうなんだけど、鯵のまご茶漬けも美味しそう。3種類の干物の定食も捨て難い・・・。

 悩む・・・。


 ──20分後


 ご飯をネギトロ丼に変えることもできるのか!

 あー。ネギトロ丼の口になってたきた。もう全部食べたい・・・。


 ──30分後


 ダメだ・・・。決まらない・・・。

 迷いに迷い、私は頭を抱えていた。


「悩んでますなー桜さん」


「悩みますなー美桜さんや」


 私が生きてきた中で、一番悩んでいるかもしれない。


「美桜ちゃんは決まったの?」


「刺身も食べたいから、ほっけと刺身の定食にする!」


「やっぱそれいいよねー。私もそうしようかな」


 どうせなら両方食べたいし!


「2人とも、金目鯛の煮付けは食べたいか?」


「食べたい!!!」

「食べたいです!!!」


 私と美桜ちゃんは即答した。


「なら金目鯛の煮付けも頼もう。ここのは本当に美味しいぞ!」


「わーい!!!」


 そこから待つこと15分。

 ようやく店内に案内された。


「これが囲炉裏か」


 初めて実物を見た。

 なんだか、昔の時代にタイムスリップしたような気分だ。

 店内には色々な民芸品が置いてあり、より一層昔の雰囲気を味わえる。

 私達は掘りごたつの席に案内された。


「なんかいいね」


「でしょ? 店を出る頃にはまた来たいって思うよ!」


 確かにそれは思いそうだ。横浜にも姉妹店できてくれないかな。

 店員に注文を伝え、料理が来るのをワクワクしながら待つ。

 私のお腹も待ちきれないようだ。



「お待たせしました」


 次々と料理が到着し、テーブルいっぱいに美味しそうな魚が並ぶ。


「金目鯛の煮付け大きいー!」


「じゃあいただくとしようか!」


「いただきまーす!」


 まずはほっけから。

 箸を入れただけで脂がジュワッと出てくる。

 なにこれ絶対美味しい。

 脂で光った身を口の中へ。


「んまー!!!」


 あまりの美味しさに思わず声が出てしまう。

 はー! なにこれ!!! うますぎでしょふざけんな!

 やだ私ったら! ちょっとお下品な言葉遣いでしたわ! でも本当に美味しい。


「気に入ってくれたみたいで良かったわ」


 興奮気味な私を見て、美桜ママがにっこりと笑いながら言う。は、恥ずかしい・・・。

 普段、食卓に出てくるほっけとは比べ物にならない美味しさだ。

 美桜ちゃんや美桜ママが、あそこまで言う理由がよく分かった。

 私は一口、さらに一口と、ほっけを食べ進める。

 ほぇー・・・。本当に美味しいよぉ・・・。

 ありがとう海よ。ありがとう命。

 私は母なる大地ならぬ、大海原に感謝した。

 金目鯛の煮付けも、味が染みていてとても美味しい。

 身にたっぷりと煮汁を付け、ご飯にワンバウンドさせる。

 金目鯛を口に入れ、すぐにご飯も一緒に放り込む。


「んー!!!」


 幸せー・・・。私溶けちゃいそう・・・。

 魚ってこんなに美味しいんだね・・・。


「こんなに幸せそうな桜ちゃん、私のベッドで初めて寝た時以来だ!」


「だって美味しいんだもん・・・」


 料理も美味しい、店内の雰囲気も最高。また熱海に来る時は絶対にこのお店に来よう!



 最高のお昼を堪能したあとは、熱海で有名な神社へと足を運んだ。

 この神社は、日本屈指のパワースポットとまで言われているらしい。

 国指定の天然記念物で、樹齢2100年を超える御神木があり、その幹の周りを一周すると寿命が1年伸びると言われている。

 最近では縁結びでも有名らしく、カップルで参拝する人も多いらしい。・・・縁結びねぇ。


「桜ちゃんこれ見て!」


 美桜ちゃんが興奮気味で私を呼ぶ。


「なんか見つけたの?」


「落ち葉が可愛いの!」


 そこには落ち葉で作られたハートがあった。


「可愛いね。グリーンのハートだ」


「写真撮っとこ!」



「わー。これが御神木かー」


「すごいね・・・」


 樹齢2000年超えって普通にすごいよな。

 目の前の楠木はとても太く、力強い生命力を感じた。

 とりあえず、怪我が早く治るように祈っておこう。

 この楠木の他にも、樹齢1300年を超える楠木があった。

 こちらの楠木は、約300年前に落雷に遭ったものの、今でもたくさんの葉を茂らせていた。

 すごく強い楠木なんだな・・・。こっちにもお祈りしておこう。


 それから御守りを買ったりして旅館へと戻る。

 私は健康長寿の御守りを買った。

 美桜ちゃんにどの御守りを買ったのか聞いたけど、教えてくれなかった。なんで?

 旅館に戻ってからは露天風呂の温泉に入った。

 地平線へと沈んでいく夕日を眺めながらの温泉は格別だった。

 夕食後は運動も兼ねて、美桜ちゃんと近くの海辺を散歩することに。


「あまり遠くまで行くなよ!」


「はーい!」


 こうやって浴衣で散歩するのはなんだか新鮮だな。


「ご飯美味しかったね。お肉がすぐに口の中で溶けちゃってさ!」


「そうだね。しかも脂が甘かった」


 夕食は鉄板焼きがメインの懐石料理だった。本当に美味しい肉って溶けるのね。


「どう? 楽しい?」


「うん。すごく楽しい。美桜ちゃんの両親に感謝感謝。もちろん美桜ちゃんにも」


 さざ波の音がとても心地よい。お風呂上がりの潮風も気持ちよく感じる。月が照らす水面も幻想的に見える。


「桜ちゃんにね、元気出してもらいたいからパパにお願いしたんだ。毎年旅行には行くんだけど、桜ちゃんも絶対連れて行きたいって思って」


「そうなんだ。ありがとう。おかげで元気になったよ」


「良かった。まぁ、パパも最初から桜ちゃん連れていくつもりだっから、お願いは意味なかったんだけどね」


 意味なくは無い。その気持ちだけでもすごく嬉しい。


「いい思い出になりそうだよ」


「うん! 最高の思い出にしよっ!」


「うん」


 潮風に靡く髪を抑えながら、美桜ちゃんが私に笑いかける。

 ちょうど月と重なるその姿がとても綺麗に見えた。


「んー! 風が気持ちいいね!」


「明日の海は日焼けしないようにしなきゃ」


 ちゃんと日焼け止め買ったし、これで日焼けは大丈夫だろう。


「私が塗ってあげるよ」


「うわー。やらしー」


 お決まりのやりとりが始まる。


「違うし! バカ!」


「私も美桜ちゃんに塗ってあげるよ」


「えー。やらしー」


 お返しだという顔をしてみせる美桜ちゃん。


「そうだよー。体の隅々まで塗っちゃうんだから。ぐへへ」


「やだ! 変態!」


 美桜ちゃんが私から逃げていく。


「走ると転ぶよ!」


 私がそう言うと、美桜ちゃんは急に止まってくるっと私に向き直る。


「大丈夫だよー! 桜ちゃんも早くー!」


 ・・・しょうがないな。

 やれとやれと思いながらも、私も美桜ちゃんの元へ向かう。

 つらいこともあったけど、今はこの旅行を全力で楽しむことにしよう。

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