第三話
連日投稿でっす。
「えっと……誰でもいいんでまずこの状況を説明してもらえますか?」
あの音声の言う通りだとここは異世界って事になる。
それもスキルとか魔法とかあるゲームみたいな世界に、だ。
という事は棒と鍋のふたと少しの金を渡されて魔王を倒しに行ってこいって言われるかも……
「そうだな……まず最初に言ってくが、ここは貴方達の元居た世界ではない」
隣の弘瀬達に動揺が走る。
こいつらはあの空間には行かなかったのだろうか。
だとしたら、一応こいつらに合わせて驚いたふりをしておこう。
「失礼……私はブラハム王国の国王、バーゼル・ライオット・カフスと申します」
この人の声凄い重低音だな……。
最近流行ってたイケオジというやつじゃないだろうか。
しかも格好といい顎鬚といい大分威厳のある格好だ。
えーっとバーゼル・ライオット……長いし髭王でいいか。
……それにしてもあの髭王、でっかい椅子に座ってるなぁ。
あれだけのレベルになると座り心地とか超良さそう。
でもこんな広い空間に椅子一個しか家具がないってなんだか寂しくなってくる。
「数百年の時を経て復活した魔王が自身の軍を率い、様々な種族の領地を侵略、蹂躙、虐殺を繰り返しています。我が国を含む人族の領地も徐々に侵され始め、ここ近年では――」
長ったらしい口上だったので途中から聞き流した。
まぁ要約すると、魔王が出て大変だから召喚(強制)しちゃった。
色々支援するから魔王ぶっ殺してね、という感じである。
しかも元の世界に帰るのは不可能、魔王倒したら帰れるかもね、だとさ。
後半から感情論に訴えかけてたけど、かなり一方的な要求だった。
例えるなら、住み込み(強制)で一日12時間労働(研修期間中は無給)手当各種なしみたいな感じ。
ブラック会社真っ青なレベルの要求だ。
というかこれ普通に考えて誘拐とか拉致じゃないのか……?
「おい……どう考えてもやばいだろ」
隣にいる弘瀬に近づいて耳打ちする。
しかし弘瀬は涙を流して髭王の話を真剣に聞いていた。
「魔王……なんて酷い奴なんだ!!許せない!!」
え、注目する所そこ?
おかしい……いくら弘瀬がイケメンとはいえこんな胡散臭い話を鵜呑みにして、俺が世界救うんだなんて言わない。
それによく見たら桜坂と神城も髭王の話に頷いている。
「うち、弱いものいじめする奴嫌いなんだよね。これも一種のボランティア的な?」
「要はそのマオウってやつをぶちのめせばいいんだろ?なら俺たちが一肌脱いでやるか!!」
明らかに様子がおかしい。
こいつら一体どうしたんだ……?
「おぉ!!勇者様ありがとうございます……!!」
涙を流す髭王…でも何か嘘くさい。
でも今はこいつらに合わせておかないと面倒なことになりそうだな……嫌な予感がビンビンしてるし。
「く、くそー、こんな人たちを苦しめるなんてゆるせないなー!」
我ながら酷い出来の大根芝居。
一度もやったことない演技をするのは大変だ……
だが、周りはどうやら上手く騙せたようで特に不審がられることもなく話が続く。
「さて……まず勇者様の能力を見せて頂きたい。そこの者、解析石を持って来なさい」
髭王がローブのじいさんに命令して無色透明の水晶玉を持ってこさせた。
元の世界じゃ、占い師とかがよく使ってるのをテレビで見たな。
生で見るのは初めてだけど……何か胡散臭く感じる。
ところで、解析石って言いにくくないのか……?
「この解析石は触れた者の能力を表示することができる」
多分、レベルとかスキルの事だろう。
……あれ、そういえば愚人っていうやばそうなスキル持ってたよな?
どんなスキルなんだろう。
【千里眼を使用しますか】
「……っ!」
「ん?どうしたんだい?」
「いや……何でもない」
急に来たからびっくりした……
相変わらず不親切な音声だ。
しかも、あの空間の時の音声よりも大分無機質で機械的な感じだったからちょっと怖い。
「まず一人目の勇者様、お願いします」
「僕が先に受けるよ」
弘瀬が前に進んで水晶玉の前に立つ。
「では解析石に手を触れ、ご自身の名前をおっしゃってください」
「……弘瀬兵賀」
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【ヒロセヒョウガ】
【ステータス】
・レベル1
・ジョブ:勇者
・生命力:5000
・魔力:5000
【スキル】
・カリスマB
・話術C
・健康体D
・剣術E
・体術E
・胆力C
・信仰E⁻
・生命力増加A
・魔力増加A
・瞬発力増加C
・攻撃力増加B
・即死耐性S
・火適正B
・風適正A
・光適正S
【エクストラスキル】
・加護
・言語理解
・究極ノ一
・聖人
・動物愛護
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弘瀬の能力値がディスプレイとなって空中に出てくる。
非常にわかりやすくていいが、周りに情報駄々洩れかよ。
「これが僕の能力……」
「流石勇者様、レベル1の段階でこの能力値とは……!」
どうやら弘瀬は俺よりも遥かに強そうだ……ザ・勇者って感じ。
俺が持ってる称号スキルを合わせても合計数じゃ負けてる。
それに究極ノ一とかいかにも強そうなスキルも持ってるし。
こっちなんて陰の書だぜ、陰の書。
「次の勇者様、どうぞ」
「じゃあつぎはうちね~、桜坂光葉っと」
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【オウサカミツハ】
【ステータス】
・レベル1
・ジョブ:魔法使い
・生命力:1000
・魔力:15000
【スキル】
・カリスマD
・健康体C
・魔力感知D
・魔力増加SS
・持久力増加D
・水適正SS
・風適正B
【エクストラスキル】
・加護
・言語理解
・慈愛
・拡散
・魔力操作
・空間魔法
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えっ、魔力の数値高くない?
弘瀬の3倍とかヤバイな……。
「うちの魔力超多くない?」
「えぇ……貴女様は類稀なる魔法の才能がおありの様です」
桜坂の能力も凄いな……
神城もこんな感じなのだろうか。
それにしても、何か忘れてる様な……
あっそうだそうだ千里眼!
愚人が何なのか調べようと思ってたんだった。
そろそろ俺の番だし、のんびりしてる場合じゃ無い!
千里眼さーん!さっきの続きお願い!!
【愚人:世界に隷属しない者に科せられるスキル。異世界人の好感度大幅低下、能力値半減、一部スキルが封印されます】
何だこの無茶苦茶なスキルは。
持ってるだけで詰みじゃないか。
幸い、レジストされているから大丈夫そうだがこのスキルがバレたら絶対ヤバい。
「次は俺だな!」
「勇者様……解析石は壊れやすいのであまり叩かないでください」
「悪りぃ悪りぃ、気ぃつけるわ。俺の名前は神城透だぜ!」
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【カミシロトオル】
【ステータス】
・レベル1
・ジョブ:狂戦士
・生命力:20000
・魔力:100
【スキル】
・健康体A
・体術C
・短気D
・受け身C
・生命力増加SSS
・持久力増加A
・瞬発力増加B
・反射神経強化B
【エクストラスキル】
・加護
・言語理解
・狂戦士化
・捕食強化
・加速
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神城は物理特化だな。
でもまさか桜坂の15000を超える数値だとは思ってなかった。
……っと、感心してる場合じゃない。
取り敢えず今持ってるスキルを確認しないと。
【千里眼を使用しますか】
お願い、今度は一覧表で出してくれよ。
とにかく、この局面を乗り切れる様なスキルがあればいいんだけど……
【ポーカーフェイス:常に一定の表情を保ちます】
【同調:選択した対象の性格、能力、嗜好に合わせる事ができます】
【予測演算:高度な演算能力が可能になります。また、条件付けを行う事で擬似的な未来予測を行います】
【陰属性魔法:弱体化中心の魔法を使えます。
現在使用可能魔法:0】
【隠密:気配を遮断し消音状態になります】
【言語理解:異世界言語を理解できるようになります】
【陰の書:+:手元に陰の書を作成します。所持している間様々な効果を付与します。
効果:弱体下限を大幅に強化、持続時間の大幅強化
※陰属性魔法が統合された事により使用魔法の無詠唱が可能となりました※】
【千里眼:指定した物の情報を閲覧でき、危機察知能力と視力に補正がかかります】
【存在証明:理に抗い、自己を保つ事ができます】
【因果干渉:因果の楔を破壊可能になります】
この中で使えそうなのは……
「次の勇者様、お手をどうぞ」
まずいまずいまずい、時間がない!!
【スキル:ポーカーフェイスが適応されます】
自動発動かよこれ!
でもナイスタイミングだ。
「分かった、今行く」
どうする……隠密で逃走しても当てがない。
陰魔法はまだ何も使えないし、因果干渉とかはよく分からない。
この同調っていうのも使い勝手がイマイチ……ん?
同調の説明に目が止まる。
このスキルの対象は1人だけか……?
【スキル:同調は最大10人まで対象の指定が可能】
よし!
これなら……!
「勇者様、どうなされましたか?」
「いや…解析石が綺麗で見惚れてしまっただけです」
「そうですかそうですか、解析石は宝石のように透き通っていますから見惚れるのも無理はない」
解析石に手をのせる。
頼むから上手くいってくれよ……
【スキル同調を発動します】
気まぐれ次回予告
次回、高待遇……と、思うじゃん?
お楽しみに