第二話
どうぞお楽しみください
ここは……
気がつくと暗闇の中にいた。
目を開けても何も見えない。
手を上げても見えない。
顔を下に向けても自分の姿すら確認できない。
ただ変な浮遊感は感じてる……浮いてるより漂ってるって言い方の方が合ってるな。
えっと、確か教室で……
教室に現れた謎の球体。
最初は白だったのに赤になったら俺を殺しにきて、それから青になって助けてもらったと思う。
何か微妙に記憶が抜けてる気がする……すごいもどかしい。
そう言えば青い球体の時何か言ってたな…
スキルの定着や魔力がどうとか言ってたのは覚えてる。
【既存スキルを確認しますか】
あの時の機械音声が聞こえる。
びっくりした…心臓に悪いわ。
ふぅ。
……
一拍間を置いて心を落ち着ける。
声が聞こえたのは俺が疑問を抱いたからだろう。
つまり考えてる事が筒抜けってことか。
考えが筒抜けなんて気持ち悪いけど……気にしても始まらないか。
現状、この空間から抜け出す術はないし。
うん、気にしない方向でいこう。
さて……音声が言ったのは「既存のスキルの確認」か。
……そもそもスキルって何だ?
授業で聞いた事あるような気がするんだけど……
【質問を確認……受諾】
どうやら質問に答えてくれるらしい。
言えば何でも答えてくれるのだろうか。
【スキルとは異世界において使用される特殊な技能の事です】
ゲームみたいな話だな、おい。
この状況といいこの機械音声といい、全く現実味がなくて怖いな。
【既存スキルを確認しますか?】
うーん、イエスで。
【現在のスキル保持数は5その内1つはエクストラスキルに統合されていますまたエクストラスキルの保持数は4でその内2つは同系統の物の為融合され上位の物のへと互換されておりますさらに特殊な称号を獲得したため常時発動型の……】
いやいやそんなベルトコンベアーみたいに言わないで!?
聞き取れない聞き取れないっ!
この音声全然優しくないな!
何か一覧表とか出せないわけ?
【可能です】
じゃあ最初からそっちだしてくれよ。
【作成中……完了】
白いディスプレイが目の前に浮かび上がる。
目と鼻の先ぐらいの距離で。
近い近い近い、もうちょっと離してくれ!
そう要求すると、ディスプレイが少し遠くに行って全体が見えるようになる。
何か恨みでもあるのかね、音声さんよ。
しばらく待ったが何も返ってこない。
仕方ない…画面を確認するか。
【スキル】
・ポーカーフェイス
・同調
・陰属性魔法(陰の書に統合済)
・予測演算
・隠密
【エクストラスキル】
・言語理解
・陰の書+
・千里眼(危機察知+観察眼)
【称号スキル】
・存在証明
・因果干渉
・愚人
【※現状況でのランク表示は不可能です※】
かなり分かりやすくなったな。
さてさて、全部で11個か。
多いようにも見えるけど……どうなんだろう。
【異世界人の平均保有スキルは8です】
まじか……微妙だなー。
ちなみに一番多いのは?
【検索中……生活魔法ランクE】
いやそうじゃなくて。
持ってるスキルの数だよ、数。
使い勝手が微妙に悪い、嫌がらせかよ。
【再検索……個人での最多保有数は365です】
めちゃくちゃ多いな。
俺の30倍以上はあるぞ。
なんか羨ましいな……
増やしたりとかできないのか?
【異世界ではレベルアップの際、稀に追加スキルを獲得します】
レベルとかあるのか?
聞けば聞くほどゲームみたいに思えてくる。
え、じゃあ俺にもレベルとかあったりするの?
【現在のレベルは0】
0……?
1じゃないのか。
という事は0が下限になるのか。
じゃあ上限とかどのくらいになるんだろう。
【回答不可】
拒否られた……悲し。
単に教えられない事だったのか、それとも知らない事だったのか。
どっちなんだい音声さんよ。
【回答不可】
うん、多分教えられないって方だと思う。
よし……ちょっと試すか。
ここはどこ?
【回答不可】
俺は誰?
【名称:イノアキラ】
俺に何をした?
【回答不可】
この音声は何?
【回答不可】
誰か操作してる?
【回答不可】
俺の一昨日の昼ごはんは?
【ちょっと何言ってるか分からないです】
やっぱ誰か操作してるだろ。
【……回答不可】
それから何度かカマをかけてみたが、ボロが出たのは最初のやり取りだけだった。
ただ、これで誰かが操作しているのは明らかになった。
……といっても、今の状況じゃできる事はないが。
【警告、残り60秒で転移が始まります】
えっ、転移?
なにそれ。
【転移: 場所や状態が移り変わること。それを移し変えること】
わー、ウィキペディアみたいで分かりやすい。
何となく馬鹿にされてる感はあるけどそれは置いとこう。
音声の説明から考えるに、この空間から出られるってことだな。
ただ問題は移動するのは何処かだ。
元いた教室に戻るのか?
【確認中……不可能】
教室じゃないなら一体どこに……?
【異世界です】
異世界ってどこだよ!
【準備完了……転送します】
この音声……本当に融通が効かなくてウザ━━うわぁぉぁ!!?
突然何かに引っ張られる感覚に襲われた。
例えるなら……逆バンジーみたいな感じだ。
どんどん加速していくが、不思議と怖くはない。
むしろ楽しくなってきた。
逆バンジィィィィ!!……叫んだら余計に楽しくなってきた。
【チンパンジーで検索しますか?】
うん、これはおちょくられてるな。
全く……人が楽しんでる時に茶々いれやがって。
それにしても聞き取り方に悪意がありすぎるだろ。
これ絶対操作してるやつの性格がひねくれてるよな。
いつか倍返しにしてやるからな!!
三下の様な台詞を吐いた瞬間、視界が切り替わる。
「おぉ……!よく来てくださった勇者様……!!」
だだっ広いキラキラとした空間。
そこにはでっかい椅子に座ってるおっさんや周りには膝をついているローブ姿のじいさんばあさん。
そして横には先に消えた神城、桜坂、弘瀬が立っていた。
はぁ……嫌な予感しかしないし、お家帰りたい。
気まぐれ次回予告
次回、なんだろう……勇者って呼ぶのやめてもらっていいですか?