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頂の景色  作者: からげんき
第二章 高い壁を越えて
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第十三話 これ、勉強会で見たやつだ!

 今日は試験当日。やっとこの日が来た。早くこの日が来て終わらせてほしかった。でも、この日が来ないでほしくもあった。そうしたらもっと対策ができるのに。昨日で何とかできないところはなくなったけれど、物理の細かいところにまだ不安が残る。難しい応用問題がいっぱい出たらどうしよう。


 歩いているときは常に頭の中で今まで勉強したことを考える。


 昨日やっと覚えた問題もう一度解けるかチェック。


 あのページの覚えることは67個、67個すべてすらすら言えるかのチェック。


 一応得意な国語と神秘の難しいところもチェック。


 気が付いたら学校についていた。


「あ、おはよう、パンジー。」


「あ、フラン。おはよう。」


 それから二人で教室に向かった。その間はお互い何も話さなかった。いつもと廊下の感じが違う気がする。テストやべー、かんけーねーだろ、早く終わんねえかなぁ。そういう雑音がなんだかあきらかにくぐもって聞こえてくる。水の中にいてみんなは地上で話してるみたい。違う世界にいる。息苦しい。


「そりゃ緊張するよね。」


 フランの声はしっかり聞こえる。私と同じ場所で話してる。


「だって、今日どれだけ正解したかでこれからの人生大きく変わっちゃうんだもんね。さすがに怖い。」



 そうだ。今日のテストは人生がかかっている。ここでもししくじったら私の夢はここで終わりだ。次のステージに行くこともない。


「でも、終わらないようにするために頑張ってきたんだもん。今日の問題正解して次のステージに挑むのよ。」


 私の声は震えていた。


 一限のテストの紙が配られた。テストの紙を後ろ向きにして回す。頭の中で難しい公式を何度も唱える。



 うう、忘れちゃう。忘れる前にはじまれ、はじまれ、はじまれ、はじまれ。



「それでは始めます。」


 その言葉に反応し、素早く紙をめくる。一瞬遅れて周りで紙をめくる音が勢いよくパラパラとする。


 まずはざっと全部の問題をチェックする。できない問題はなさそうだ。


 早速一番上から取り掛かる。簡単な計算問題だ。


 緊張しているとはいえミスは厳禁。私の一番多いうっかりミスは小数点の位置。歩と勉強してそれがわかったんだから。今日は絶対やらない。素早く、しかし、しっかりと問題と解答に目をやって確認する。

よし、次も同じだ。このまま行こう。


 ここは3週間前やったところ。全然できなかったところだ。でも悔しかったしできた時爽快だったから今は得意。


 よし、次。


 ここは5日前にやったところ。これはあの公式とあの公式をつなぎ合わせて、時間がかかるけどミスなしで。


 よし、次。


 次。


 次。……



 なんだかすごくさえてる。とても集中してるのがわかる。


 こんなこと思いながら、手が滑らかに動く。


「はいそこまでー。」


 うそー、できなかったー難しすぎー、やったとこ全然でなかったわー。と周りからしっかり声が聞こえる。どうやらテスト中に緊張がほぐれたようだ。


 うそ、たいしたことなかったじゃない。手が止まるような問題はなかったし、時間は20分余った。しっかり見直しもしてミスを見つけて直した。もしかして、思ったよりたいしたことない?



「どうだった、テスト。」


 フランがパンをもって私の隣に来た。テストはすでに物理以外の教科が終わっていた。


「すごいできた。なんだか拍子抜けしちゃった。」


「私も。普通にやってたら大丈夫なはずなのに気負いすぎてたみたい。テスト中に、いつもとテストは変わんないって気が付けたよ。」


 パンをちぎってくちに放り込む。いつもフランはあんな感じでテスト受けてたんだなぁ。


「パンジーも今のところできてそうでよかった。後ろのほうから見てた。一番初めにテスト用紙をめくってそれからずっと問題に食らいついてたでしょ。いつもと違ったよね。」


「え?」



 基本的にこの子はあんまり周りことを見ていない。自分の興味のあることを自分一人でやるタイプのはずだ。だからほかの子に興味をあまり持たないし、私のテストを解いている姿をみているだなんて思わなかった。


「フランがそんなこと言うなんて珍しい。」


「そんなことない。みんなが私についてこないの。それがつまんないの。」



 それはそうだ。村一番の天才といわれているフランだ。しかもいつも神秘の難しい本を読んでいる。そんな子についていくなんてできるはずない。パンを食べながらフランは言う。


「正直さ、最近までパンジーは本気で神聖秘匿事象究明機関(インベスティゲーター)目指してないと思ってた。私だけだと思ってたよ。」


「え?」


「そりゃ神聖秘匿事象究明機関(インベスティゲーター)の話をできるのはあのメンバーしかいなかったから。そうでしょ?だからほかの子たちといるよりましだった。」


 そうなんだ。今までずっと一緒に目指してたと思っていたのにそんな風に思われてたなんてショックだ。大事な仲間度と思っていたのは私だけだったのか。


「そんな顔しないでよ。今は違うから。」


 私が落胆しているのに気が付いたのかくすくす笑ってフォローする。いや、そんなことを聞いてショックを受けないほうが無理だ。


「今はさ、パンジーできるようになったじゃん。推薦もらえるかもってところまで。やっとだよ。やっとあなたはこの段階まで来てくれた。やっと私に追いついてくれる子があらわれたんだって、それが本当にうれしいの。」


 衝撃を受けて、ただフランの顔だけを見つめていた。そっか、今初めてこの子に認められたんだ。それくらい強くなれたんだ。


「だから一緒に乗り切って、一緒に神聖秘匿事象究明機関(インベスティゲーター)に入ろうね。」


「うん。私の苦手な物理だけど。ここが正念場だよ。お願い、フラン。最終チェック頼んでいい?」


 そういって私はカバンの中から物理の今まで使ってきたノートを取り出す。歩は大学とかいう学校の試験の時に今まで使ったノートの重さがお守りになるからノートを全部持っていったといっていた。それで私もそのことを真似してみたのだ。


 でも今気が付いたけれど、ノートが多すぎて短期間で見直すことはできなさそう。しまったな。そこは想定していなかった。


「え、なにこれ。これ全部物理のノートなの?」


 フランは積みあがったノートを見て言う。


「うん。でもこれじゃ昼休みの時間に見直し終わんないよ。」


「いやいやいや、そんなこと些細な問題じゃないでしょ。苦手な教科なんてこんなたくさんできないよ普通。こんだけできるってことはもう得意教科じゃん。」


「え?そうなの?でも苦手なことを沢山やるのは普通のことじゃないの?そういうものじゃない。」


「いやいやいや、嫌いな食べ物出されても残すでしょ!嫌いな物からは逃げる。人間そういう風にできてんの!」


 確かに食べ物はそうかもしれない。でも勉強はそうじゃないんじゃないの?私はまだ信じることができない。


「じゃあ、私物理の苦手克服してたってこと?」


 その質問にフランはバンバンとノートを叩きながら答えた。

「そうだよ。そうに決まってんじゃん。問題といたら絶対わかるって。」


 そしてそのまま、ノートの中身を確認し始めた。

「見た感じどれも問題解いた後全部丁寧に直してる。変にビビってるだけだって。」



 本当にそうだろうか、でも昨日も一つできそうでできないっていうことがあったし、やっぱり自信ないな。


「また不安が顔に出てる。そんなに自信ないなら、一緒にノート見よ。あなたは物理ができるって証明してあげるから。」

 そういってフランと私のノートを一緒に見始めた。

 



 それでは物理テスト開始!


 フランはこう言っていた。『こんなに間違えたものを全部直しているんだもん。テストに出る問題なんて全部あなたが一回直したものだって。それか元々できてたやつ!』


 ほんとにそうだろうかと思いながら裏側に置かれている問題用紙をめくり、問題を眺める。


あれ?


これはノートに中で間違えてた。じゃあ次の問題は?あ、これもそうだ。これも、これも次はどうだろう、これは一昨日までずっと間違ってたやつだ。これは?これは最後までわかんなかった。でも昨日わかった。わかったときはうれしかったな。おっと、これは確か覚えている奴が違って。忘れやすい67個のうち2個目のやつだ。あれ?それって、確か朝忘れないようにって念じながら来たところじゃん。


 ほかの教科と変わらないじゃん。いや、むしろほかのより楽にすいすい解けて…。


 全部覚えてた。というか全部一回間違えているところだった。たくさんたくさん勉強してできなかったところができるようになってた。



 おわったー!やっと解放だぜ!テストの終了に合わせて歓声が起こる。


 終わったんだ。テスト終わったんだ。ああ、力出し尽くしたよ。私は呆然として家に帰っていった。




 テストは順調に帰ってきている。今のところは国語86点、神秘92点、化学84点、数学98点だ。残りは物理のみ。これで物理が90点以上なら450点になりの神聖秘匿事象究明機関(インベスティゲーター)受験資格がもらえる。


 90点以上取るためには図を描いて解いたものも正解させなくてはいけない。



 お願いします。神様。どうか私に90点以上を取らせてください。


 次、パンジー・アルプライト


「はい。」


 目をぎゅっと閉じてテストを受け取り、点数が見えないように折り曲げて席に戻る。もう一度目をつぶる。先生は何か言っていたが心臓の鼓動で聞こえない。ああ、どうか、90点以上でありますように。



神様。どうか。認めてください。


恐る恐る目を開ける。


 100点


 そう書いてあった。もう一度数字を見直し、答案を全部確認する。


「全く、アルプライト。先生がほめてるのに顔も見ず返事もせず席にそそくさと戻るとは何事ですか。」


 教卓に立っている先生があきれてため息をついた。それから笑顔で言った。


「よく頑張りましたね。」


 つらい日々を思い出す。


 初めは全くわからなかった。毎日が苦しかった。他の人がうらやましかった。なんで私だけって。でも進み続けた。



 こんなの我慢できるわけがない。


 涙がかってにあふれてくる。


 私、できたよ。できたんだよ。できなかったことができるようになったんだよ。


 喜びと一緒に涙があふれる。私の才能がついに花開いた。


 今まで閉じていたこの村以外のものを見て生きてゆく未来。それを確かに、努力でつかんだ。


読んでくださってありがとうございます。次回の投稿は1月11日になります。

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