第十話 探検部
3日後、この日はダリルさんが家の仕事をやることになったので俺とパンジーは村に行きパンジーたちの友人に会いに行くことにした。
本来は羊の世話はダリルさんの仕事であり、パンジーは学校に通っている。しかし、ダリルさんの仕事はそれ以外にも地方の地主としての仕事やかかわりの深い貴族の人との交流で町や村のほかの地に行くことがある。
そんなときは羊の世話をする人がいなくなってしまうので俺とパンジーとお母さんが代わりに仕事をやっているというわけだ。そしてここのところはお見合いやらなんやらで町に行く機会が増え、ほぼ毎日三人で羊の世話をしている。
ちなみにこのような理由で学校を欠席することは珍しくないらしい。この村の住民は大半が家の仕事を継ぐことになっていて本人たちもそれを受け入れているため学校側も生徒側も学校を休むことに関して特に何も思っていない。
数キロ先にある村の中心にあるレストランで待ち合わせだ。待ち合わせ先のレストランに入るとすでに3人待っていた。
「紹介するよ!この人が私の家に来た歩さん!」
「どうも、歩ですよろしく。」
俺が自己紹介を終わらせるか終わらせないかくらいのタイミングで黒髪ショートで釣り目の女の子が話しかけてきた。
「へぇ!手紙では見たけどあなたが異世界から来たっていう人なのね!向こうの世界はどんな感じなの?なんか変わったものとかある?向こうの神秘が気になるんだけど。いや、世界によって神秘の性質が異なったりするのかしら?向こうで五大錬成魔道法もあるのかしら。転生ができるということは多次元誘導式の証明や、机上の空論の降魔術が発展してるのかしら?どうなの!?」
この女の子もぐいぐい来る。初対面の時のパンジー以上だ。俺はその迫力にたじろいでしまう。
「そういうのは自己紹介してからでしょ!この子はフラン。神秘が得意であなたが勉強を見てくれる前は神秘の勉強を見てもらってたの。」
「いいじゃない。そんなことは。それでどうなの?」
「あ、いや、俺あんまり神秘のことよくわかんなくて、あとあっちには神秘はないんだ。」
「え?あ、そう。そうなんだ。あ、すみません!パフェください!」
神秘がないといった瞬間目の輝きが失せ興味をなくしてしまったそうだ。なんだかその落差というかドライさがすごいし、何となくショックだ。
呆然としていると今度は隣の男にぐっと体をひかれ話しかけられる。
「オイ、お前パンジーの家に泊まってるってことはやっぱりヤッたのか?」
「は!?何言ってんだ。やるわけないだろ。」
こいつはいきなり初対面なのに何を言い出すんだ。自己紹介前にしゃべる内容じゃないだろう。
「シ!声でけえよばれたらどうすんだよ。パンジーに嫌われるだろうが。」
いやそもそも言い出したのはお前だろう。一体こいつは何を考えているんだ。名前を聞く前から若干イラっとする。
「軽いジョークだよ。軽いジョーク。そういやまだ名前行ってなかったっけ。俺の名前はクレマ。よろしく。」
すらっとしていて背が高そうなたれ目のマッシュヘアの青年だ。洋服もムカつくがカジュアルだけどしっかり整っている。なんだか元の世界で飲み会ばかりやってる大学生みたいなやつだ。そこにパフェを二つ持ってきた店員さんがやってきた。そしてテーブルにパフェを二つ置いて俺たちの席に座ってきた。
「はい、パフェです。話が聞こえてきたんですけど、俺も異世界の話聞きたいです。やっぱり見たことない景色がたくさんあるのかなぁ。あ、突然失礼しました。俺はリゲロです。この店は俺の父の店で今休憩をもらってきました。皆さんより一個年下ですが俺も探検部に混ぜてもらってます。」
今度はさわやか好青年だ。明るい茶色の髪の短髪で一見海でナンパしてそうに見えるが今のところ一番まともだ。よろしくとあいさつしようとしたところに女の子がリゲロに抱き着く。
「町く詫びれたよ、リゲロ!私のためにパフェもってきてくれたんだ!私もお礼に食べさせてあげる!はいダーリン!あーん♡」
「ちょっと皆さんがいる前ではあまりそういうことやめろって。カトレア。」
「別にいいよ。いつものことじゃん。私のパフェも無料でいい?」
興味なさそうにフランが言う。そんなことは聞こえていないようでカトレアと呼ばれた女の子はリゲロの頬にパフェのアイスクリームが乗ったスプーンを押し付けようとしている。そしてそれに対してリゲロはやるならしっかり口に入れろと抵抗している。
カトレアはどうやらギャルのようだ。あとおっぱいが大きい。どうやらというかどう見てもこの二人はカップルだ。しかしここまで公共の場でイチャイチャするのもなかなかすごいものだ。
「彼女はカトレア。リゲロと彼女は付き合っているの。」
パンジーが淡々と説明する。パンジーもあまり気にしていないらしい。それにしてもすごくキャラが濃いメンバーだ。パンジーが集めたというのもうなずける。
「そういえばさっき探検部って言ってたけどあれは何?」
リゲロはカトレアの相手で精いっぱいのようなのでパンジーに尋ねる。
「それは俺が答えるよ。」
そこにいきなりどや顔でクレマが入ってきた。
「探検部は神聖秘匿事象究明機関に入りたいという生徒の集まりだ。去年パンジーが立ち上げて最初は俺とフランが加入した。そして今年リゲロとカトレアも仲間に入れてと入ってきたというわけ。他の連中はみんな家を継ぐとか言ってまじめに勉強やトレーニングをしないから周りに流されてモチベージョンが下がってしまいがちなんだ。だからこうして集まっている。」
「へぇなるほどなぁ。」
確かに本人がどれだけ強い意志を持っていても周りの雰囲気の影響は受けてしまう。しかし、それでもパンジーは自分を曲げずにやると思っていたから自分からメンバーを集めるのは少し驚きがあった。
「じゃあみんな3か月後に試験を受けるのか。」
「いや、試験を受けるのは研究職部門志望のパンジーとフランだけだ。俺とリゲロは来年探検部門を受ける。一年ごとに募集する部門が違うんだ。」
補足するような形でパンジーが話に入ってくる。
「そう、それでね。研究部門は筆記のテストなんだけど、探検部門のテストは自然の中を移動するサバイバルレースを行うの。だから私たちが試験勉強をしてるのと同じでクレマとリゲロはサバイバルレースのための訓練を行っているの。」
「なるほど。それで俺はクレマ君とリゲロ君に岩の登り方を教えてもらおうってわけか。」
俺が理解したことがパンジーに伝わったのだろう。パンジーはパンと手をたたいて言う。
「そういうこと!いいよね!クレマ、リゲロ!」
「はぁ、リゲロに教えるってだけで大変なのにもうひとりかよ。まあ仕方ないかぁ。パンジーがどうしてもっていうんだからやってやろっかなぁ。」
見るからにだるそうにクレマは言った。しかしその後笑顔で手を差し出してきて言った。
「よろしくな」
俺も手を差し出して握手をして返す。
「ああ、よろしく頼む。」
「俺も岩登りは最近始めたばかりだけどいっしょに頑張りましょう。」
リゲロはガッツポーズをしてさわやかな笑顔を浮かべて言った。
「いやだぁ。練習増やしちゃったら私のデート時間減っちゃうジャン。」
ここでカトレアがダダをこねるがリゲロがたしなめる。
「ごめんな。カトレア。その代わり毎日手紙書くし、毎日店に来てもいい。でも俺の夢のためなんだ。許してくれないか。」
「うれしい!でも気持ちだけで許しちゃう。リゲロはイケメンだけどそういうロマンを追っかけちゃうところが一番好きだよぉ。」
いい加減このカップルを見るのも胸やけがしてきた。
「じゃあ私とフランはここで引き続き勉強してくからクレマとリゲロと歩とカトレアも練習してきてね。」
それにクレマが反発する。
「ええ、久しぶりに会ったんだしもうちょい話していってもいいじゃん。それに今からやることはないっしょ。」
「私たちは時間がないの。」
パンジーがぴしゃりと言い放つ。みんなにぎやかで自由だが瞬間的に出すパンジーの圧力にはみんなかなわないようだ。
「はい。わかりました。」
クレマはそういい、俺たちは4人で店を出た。クレマの家にクライミングの道具を取りに行き、その後練習場に向かったのだが、その間俺はずっとクレマにパンジーとヤったのかほんとのことを言えと言われ続けたし、カップル二人はずっといちゃいちゃしていた。
本当にこの4人で練習をしてオーディンに登ることができるのだろうか。俺は少し不安に思っていた。
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