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奇談カクテル  作者: 瓶肉ダンス
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七面鳥 キャロル

【ある落ち着いた老紳士より】


 まだ私が小さい頃の話です。

 うちは兼業農家で、父が片手間に鶏を育てていたんですよ。片手間と言っても十羽以上はいましたね。


 近所で、外国ではクリスマスのお祝いで鶏の丸焼きと食べるなんて話が広まっていました。話を聞きつけた父が近所にこう言って回ったみたいなんです。


「クリスマスには鶏の丸焼きを食べないか?うちで育ててる鶏を絞めて売るからさ」


 そうして何軒かの家が鶏を買うということが決まりました。私が学校でその話をしていると、クラスの物知りな子が、こう言ったんです。


「クリスマスに食べるのは鶏じゃなくて七面鳥だよ。君のお父さん間違えてない?」


 ただ七面鳥が何なのかは物知りな子も知らないみたいでした。私は父にその話をすると、父は落ち着いた様子で、


「七面鳥っていうのは、その名前の通り面、つまり頭が7つある鳥のことなんだわ。うちでは生まれたときに6つの頭を取って育てているんだ。

 頭が7つのままじゃ頭同士でケンカしちゃって飼うのが大変だからな」


 子供相手とは言え、良くもまぁいい加減なことを言うものだと思いますが、当時の私はその話を信じました。

 そして学校で物知りな子にその話をすると、


「頭が7つある鳥、見てみたい!」


 なんて言うので、また父に伝えると、


「わかった!1羽だけ7つ頭の状態で育てるわ。でも他の鶏とケンカして怪我させると困るからこの1羽だけは畑の小屋で飼うことにするぞ。

 あと7つ頭の七面鳥は子供にも襲い掛かるから、畑の小屋には近付くなよ」


 私も7つ頭の鳥は見たかったので嬉しくなって、この話をクラス中に言い振らしました。その甲斐もあって、私を含めて5人の子供で見に行くことになりました。

 父にクリスマスの少し前の日に畑の小屋に来るように言われて、5人で見に行ったら本当にいたんですよ。頭が7つある鶏、これは間違いなく話に聞いていた七面鳥だってみんなで盛り上がりました。


 一つ残念だったのは、その七面鳥と言われた鳥はもう絞めてあって、動かなかったことです。


「子供に襲い掛かって危ないから、もう絞めちゃったよ」


 と父は笑っていました。


 今考えると、この七面鳥は他の絞めた鶏の頭を適当に重ねて置いただけのものでしたが、あの場ではみんな信じてましたね。

 いや、例の物知りな子は学校でその話題になると途端に話さなくなったので、気付いていたのかもしれません。


 ……とっさに言ったであろう冗談を、ここまで手間を掛けてまで本当に見せようとするとは……

 思い返すと、我が父ながら中々に奇妙な男でした。


 ただ、それからは父が冗談を言うことはめっきり少なくなりましたね。ははは。

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