農地整備と2つの影
二日連続更新!
これは投稿間隔が空いたお詫びのようなものだったので、毎日は難しくとも、週に3〜4回は投稿したいと思ってます。
焦らず、マイペースが大事だと思ってます。
引っ越し作業を終えた日の午後。今からが大事な場面だ。俺たちが今からする作業は農地整備。何せ、これからする作業で街の料理の質が左右されるのだから、気合を入れて臨まなければならない。
村の農夫連中を集め、村から見て東にあたる河川のある地帯まで来た。この地帯を流れる川は、源流にあたる川上から川下までの間に支流が存在しておらず、本流のみの一本の川である。その途中に支流を作り、村の方まで引き込もうと言う訳だ。
「俺の見立てでは、村の東側を稲作,畑作地帯にするつもりだが大丈夫か?」
「おう、俺たちは全然大丈夫だぜ。ただ、できるだけ村に近くしてくれると、楽で助かる。歳食ってるやつもいるしな」
「了解だ、他に確認しておきたいことがある。みんな何農家だ?」
「俺は稲作だぜ」
「うちも稲作やってるぜ?」
「俺んところはニンジンの農家だ」………
一通り全員に育てていた作物の確認が取れたので、今度は、水路について話し合う。ちなみに各作物の種は、それぞれの農家たちが持っている種子を使ってもらう予定だ。俺が魔法の練習を重ねれば、品種改良なども可能になるだろうが、今は各自で出してもらうしかない。その魔法、エリネに頼んだら教えてくれないかな?
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エリネとも合流して、件の一本川に来た。事前に決めておいた方針の通り、水路は直線的に作るつもりだ。別に、川を作る訳でもないのだから、変にカーブを作る必要は無いのだ。それに、どうせ将来的に川の周辺は整備するのだ。その時の見栄えの良さも考えると直線が最適解であると判る。
「ここから、あっちの方にまっすぐ削ればいいんじゃな?」
「あぁ。子供だと舐めている節のある農夫連中の目を驚愕で染めてやれ。頑張ってくれよ」
「ミヤビも早く色んな種類の魔法を覚えて、わらわを手伝えるようになるんじゃぞ?」
「それは俺も頑張る。じゃあ早速かましてやれ」
エリネのことを生暖かい視線を向けて見学する農夫たち。子供の魔法の練習とでも思っているんだろうが、実際はそうも行かないんだよなぁ。
「では。『地削』」
エリネが両手を正面へと向け、そう魔法名を口にした瞬間。森がざわめくほどの轟音を上げて、魔法が放たれた。彼女の正面にあった筈の地面は、ちょうど川と同じくらいの幅の半円形に削れていた。森の木々をうまく避け、村の方へ一直線にその穴は伸びていた。
農夫連中にも目をやると、みな一様に目を見開いてエリネの方を見ていた。エリネはこちらにサムズアップ。親指を立て、してやったり、という顔をしていた。渾身のドヤ顔だ。
……予想以上に大規模な魔法に、俺自身も魔法の威力と音にビビったのは内緒だ。だって本当にビックリしたんだってあれは。あれで驚かない方がすごいぜ?
「魔法使いのお嬢ちゃん!思ってたよりすごいんだな。見直したぜ。今度俺ん家に……」
「こんのロリコンジジィがぁあああ!!」
「べぶらっ!!」
来ないか、と言おうとした一人の農夫は、セリフを言い終わる前に、バキッ、とおおよそ人体が鳴らしてはいけない類の音を立てながら、後ろに倒れ込んだ。
おっと、知らず知らずのうちに拳を握りしめていたらしい。エリネを家に連れ込もうとしたアホロリコンに制裁を加えたまでだが。
「突然何すんだよお前は!?」
「エリネを家に連れ込もうとしたじゃねえか!」
「くっ!」
「悔しがるな!つか本当に連れ込む気だったのかよ!」
「……ミヤビ、その辺にした方が身のためじゃ。いきなり悪い関係を築きたくは無かろう?そ、その、庇おうとしてくれたのは嬉しかったが、ここは抑えてくれ」
途中、いつになく顔を赤らめながらの控えめな上目遣いに、思わず少し緊張して硬い声が出てしまう。
「お、おう。えーっと、確か……ワイド、だったか?いきなり殴って悪かった。そこについては謝る。だが、人をあまり家に連れ込もうとするなよ」
「名前、覚えててくれたんだな。あの時のモブみたいな奴なのに。しっかし、俺も悪かった。やっぱり最初は話し掛けて仲良くなるところからだよな!」
「まったく反省してないだろ!?」
エリネが折角作った水路のことも忘れ、しばらくはワイドを押さえるのに時間を費やした。
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無駄過ぎる時間を掛けてようやく収まったワイド。まったくロリコンのおっさんというやつは……。呆れてものも言えなかったぜ本当に。
「さて、エリネが作ってくれた水路と川を繋げる作業をそっち半分、頼む。こっちの半分は細かい土地決めを手伝ってくれ。心配しなくても出来るだけ土地が均等になるようにはするがなにせ素人だから、その辺りはお願いしたい。っておい!ワイドはしれっとエリネのところに行こうとするな。お前はここで仕事しろ」
「ちっ、ばれたか。わーったよ」
いや『ちっ、ばれたか』じゃねえから。このちゃっかりが。お前の場合下心が丸見えだからすぐに見つけられるが。
川と繋げる作業を半分に任せて、俺たちはエリネの魔法跡の先端方向へと向かう。土地の分配、上手くできるかな?
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水路の先端までくると、もう街がすぐ近くにあった。なかなかどうして適切な距離で止めてくれたな、エリネも。
「おっちゃん、土地ってどんな風に分けていけばいい?」
「作物によって割合を決めるべきだな。ここをこうして……」
農夫のおっちゃんたちに教わりながら、エリネと一緒に作業を進めていく。幸いなことに、こちらのチームにはロリコンの素養をもった奴はいなかった。結局のところ、警戒すべきはワイドだけで十分なのだ。
「よーし、終わった!後は水を入れてくるだけだな」
「ミヤビ、ありがとな。お陰で綺麗な土地で農業に従事出来そうだ 。そっちの嬢ちゃんもな!」
「こちらこそ、なのじゃ」
「おっちゃんたちも教えてくれてサンキューな」
「おう。土地代を浮かせてもらったんだ。当然ってもんよ」
さて、こっち側の作業も終わったし、そろそろ向こうの川班も終わってるといいが。見に行くか。
「もう終わってるかもしれないが、あっちの手伝い行くぞ!」
「「「おう!」」」
「了解じゃ」
再び気合いを入れ直して川の方へと向かうミヤビたち一行。その姿を興味深そうに観察する姿が2つあった。それが誰なのかなど、存在にすら気付いていなかった彼らには知る由も無かった。よもや、それが村で最年少の少年少女だとは予想だにしていなかっただろう。
……いや、ミヤビが探知能力を使っていたら気付いていたかもしれない。
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作者はモチベが上がって狂喜乱舞します。