イメージ違いと移住案件
文字数はちょっと増やせるように努力しています、
どうも花依です。第一話部分の編集も致しました。
そちらも是非ご覧下さい。
白フクロウことホー(安直でもいいだろっ)に偵察に行かせたが、もうすぐ森に着くそうなので、スピーチする内容を考える。スピーチというか街の説明だが。
「というか、よく村人全員を動かすとか出来たよな」
「カリア村は人口が少ないしの。それに距離も言うほど遠くない。あの二人は性格的に目立ってそうだし、人望もそれなりにあるんじゃろうな」
「それだけで村人全員が動くとはとての思えないけどなぁ」
それともあれか?土地が痩せ細り過ぎて。新しい豊かな地に興味があるってのもあるんだろう。村人なら大体が農民だろうし。
「お、あれじゃな」
エリネの指差した先を見ると、
「って、馬車持ってんのかよ!?」
少々砂埃を上げながら荒野を走る馬車があった。少し奥も見ると、もう一台並んでいて、どちらも後ろに荷台を付けていた。あの荷台に人が乗ってるんだろうなぁ。
というか村長さんとかなら普通に馬車とか持っててもおかしくないか。見た目にも装飾とか皆無だし。
そうこうしている間に馬車がこちらに到着した。最初に降りてきたのは例の2人組、ソーラとエリスだった。
「やっほー!久しぶりだね。呼んでくれて嬉しい!」
「本当に街が出来ているんだろうな?呼びつけて置いてできてないは承知しないからな。村長たちも出てきて良いですよ!」
そう呼びかけられ、馬車から姿を見せたのは––––––
「よう!お前さんがミヤビか。よろしくな!」
筋肉モリモリの、厳ついおっさんだった。手を上げ、フランクに話しかけてくる姿は熊を連想させる。
「って、おいおいおいおい!!もしかして村長さん!?」
「あ?そうだが。俺がカリア村の村長、べアートだ」
「……」
もっとヨボヨボな杖ついたお爺さんかと思っていただけにあまりに予想外過ぎて俺はしばらくの間フリーズしていた。
……????
ミヤビは混乱している!
------------------------
ようやく状況を飲み込むことが出来た(?)俺は、改めて村長さんを見上げる。筋骨隆々なその身体には、服越しでも分かりほどの筋肉。正直どうやって生きたらこうなるのかが知りたい。
「オホンッ。すみません。改めまして、ミヤビです。本日はよろしくお願い致します」
「あんちゃん、そういう堅苦しいのは無しにしようや。そういうのはいかんせん苦手でな。タメ口でいい。そっちの方がやりやすい」
「なら、これでいいか?」
「切り替えの良い奴だな。それでこそだ」
ガハハ、と両手を腰にあてて豪快に笑う村長。とても貧乏な村の人間には見えない。
「なぁ、失礼だが今幾つだ?」
「俺か?俺ならまだ70歳だぜ?それがどうかしたか?」
「……」
ミヤビ、二度目のフリーズ。これではキリがない、とエリネが代わりに対応する。
「ミヤビはちょっと驚き過ぎじゃな。すまぬ。わらわが代わりに案内しよう。こやつは後から回収しておく。ついて参れ」
「金髪幼女が代わりって大丈夫か?お嬢ちゃん、無理しなくて良いぞ。全然ミヤビを待つからな?」
「わらわを幼女扱いするでないわ!いいから着いて参れ!」
エリネはミヤビの完全放置を決め、村人たちを連れて中心街へ向かう。……少しばかり両頬を膨らませながら。
------------------------
「うわぁ〜!綺麗な森だね。前に来た時より動物が増えてる?」
「それに木々も前より大きくなってる。一ヶ月でここまで変わるものか?」
「俺が魔力を与えながら育ってるからな。意外と栄養たっぷりらしい」
※ミヤビは意識を取り戻して走ってきた。
森の中を歩く。すると、森の木々の間から建物が垣間見える。もう着くみたいだな。
「ほら見ろ。あれが俺たちの街だ」
手を向けて街の方向を示す。すぐに村人たちから感嘆の声が上がる。中には分かりやすく嬉しさを表現している奴も居た。これは村人たちも来てくれそうだな。第一印象は成功、いや大成功かな。でもここで確実に来てくれるように頑張らなきゃな。
「ほわぁ、凄いです!何か街なのにお花さんたちがあって綺麗です」
「ほう、石造りの建物もあれば木造の建物もある。それらに植物たちを織り混ぜているが、見た目の違和感が一切ない。まだそんなに面積は無いが、森の都のようだ」
「おー!すげぇ綺麗な場所だな!川も近いし、ここなら住み心地抜群だろうな。空気も他より特段澄んでる」
と、三者三様な意見を述べてくれた。やっぱり目がいくのは植物の部分か。緑の要素にはこだわったから、ちょっぴり嬉しかった。
「あの植物で日陰を作っているのはいい案だな。上手く街の中に緑を取り入れている」
「あれはグリーンカーテン、って言ってな。日差しを弱めてくれる効果もあるし見た目もいい。しかも簡単に作れるという一石三鳥な一品だ」
「なるほど」
と言った風に村人たちの疑問に答えながら街を紹介していく。まだ1人も居ないが、きっとこの街に活気を与えるために絶対住まわせてみせる!
------------------------
そして一度街全体を紹介し終えた。一軒一軒に特徴を付けた甲斐あって、皆どの家が良いとか相談をし始めていた。もうこれは来たな。我ながら完璧なプレゼンだったぜ。
グーー!
「おっと、これはすまねぇ。どうも歩いてたら腹の虫がなっちまった。なんか食いもんは無いのか?」
「あるぜ。今はまだ種類は少ないがな」
俺は木に近寄り、ジャンプしてリンゴを手に取る。赤々とした瑞々しくて美味そうなリンゴを選んでみた。
「!?マジかこれ、村で見るリンゴと全く違う!こいつのが圧倒的に美味そうな見た目をしてる!」
そして一口。シャリッ!
大きめな音を立ててリンゴを咀嚼するべアート。その第一声がリンゴ祭りの発端だった。
「うめぇぇぇぇぇ!おいみんなにも配ってくれねぇか?今にも頬が落ちちまいそうだ」
リンゴを取っては村人に手渡ししていく。ソーラやエリスたちにもリンゴを配る。
「これは確かに美味しそうなリンゴです……!」
「そうだな。こんなに赤いリンゴは初めて見た。いつものは少し茶けていたからな」
シャリッ、シャリッ。
「「!!」」
「これは……!」
「すっごく甘くて美味しいよ!」
2人して目を見開き、驚きを見せた後、無言でリンゴをむさぼり始めた。ソーラがいっぺんに沢山齧って口に入れる姿はなんだかリスに似ているなぁ、と感じた俺だった。
ちなみにエリスは頬に手を当て、興奮したようだが、丁寧に味わって食べていた。
奴らの胃袋もゲッチュだぜ。
------------------------
「ふうー。美味しかったぁ〜。また食べたくなるよ」
「あの甘さは反則だろう。村長の言う通り頬が落ちそうだった」
「だろうだろう?」
何故か得意げなベアート。そんなに美味かったならこちらとしても嬉しい限りだ。
……アピールタイムも終わったところで、そろそろ今回の本題に入ろうか。
「さてさて。本題に入るが、単刀直入に聞く。村長、カリア村代表として答えてくれ。オホンッ。カリア村の面々は、この街に移住してくれるか?」
「当然だ。なぁ、お前らもそう思うよなぁ?」
「「「「当たり前だ!(当たり前よ!)」」」」
即答っ!よっしゃぁぁぁ!これで街に活気を与えられる!!
「ありがとう!!村に帰って、引越しの準備が出来たらこの街に来てくれ!歓迎するぜ!」
「わぁああああああ!!」
俺が拳を振り上げそう宣言すると、カリア村の村人全員が、同じように拳を振り上げて答えてくれた。ノリにいい連中でよかった。
これでカリア村人たちが移住してくれることになった。森を移動中に農作地域を用意するって言ったのも大分デカイだろう。職を失わないで済むしな。というか村長あの肉体でなんの仕事してんだろ。猛獣でも狩ってそうだな。
お陰様で、俺は残りの半日ほどを達成感一杯に過ごすことが出来た。
ちなみに後から村長に聞いた話によると、カリア村は自給自足ばかりで外の国と触れることがなく、村人が居なくなっても困らないと言う。それに農民が多く、痩せた土地では限界だったそうな。だからこの話は渡りに船な話だったらしい。
お互いwinwinな関係って素晴らしいよな。
少しでもおもしろいと感じて頂けたら、
ブックマークや評価、感想をお願いします。(切実)
作者は狂喜乱舞しまくります。