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過去と今

モチベ維持って難しいですが頑張ります……!

 名付け云々のやり取りの後。


 俺が大声を出して「父さん」呼びを止めにかかったこともあってか、みんなが続々と起きてくる。


「む、ミヤビ。そっちの女の子もおはようなのじゃ」

「ん〜っと。あ、おはよう〜」

「あれぇ? 雅くんの声が聞こえたよぉ?」

「zzz……」

「んみゅぅ? ミヤビ……?」


 上から順にエリネ、ソーラ、楓、シェリムだ。驚くべきことに、一番最後の声はエリスなのだ。若干一名は睡眠中、うち2名は寝ぼけているという、なかなか見られない彼女らの姿。特段、衣服が乱れたりしているわけでもないので堂々と見る。これでも健全な男子高校生なのだ。


「あ、エリス。布団ありがとな。お陰で風邪を引かずに済んだ」

「んぅ〜? ……はっ、ミヤビがどうしてここに!?」

「記憶飛ぶほど朝が弱いのか……」

「あっ、思い出したぞ!」


 と言って合点がいったように顔を上げるが、すぐさまゆでダコのように真っ赤になった。


「い、いや、別にミヤビのためにやったわけじゃないからな!? あれは、そう、お前が体調を崩したら、みんなが心配するだろうと思って……」

「つまり、どっちにしても俺にとってはありがたかったんだから、そんなにツンツンしなくたって良いじゃないか」

「う、うるさい! ふん!」

「一番うるさいのはツンデレエリスさんですけどね〜」


 いつの間に起きたのか、シェリムも一部始終を見ていたらしい。でも、そのからかいのタイミングは最悪だぞ。シェリムよ。


「……よし。お前は一旦廊下へ来い」

「え? 嫌だぁ!? 昨日もしましたよね」

「エリス、ストップ。子どもがいる前だし、止めとけ」

「……それもそうだな」

「よかったぁ」


 なんとかお説教を免がれることができて、シェリムもホッとしている。……よかったな。


 パンッ。


 空気を変えるように打たれた柏手はエリネのものだった。みんなの視線が集まる中、エリネが口を開く。


「さて。そろそろ聞かせて欲しいんじゃが、その子の身元は分かったのか?」

「……いや、まだだ。これから全員集まってから聞こうと思ってる。それでいいか?」

「うん。覚えてる限りで……話す」

「というわけだ。取り敢えず男性陣も呼んで集まろう」


 ------------------


 その後。宿の会議室を借り、念のためエリネに盗聴防止の魔法を掛けてもらった。盗聴防止といっても、消音魔法の結界のみだけどな。


 そんな簡易会議室の中で、一つのテーブルを囲みながら話を聞く。


「じゃあ、そろそろ話し始めてもらってもいいか?」

「うん。まずは……昔、私は奴隷だったの」


 そこからはユヅキの語りが始まる。


 とある森の中の村に私は住んでいた、と思う。物心つく前に、そこから連れ出されてしまったから。ある日、その村は人間によって焼き尽くされた。なぜなら、人間は、獣人を嫌うから。人間は、獣人が汚らわしい獣であると考え、迫害していたの。


「あっちへ逃げたぞー!」

「一人捕まえた。これは高値で売れそうだ」

「うぅ〜……」


 捕まってしまった獣人たちは、危険な人体実験の実験台にされたり、男は鉱山などの重労働へ借り出されたり、女は、特殊な性癖を持つ貴族へと売られたりしていた。たとえ、それが幼い子どもであったとしても。


 私はとある実験の実験台にされた。目隠しをされ、猿ぐつわを噛まされた状態で注射を打たれた。耳は塞がれていなかったから、会話も少し聞こえてきた。覚えてることは少ないけど、魔力が〜、とか、始祖の力を〜、とか、救済を……とか言ってた。


 そこからは夢を見てた。大きくて真っ白な狼さんの夢。ずっと苦しそうな顔をしてて、私も苦しかった。身体から訳のわからない力が湧き出て、身体が言うことを聞いてくれなかった。檻の中にいた私は、ある時、どこかの部屋と連れて行かれて、一人ぼっちだった。その時、こいつはもう用済みだ、とか言ってたような気がする。


 それからどれくらい経ったか分からないけど、みんなが私のところへ来た。頑張って力を抑えていたつもりだったけど、みんなを見た途端にまた力が湧き出てきた。気づいたらみんなと戦ってた。


「……あとは、みんなの知ってる通り」

「「「「……」」」」


 全員が神妙な顔をしている。まさか、実験台にされたせいで暴走してたとは。まだこんなに幼いというのに、そんな恐ろしい仕打ちをする人がいることに腹が立つ。


 皆が重たい空気に呑まれる中、最初に口を開いたのは楓だった。


「初耳なんだけど、獣人って迫害されてたと?」


 それについては俺も初耳で、聞こうと思っていたのだが、代わりに楓が質問してくれた。もし迫害があったなら、こっちの世界の人間であるソーラやエリス、シェリムたちは何も思わなかったのだろうか。


 楓の質問に答えたのは、ただ一人席に座らず壁際で話を聞いていたセイルだった。


「……そうだ。数百年もの昔から、人間は獣人を迫害、差別している。少なくとも、何十年もこの目で見てきた。人間は常に自分たちが上でないと満足できない生き物だ。どうにかして下を作ろうとする。……ここにいる人間は例外みたいだがな」

「私たち二人は獣人差別なんて無縁の小さな村の出身だから知らなかったのかも」

「そうだな。まず、獣人を見たのもこの子が初めてだ」

「私は聞いたことはあったけど、貧しくてそれどころじゃ無かったから……」


 ソーラやエリス、シェリムも獣人差別なんてほぼ無縁だったらしい。そして、エリネは女神だし、ヘラルドはドワーフ、俺と楓は異世界人だから、この場にいる全員がこれまで差別との関わりが薄かったわけだ。


「だから、お前。その子には耳を隠すフードを被せた方がいい。尻尾は背中側に隠しておけばいいだろう」

「分かった。アドバイスありがとな」


 じゃあ、会議の後にフード買いにでも行くか。


「……みんな、私を介抱してくれた。だから、みんなはいい人……!」


 そう言って笑うユヅキに、場の空気も弛緩し、緊張感も薄れた。やっぱり笑顔って大事だよな。


「そういえば、名前はなんていうの? 聞いてなかったよね」

「私はユヅキ。さっきミヤビお兄ちゃんに付けてもらった。……いいでしょ」

「ユヅキちゃんか。よろしくね。ミヤビくんが変な名前つけんくてよかったばい」

「俺のネーミングセンスを何だと思ってるんだ」


 しばし和やかな時間が続いた。

ちょいと設定がおかしいかもなので見直しします。

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