自宅と夜光石
さて、先程建国宣言をした俺だが、早速問題に突き当たっていた。それはそう、
「……エリネ。家、どうしよう」
「バカかお主はっ! 自分で作れるじゃろうが。なーに神妙そうな顔をして『家、どうしよう』とか言っとるんじゃ!」
「え?俺ってそんなことも出来んの?」
「記憶力にわとりかお主は! 元素を操りし者じゃろ? 世界のありとあらゆる物質に干渉出来るんじゃぞ? もちろん、魔力を原料に物質の精製も出来るんじゃぞ」
「おー、そうなのか」
「本当にちゃんと聞いておるのかのぉ?」
元素を操りし者って本当にすごいな。どんな物質でも精製できちゃうのか。元素をちょいちょい、っといじって出来んのかな。やってみるか。
「えーっと?魔法魔法……これか!『創造』」
俺はブロック状の赤レンガをイメージしながらそう言葉に出す。
すると、緑の草原、俺の足元にイメージ通りの赤レンガが出現した。でも、思いの外に虚脱感が大きい。
「はぁ、何だか一気に力を使った気分だ。レンガ一個にこんなに力使ってたら、とても家なんて建てられないぞ?」
「そりゃお主の魔力しか使ってないからじゃろう。そもそも素材代わりの物が無ければ魔力使用量はそんなもんじゃ。レンガ一つでも、虚空から物を生み出すなど、世の中の理に反することじゃからな。というか、虚脱感程度で済んでいるお主は十分に規格外なのじゃ」
ほーう、てことは意外と出来ることは少ない?……いや、さっきエリネは『素材代わりの物が無ければ』とか言ってたな。つまり、生えている木を木材として切り出すのは簡単な訳だよな。……ちょっと不安だが、やってみるか。
そう思い、近くに生えていた木に近づく。この木もさっきまで枯れて今にも折れそうだったのにな。それを美しい姿に戻せて、俺は少し嬉しい気分だ。
「今度は何をするつもりじゃ?」
「さっきエリネは『素材代わりの物が無ければ』って言ってたから、木の切り出しなら出来るかと思って」
「おぉ、その通り。お主の魔法『創造』は、創る、と言うよりも加工する、という意味合いの方が強いんじゃ。だから物質の生成はより魔力を使うことになる」
「ふ〜ん。じゃあ早速やってみるか。『創造』!」
木の幹に手を当て、魔法を発動する。イメージは丸太。家を建てるのに余分な部分を剥ぎ、枝葉も取り去った後の幹の部分。さぁどうだ。
「お、成功かな?」
地面に落ちた自身の枝葉を散らしながらその丸太は現れた。落下した勢いのまま、丸太は坂を転がっていく。ここ、ちょっとした傾斜になってるじゃねぇか!
丸太がゴロゴロ、俺はバタバタ。俺から逃げてるんじゃないかと思うほどの丸太の転がるスピードに追いつけない。もういいかな、諦めて。たかが丸太一本だし。
いや、やっぱり回収する。初めての創造の証ぐらい取っときたいわ、俺は。そして走る最中、ふと閃いた。
「あ、こうすれば良かったじゃん。『創造』」
丸太の進路に土を盛り上がらせて作った壁を創る。こうすれば……!
ドーーーン!!
派手な音を立てて丸太が土壁にぶつかった。確認すると、奇跡的に丸太に損傷はなかった。頑丈すぎだろ、この木。土壁もよく壊れなかったな。
確認を終え、顔を上げると、エリネがゆっくりと坂を下ってくるところだった。
「無事回収できたようじゃな」
「ちっ、偉そうに……」
「あー! 舌打ち、女神に舌打ちしおったぞこやつ!!」
「気のせいだって。じゃあ、早速建築資材集めに行ってみよーー!」
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それから1時間近く資材集めを続け、やっと家づくりへ取り組む。
「やっぱ、森に作る家といえばツリーハウスだよな」
「バカか? この辺りはあまり太さのもない木ばかりじゃろうが。まぁ、いずれ土地を拡大した時にでもするが良い」
俺の夢、2秒で破られる……
「じゃあ、最初から二階建てとか贅沢は言わずに、取り敢えずは一階建てだな」
「後から上に伸ばせば二階も作れるし、それで良いじゃろ」
「決まりだな」
と、決まった訳なのだが。
「ふんふふーん♪」
開始数分で気づいた。エリネがハイスペック過ぎて、俺要らないんじゃね、と。なので建築をエリネに任せ、俺は魔法の練習をしていた。
……どうせ俺は要らない子ですよーだ。
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「おーすげぇ。本当に出来てる」
「わらわは女神じゃぞ? これほどは造作もない」
「……そういえばお前って女神だし、金ロリ教でも作るか?」
「お主、死にたいようじゃな。それにわらわはこの世界では既に名の売れた神なのじゃぞ?」
「何、だと? つまり金ロリ教は既に存在していたと言うことか!」
「違うわ! というか話が脱線し過ぎじゃ! 家が完成したんじゃろう?」
おっと、そうだった。自分たちの拠点となる家、第一号ができた。ずっと集めていたガランダの木、という木で作った木造家屋だ。一般的な日本の一軒家くらいの面積で一階建て。壁も屋根も薄茶色だと、味気なさを感じるので、今度また新しい木材を探しに行きたい。
リビング一部屋に個室となる部屋二つ。庭はいっぱい。窓は少し多め。窓は、雨戸みたいに開閉出来るようにした。スライドはめっちゃしにくいけどな。
俺が丸太を作り、エリネが魔法で移動させ組み立てて作ったので、外装のセンスはエリネに任せていたが、全然良いんじゃないかと思う。真上から見るとL字になっていて、玄関はLの文字で言うと右下にある。
ちなみに、丸太には凹凸を付けて、釘とかが無くても固定出来るようになっている。ここら辺は父さんの仕事を手伝っていた時、たまたま知った技術だ。父さんは土木工事を仕事にしていたからな。
「にしても、まだベッドとかキッチンとか無いから生活は大変そうだな」
「それはまた夕方にでも作ればよかろうに。現代っ子は弱っちいのぉ」
「いや、これでも頑張ってる方だろ。人間、誰しも生活水準は落としたく無いもんなんだよ」
「そうじゃな」
ドアを開けて中へ入る。蝶番が無いからギシギシ言うな。可動部分の部品も代わりがないかな?
家というより小屋に近い我が家。そうだった。忘れてたことがある。
「照明がねぇ!」
「確かに窓からの日差しだけじゃ心許ないじゃろうな。昼間は問題ないが、夜がな」
「何か無いのかな〜、明かりになるもの」
「ならば『創造』で作ってみてはどうじゃ?この世界には夜光石というのがあってじゃな。まぁ、要するに光る石で、昼間吸った光を夜や暗いところで放出する鉱石じゃ。創ってみるがよい」
夜光石がどんなのかは知らないが、光る石を創ればいいんだよな。光る石、光る石〜!
「『創造』!」
前に突き出した掌の上に、拳大の大きさの石が出現した。円盤みたいになってるから、天井に貼れそいだな。くぅ〜、体がだるいぜ。
倦怠感に襲われ、体が求めるまま床に寝転がる。
「生成は出来たが、体がだるい。それ、置いといてくれないか?」
「それはよかろう。とりあえず窓際に置いておけばよいじゃろうな」
「ありがとう」
その直後。
グーー
「いやすまん」
「おぉ、確かにちょうど昼時が過ぎた頃ぐらいじゃな。では一度わらわが木の実の取り方を–––––」
「あ、あっちの木にリンゴ? みたいなのが生えてるぞ」
「何故そんなことが––––ってそうか。お主は森の守護者じゃったな。この近辺は既に把握可能という訳か。待っておれ。わらわがとってきてやる。ありがたく思うんじゃぞ?」
「あぁ。頼んだ」
そういえば食糧のことは考えて無かったけれど、森の守護者である恩恵が一つ分かった。森の地理や様子の把握が出来るようになる、か。食糧問題は早速解決かも。
今は、エリネが戻るのを待つか。あぁ、床冷てーな。
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作者は狂喜乱舞します。