自己紹介しようぜ
今回は彼らが自己紹介する回です。
なんと楓が博多弁を使っている理由がシレッと明らかになります。
「み、雅くん。その後ろん人たちは?」
「あ、あぁ。俺の街づくりの仲間だ。仲良くしてくれると助かる」
俺と楓はお互いギクシャクしたままだったが、先に立ち直ったのは楓だった。
「え? 雅くんはこっちん世界で街づくりしとーと?」
「そうだな」
「えぇー! うちも付いていってよか?」
「もちろんいいぞ」
「やったぁ!」
嬉しそうにはしゃぐ楓。
皆さん、これが勇者です。ただ無邪気にはしゃぐこいつが勇者ですよ。魔王とかいるのかね。
「なぁ、取り敢えずここを出ようぜ。次のボスが沸いちまう前に外へ出よう」
「そうだね」
楓の仲間のドワーフ戦士が言った通り一度脱出する。ちなみに、9階層などにある安全地帯には、地上への帰還用の魔法陣が設置されているので、それを利用した。
案外最初の方は楽だったな。
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それから魔物討伐数などの記録をした後、親睦を深める、という名目でお互いに自己紹介をすることになった。
「じゃあそっちから自己紹介してもらっても構わないか?」
「うん! じゃあセイルからお願い」
セイル、と呼ばれ、席を立ったのはさっきのエルフの弓使いだった。
「どうも。セイルです。見ての通りエルフ族出身です。得物は弓です。以後お見知りおきを」
そう言って片手を胸に添えて敬礼してみせる。……ただし、楓に見えない角度で俺にだけは鋭い視線を送ってきた。なーんか貴族みたいな立ち居振る舞いだな。なんというか、隙がない。エルフだからかな。
「次は私! 魔法使いのシェリムよ。まだまだ魔法は発展途上だけど、カエデに拾って貰ったからには頑張らなくちゃ。って思ってるの。得意なのは水と回復の魔法よ。よろしくね」
今度は活発そうな子だ。赤髪のつり目気味のやや気の強そうな少女。なんというか、悪戯っ子な印象だ。人を見た目で判断するのは良くないと思うのだが、人をからかうのが好きそうな感じなんだよなぁ。あと、失礼だが身体も発展途上な模様。
「じゃあ俺だな。俺がヘラルド。ドワーフ出身だから武具の手入れも得意だ。得物は片手剣と大楯だ。よろしくな」
赤髪の巨漢な彼は見た目通りドワーフだった。一応リーダーである楓がどこか抜けているが、その代わりと言っては悪いが、パーティーの保護者に近い立ち位置だろうか。堅実そうな雰囲気だな。
「こっちん最後はうちかな。楓ばい。雅くんとは幼馴染みなの。みんなよろしくね」
楓は博多弁を喋る俺の幼馴染み。ただの高校生だった筈だが、こっちの世界で勇者と呼ばれている。中身なにも変わってないのに。
今までどうしていたかとかはまた後で聞くとして、今度は俺たちサイドだな。
「じゃあ次はわらわが。わらわはエリネじゃ。魔法使いとしてやっておる。以後よろしく頼む」
と言い終えた瞬間。楓がこちら側へ飛んできた。そのままエリネを抱きしめる。あぁ、やっぱりそうなるのか。
「可愛いー!! 最初見た時から抑えてたけどやっぱり喋っても可愛い!!」
「わっ、わっ、やめるのじゃ!」
ほっぺたすりすりしてじゃれる楓と何とか逃れようとするエリネ。こいつ、他人の自己紹介中もずっとエリネを見つめていたのだ。予想通りと言ったら予想通りなのだが、このままではエリネが可哀想なので止める。
「はいストーップ。楓、可愛いと思ったものにすぐ抱きつこうとするのやめろ。迷惑被ってる奴がいるから」
「はーい。エリネちゃん、ごめんね」
そう言ってエリネを解放する楓。
こいつは昔っから自分が可愛いと思ったものには遠慮をしない性格なのだ。例えば、クレーンゲームで見つけた”クマのぬいぐるみが欲しい!“って言って俺にせがんで来るのだ。そして俺が取ったら、速攻で抱きつき、全力で堪能しようとするのだ。
博多弁を使っているのもその性格のせい。小学校の頃に地域の文化体験があり、その時に“博多弁ってめっちゃ可愛くない!?”とか言って次の日には完璧にマスターして来たときには流石に驚いた。
「わらわが……可愛い……」
エリネが下を向いてゴニョゴニョと何か言っているが、まるで聞こえない。まぁいいか。
「そろそろいいかな? 私はソーラ。こっちのエリスと一緒に冒険者やってるよ。よくアホっぽいって言われるけど、そんなことないから、よろしくね!」
うん、それを自分で言うあたりアホっぽい。はい、次。
「さっき名前を出されたが、エリスだ。冒険者をやってる。カリア村出身だが、一応それなり知識を持っているつもりだ。よろしく頼む」
きっちり頭を下げて決めるエリス。なんかヘラルドが視線を送っているが、涼しい顔でスルーしている。あいつも中々酷いな。もしくは気付いてないのかな?
「ん、俺か。ジルだ。考古学者やってる。地学や魔物学を中心に研究してるから、研究について聞きたいなら大歓迎だ。得意は土魔法。よろしく」
一番心配だったジルが意外とキッチリとしていたので安心した。もしかして待ってる間ずっと文章考えてたんかね?
「よし、最後は俺か。雅だ。森の守護者っていう職業でやってる。森の中に街を作ってる。植物魔法と固有魔法をいくつか使える。よろしく」
前のエリスにならって頭を下げる。ちなみに、固有魔法というのは『再生』や『創造』などのことだ。
「お前さんたちが街を作ってるのか?」
「あぁ。楓も来たいって言ってるし、こちらは幾らでも招待するぜ? 何なら拠点として使ってくれても構わない」
「そういうことなら是非行かせてくれよ。拠点云々はリーダーと相談してだがな」
よし。楓とヘラルドの二票分の賛成を得た。これで楓のパーティーが来るのはほぼ確定だな。
「私も行きたいな。森の中にある街なんて見たことがないから、一回見てみたい!」
「……一人残るのも嫌ですし、カエデたちが行くなら付いて行きます」
ウキウキとしているシェリムと、対照的に少し嫌そうなセイル。街を見せてから、何とか拠点移動を確定させたい。その為には頑張るしかないか。
「で、出発はいつにすると?」
「4日後の昼過ぎだ。その日に他に合流する奴がいるから、それを待ってからだな」
「おっけーだよ。じゃあ明日は迷宮探索ん続き行こうよ!」
「分かった。みんなもそれでいいか?」
「「「「おー!!」」」」
みんなノリよく返事してくれた。ただしセイル以外。もう少し仲良く出来ないものかねぇ。
博多弁の文章って誰が言ってるかが分かりやす過ぎませんか?
という訳で、少しでも面白いと感じて頂けたら、
ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします。
作者は狂喜乱舞します。




