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ジルの検問

さーて、応募用の小説が完成したので更新再開です!

更新頻度を上げる努力をしつつも頑張って参ります!

 森の木々を抜け、外界へと飛び出す。


「うわー、綺麗だなーって危な!」


 森を抜けた先は、切り立った崖だった。危うく落ちるところだったぜ。外に出て早々に大怪我するとか勘弁願いたい。


「落ち着いて見ると、めっちゃいい景色だな」


 崖の下に広がっていたのは、巨大な湖。陽の光を浴びて、水面がキラキラと輝いている。また、(はす)の花もたくさん咲いていた。混じり気のない真っ白なものから、薄く桃色を帯びたものまで。まだ緑色を含んだ小さな花もあって、幻想的な光景がそこにはあった。


 すっずしぃーーーー!!結構離れた場所にいるのに、マイナスイオンを感じる。マイナスイオンとか存在しないらしいが、そう感じるのだ。癒されるぅ〜。


「綺麗な湖じゃな。わらわも初めて見たのじゃ」

「私も初めて見た。あんまり村から出なかったからな」

「うんうん。こんな場所があったなんて知らなかった」

「俺もだ。地質調査で出てはいたが、初めて見る」


 順にエリネ、エリス、ソーラ、ジルだ。三者三様、いや四者四様の感想を聞いたが、全員に共通して言えることは、ここの存在を知らなかったことだ。初めて見る美しい景色に、全員が見惚れていた。


 景色を堪能することしばらく。柏手を打って、エリスが区切りをつけてくれた。


「さぁ、そろそろ行こう。向こうからなら降りれるみたいだし。王都に行くんでしょ?早めに着くべきだと思う」

「そうだな。じゃあ行くか!王都へ向けて出発だ!」


 そうして、俺たちは王都サンタマリアへ向けた旅路を再開させたのであった。


---------


 歩くこと数時間。途中で見つけた街道に沿って南下していく。ジル曰く、この大陸は、中央よりやや南に王都が位置しており、その北に俺たちの森が広がっている。更に北は豪雪地帯が広がっているらしい。王都の南側には砂漠地帯、東側には火山、西側には海と沢山の島々、と盛り沢山な地形だ。


「何だか、ゲームみたいなとこだなぁ」

「? その、げーむとは何のことだ?」

「あ、いや何でもない。俺の故郷の物さ」

「そういえば、ミヤビの故郷ってどんなとこなの?」

「確かに、話を聞いたこと無かったな」


 エリスとソーラに問われ、答えに窮する。


 俺がうーん、と考え込んでいると、エリスが助け舟を出してくれた。


「すまない。答えにくいなら今度でいい。そちらの事情もありそうだし。でも、いつか教えてくれると嬉しいぞ」

「あぁ、そうしてくれると助かる」


 実は異世界人でした、なんて言って、どう反応されるか予想が付かない以上、いきなり答えるのも(はばか)られた。もし街から出て行くとか言われたら俺、立ち直れないかも知れない。女の子に嫌われる訳だし。


 そうしたやり取りの後も気まずくなることは無く、元気に歩き続けていた。


 楽しい時間と言うのはあっという間に過ぎる、と言うのを実感した。早朝から出かけて、もう既にお腹が空き始める頃合いだというのに、体感時間としては1時間も経っていなかった。実際は4時間ほど経過している。やっぱり徒歩では時間がかかる。今通っている街道をどうにかして街と繋げたいなぁ。


 そんなことを考えていると、不意にエリネが声を発した。


「む、見えてきたかの?」

「そうだ。あれが王都サンタマリア。建国してから2000年ほど経過していて、あの城壁も数十年の歳月と人手をかけて作られた物だ。更に現在の国王は……」

「はいはーいストップ、ストーップ。ジルは話始めるとキリが無いんだから自重しなさい」

「すみませんでした……」


 出た。ジルの知識全開モード。そしてそれを諫めるソーラ。最早見慣れたやり取り。既に他のメンバーはスルーを決め込んでいた。


「それにしてもでっかい城壁だな」

「あぁ。あそこで一度検問される筈だ。列に並ばないといけないから面倒なんだっての」

「そうなのか」


 何か変な物持ってきて無いかな?一応持ち物を確認するが、特段変な物は持っていない。魔物の素材と薬草、あとは食料品ぐらいだ。


「うわぁ、本当に大きいです」

「確かに、よくこんな物を作れたな」


 そう嘆息するのはソーラとエリス。二人とも城壁の大きさに圧倒されているようだ。俺は、日本で高層ビルとか見たことあるので比較的平気だ。とは言っても、横幅はビルの何倍もあるので、多少は驚いたけど。威圧感すごっ。


 何はともあれ、無事に列へと並ぶことが出来た。そして待つこと数分。ようやく俺らの番が回ってきた。


「入国理由は?」

「観光です」

「冒険者カード、または商業カードをお持ちですか?」

「俺たちは持ってるけど……二人が持っていません」

「でしたら、入門税として一人当たり小銀貨3枚を頂きます」


 わお。申し訳ない。これは、王都に入ったらどっちかで登録しないとな。というか小銀貨3枚っていくらぐらい何だろ?


「1、2、3、4、5、6。確かに確認致しました。奥で荷物検査を受け、その後にご入国下さい」


 ジルが金を渡し、奥へと通される。彼に視線で感謝の意を示すと、彼は歯を見せてキザに笑ってみせた。

 くーっ、流石だ。カッケェ。大人の余裕が滲み出ている。ほぼ同い年らしいけど。


 荷物検査を難なく通り抜け、城壁の内側でみんなを待つ。一人また一人と出てきたが、中々一人揃わなかった。


「なぁ、ジルはいつになったら出てくるのじゃ?」

「分からないよ。あいつ、何か引っかかる物持ってきてたのかな」

「もうそうなら後で私がシメておこう」

「うん、任せるよ」


 と、女性たちの物騒な会話を無視しながら彼が出てくる筈のドアを見る。待つこと30分ほど。暇になってもう置いていこうという提案がで始めた頃。不意に扉が開いて、中からジルが出てきた。


「やぁ、お待たせ」

「お待たせではないのじゃ。一体どうしてそんな遅かったんじゃ?」

「あー、いや睡眠の魔道具と解体用のナイフが引っ掛かって、何とか納得させてたからだ。まぁ何とか通ったけどな」


 何故か少し自慢げに語るジル。彼の背後には……夜叉がいた。


「……ジールー? 女の子たちを待たせてどういうつもりだ? ソーラやエリネもみんな待たされたんだぞ?」

「……ヒッ」


 直後、グリグリと痛そうな音と、ギャァアアアアアという彼の絶叫が聞こえてくるのであった。


 俺とエリネは耳を塞いで後ろを向き、なるべく無関係を装いながら待っていた。



二章再開しましたがいかがでしてでしょうか?

いつもよりギャグ要素ほんのり増しでお送りしました。

ジルは自業自得なので無視しましょう。


少しでも面白いと感じて頂けたら、

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作者は狂喜乱舞する(かもしれません)。

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