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森を飛び出て

二章が始まります……ようやく森を出ます。


 霊樹を『創造』してから1週間が経過した。あれからベルは毎日のようにお世話をしに行っているらしい。

 “龍の姿では子供たちが驚いてしまうでしょう?”と言ってわざわざ街とクレーターを徒歩で行き来しているらしい。


「街道整備とかしたいけど人手が足らねえなぁー」


 俺が椅子を傾けながら呟いた一言に、リンゴを齧っていたエリネが反応してくれた。


「それなら森の外から連れてくるのはどうじゃ? 森の中で生活しておる者などそうそう居らん。カリア村は偶然じゃろう。『感知』で探してみたらよいじゃろう。森に人の気配はない筈じゃ」


 言われた通り『感知』を使い、森の中の気配を探る。


 ……確かに人の気配は無い。あるとすれば、霊樹の世話に行っているベルくらいのものだ。やっぱり、一度森を出るべきなんだろうなー。


 そんなことを思っていると、不意に玄関外から声が聞こえてきた。


「その話、俺にも聞かせてくれないか」


 そう言いながら玄関の扉を開いたのは……


「って、お前なんで白衣汚してんだよ! 土だらけじゃねえか! せめて土ぐらい払ってから来い!」


 やってきたのは、着ている白衣を土で汚し、それを落とそうともしていないジルだった。


「いやー、さっきまで地質研究をしててね。作物の育ちが良い理由を探ってたんだ」

「なるほどな。それは分かったから、さっさと土落とせよな? な?」

「わらわからも、そのままなら出て行けと言うぞ」

「分かったから、竹ぼうきを構えてにじり寄って来ないでくれ……」


 結局のところ、白衣の土が落ちなかったので仕方なく脱ぐことにしたらしい。下は普通に布の服なんだな。


「というか、眼鏡とその服が合ってなさすぎるんだけど」

「ははは、よく言われるよ……。まぁそんなことより、森の外へ行く、という話をしてたよね?」

「そうだな」「そうじゃな」

「だったら、俺も連れていって欲しい!」


 と、彼は言うが、どうしたものか。エリネに視線で問うと、意を汲んでくれたようで。


「まぁわらわたちだけで行ってもどうしようも無いだろうし、メンバーも欲しいところじゃ。わらわは別にいいと思うぞ?」

「そうか。だったらジルも来てくれよ」

「あぁ、ありがとう。では、他に誰を連れて行くんだ?」


 それなんだよな。誘ってもあと一人か二人だろうし……。ここはソーラとエリス辺りが良いだろうか。彼女らは一応は冒険者であるし、それなりに他の街について知っているかも知れない。


「じゃあさ、ソーラとエリス、どうだ?冒険者だった奴らだし、頼りにはなると思うぞ」

「それでいいじゃろう。わらわたちが留守の間は、ベアートに任せるとするか」


 多いに賛成だ。べアートは元々村長だったし、仕事はこなしてくれるだろう。(とは言っても特にすること無いけれど)


 ということに決まったので早速ソーラたちにお願いしに行ったら、二人とも承諾してくれた。エリスは一瞬迷う素振りを見せたが、”頼むっ“って言ったらそんなに言うなら……と弱ツンデレが発動していた。あとエリスの私服は初めて見たが、あえて言葉には起こさないでおく。


 あと、ベルを呼ばなかった理由は単純、見た目が完全に龍人だからだ。その姿で行けば騒動が起きることは目に見えているのでお留守番だ。更に言えば霊樹の世話もある。


 そして、メンバーたちに伝えた内容はこうだ。


・出発は1週間後

・行き先は王都サンタマリア

・早朝に広場に集合

・期間は未定、お金は荒野の魔物素材を売る

・ジルは白衣洗え


 以上、五つの点を踏まえて各自で準備を進める。


------------------------


 それから1週間は魔物の討伐、もとい『植物魔法』の練習を頑張っていた。『植物魔法』は、現状の俺の唯一の攻撃手段だった。『再生』も『創造』も攻撃能力がほとんど無いので、道中の魔物たちへの対抗手段として腕を磨いている。

 ちなみに、『植物魔法』は精霊を従えし者(スピリットマスター)の中の魔法の一つだ。植物のツルを伸ばして拘束したり、鞭のように扱ったりする。他には硬い実を飛ばしたり、花から光線を放ったり(!?)できる魔法だ。出来ることが多くて便利な魔法だな。


 魔物を狩るために、荒野は敢えて残している。屍龍が居なくなってから、荒野の侵食は止まったので、荒野は残していても大丈夫だと思っている。珍しい黒の侵食(ブラックアウト)した魔物の素材も手に入るし、魔法の練習も出来るし、で一石二鳥なのだ。


 そして約束の日。広場のベンチに全員が集合していた。エリスとソーラは旅装を着慣れている感があるけど、ジルは旅装の上に白衣を羽織るとかいう謎すぎるファッションだった。エリネもいつもの白い服から小さな外套付きの軽装だった。


 ちなみに、俺は村のとある衣服屋に作って貰った旅装だ。深めの緑色を基調とした旅装となっている。1週間の間に靴も履き慣れておいた。準備はオッケーだ。


「全員準備できたか?」

「うん」「もちろん(じゃ)」「おう」


 三者三様の返事を聞き、俺たちは街の外へ出る。ちなみに、送り出しは断っている。出迎えも、目標である市民の獲得を成功した時は頼む、と言ってある。


 俺たちは森の中を進んでいく。


「街の外に出るのは久しぶりね」

「私はちょこっとの間だけ出てたけどね」

「俺も街はよく出てたが、森からはまだ一度も出たことが無いんだよなぁ」

「ミヤビって箱入りだったんだな」

「いや違ぇから」

「箱入り……おもしろいのじゃ」

「おいエリネ、俺は箱入りじゃない」


 そんな感じで終始私語だらけなパーティーは森を進み続け、ついに森を抜けた。

二章開始。是非これからも読みにきて下さいね!


少しでもおもしろいと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします(強欲)

作者は狂喜乱舞します。

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