片翼の龍と霊樹の若木
15話目。ついに屍龍とも決着です。
「これで……どうだぁっ!『再生』!!」
屍龍の体が淡い光に包まれる。体の支えを失った俺は重力に従って落ちていく。魔力切れによる倦怠感で動けず、地面との接触を予期して思わず目を瞑る。
直後、俺の体は何か大きなものによって受け止められた。
「人間よ、感謝します。私の暴走を止めるどころか、こうして元の姿に戻してくれたのですから」
美しい女性の声。目を開けると、深緑色の翼の上に乗っていた。どうやら、落ちていく俺を翼で受け止めてくれたらしい。
翼から飛び降り、エリネと共に緑龍ベルフェリアを見上げる。そこで、一つの違和感に気付いた。
「翼、治らなかったのか?」
本来なら対となって存在する筈の龍の翼は、片方が失われたままだったのだ。斬り口は塞がっているものの、根本から切り落とされた翼は痛々しく感じた。
「えぇ、そのようです。ですが、元の姿に戻してもらった上、両翼を揃えてもらうなど、そんな高望みは出来ません。これは私への戒めとします」
人間の手によって体の一部を奪われたというのに、人間を再び信じようとしてくれるベルフェリアの心の広さに俺は思わず関心してしまった。
「さて私の恩人よ、一つ聞きたい事があります。あなたの隣にいるのはもしや、女神エリネイア様でしょうか?」
「む、よう分かったな。久しぶりじゃな」
「はい、お久しぶりです」
まさかこいつらに面識があるとは。まぁ霊樹の天辺で暮らす龍と女神だもんな。可能性は0と切り捨てる必要もないだろう。
「そういえばベルフェリアよ、あの姿になれんか? このままではちょっとばかし話しにくくてな」
「そうですね。何気に人にあの姿を見せるのも初めてですね」
そう言った彼女(?)は淡い緑色の光に包まれた。
光が止み、目を開けると、先ほどまでの龍の姿は消えて。
「えぇえええええ!? 」
俺は反射的に声を上げてしまった。何故って、さっきまで戦ってた大きな龍が、女性の姿をして立っていたのだから。
流れるような緑色の髪と、頭の上には一対の角。赤や緑を基調とした、巫女装束のような服。腰の少し上から生えた翼は片側しかない。人間のものとほとんど差異の無い瑞々しい肌が垣間見えた。
「おぉ、その姿を見るのも久しぶりじゃな」
「なんで龍が人間みたいな姿になるんだ?」
「暮らすのに龍の姿では不便でしょう?」
「まぁ、確かに……」
言われてみればそうだ。あの大きさで生活するのってなかなかハードだろうし。巨体っての難しいもんだ。
「エリネイア様、一つ聞きたいことがあるのですが、どうして人間と一緒に?」
「わらわがこのミヤビを転生させたからじゃ。こやつはちょっとばかし他の転生者たちよりも面白そうじゃったからな」
「すべては神の気まぐれ、という訳ですか」
「ではまだ幾つか聞きたいのですが……」
この後、意外と聞きたがりな緑龍さんの質問ラッシュは続いた。
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「長々と質問してすみませんでした……」
「いやいや、ベルもこれから森の同志じゃ。全然構わんぞ」
ちなみにベルというのは、エリネが“ベルフェリアだと呼びにくい”と言ったので付いた愛称だ。後、お互いに自己紹介をしたのだが、エリネが偉そうにしていたのでちょっとイラッとした。
「最後に質問したいのですが、ミヤビは先程から地面に手を当てて何をしているのですか?」
「いや、どうにかして霊樹の『創造』が出来ないか試してるんだよ」
「ッ!!」
ベルが目を見開く。予想通りの反応。まぁ自分の渇望するものを取り戻せるかも、と知ったらそうなるわな。
「……結果はどうでしたか?」
期待のこもった眼差しを向けてくるベルに、俺はこう言った。
「ベル、後ろ見てみ?」
「後ろ?……あ、あれは……!」
クレーターの中心、白い花で縁取られた円の真ん中。ベルの視線の先には、高さが数十センチしかない小さな小さな霊樹の若木。その儚い存在は、彼女の持つ翡翠の双眸を濡らすには十分過ぎた。
「俺からのプレゼントだ。魔力はエリネに借りたものだから、2人からの贈り物だな。大切にしてくれよ?」
「魔力を貸せと言われた時は何をするつもりかと思ったが、まさか霊樹を蘇らせるとは思わなかったのじゃ」
「俺がまだ未熟だから、小さな若木としてしか『創造』出来なかったが、許してくれ」
「いえ、貴方からの贈り物は、十分過ぎるほどもらいました。私は再び霊樹を大事に育て上げると約束しましょう……!!」
ベルは依然として涙を流したままそう宣言し、続けた。
「ありがとう……ありがとう……ミヤビ、そしてエリネイア様……」
彼女が霊樹を育てれば、クレーターの周りはかつての神秘的な光景を取り戻し、残った荒野をも緑に染めていくであろう。
この出来事が建国への一歩へと思うと、胸が躍る。
そして、ミヤビの建国記は、また新たなページを刻むのだった。
一章的な出来事が完結します。
ここからは少し閑話休題なども挟んで行きたい次第。
二章からは他国とのしがらみも出そうと考えています。
是非お付き合いください。
少しでも面白いと感じて頂けたら、
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作者は狂喜乱舞します。




