魔物と荒野の侵食
初の戦闘描写があります。すぐに終わる短いものですが、何かアドバイスがあれば教えて下さい。
エリネ、ソーラ、ジルとたちと共に、魔物の反応があった森の北端へと急ぐ。森の守護者の固有能力である、『感知』でその様子を見ていたが、敵は、犬型の魔物が三匹ほど。赤黒い線が走った犬で、見るからに魔物だった。
魔物の身体的特徴をジルに伝えると、彼は少し悩んだ後でこう言った。
「その魔物、多分血の猟犬だと思う。この森の周りにある荒野にしか出現しない魔物だね。荒野に住む魔物は、黒の侵食を受けていて、通常個体よりも強いんだ。通常個体は山岳犬って言って、山岳地帯に生息しているんだ。更に特徴的なのは……」
「はいストーップ。ジルは説明が長くなっちゃう癖があるから中断して。その調子だと一時間ぐらい話続けるでしょ?」
「ごめんごめん、つい」
確かに長くなりそうだと思ったけど、一時間も続くの……?でも、何はともあれ、魔物の情報は掴めたので良しとする。
その後間もなく、ようやくその姿を確認出来た。『感知』した通りの見た目だった。あの赤黒さは、実際に見ると中々怖い。
「わっ、あれが魔物?聞いてた通りの見た目だね……」
「おぉー血の猟犬を見るのは二度目だけど、相変わらず怖い見た目してるなぁ」
彼らはこちらに気がつくと、露骨な敵意を向けてきた。牙を剥き、威嚇の態勢に入る。グルル、と低く唸るその姿は、少しばかりの恐怖を煽ってくる。
「グルル……ガウ!(人間か。喰らってやる!!)」
「ガウ、ガウガウ(さぁ、誰から喰おうか)」
魔物たちが犬型だからか、犬と鳴き声が一緒なので何を言ってるかがしっかりと分かる。ラノベでよく聞く魔物の鳴き声って、こんな物騒なこと言ってたんかねぇ。
「ここはわらわが出よう。どこまで魔法が通るか分からんのじゃが、やって見る価値はあるじゃろう。皆は構えておけ」
エリネが後ろから出てきて前に出る。すると、どういう訳か魔物たちが怯えを見せ、一歩後ろへと下がった。
「うん?何故退がる?見た目的にわらわが一番弱いじゃろうに」
「グルルルル……(こいつ、我らが天敵と同じオーラを放ってるぞ……)」
「ガウガウ、グルゥ……(あのチビ、天界の奴だ。なぜ現界している……)」
「ガウガウガウ、ワオーン!(天敵だか何だか知らんが、俺は行くぜ!)」
突然、魔物の一匹がエリネへ向け駆け出す。赤黒い風の如く疾走し、エリネとの距離を詰める。しかし、うちの女神は反応も速いようで。
「甘いわ!『聖なる水の波動』!」
女神様お手製の水属性魔法が魔物に直撃した途端。一匹の血の猟犬は、赤黒い残滓を残して消え去った。
「ふん、黒の侵食した魔物など、水魔法に聖水を混ぜればイチコロじゃ」
エリネは得意げに、その薄い胸を張る。
ふむふむ。黒の侵食を受けた魔物は、聖水を混ぜた魔法で一撃、と。心のメモに新たな知識を書き込んでおく。
「グルル、グルグル!(おい、一旦退くぞ)」
「ガウ。ガーウ。(分かった。走れ!)」
「あ、待つのじゃ!」
エリネがそう言い終わる頃には、血の猟犬たちは全速力で荒野の奥へと駆けていった。会話からして戦略的撤退だろうな。
「一匹浄化してやっただけじゃというのに、情けない奴らじゃ」
「あ、それなんだけどな、ゴニョゴニョ……」
「なるほど、わらわの威光に怯えて去ったという訳じゃな」
「そういうことだ」
「いやどういう事だよって。何があったんだ?」
「それは企業秘密で」
流石にまだ素性を明かすには速い気がする。俺はバレてるが。女神ってのは出来るだけ隠すべきだと思っている。それより、一つ試してみたいことがあった。それは……
「なぁ、俺の『再生』を魔物に掛けたらどうなるんだろうな」
「なるほど。それは盲点じゃったな」
「だったら、もう少し北に行ってさ、試してみようよ」
「俺も他の魔物をみたいし付いて行くぞ」
と、いう訳で、再び魔物探しが始まる。
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荒野に足を踏み入れ数分。俺はそろそろかと周りを見渡す。
「どうしたの?」
「いや、探すなら『再生』しながらがいいかと思って」
周辺の土地を『再生』させれば、俺が『感知』できる範囲も増えるし、土地も増えるしで一石二鳥なのだ。ならば、『再生』しない理由はない。それらを説明し、指に魔力を宿す。
「じゃあ行くぜ、『再生』!」
心地よい、暖かな風が吹く。『再生』の度に吹くこの風は、いつ受けても良いものだ。こればっかりは慣れたくないな、と思う。
「うーん、気持ちいい風だねー」
「あぁ、何だか癒される気がするな」
「前回よりも腕を上げたか?ミヤビよ」
「だったら良いな」
ソーラとジルも、両手をうーん、と伸ばして気持ち良さそうに目を細めている。これの心地よさだけは一生感じていたい程だ。日本じゃ経験出来なかったろうなぁ。
周囲を見渡すと、木々がまばらに点在する草原のような場所だった。
「さーて、どんなもんかな?」
『感知』を使い、土地の様子を確認した時。草原と荒野の境目に、違和感があった。よーく見てみると、草原の土が少しずつ侵食され、荒野と同じ姿に戻っていっている。荒野と接した箇所が少しずつ侵食されているのだ。本当に少しずつ色が変わってきている。何故だ?今までにない変化だ。
「ミヤビ、どうしたんじゃ?顔色が優れぬようじゃが」
「それが……この草原が、荒野との境目から少しずつ侵食されてる。最北端はそれが顕著になってる」
「最北端……北……なぁ、それの原因に心当たりがあるかも知れない」
ふと思い出すように下を向いたジルが顔を上げ、原因に心当たりがあることを伝える。
「その心当たりって何だ?」
俺のその問いに、彼はゆっくりと口を開く。
「ここから北、荒野の中心に当たる場所。そこにかつての緑龍、今は……」
「屍龍、ヴェルフェリアがいる」
今話からはヴェルフェリアに関するお話が続きます。
ファンタジーな世界観を展開して行きたい。どうぞ次話をお楽しみに。
少しでも面白いと感じて頂けたら、
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作者が狂喜乱舞する(かもしれない)ので是非。




