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水路と称号


投稿日付の後に(改)と書いてある話は加筆修正を挟んだ話です。そちらもぜひ戻って見てみて下さい。

  一方、仲良し二人組の尾行に露ほどにも気づけなかったミヤビはと言うと、農夫たちとともに川の方へと戻ってきていた。



  あの後、エリネの魔法で大きく掘削、農夫たちが(なら)す。この繰り返しで水路を作っていった。古代日本でも使われていた、ため池方式を採用し、川の水を溜め、それらを各農地へと配分する。と言った形を採っている。小さな木製の水門も作り、水の量の調節も可能にし、より利便性の向上を目指す。



 これからしばらくは自給自足生活を送るつもりだが、他の国との繋がり作りや、『再生』した土地の拡張もしなければならない。問題は山積みだが、問題を1つ1つ解決していく事で建国へと一歩ずつ踏み出せる。それが楽しくてたまらない。やはり、本当にゲームの世界みたいだ。


 接続作業をしていた奴らと合流する。見たところ、川と水路の境目に蟻塚のような土塊があった。どうやらそこを崩すことで完成するようだ。俺らが川に姿を見せると、スコップを肩に担いだワイドがこちらに近づいてきた。


「ミヤビ、こっちは開通させる準備は万端だぞ。そっちは終わったのか?」

「お前、ちゃんと真面目なとこあったのな。あぁ。こっちは終わった」

「じゃあ最後の締め括りだ。エリネちゃん、やってくれよ」

「わ、わらわかの?」

「それ良いな。エリネは水路の大半を作ってくれたしな。頼む」

「ミヤビがそこまで言うのなら……」


 仕方ない、と頭をふる彼女だったが、どことなくウキウキとした様子でワイドから借りたスコップを握る。そして、川と空の水路との境目、土塊の前に立つ。


「エリネー!完成に際して、一言くれよ」

「え?無茶振りじゃな……では、オホンッ。まずはありがとうなのじゃ皆の衆!お陰で水路が開通する。この水路は、やがて街の食事を支える大事な柱となるじゃろう。なのでここにいる全員、これからも、己が仕事に励むのじゃ!では行くぞ!」


  エリネがスコップを大上段に構える。そして少し愛嬌も含んだ掛け声とともに、スコップを思いっきり振り下ろす。



「ていっ!」



 カンッと言う硬質な音を立てて、スコップが土塊を叩いた。しかし、土塊は崩れるどころか僅かに土を落としただけだった。


「うぅ……恥ずかしい、のじゃ」

「締まらないなぁ。まぁ振った俺も悪かった」


 エリネは頬や耳どころか首までその肌を朱に染めてうずくまってしまった。そりゃあそこで失敗すれば恥ずかしいわな。もう顔から煙が出そうな勢いで赤くなっている。その姿を形容するとしたら–––––


 ––––––ゆでダコ。


 いい例えだと思ったが、それを口にすると、恐らく半殺しにされるため、声に出さないように注意する。


「ゆで……じゃなくてエリネ、俺が代わりにするけどいいか?」

「いまお主何と言いかけた!? まぁいい。では代わり、お願いするのじゃ」

「分かった。ちょっと向こうで涼んでこい」

「その気遣いには素直に感謝するのじゃ……」


 エリネから受け取ったスコップを、同じように大上段に構える。そして、掛け声とともに振り下ろす。


 バコッと心地よい粉砕音を奏でながら今度こそ土塊は崩れ去る。そして、川の澄んだ水が水路へと勢いよく流れ込む。その勢いのまま水路の一番奥へと向かって行く。開門しておいたため池に水が溜まっていく。なんか、水がゆっくり溜まって行くのを見てると、無性に風呂沸かしを思い出す。今はお湯を細かい穴を開けた天井から流すでのシャワーもどきで何とかやってきたから、少し思うところはある。いつか必ず風呂は作ってみせる。日本人として!

 とは言ったものの、別に風呂へのこだわりなんてあまり無いけどな。


 話が逸れてしまったが、着々と農地へ水が送られて行っている。最近雨が少なくて不足していた水分が補充されていく。

 あー、まるで土が気持ちいいと伝えてくるようだ。ため池の水は澄んでいるため、マイナスイオンの放出量も心なしか多い気がする。ちょっとした息抜きスポットになりそうだな。……農業用のため池だけど。


「ありがとなミヤビ!これで潤沢な土地で農業が出来るぜ!」

「これから一生懸命、街に貢献しようじゃないか!」

「ミヤビ、今度うちの野菜、受け取ってくれよ!」

「うちのもー!!」

「ありがとう。でもちゃんと街にも回せよ〜!」

「エリネちゃんにも送るからね〜!!」

「ありがとなのじゃ」


 そんな風にお礼の言葉や感謝の言葉を送ってくれる人たちがいっぱいいた。何だかこそばゆい感じがするな。感謝されるってのは。あまり感謝される事をしてこなかったからだろうか。背筋に絶妙なくすぐったさを感じながら、街の人々の下へと帰るのだった。


 −−−−−−−−−−−−−−−


 街に足を踏み入れた途端。少し無機質さを感じさせる女性のような声が聞こえた。その内容は、少し予想外なものであった。


『名称未設定の街に称号、《豊穣への第一歩》を付与致します』


 この声が聞こえたのは俺だけだったようで、皆先ほどまでと同じように話を続けている。と、思ったが、一人だけ俺と同じように首を傾げる者がいた。言わずもがな、エリネである。もっとも、俺とは違った疑問を持ったようで。


「この声、どこかで聞き覚えが……どこじゃったろうか?」

「エリネも聞こえたのか?」

「なんじゃ、流石に聞こえたのはミヤビだけか。言い忘れておったが、村や街、国などにはステータスがあって、これは、その街のリーダーと称して差し支えない者にのみ聞こえるもので、『達成報告』という。その街が特定条件を満たした場合に達成出来る。報酬はないが、称号が得られる。この称号の数やレベルで、街の価値が決まるのじゃ。『豊穣への第一歩』は確かレベル2じゃから、街ポイントはまだ2ポイントじゃな。ちなみに、街の人口によって取れる称号が左右されるから、もっと人を増やさねねばじゃな」


 ほうほう。街ポイントなんて物があるのか。それはちょっと初耳だ。人口次第で取れる称号も変わると。そういうことか。概ね理解した。


「長文説明ご苦労様。なるほどな。要は、街ポイントが高いほどいい街だって証明になるのか」

「そういうことじゃな。街の発展が分かりやすく数値化されるから便利なのじゃ。指標となりうるからの」


  そういう明確な基準ってのはいいな。よーし、街をよくする努力は(ほどほどに)惜しまずに行くぞー!!


「じゃあこれからも頑張らなくちゃな」

「うむ。よろしく頼むぞ?ミヤビよ」

「おう!」


 俺たちは向かって笑いあった。

少しでも面白いと感じていただけたら、

ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。


(改)のお話、ぜひ戻って見ていただけたら嬉しいです。

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