71話〜残された者達の日常〜
遅くなって申し訳ありません。今回から新編となります。
神都町・春。
もう半年は経ってしまったのですね。お兄様が旅立って。私の心の空白は埋まる事無くただ時間だけが過ぎてゆきました。春休みになって毎日、ここに来ています。
墓地。
「行きますよ。はぴこ。帰ってご飯にしましょう」
「あ、榛名ちゃん」
「廻さん」
廻ヶ丘廻、お兄様の友人の1人。彼女もお兄様を想っていたようです。
「あたしは勝てないのは分かってたけど、せめて気持ちをダメ元で伝えるくらいはしても、さてと、どうしたものかしらね。山の神でも信じればいいのかしらね?」
「山の神、この地に伝わる伝説」
「へぇ〜君達山の神の伝説なんて知ってるんだ。物好きだね」
さっきまでいた気配すら無かった青年。金髪の中性的な顔立ちの人。男?女?声からも判断出来ない。
「あなたは?」
「通りすがりのの物好きな歴史研究家さ。神話も研究してるっちゃしてるけど。今語る事なんてそう無いだろうけど。さてと、近くにいい喫茶店があったな。行ってみるか」
行ってしまった。名前を聞く事もなかった。
「変な奴」
「この街って歴史とか神話とか研究している方多いですね」
「そう言えばそうね」
今更この街から何か出るのか疑わしいところではありますが、夢とロマンを追い求める者はいつの世もいると言える事でしょう。
「榛名ちゃんって神話とか信じてる?」
「でもこの街で起こり得ない奇跡が起きている以上信じざるを得ないかと」
すると携帯が鳴る。見ると十束友斗さん。からの着信らしい。
「あ、友斗さん」
「アイツか。出たら?」
「はい」
『ああ、榛名ちゃん。悪いね。急で』
「いえ、何かありましたか?」
『こっちの都合がようやくついたものでね。吹雪から借りてた物を返そうかと。今更だけど返さないとね』
「はあ。この後でも大丈夫ですか?」
『構わないよ』
電話を切る。
「それでは、私は十束さんのお宅に向かいます」
「面白そうだしついて行くわ」
まあそれはいいとして、数分後、十束宅。
インターホンを押す。
「はいよ。っと何故廻ヶ丘の妹がいるのか知らんが、友奈なら今いないぞ」
「暇つぶしについて来たから特にあたしに用は無いわよ」
「そうか。あ〜そうだ。廻これ持ってけ」
「桜井製菓の新製品」
「そこの娘の前で渡すのもどうかと思ったがついでだ」
「あ〜、これですか。私は好きですね。お兄様の好みでは無いと思いますが」
「なんかすまん」
「いえ、お気になさらず。いつまでも引きずっている訳にもいきませんので」
「ふみゃ〜」
「うおっ、いたのかクリーチャー」
「はぴこちゃんですが」
猫パンチをキメるはぴこちゃん。ゆるめですが。
「中々にお転婆なお嬢さんで」
「そうですね。両親とは一番遠い子ですね。性格は。外に出ると高頻度で付いてくるので」
「こんな事言っていいか知らんが吹雪の事追っかけたりしてな。お前と同じで好き過ぎるくらいだし。うちの妹もこんくらいブラコンでもいいのだが」
「友奈は結構ブラコンじゃない?」
「お前もブラコンだけどな」
「うっさい!行きましょ、はるちゃん」
「はぁ、では、失礼しますね」
「悪いな」
十束宅を後にする。
はぁ。兄と言う最大の存在が消えて何をどうすればいいのか分からなくなってしまいました。元々他の男に興味があった訳でもなし。実際表じゃああ言えても引きずっているのは紛れもない事実なのである。
「もう、神話にでも縋れとでも言うのでしょうか?」
「神話、か。夜に山の神の祠に集合!21時ね!」
「はぁ」
20:54。神都山祠。
「なんだよ。こんな時間に呼び出して」
桜井榛名、廻ヶ丘廻、廻ヶ丘巡、十束友斗、十束友奈、ケット、はぴこ。
何かを悟ったのか2匹付いて来てしまいました。
「こうなりましたか」
「墓地で会った歴史研究家さん」
「その通りです」
光を放つと姿が変わる。金髪の碧眼の道化。
「神話の神様」
「ご存知でしたか。貴方達にチャンスを与えようかと思いまして。貴方達の御家族、御友人が亡くなったのは部下の不始末、その責任は果たされなくてはならない。かと言って同じ地に命を蘇らせる禁忌を犯す訳にもいかないのです。そうなると選択肢は貴方達にあの方々が生まれ変わった世界に生まれ変わって頂く他無いのですよ。こっちの世界とあっちの世界でのアフターケアはもちろんさせて頂きます。これは貴方達の生涯を左右する話、私としても満足して頂ける結論が出るまで待ちますよ。いつまでも」
「その必要はありません。アフターケアがなされるのであれば私はお兄様と再び巡り会う選択肢を取ります」
「にゃー」
「みゃあ」
「乗った」
「お兄様がそう言うなら」
「やるっきゃないっしょ」
「ついて行ってあげる」
「その猫ちゃんまでも、分かりました。その願い、叶えましょう。神、ポーラの名に誓って」




