Extra story9〜結城蓮7-クエストハードモード-〜
深夜。
さっちゃんが眠くないなら無理に寝ずに外に出ていい、家は開けておくと言ってたから外に出る。最近は街を出てすぐ近くで筋トレだのジョギングだのやる。ギルドは深夜帯でも空いてるし飲食も入浴も使える。着替えのバッグを背負って、トレーニングの日々。
そして数時間。街に戻る。
「さてと、ギルド行くか」
「あれ、レンさん」
「シン君」
シンゲツ、ディアボロス族の魔法使い。この身体に転生して貴重な同族。優秀な魔法使い。恋愛感情は特に無いが割といい人。
「この時間に鍛えてるんですか!?」
「大体そうかな。今日は早い方だと思う。寝たかったし」
「無理に寝る必要無いんですけどね」
「ガッツリ身体鍛えてるからその分疲れるからね。多分、普通のディアボロスの方々の生活習慣とは明らかに違うし、多分今の生活リズムだと寝ないほうがまずいかな。あとまだまだ成長期っぽいし」
「まあ身体は生まれて大体十数年で決まりますね」
ふむ、まあ女神のお陰なんだろうがおっぱいデカいのは有り難い。のか?
「でも人生長いんでしょ?」
「数百年生きますね」
「数百年馬鹿を受け入れてくれる心が寛大な人なんているもんかね。もっとも寿命通り生きるかも怪しいが。戦いに明け暮れてたらそこら辺で戦死してそう」
「レンさんを受け入れてくれる方はきっと見つかりますよ」
この言い回しだとシンゲツ氏が受け入れてないって取れるけど突っ込むとめんどそうだしやめとこ。
「そう言えばこれからどちらへ?」
「ギルド」
「一緒に行きますか。丁度ギルドに向かう用事あるので。ところで、何をしに?」
「お風呂と間食」
「おふっ…げほっ、げほっ!」
こいつ妄想したな?
「別に妄想するのは勝手だけど、表情に出すのはちょっと」
(あんたそれ盛大なブーメランよ?)
大丈夫だ、ブーメランじゃない。この世界の俺が元の世界の俺にスナイパーライフルで世界超えてヘッショしただけだ。
(ブーメランより酷くない?トドメ刺してるわよ?)
「ってかこんな子供にその反応…」
「ディアボロスの10ちょいの子供でその体型は異常なんですが」
進化したからな。まあそうか。
なんて話してるとギルドである。
「こっちはこっちの用事済ませるからそっちは勝手にやって勝手に帰っていいよ」
「まあそれなりに長くいると思いますが」
そんな言葉を聞いてカウンターへ。
「あ、レンちゃん。今日も鍛えてる?」
「バッチリ」
「今日はどうする?」
「お風呂にしておくよ。用意はあるから」
「じゃ、800マナだよ」
シャワー500マナ、およそ700円。お風呂800マナ、およそ1200円。タオルやカミソリはお金かかるけどカミソリは使わないしタオルは持ってきてる。石鹸はタダで置いてある奴を使える。
「銅貨で」
「お釣りの200マナだよ。じゃ、ごゆっくり」
100マナ硬貨2枚。この世界の100円硬貨みたいなものだけど1、10、100、1000と桁が増えるだけで他の細かい硬貨は無い。
まあそんな事は置いといて、お風呂である。一応ギルドの大浴場は戦闘で使うようなものでなければ使っていい魔法とかもある。
「光よ映せ、反射の魔鏡、ミラーコート」
お、使えた。この魔法は解くとちゃんと元の壁に戻ってし大丈夫だ。これ使うだけならシャワールームで良かったけど、まあこっちのが落ち着くしいいや。人少ないし大丈夫だろう。
うーむ。筋肉は増えてるけど脂肪も気になる。でもこれは性別的なヤツだとかで気にしなくていいのか?ボディラインは綺麗だ。うむ、美しく締まってる。
「お、ミラーコート使える子いるの?使わせて!」
何か謎のお姉さんが背後に。
「あ、うん。いいけど」
何か色々見てる。呆然とそれを見て待ってる。
「ありがと。後でお礼渡すね」
「あ、はい」
魔法を解いて壁が元に戻る。大丈夫そうだ。ってか行ってしまった。まあいいや。身体洗おう。
ギルドの大浴場は露天は当然無く、どっちかって言うと純粋な銭湯タイプである。富士山の絵もジャグジーもサウナもコーヒー牛乳も無いけど。
シャンプーやボディソープなんかの使い分けは存在せず、頭と身体共用である。何で出来てんだろ?この石鹸。わしゃわしゃと泡立てて髪を洗う。やっぱこの髪長えな。切っちまいたい。しかし魔法を生活に取り込み、現代的なシャワーがこんな世界に存在してるのは凄いよな。
「ちべたっ!!」
水から出てくるのは変わらないのね。それは仕方ない。
そのままボディタオルを泡立てて身体も洗う。で、流す。
長い髪を湯に浸けない為、タオルで上げる。
「ふぅ」
さっきの人はここにはいない。しかし謎の別の女の子(?)が浮いてる。生きてるよな?
「うわ、人いた」
「ダメだよ。そんな事しちゃ」
何で俺が注意する立場なのか。ってかこの子もディアボロスだな。似た角生えとる。
「はあい」
とりあえず特に喋る話題も無く少し間隔取って横に座ってお湯に浸かる。ぐううとお腹が鳴る。コレは普通に恥ずかしい。
「お姉さんこんな時間にお腹空いてるんです?」
「こんな時間に身体鍛えてたからね。で、キミはキミでこんな時間にお風呂?」
「まあディアボロス族ですからね〜。寝れないので」
「そっか〜」
「身体鍛えてたって事は冒険者さんとかだったりします?」
「あ〜、うん。蠍とか蜘蛛とか倒してるくらいしかしてないけど」
「強いんですね〜」
「手先器用じゃないしこのくらいしか出来ることが無いから」
言ってて虚しいな。そろそろ出ようかな。お腹空いたし。
「じゃ、じゃあね〜。そろそろ出るよ」
綺麗にしてあったまって脱衣所を出るとさっきのお姉さんがいる。
「さっきはありがとね。あたし近所で店やってるリーシャって言うんだけど。まああたしが自分で素材収集して作ってるヤツだから」
袋を開けると小さな石の御守りが入ってる。
「紅い綺麗な石」
「この辺の採掘場でよく取れるマナ結晶の石だけどこう言った力の残ってない石は御守りとかに使われるんだ。首飾りにしてあるから。似合うと思うよ」
「は、はあ」
「んじゃーねー」
何だったんだあの人。まあいいや。もらっとこう。
とりあえず今日は…。
「いらっしゃーい」
「あ、お姉さん」
「レンちゃん。今日はトレーニングかな。この時間帯でそのカッコって事は」
「うん。じゃ牛スープとナン2個」
「はーい。500マナだよ」
「じゃ、丁度で」
「ありがとー」
「あ、レンさん」
「丁度いいタイミング。スイカジュースでも飲む?」
「僕は大丈夫なんで」
「そう言えばそれ、何か買ったの?」
「ああ、帰還札ですよ。あと魔力ポーションとか色々」
帰還札、最後に行った街の特定ポイントに転移する魔法回路が記された簡易版転移スクロールみたいな感じのアイテム。
とりあえず席に着いてスープを飲む。美味しいなやっぱ。そしてシンゲツ氏は俺をボーッと眺めてる。別に構わないんだが気にはなる。
「なるほど、キミがレンか」
「違います」
「いやいや、そんなナチュラルに誤魔化してもボクは騙されないから」
キツネの獣人族。ボクっ娘と言う属性付き。俺よりは背は高いがそれでも小柄と呼べる類の女性。
「急に何?」
「ボクはステラ。ここのギルドマスターをやってるんだけどさ。最近噂になってるレンって剣士の冒険者の事が俄には信じられなくてね。自身の目で確かめにきたんだよ。近くのお国の方の本部さんからも近いうちに来るって」
まあこんなガキがワイバーンとか大量の蜘蛛や蠍狩ってたらそりゃそうなるわな。
「まあ夜が明けたら改めて来てよ。そこで詳しく話を聞くよ」
「分かった」
そう言うと行ってしまった。
「大変な事になりましたね」
「仕方ないのない事なんだよ。割り切ろ」
ギルドを後にする。そして家まで来てもらう。
「はいこれ」
「これは?」
「少し前にワイバーンを別のパーティと組んで倒した。その時に進化もしたんだけど。そのワイバーンの素材や食材をちょっとだけあげようかなって。みんなで食べてるのに1人だけって。気になってさ。大した量じゃないし調理もしてないし余り物だけど受け取ってよ」
「いやいや、ワイバーンですよ!?いいんですか!?」
「いいのいいの。サタンハートなんかと一緒に煮込むと美味しいよ」
「ありがとうございます。では、また」
翌朝。書置きをしてギルドに向かう。そこにステラってギルマスともう1人。綺麗なお姉さんがいる。が、何か見た事ある顔だなこの人。
「なるほど、あなたが」
「何がなるほど」
「あたしはセナ。あなたが旅人のパーティと協力してワイバーンを仕留め、ごく普通の冒険者パーティと共に数多の害虫を仕留めてくる冒険者。あなたにそれを証明してもらうわ」
「分かった。これからおねーさん方と依頼を1件受ける。倒すのは自分でやるしある程度の事は自分でやるから最悪の場合だけは任せる」
「で、どの依頼にしましょーかね」
依頼のボードを見る。
「蠍5匹。これでいいっしょ」
「それ、普通の冒険者パーティでも結構大変なレベルよ?あたしは別に構わないけど」
「じゃ、それで」
「受注しておくわ」
「その辺の処理はボクがやるよ。その間に準備してくるといい」
なんて言われたのでギルドの店。毒ポは要らないけど通常ポーションは買うか。いや、一応1本だけ。飲料水とあとは魔物寄せアロマ。今回は5匹だから外した時の為に一応7個くらい。あとでアイツらに言えば料金くらい請求出来んだろ。っと、熱中症ポーションも買わないとな。っと準備はこんなもんか。帰還札は持ってる。10枚は。
買い物を終え、領収書ももらって戻る。
「早いね」
「要るもの分かってるから。あとで請求するからな」
「…分かった。これはこっちの用件だしちゃんと払うよ」
「大丈夫なの?」
「さてと、さっさと行くよ」
街を出る前にナンを2つほど食べて砂漠へ繰り出す。
「今日の砂漠の風は騒がしいな」
「キミは何を言ってるんだ?」
「気にしないで行くよ〜」
討伐云々以前に本当なら探すのも過酷、更に、倒すのもハードルがそれなりに高い。何でも、あの甲殻をブチ抜くのは結構大変らしい。俺には関係無いが。
直感を頼りに潜ってる上を探り当ててアロマで釣ってってやってるけど、魔法覚えればもっと楽だろうな。
小一時間程歩いたところで大体いる気配がするとこに着いたらしい。いる気がする。多分。
「さーてと、始めるんで気を付けて下さいね〜」
「何を?」
魔物寄せアロマを地面に置く。幸い、風はほとんど無い。炎ブレスでペッと火を吐いて着火する。
「それ使うの!?」
「使って待ってるの」
大体3〜4匹くらいはいそうな気がする。
数分経って地面が揺れ始め、3匹のデカい蠍が姿を現す。やっぱ足んねーよな。
「3匹かよ。極力中央で大人しくしてて」
まず1匹、正面から突っ込んで脳天に剣をぶっ刺す。
動かなくなったのを確認すると、続けて2匹目。剣を抜いて尻尾を落とし、ハサミに剣を刺して固定し、かかと落としで仕留める。半分くらい地面に埋まってるのを横目に剣をそのままにして3匹目。炎ブレスで焼き殺す。塵になったのを確認すると2匹目の蠍のもう片方の鋏をぶった斬る。
「ふぅ。休憩しよっか」
「あ、うん」
「どうかした?」
「どうかした!?じゃなくて何なのさ!?キミ!?」
「何なのさって言われても、筋肉の成せる業だよ?」
「いやいや、魔法も使わず、脳天踵落しで蠍が死ぬとか聞いた事無いんだけど!?その幼さでその力と大剣を使いこなし、炎を操るって」
「炎は最近吐けるようになった。喉乾いたな。ポーションと水あるけど、飲む?余裕持って調達してるから後で領収書突きつけんから」
「あ、ポーションもらうよ。お金はそれでちゃんと支払うから。その分は」
「あたしは持ってるから気にしなくて良いわ」
「そっ」
尻尾落としたのは2匹目だけだから食べれるのはこいつだけか。
「鋏食べる?」
「いや、いいよ」
「あたしも大丈夫」
じゃあいいや。自分の分だけやるのもな。
「とりあえずそこで待ってて。すぐ戻る」
「分かった」
「はーい」
蠍の裏に回る。一息ついた後、する事して女神に語りかける。
何か嫌な予感するんだが。
(多分その予感、当たるわよ?)
この勘と言うか危機察知というかコレはお前が仕込んだのか?
これはあなたの才能が極限状態で開花したただのよく当たる勘よ。力ではあるけど能力ではないわ。
分かった。
とりあえず戻って話しておくか。
「さてと、んじゃ行きますか」
「スッキリした?」
「そんな事は聞かなくていいんだよ。じゃなくって、もう」
「ごめんごめん」
ったく面白いギルマスだな。
「急ぐよ。そうした方がいい気がする」
「分かった」
「了解」
勘を頼りによくいる場所へ。数多いな。4はいるんじゃね?
「うーむ」
「どうかした?」
「4匹以上いる気がする。倒す分には問題無いけど」
「余剰分はギルドが責任持つよ」
「じゃ、アロマ焚くよ〜」
と言う事で魔物寄せアロマを焚いて蠍共を召喚する。
「やっぱ4匹か〜」
難なく数分かけて始末する。
「よし、さっさとかえ…」
空を覆う巨大な翼、その身を翻し、こちらを眼中に捉える。
「危ねえ!」
後ろの2人を力一杯飛ばして自分も跳んで避ける。
立っていた場所が炎で焦げてる。
「ヤバイよ!帰還札使って逃げようよ!」
「いや、俺は逃げねえ。ここで逃げたら武士の名が廃る!」
立派なワイバーンな事で。
(どうやって攻略するの?)
しゃーないがまず魔法で翼ブチ抜いて飛行能力を落とす。
あとは脚潰して俺の気を引きつつ上から首を落とす!
(やれるの?)
蠍は始末してる。あとの事考えずに血鬼壊放する。
(わかった)
「おい、ねーちゃんら!そっちに攻撃行かない努力はするが俺は捨て身の戦術を取る!死ぬ気は無いけど後のことは何とかしてよ!」
「ががが、頑張る」
「見せてもらおうじゃない!」
おいセナのねーちゃんや。チビってんじゃねーか。足震えてるし。
っと、こいつら構ってる暇は無い!最速最低手数最大火力でぶっ潰す!
血鬼壊放、発動!
「脚を斬る」
内腿を深く斬り、体勢を崩させる。
「次に尾」
尻尾を落とし背に登って首。
「トドメ」
頭を落として仕留める。
「いっちょ上がり!信じてくれた?」
「いやいや、嘘でしょ!?実際に見てもはや現実を受け入れてない」
「…いやいや。何でそーなるの!?やる事やっただけなのに。ってて。ヤバいから休むね〜。解体して美味しいとこ取っといてね!」
「あたしがバラしとくからステラ回復してあげなさい。終わったら帰るわよ」
「ほいほーい、んじゃ、やりますか。光よ、かの者に祈りの癒しをもたらせ、メガヒール!」
さっきまでのヤバい激痛が嘘みたいに消える。
「は?」
「んじゃ、帰ろっか」
「あ、うん」
帰還札を使って街に転移する。
「あ〜戻ってきた〜。死ぬかと思った」
「ったく、レンちゃんどこに…あ、レンちゃん!?」
「どったの?セイラちゃん」
「どったのじゃなくて!あ、お姉ちゃん!?何でサンドウラにいるの!?」
「あ〜、やっぱそうか」
「そこのギルマスがとんでもない冒険者が現れたって聞いたから信じ難くて、様子見に来たのよ。そしたら聞いた話以上の活躍をして驚かされたわ」
「レンちゃん何したの!?」
「レンちゃんは1人で蠍を始末した後にワイバーンを仕留めた」
「色々驚かされたけどレンちゃんの強さは本物だよ。それは保証する。まあ結構やり方がスリリングな子だから心臓には悪いけど頑張って」
「また無茶したのね。ってかどんな事したのよ!?」
「ワイバーンは身体負担の大きい強化で何とかしてたけど、蠍の依頼でアロマ使って多くいる場所を勘で探ってまとめて始末してたから」
「踵落し一撃…体術一撃は流石に引いたけどとりあえず依頼達成だし、このままギルド行こうか。達成手続きはボクがやってワイバーンの素材もある程度仕分けと査定するから一緒に準備費用も渡すよ」
領収書を渡す。
「結構しっかりしてるのには驚いたよ」
「あ、そうだ。これからあたし朝ごはんなんだけどお姉ちゃんおごってね?」
「俺も何か食べるか」
「仕方ないわね」




