Extra story6〜結城蓮4-異世界の休日-〜
サソリを狩って数日。着実に依頼をこなしてお金をさっちゃんに預け、異世界ライフをJB(女子冒険者)として堪能していた。
ワイバーンの件もあったけど。こっちからは現状取る行動は特に無いらしい。
で、今日はパーティとして依頼を受ける事なく、休日らしい。っと言ってもこの世界に決まった休日は無く、各々が設定して取るって感じ。俺の休日は5日の間に2連休、すげー優秀サイクル。
そしてそんな休日、何をするかと言うと。
街の本屋。この世界にも本屋はある。女神のお陰で読み書きは出来るし、かと言ってこの世界にまともな文学文化なんて無いけど。
漫画は勿論、小説も殆ど無い。吟遊詩人のオシャレポエムのが多い。
吟遊詩人のオシャレポエムと魔導書、魔法のハウツー本を何冊か買う。数日間仕事してそこそこお金はある。重い。一旦戻るか。大した便利アイテムも転送系の魔法も無いし。
一度家(仮)に戻り本を並べる。机と棚とクローゼットが付けてくれてある。
今ここに用は無い。普段着に着替えて、再び、街へ繰り出す。
露店を巡って美味しそうな串焼きの店。
「おじさん、2本ちょうだい」
「はいよ。相変わらずよく食べるね。レンちゃんは」
「あはは」
何だかんだもう街の人々に名前覚えられてる。よく食べる女の子、やたらサソリだのモグラだのデカい化け物を狩ってくる強え女子って印象を持たれてるらしい。
「鍛えんだろ!?しっかり食えよ!」
「食べてるよ〜」
まだ数日とは言え、食った分筋力じゃなくて普通に使い切ってるだけじゃね?ってレベルの変わらなさに泣きたくなる。
「あ、レンちゃん。まーた食べてる。何で太らないの?」
「身体動かしてるからね〜。殆ど」
「身体を動かすのも好きよね」
「他にする事が無いだけだよ」
「まあ無いわね。そこそこ大きい街って言ってもサンドウラは他とは広大な砂漠で隔離してるような街だし」
ですよね〜。
「飲食店もギルドくらいだし。ってか最悪ギルドで暮らせるわよね」
ギルドに飲食店、宿、風呂、シャワー、トイレ。まあほぼ全て必要なもの揃ってんな。
「何その中途半端な贅沢」
「まあそうよね」
「で、どしたの?」
「露店でよく食べるレンちゃんを見かけたもんだから」
「…あ〜」
「普段レンちゃん食べてる印象強いけど、他何やってんの?」
「殆ど筋トレとかランニングとか」
「鍛えてるの!?」
「こないだのサソリぶち抜けなかったの結構ショックなんだよ」
「いや、普通踵落しでもサソリをブチ抜くのは不可能よ」
「普段じゃダメなんだ。普通は嫌なんだ。普通を超越出来る世界で普通に留まり続ける事に得は無い」
この世界は非現実も、妄想も、理想も、現実に出来る。魔法っつー素晴らしい力がある。あんま使わないけど。でも少しくらい覚えるか。
「レンちゃんって本当に子供?」
「子供子供」
「っぽくないから聞いてるんだけど」
「子供さ、子供。常識を知らないやりたい事第一で遊んでるタダのガキなんだよ」
遊んでる最中に死んだしな。そう言えばPCのデータ残ってたらどうしよ。んなもん見られたら恥ずかしくて…もう死んでたわ。
おい女神。
(どしたの?)
俺のPCってちゃんとトドメ刺しといてくれた?
(あー、ちょっと待ってね。無事って言っていいのか分かんないけど、吊ってた正面が落ちてアタック打ちかましてハードが逝ってる)
そりゃ良かった。
(エッチなフォルダは無事見られないようになってるわよ。ってかロックかかってた気がするけど)
深く突っ込まんでよろしい。
「遊んでたの?」
「遊んでる最中に死んだし」
「何があったのよ?」
「文字通りの天災」
「…大変ね」
「んでPTのお姉様が何用で?」
「あのさ、クエストとは別なんだけどさ。一緒について来てくれない?」
「いいけど?」
で、ちょっと歩いて辿り着いた洞窟。
「2人でこんなとこ入って大丈夫なの?」
「大丈夫よ。この洞窟はそこまで危険な生物もいないし」
こんなとこもあるものなんだ。
(らしいわね。大きい気配は何も無い)
ちょっと歩くと湖…って言うには小さい池がある。
「はい、レンちゃん」
釣竿。よく分からない植物の竿に、謎の材質の糸、針が使われ、餌も不明。
「竿も疑問しか無いけど何が釣れるの?」
「カニとかあとはちっちゃいけど魚もいるわね」
「この竿全体何で出来てるの?」
「山あるのは見てるでしょ?そこに生えてる丈夫な材質の植物の茎らしいわ。詳しいのは分からないけど。糸は衣料店で買ったやつ。針はギルドで買える鉄の釣針、餌は牛の干し肉」
「強度大丈夫なのそれ?」
「魔法で強化してあるからあたしの筋力で釣れる範囲は大丈夫」
女神の言葉と合わせて考えると基本ここで竿折られるレベルのヤバいのはいない。
砂漠で魚介が食えるとは。この水は淡水っぽいが。
ここから数分。ロリとなった俺が歳上のねーちゃんと釣りをする謎の画。マジで何だこの状況。
「お、魚」
「いいじゃん。あたしも。あ、カニだ」
サワガニとかくらいのサイズのカニだ。わざと指を挟ませてみる。
「結構力あるな。こいつ。まあまあ痛い」
「割と余裕あるわね」
「ヤバいのいないんでしょ?」
「いないわね」
「あとは体調との勝負っしょ」
1時間ほど経って。
「ちょっと外の空気吸ってくんねー」
「分かったわ。竿みてる」
外の空気はついでだけど。まあやる事やってっと。どうせこの身体はほとんど眠くはなんないし伸びをして柔軟運動。相変わらず暑さには慣れねえ。
そういえば洞窟暗いのに全然見えるな。スキル持ってねえのに。
(ディアボロスの身体特性よ。暗い場所でも見通せるわ)
ほー。ってかこの世界この種族何か悪い事でもしたのか?最初にあいつらと会った時の感じ。
(基本的に他との接触を避けて身内以外に当たりが強い種族なのよ。街の中で生きてる人達はそうでもないけど。外でぶっ倒れたから警戒したのよ)
なるほど。理解した。んじゃ戻るか。
「釣れてる?」
「とりあえず魚1匹は」
「これはどうやって食べるの?」
「焼くか煮込んでスープにするのもいいわね。夕食にはいいわよ」
「市場に一部の野菜はあったよね」
「レンちゃん料理出来るの?」
「元の世界じゃそこそこだけど、こっちの世界でだいぶ食材に違いがあるっぽいから、その辺の知識もしっかりと得ないといけないかなぁ」
「この辺じゃサタンハートのスープかしらね。アレなら魚の臭みも取れて美味しいわ」
「何そのヤバい名前の食材は?」
「トマトって分かる?」
「それは」
「見た目はそっくりなんだけど、大体どんな環境でも殖える生命力があって生じゃ食べられないけど火を通すと食べられる」
「毒あるの?」
「いや、この世のものとは思えないレベルの辛さではあるけど、毒で死ぬとかは無いわ」
「あ〜、無理だ」
アレかハバネロとかジョロキアとか。
「アイツなら辛いままうまく食える方法見つけられっかな?まあいいや」
カニが釣れた。
「カニだ」
「カニね〜」
「どっかにデカいカニいないもんかな?デカいサソリは美味いし大した強さじゃないがああもデカいと中々に気持ち悪い」
「この大陸の端の海にいるとかどうとか聞いた事あるけど遠すぎるわ」
「そうなの?」
「この辺割と大陸の中央なのよね〜」
「なんとなくそんな気はしてた。川も見当たらんし。まあいいや。魚より肉派だし」
「牛は素人が狩るには強すぎるのよね。レンちゃんなら行けそうだけど」
「牛か〜いいな!多少余裕出てきたし買ってみるか」
「レンちゃんが入ってくれたおかげで平均収入上がったと言うか、難易度の高い討伐クエスト多く受けれるようにと言うか、レンちゃんがいっぱい受けてくると言うか」
「物足りない。俺を、俺の飢えを満たしてくれる猛き者がいないから。へっ、いつの世も物足りない。おかしな話さ。飢え続けてる。折角素晴らしい世界だってのに素晴らしい好敵手には恵まれねえ。ライバルくらいいてくれるといいんだが」
(ライバル欲しいの?丁度いいのがいたからフラグ立てとく?)
みーちゃん?
(違うわ。この世界の人間…ではないわね。異種属だけど割といい感じのライバルとしての人材いるっぽいし)
流石女神…。ちょい興味あるな。んじゃ任せるわ。
(まあそのくらい面白い事はさせてあげないとね)
その後、数匹釣って無事帰還。
「さっちゃん、お土産」
「お魚とカニ…多くないですか!?」
「これくらい食べるんじゃない?」
「レンお姉ちゃんの分ですよね殆ど?私で3日分なんですけど」
「うむ。調理は任せるよ」
「丁度サタンハートいただきましたし、煮込んでみますか」
手に持ってる赤いトマト。それサタンハートなのか!?
「え、それ?」
「はい。サタンハートですよ?これ」
「元の世界にはサタンハート自体無かったから。いや、どう見てもトマトだな」
「なってる木を見れば結構違うんですけどね。採って置いておくと見た目は分からないです」
1個受け取る。匂いはトマトというよりは唐辛子に近い。ただ火にかけて辛みが軽くなるってのは謎だが。
「これ。食っていい?」
「やめた方が」
「めっちゃ辛いんでしょ?」
止められちゃあ行くっきゃ無いっしょ!ガッツリ一口齧る。
まず酸味、甘味がくるそして後から辛みが…。
うわなにこれめっちゃからい。昔食ったハバネロの菓子より…。ジョロキアよりマシか?ハバネロと同じくらいか?机に突っ伏す。
「これ飲んでください」
手渡された水を飲む。いや、甘いなんかだ。
「あー、生き返った」
「早いですね」
「似たような辛い食べ物向こうにあったからな」
ハバネロとかジョロキアとか。うん。お菓子でしか食べたこと無いけど。
こうして休日は終わってしまった。




