3話〜死因:人類永遠の議題〜
謎のストーカーから逃れる為に引っ越し陽動作戦を実行する事になった。
俺は、新しく複雑な対人用の罠をいくつか仕掛ける。20kgくらいの子供でも作動させられる罠。多分気付きにくいはず。
そのうちに仕掛けた罠も見て回る。
なんかいたらいいけど。うさぎ1匹、鹿1頭。
うさぎはともかく鹿は仕留めるのにちょっと手間取った。
とりあえず…これどうしよっか、ん?この樹は…。
その頃、吹雪の周りにて。
「見つけた、アスちゃん。も少し距離とって追うよ」
「ん、了解」
「しかしあの子すごいよ。罠もレベル高いし下手すりゃ気付かないかも。っとそこにわぬわぁああああ!!」
「オウカ…だいじょ…。理解不能」
2人揃って罠にかかる。
「…どゆこと?ボクが引っかかるなんて」
「簡単に気付く罠を避けると、気付きにくい罠を併用することで、簡単に見つかる罠を避けたと油断したところに本命の罠を設置してそっちで捉える。所謂対人トラップである可能性が高いと。一度オウカがバレた時点で警戒されるのも無理もないかと」
その頃…。
誰かが近くにいる気配はない。
「ふぅ。今日はいないか。距離を取れた可能性もあるけど」
住居(仮)がパワーアップしてる。
あと…。
「何故トイレ増築したし!?」
「そっち一応お風呂というわけでは有りませんが身体洗うスペースとして私の目を遮るように作っておきました。勿論トイレも大丈夫です」
身体洗うスペースか、これは有り難い。
「とりあえずさ、これら解体したいんだけどさ」
「一緒にやって覚えましょう!っと、どう加工するか決めてます?」
「さっき香りの強い樹を見つけてたんだ。その樹を加工して燻製とか作れたらって思ったんだけど。保存も効くし」
「ちょいちょいと場所を記憶から拝借。んじゃ、ちょいちょいと行ってきますね」
消えた。
とりあえず後で解体するからって思ったけど身体一旦洗うか。
そのスペースで服をかけて身体に付いた血を落とす。ついでに服を濯ぐ。
ある程度汚れ落ちたな。服を干してのんびりしますか。
「わーっ!」
誰だよ。
罠にかかったオウカ達は…。
「…ねえ、アスちゃん」
「脱出不可能。魔法…魔力回路に影響及ぼす強力な力で転移魔法が発動出来ない」
「そこをなんとか、もうそろそろ脱出出来ないと…」
「問題無い、周囲に獣の気配は無い。魔法生物、盗賊も同じ」
「じゃなくて…その…トイレ」
「仕掛けた人間、転生者を待つ他の希望は無い」
「仕方ない、叫ぼう」
「助けじゃなくて魔物や猛獣を呼ぶ可能性もありますが」
「選択の余地も迷ってる暇も無い。わーっ!」
「…はぁ」
わーっ。という声は響くことなく虚しく消える。
その頃…。
「確かこの辺り…。2重トラップの辺りかな」
「いた」
涙目になってる女の子…黒い髪、紅い眼のリトルスだ。しかもゴスロリ系の着物とかこの世界あんのかよ。あともう1人の女性は…何だ?分からねえ。質のいいローブを着た青い髪の女性。
とりあえずリトルスの女の子はなんか涙目になってる。あと2人ともパンツ見えてる。で、もう片方は、ボーッとしてる。
とりあえずこの2人は助けていいものか。
「…金貨5枚」
「ボクミスリル貨幣1枚出すから!後払いで!」
「じゃ、このちっこいのの建て替えて私がそれも出す」
大丈夫か。こいつら助けてあげても襲われる事も無い…か。
とりあえず解除の方法は分かってるから手際よく2人を助ける。
「付いてきて。そっちの同族?の子に関しては昨日の事も聞くから」
「…はい」
なんか違和感あるの気になるけどとりあえず拠点まで案内する。リトルスの女性はトイレを教えると全力ダッシュ。
「ふぅ、アレはまあ、ちょっと後先考えずに突っ走るとこある。はい。ミスリル貨幣と金貨」
「あー、うん」
「でもほんとは強い」
それは分かる。全力で投げたナイフを躱すのは見てる。
「ふぅ。いやーキミも凄いもんだ。っと自己紹介まだだったね。ボクはオウカ。ちょっとばかり情報収集で働いてるリトルスだよ。んでこっちがアルケミストのアステル。ソウルメイツっていう魂が身体を形成するとか言う種族のアルケミスト」
「英雄とか言われてるお二方!」
「知ってたか」
「フブキ・サクライと申します」
「アスちゃん、この子の魔力は?」
「転生者で間違いない。本来のリトルスより圧倒的に魔力が高くて濃い。しかも…」
「潜在個体っぽいよ」
何か言ってたな。あのディアボロスの英雄の霊がそんな事。
「将来楽しみだよ。どう言う感じで育つか分からないけど」
「このまま行くと魔法系重視になりそうですけど」
「ふむ…」
「干渉魔法ならサポート兼近接ってのも行けるし、キミがやったみたいに。
ボクは魔法って柄じゃないからあんま言えないから…。使えるけど。
カーディアやアイリスなんかならいい感じに教えてくれそうだけど。ふう、ガルド…」
「ガルドさんがどうかしたのですか?」
「オウカとガルドは両想い。それでオウカはガルドが死んだのを引きずってる」
あの人このオウカさんと付き合ってたのか。マジか。
「祀ってるお墓なのか祠なのか分かりませんけど、行ってみます?」
「え、ちょっ、何で知ってるの!?誰も見つけられてないはずなのに!?」
「でもそれ作った人がいるはずですよ?なんか文字書いてあったので」
「多分身内とかそういうのだと思うけどそれは…。ガルドの身内は行方不明だから。連れてって!」
「はい。でも、当時のお知り合いが一緒だと出て来てくれるかどうか」
場所は覚えてる。
「引きずり出してやるよ!」
うわお、すげえ。
んじゃ向かいますか。ここから歩いて数分だしキツい道も無い。罠はあるけど。
「確実に俺の後ろを付いてきてくださいね。命に関わる罠は無いですし全ての罠の解除方法は把握してますので万が一引っかかっても10分くらい手間かかるだけなので」
「わ…分かった」
ゆっくり見失わないペースで確実について来れるように歩く。
そして問題無く辿り着く。
『来たかフブキ…。おい、何故お前らが一緒にいるんだ。アステル、オウカ』
「ガルド…。うっ、うわぁああああああ!」
オウカが飛びつこうとするもすり抜ける、そりゃ霊だし。
「いたた」
「こんなとこに墓を建てられているとは。皆に知らせなくては」
『ちょっと待て、話は後だ。フブキ、説明しろ』
「昨日からオウカさんになんか尾けられてたので今日捕獲して話聞いてたらガルドさんの話になったので連れてくる事になりました」
『オウカとアステルを捕獲するって、マジか?』
「ガッツり見えてる罠に油断して本命の見えづらい罠にまんまと引っかかった訳で…。高度な魔力妨害もついでに」
「あの、私置き去りですか!?」
「アスちゃんも感知出来るようにするよ」
「…ガルド」
『見えたな。ソウルメイツだからお前俺が死んだ時から見た目変わんねーじゃねーか』
「ソウルメイツってそう言えば何ですか?」
『極められし知を持った魂が依代を生み出した種族で人型の物を指してソウルメイツと呼ぶ。らしい』
らしいって嘗ての仲間じゃないのか…。
「ソウルメイツはヒューマンレベルで得手不得手が分かれる種族でもある。魔法を得意とする者は物理攻撃を得意とする者より多いが魔法の核心に最も近い」
『にしても各大陸の代表とか言っときながら、俺が言うのもなんだがもうちょいまともな人選出来なかったのか?って思うが』
「まともじゃないと!?」
『魔法攻撃力過剰だろ』
「ほんとそれ、私要った?」
『あの爺さんより威力はあるぞ。土属性で言えばお前が最高性能だった、それは誇っていい。俺が保証する』
「…ありがと」
『お前が泣いてんのも、そんな感情露わにしてんのも、お前に礼言われるのも初めてだな。生きてる時に聞きたかった。嬉しいが』
「1つ考えてる事ある」
『やめとけ。蘇生は禁忌だ。錬金術でも、白だろうと黒だろうとお前だろうとじーさんだろうとアイリスだろうと』
やはり命に関わる魔法の類は禁忌か。
「大丈夫。蘇生じゃない」
『ヤバい。アステルのヤバい事考えてる感』
分からない。アステルさん表情変わってるように見えないんですけど!?
『フブキよ、1つ教えてやる。これからこいつらと行動を共にする機会は増えるだろう』
「増えるんですか!?」
『オウカ、それに俺もお前は気に入ってるんだからな。アステルは顔には殆ど出ない。それっぽいオーラを感じ取れるようになればそのうち分かる』
「だよー。アスちゃんはそう言うタイプ!」
どういう事っすか。
『さてと、それはいい。お前がこの大陸にいる間は俺がお前の師として面倒見てやる』
は?
「ガルド!?どゆこと!?」
『お前らどうせこの大陸に揃ってんだろ?』
「何でそこまで」
『世界の異変、フブキの転生。条件にしちゃ上等じゃねーか。何なら他の奴らが森に隣接してる国なりにでも集まってんだろ?
俺は霊体じゃ大した距離は移動出来ねーが、フブキの身体ならそれを心配する必要はねえ。フブキが困ったら手貸してやれる』
「それはアリっちゃアリなんだけどセクハラが心配かな。フブキちゃんの身体乗っ取ってエッチな事したりしないか心配でしかない」
「そう言えば俺に力分け与えるのに服脱がしたのって意味ないのでは?」
「え、服、脱がした?」
『え、ちょっ、今それ言う必要ねーだろ!?』
あると判断したから言ったんだけど。
「それはいずれブン殴るとして。あ、いや、それ以上に面白い事思い付いた」
『あんだよ?』
「それはヒミツ。フブキちゃんとアスちゃんには後で言うけど」
「オウカ、フブキ。一旦フブキの拠点に戻るよ。ガルドを憑けるのは今じゃなくていい」
『わーったよ。お前が言うならそうなんだろうな。俺はお前らがまた来るまでここで暇してっからまた来い。供え物でも持ってきてくれてもいいぜ』
とりあえずお辞儀をして拠点に戻る。
アレが師匠かぁ。なんとなく嫌だなぁ。セクハラ酷そうだし。
とりあえず拠点に戻るのに当たってアステルさんが転移魔法を使ってくれる。
「場所覚えたから次から転移出来る」
「どうやってやるんですか!転移魔法!」
そう言うのカッコいいよね。
「干渉魔法使えるっぽいから順に勉強してればそのうち使えるようになる。」
転移魔法覚えられるのは強いな。
「で、そちらのお2人さんが何か考えてたっぽいけど」
「そもそもガルドが言った通り、蘇生は実質不可能。肉体が残ってるならまだしも、もう残ってない。錬成蘇生と言う形になるから事実アイリスでも困難って話」
「ふむふむ」
「で、次に、あそこにガルドの魂があるのは確定した。で、どうするかと言うと、単純に言えばソウルメイツとして新たな生命を吹き込む」
「アスちゃんどゆこと!?」
「魂は無事だから肉体を取り戻すんじゃなくて新しく作った肉体に魂を憑依させると」
「フブキ正解」
「で、オウカの考えは?」
「アスちゃんなら何らかの希望に至る可能性はあった。カーディアやアイリスの協力を得るのは難しい。正直理を逸脱する行為に対してシビアだからね。
でも、フブキちゃんと出逢えた事実は幸いだった。既に交霊の才能が備わってる。アスちゃんとボク、フブキちゃんでソウルメイツに至れる可能性はある。とりあえずキミは新たな英雄の1人になってもらう。ガルド以上に立派な魔法使いになれると思うしいずれ、大陸を守る役目を」
「はぁ!?」
いやちょっと待て。無理じゃね!?今更仕上がってるパーティにぶち込まれるとかどんないじめだよ!?
「大丈夫大丈夫。素質はある!んで、ついでにガルドをフブキちゃんの使い魔にする」
「ちょっと待って!?」
「なるほど、その式は私が仕込める。理由はよく分からない。でも、キミは信用して大丈夫」
どこにそんな根拠あるんだよ。ってか使い魔ってどういう事だってばよ。
「とりあえずこの後どうする?」
「私はフブキの身分証を作ってくる」
そう言うとアステルは指で四角を作る。アレだな。カメラマンのポーズ、みたいな。
「大丈夫。私は一度戻る。ついでに転生者、フブキについてもとりあえず報告しておく。悪いようには言わない」
何が大丈夫なんだよ。
「分かった。あ、ガルドについてはまだ言わないで。どうせなら依代に降ろす時まで秘密にしておきたいし」
「了解。んじゃ、また来る」
右手を水平に真横にピンと伸ばすと大きな魔法陣を展開する。
転移系の魔法だろう。魔法陣がアステルを飲み込み、消える。
あんなのそのうち使えるようになるのだろうか。でも転移って干渉だよな。って事は俺でも頑張れば使えると。
「で、オウカさんはこれからどうするのですか?」
「ボクはまだ調査あるし。あ、このまま調査終わるまでこの拠点でお世話になっていい?」
「いいですけど」
「まあ出来る事はするからさ」
「殆ど狩猟と食用果実の収集をお願いする事になるかと」
ぶっちゃけ罠ばかりに期待してもってとこある。
「了解!いっそフブキちゃんも狩りする?」
「罠くらいしか…」
「童力の特訓…も兼ねて。武器は?」
「コンパからこのダガーもらってます。あと一応杖ももらってますけど今はダガーしか使ってないです」
そもそも干渉魔法しか魔法が使えない以上今の時点で杖の期待値は薄い。
「エンチャントは使える?基礎中の基礎だけど」
「はい。エンチャント、ウインドブーツ、データアクセス、フィールドアクセス、パペッターの、アクセスリペアの6つです」
「干渉系風魔法のウインドブーツまで行けるとは。エンチャントとウインドブーツでまあそのナイフで魔法剣士とかアサシンとか」
「干渉魔法はまあまあ出来る人いるからね〜。でもそれぞれがサブだから本命にするとなるとアレだけど」
干渉魔法やっぱサブじゃねーかこれ。
「メインで使える魔法欲しい…」
一応黒魔法は頑張れば使えるのは確約されてるけど。いや、いけるか?
でもあの人の劣化ポジってのもやだな。
「パペッターってのは確かゴーレムコントロールとかの基礎魔法だった気はするから頑張れば人形遣い最強!みたいなのも出来るはずだよ?」
あぁ、そう言う。でもそもそもの話人形が無ければゴーレムとかどうしろってレベルだし。
でもエンチャントやウインドブーツを活かした近接戦闘って結局普通の前衛が殴った方が強いって結論に落ち着くよな。自分はそれしか無いからそれでやる訳で。情報収集系魔法はそれはそれで戦力としては微妙だし。情報収集能力の差で勝敗を分ける可能性も大いにあり得るけど。
「上級者の人形遣いはこう動けって念じるだけで充分戦えるらしいし」
「まあ動かすモノが無いんで…」
「それに関しては考えはあるし、身分証さえ用意出来れば首都に連れて行くつもりだから。ボクが必要なものは全部揃えるつもりだし」
「そもそもダガーで十分戦えてる気がするんだけど。それに人形とかあんまやれる気しないし」
マンガとかで人形遣いっているけどああ言うのって指から糸出してそれで動かすんだっけ?動けって念じるだけでってレベルになるとそりゃ桁違いなんだろうけど。
「そう言えばさ、そのダガー」
「女神様からもらったやつだけど。ついでに杖も」
「ミスリル製だよね。1本100万マナは行くんじゃない?」
マナ。所謂この世界の通貨らしい。
コンパが言うにはマナは大体日本円と同額〜1.5倍の額ぐらいで差はあまり無いがモノによって若干価値がブレるらしい。
このダガーも100万円以上の価値はあるらしい。
「でも武器がそれと杖くらいしか無いんで。杖とか使う機会が今のところ無いんでどうしようかとは思いますが」
正直干渉魔法を杖持って使ってとかやらずにそのまま詠唱して発動した方が手っ取り早い。
「これ、使ってみる?」
透き通った加工された美しい翠の石。エメラルド?
「これは?」
「フォレストオーブ。アスちゃんがどっかで見つけてきたらしいんだけどさ。あたしも魔法は使うけど直接攻撃は基本使わないし。まあ、オーブ自体持っててもあんま意味ないから」
「魔法使うんですね」
「一応ね。幻惑魔法や干渉魔法も一部使えるけど。大体こんなのとか」
分身した。
「武器はこいつとこれ」
短刀一本に糸。金属製のワイヤーかこれ。
「ワイヤーっていいよね。縛って動けなくするも良し、絡めてバラバラに切断するも良し!」
「アサシン系の英雄様だった…」
「失敬な!ボクはそっちはサブで情報収集と童力メインだよ!」
「そう言えば童力ってそもそも何ですか?」
そう言うのスキルを持ってるのは分かる。
「転生者なら知らないのも無理ないか」
そこら辺に落ちてる石を拾う。それをぐっと握るとパラパラと砕ける。
いやいや、え?ナニガオコッタノ!?
「はい、握手」
「そっ、その流れで握手とか…。腕の骨砕く気ですか!?」
「大丈夫」
とりあえず握手する。
ぷにぷに柔らかい手でちょい強めに握ってくる。
「んーっ!」
「え?」
「これが本来の力」
つまり、何らかの条件があり、それを満たす事で怪力が手に入る。エンチャントで直接強化しなくてもかなり体術での戦闘は有利を取れる。この力だけで人間…ヒューマンより強いのは見て明らかだ。
「リトルスは基本的に誰もが持つ力、その動力源はプラスの感情。その感情をエネルギーに、力に換える事で他にない力が生まれるんだ」
最近割と色々考えてる事多くて毎日楽しいけど。集中して楽しい事を思い浮かべる。
すると掌に火の玉が生まれる。
「なんぞこれ!?あれ?熱くない」
「そうなったか。最強の資質を秘めてるね」
何がどうなって最強の資質!?
「ちょっと待ってね」
そう言うとその辺の広葉樹の葉を千切って集めてくる。
「これは?」
「そこら辺に普通に生えてる団栗の葉っぱ。さっきの出してみて!」
そう言われたのでさっきの火の玉みたいなのを出してみる。
そこにまだ緑の団栗の葉を放り込まれる。
するとその葉はみるみる萎れ、やがてパリパリになる。え、何で?
「一体何が!?」
「活動エネルギーを吸収したんだよ。吸収したエネルギーはフブキちゃんのものになる」
「活動エネルギーってのは?」
「文字通り活動するために主に使われるエネルギー。ちょっとごめんね」
腕を浅く斬る。
「痛ったぁあああああ!?」
「さっきの出して!」
掌に再び童力を集中させる。痛みで安定しないけどなんとかさっきの量くらい。
「ほい!」
とオウカさんが手を重ねる。
「あばばばば…思った以上につよ…」
あ、これヤバいと思って咄嗟にやめる。
「はぁ…はぁ…吹雪ちゃん大丈夫?」
「オウカさんこそ大丈夫ですか?」
言われて気づく。傷は綺麗に塞がり痛みも無い。
「ボクは…大丈夫。いや、想像以上に童力の濃度が濃い。ふぅ。落ち着いた」
これすごいな。最強の資質を秘めてるの意味が分かった。童力はエネルギーであり、物理的防御は無意味、ついでに魔法でもない。
「でも難しいとこだなこれ」
「何が?プラス感情を力に換えるだけの簡単な事でしょ?」
「いや、干渉魔法も使える身としてはどっちに頼ればいいか。遠距離なら間違いなく童力のあの技ですけど体術や武器術になると話が変わる。童力の方が燃費はいいですけど身体負担は大きい、干渉魔法は最大値は劣りますけど身体負担は小さく効果は童力より安定させやすい」
そもそもプラス感情をエネルギーに換える分戦闘中の重い場面でそれをフルに出せるかって怪しい。干渉魔法は魔力の状況さえ普通なら一定した効果が発揮できる。
「なるほど。確かに正確な使い分けが出来るならかなりの強さかも。しかも現状その童力を使えるのは他にいない。でもそんな深く考えなくていいよ。リトルスなんてそこまで考える人いないし。ってかフブキちゃんみたいに頭いい子なんて多分いない」
え…えぇ?どうなのそれ?
「さてと、今日はこの辺で。細かい加減や効果調整は覚えた方がいいからその練習はまたしようか。さてと、狩り行くよ!」
という事なので狩りです。罠を確認しつつ慎重に獲物を探す。
ほんの数分でウサギを見つけた。それをみるとオウカさんが糸で絡めて捉える。
「うへへ…わたげうさぎ」
「あれ?このウサギ」
「どうかした?」
「罠にかかったやつと多分同じ」
「どう調理するの?」
「保存食作るのも兼ねて燻製にしようかと」
「燻製ってなんぞ?」
「香りの強い木や葉なんかを使って煙で燻して保存性高めるものです」
「へー」
燻製って浸透してないのか?この世界。
いや、多分森の集落とかだし文化レベルはどうなんだろう。
「今フブキちゃんが楽しい事って何?」
「美味しいものを探すくらいしか無いんだけど。あと魔法は魔法で興味深いんですけど魔法も理想とはまだかけ離れてるのでちょっと何処から手つけていいのか」
「理想とかけ離れた魔法?」
「俺の元の世界にも魔法は概念としては存在してたんですよ。架空の人物や架空の生物が使うような力でめちゃくちゃな。人々が娯楽の延長線上で特別な人間や種族の概念を生み出し、その世界の人々が特別な力や魔法を使う」
男だろうと女だろうと魔法に夢もロマンもある。誰かの為に使う魔法、戦う為に使う魔法、自分の為に使う魔法、色々あるし適性も人それぞれ違う。
ゲームにおいて印象には無い干渉魔法。これを手に入れた意味だってあるかもしれない。
「ほえー。で、今自分が魔法を手に入れた感想は?」
「干渉魔法で強さを示した主人公はいたかもしれない。でもこの魔法初心者が持っていいシロモノじゃない」
「まあ魔法とか言っといてこれだけで戦える訳じゃないからガッチガチに守ってもらって支援するか武器でも持って地力を底上げして戦うか。やっぱ苦しいよね。初心者だと。
んじゃ、魔法に疎いボクでも分かる干渉魔法解説!」
なんか始まった。
「御察しの通り干渉魔法自体に戦闘能力は皆無、ついでに、戦闘中に役に立つ魔法も1割無いほどだと言われてるんだ!」
そんな気はしてた!
「大きく分けると対象の違い、あとは直接か間接か。ざっくりでそんな分類がある!あとは発動形式」
3つ分類形式あったらそれなりに細かいよ!?
「厳密にいうと属性もあるけど干渉魔法で属性ってぶっちゃけ誤差の範囲…とか言ってると魔法プロの英雄の方々がキレる事あるから順を追ってついでに説明するけど」
対象の違い、自分とそれ以外、ヒトかモノか。対象の数とかでも結構変わるとの事だが、干渉魔法は相手に悪影響を及ぼす魔法すら少なく、そう言うのはかなり限られてくるらしい。
直接か間接か。身体を強化、物を強化みたいな対象もあるが、触れている必要性の有無もあるらしい。
で、発動形式。魔法陣や回路形成、詠唱などの違いもある。今自分が使えるのは詠唱魔法だ。
コンパが脳内に直接語りかけてきた事を要約すると魔法はいわばプログラミングのような意味のある言語構成を使うものを魔法。幾何模様の回路に魔力が通る事で変質し効力をもたらすものを魔術と言う事があるって言う区分は一応あるがぶっちゃけそこの差はこの際どうでもいい。
で、属性。例えばウインドブーツのような魔法は確かに属性の存在意義はあんま無いらしい。それぞれの属性の得意分野でフルバーストしたら結果強いんじゃね?って感じのアレらしい。
でも、実際属性が効力を発揮する干渉魔法は存在する。
例えばファイアアド。炎のエネルギーを武器に宿す魔法である。このエネルギーは武器自体に影響はないが接触した相手を燃やす事は出来る。この類はまだ習得してないがどうやら割と簡単に覚えられるらしい。
ついでに属性に関してはこの世界は大元に光と闇の魔力が存在し、それのいずれか、あるいは両方を魔力がある者は必ず持ち合わせており、適性自体はその下位に属する炎、風、土、水の4系統に変質させられるかの適性となる。理論上全属性への変質自体は実質可能だが、向き不向きがある。との事。女神曰くその辺は大体使える。あとは気合いでどっかからスキルを入手すればいい。との事。まあ黒魔法の最強格スキルを手に入れた訳だし無理じゃないのだろう。ちなみに、干渉魔法はほぼ属性の力を変質させない。
大体理解したところで次の獲物を探す。
デカいイノシシ。ジャイアントボアというらしい。
木の上で様子を見る。
「俺が行っていいっすか?」
「どうぞ。体当たり食らったら下手すりゃ死ぬから気を付けて」
マジで?まあ仕方ない、実戦が戦闘スキルを習得するのに一番手っ取り早い。
ダガーを逆手にぎゅっと握る。
「風のマナよ、我が身に疾風の脚と飛する力を与え給へ、ウインドブーツ。器を磨く聖なる力よ、己の刃に力を宿せ、エンチャント!」
詠唱は最低限の必要な言語、意味さえ配列し、成立してれば構成され、発動出来るらしい。
イノシシの脚をまずは斬る。機動力を奪うのが目的の一撃。
狙い通り体制を崩して動けなくなる。飛び上がってダガーで首を斬る。
かなり丈夫だが童力も上手く発動出来てる。
一気に刃を押し込み頭を落とす。
童力でイノシシを抱える。重さはなんとかなるが、デカいから運びづらい。
「…とりあえず戻ろっか」
拠点に戻り解体を始める。
「ボアの系統だとまあ骨は金にならないから肉と牙だけでいいよ」
という事らしい。
肉の食べられそうなとこだけ取ろう。
ある程度解体し、取り分けて水にさらしておく。
「まだ香辛料とかはストックあったな」
「戻りましたよ〜吹雪様」
「どこ行ってたの!?結構時間かかったけど」
「誰この子?」
「私は文化の女神、コンパ!吹雪様を死なせてしまった2人の友の償いのためにこうして働いている次第であります」
「女神様!?申し訳ありません」
「良いんですよ〜。吹雪様の従順な僕ですので」
おい。その台詞面倒な話にならないか!?
「必要なものとついでに食料を。っと吹雪様にお話がある2名の方が」
「それ、オウカさんいて大丈夫なの?」
「問題無いかと」
「じゃあいいよ。すきにして」
そう言うと2人の女性、いや、女の子か?多分何らかの女神が出てきた。
「えっと、自然の女神です」
「運命の女神よ!」
「つまりこのお二方がケンカしてと」
「そうなるわね」
「理由お伺いしても?」
「絶対に笑わないって言うなら良いわよ」
「誓います!」
「人間界、あなたの世界にも存在は確認してるはずよ。きのことたけのこのチョコレート菓子、あたしはきのこ派、この子がたけのこ派。意見が食い違いケンカとなった」
「それは避けられない定めなのです」
「なんか、笑いとか悲しみとか怒りとか通り越してもう何言えばいいのか分からないんですけど」
「まさかのフブキ様の感情キャパオーバー」
これで死ぬって笑えなくない!?聞くのは間違いだった。
「チョコレートって何?」
「あぁ、こっちには無いのね。カカオって植物の実と糖分、油脂、香料を合わせて作る菓子の類よ」
「…じゅるり」
「オウカさん!?涎出てます!」
「はっ」
「やれやれ、でも、あいにく私には食品は出せませんから」
「それならコンパ様のショップ項目に加工食品、果物、野菜を追加させていただきますね」
「あ、ども」
「そう言えば吹雪さんはきのことたけのこどっちがお好みですか?」
「食べた記憶すら無いんだけど。コンビニスイーツ以外の甘いお菓子は作っちゃう方だし」
「チョコレートとかいうやつのお菓子作って!」
「…道具も何も無いんですが」
「テレスは吹雪様が要求した食材を、道具と場所は私がご用意させて頂きます」
自然の女神がテレスで確定。
「あたしは!?」
「する事無いです。吹雪様なら補正かけなくても問題無いです」
そう言って長方形を描くと本棚が出てくる。
「確かこれ」
ぱらぱらと本が何故か捲れてピタッと止まる。世界がぐるぐると廻った感覚に陥ったと思ったらどこかで見たキッチン。
「おい、ちょっと待て。女神」
女神様の肩をガシッと掴む。
「吹雪様の使いやすい道具と言えばこう言う結論に。あ、大丈夫です。99パーセント程再現しただけの別モノの空間ですので」
「見たことないモノがいっぱいある…」
でしょうね!?異世界ですし!?実質。
「あとこちらも」
小学校の頃家庭科の授業で作ったエプロンとバンダナ。
99パー再現…あ、詰んだ。
「ちょい待て女神」
「何か問題でも?」
「再現度上げすぎたせいで昔と体型違ってめちゃくちゃ使いづらいんですけど!?台所高え」
「あ、そうでした。んじゃこれで」
台所がジャストフィットする。
「さてと、きのこたけのこはとりあえず置いといて。何作ります?」
「ココア使ったチョコチップクッキー、だけだと物足りないといけないからチョコロールケーキ」
「では、思考解析させて頂くので材料を思い浮かべて下さい」
と言う事でぽんぽん食材が出て来る。
自然の女神様が何かを気にしている。
「クッキーって型使わないんですか?」
型だと余った部分で作り直すのもアレだから、冷蔵庫もあるし良い方法あるんで。
迷うな。食材を眺める。
両方の作業を並行する。このくらい何ら問題無い。
混ぜて、クッキー生地を冷蔵庫へ!
数分待機!
クッキー生地を包丁で切る。
「厚さこんなものかな」
シートに並べる。先に時間かかるケーキ生地焼くか。
さらに時間が経ってクッキーを焼き始めクリームの準備をする。
でさらに時間が経過ぁ!
「待つ事も大事なのじゃ!」
「何のキャラよそれ?」
「適当にやった。意図はない。暇なんだ。この時間」
先にクッキーが焼ける。試しに味見。出来てるな。あちい。味はいつも通りだ。問題無い。
「こっち出来てるけどケーキもそんな時間かかんないからもうちょい待って。」
で、ケーキ生地が焼けるのでクリーム塗って巻く。
「ケーキ適当に食べたい分切って食べて良いよ。ロールケーキは俺は要らないから」
クッキーをぽりぽり食べる。久々に作ったけどうめえ。
で、オウカさん既にクッキー食ってる。
「こっこれは…!美味しい!」
運命の女神のロールケーキの厚さふつうに2人分はあるよな。
「で、吹雪は何が欲しい訳?」
いや、ちょっと待て。どうしてそうなった!?
「話が読めないんですけど」
「だから、あたしが出来る事はしたげると」
「とりあえず向こうで死んでこの世界に来た知り合いについて教えて頂けます?」
正直これを知るのは第1、次にそこからどうするか、どう動くかである。
「安藤蜜柑、容姿等はほぼそのままハーフエルフに。回復魔法や光魔法。魔法特化の身体能力は低め。
神無月咲夜、リトルスでぎゅっとそのまま縮小した感じに近め。結界魔法。
如月和泉、フェルパーで剣術系。干渉魔法と守護魔法。
結城蓮、ディアボロスの女性に性転換。黒魔法持ち。
望月桃、リトルスの魔法使い。干渉魔法と造形魔法。
小鳥遊優、リトルスの魔法剣士。干渉魔法と回復魔法、
あとは一条青葉もそうね。リトルスで能力は大体あなたと同じ」
過半数リトルスじゃねえかこれ。
リトルス…。生涯、小さな子供のような種族。他メディアにおけるドワーフ、ハーフリング等の総称とかだったりするんだろうな、これ。
「青葉…。運命の女神様、お願いがあります」
「問題無い範囲なら聞くわよ?」
「かかる時間は問わないので今言った方々と会う結果、運命にするって出来ます?」
「問題無いわ。っと、咲夜と青葉はこの大陸にいるようね」
ここまで揃っているのは良い意味でも悪い意味でも驚いたがこの大陸に2人も、しかも青葉がいる。
「とりあえず良い感じにしといたわ」
「ふぅ」
「ちょっと待って!今フェルパーがいるって」
フェルパー…和泉か。




