22話〜神無月咲夜4−旅立ち、結局無力ファンタジー-〜
店を出て集合場所へ。冒険と言うことでお金も結構と言うか現状の全額持ってます。
早めに場所について暇をしていると…。
「おはようございます」
「おはようございます」
まず姿を見せたのがアナさん。きっちり戦闘フォームですわね。
続けてフェリルさんとユーリアさんが一緒に…。
「よーし揃ったね。っとその前に…。ギルドでご飯食べて行っていい?」
「朝食まだだったんですのね。構いませんが」
流れでギルドに。とりあえず私は朝食摂っているのでお茶だけ。
「量…凄いですわね」
「そう?」
ディナー2名分の量を朝から食べてるような気がするんですけど。このディアボロスさん。しかも肉。
「とりあえず、ボク達の準備はっと」
「ある程度済ませておきましたけど、ちょっと見て回りましょうか」
店を見て回る事になりました。
「食糧と着替えは見ておきたいね。あと小物。武器は間に合ってるから。サクヤちゃんは無理する必要無いかもしれないけど」
食糧を買ってから衣料店へ。
「薄手のインナー…ですか」
この世界、インナーあるんですね。
「そうそう、魔法陣とか魔術陣、回路とか仕込んであるやつ…やっぱ高いな」
「ブラの方が安いよ」
「厚みと強度はあるけど範囲がね。あとで下着も見に行くけど」
「強度ってどのくらいなんですか?」
「ダガーとか矢なら防げるよ」
「金属以上の強度で重さはそのまま…」
「大体そんな解釈でいいよ」
「サクヤちゃんには着せておきたいしブラだと胸しか守れないから…。ちょいお高いけどインナーかな。今の時期だと暑くはないし。ボク持ちでいいから」
「ありがとうございます」
「まあ当たるのは当たるし通しはしないけど衝撃吸収とか完全じゃないから痛いのは痛いんだけどね、こういうのって。骨折れないけど」
痛いのは痛いんですのね。まあ、分かるといえば分かりますけど。
「警戒しないといけないのは主に獣、それ以外は盗賊。飢えてるフェルパーはもう粗方収束してるだろうから野良になってない限り多分大丈夫。ぶっちゃけ野良のフェルパーなんかよりはディアボロスのがよっぽど怖いよ」
「貴女だってディアボロスでしょうに」
私、間違ったことは言ってませんわよね?
「町育ちは比較的温厚というかノリが軽いと言うかチャラいと言うか。まあ、こんなもんだよ。森にいるような輩は他種族はだけじゃなく、町育ちのディアボロスすら見下すようなおっそろしいおにーさんおねーさん方だからね」
ん?え?
「そんなディアボロスの軍を配下に置いたフブキさんって一体…」
「力さ。化け猫達との戦いを終わらせる上でディアボロス達に化け猫や猫又、フェルパーを圧倒する力を示した。自分たちより強い力を持つことの証明、当然見下せないだろうし正直者ならその者に仕えるのも納得出来る」
「なるほど。フェルパーやリトルス、ディアボロスもここでフブキさんの下に集うのも結果として納得出来ますね」
「街づくりの最中に加わったって情報のエルフ。エルフは戦闘能力じゃ森の中では最下位。圧倒的な知識や技術を持つけど戦えばまず森の中じゃ下位に来る」
「エルフって強力な魔法や弓による狙撃術に長けた者では?」
「そんな事ないよ?身体能力じゃフェルパーに勝てない、道具を作る技術はあっても戦いで道具を生かせばリトルスよりは器用さで劣る。魔法を使えばディアボロスの術師が優れてるからね。狩猟と文明の発展に魔法や技術を磨き上げた技術で対人スキルは他に劣るのさ。だから力で最強を示したこの子に仕える道を取ったんだと思う」
あれ?そもそもフブキさん一体何があってそんな力を…。考えても分かるはずないですよね。
とりあえずインナーを受け取って着替えて下着を買いに。この世界でも女性下着の専門店とかあるものなのですね。
そういえば吹雪さんが本当に女になっているのならどういうものをと言うかちゃんと着けているのでしょうか?ちゃんと会えたら確かめ…られれば。あと結城さんも。
「あったよ。やっぱこっちも高いね〜」
桁1つ違いますわね。普通の商品より。さっきのもそうですけど。ビジュアルはまあ綺麗な柄と言えば綺麗な柄ですわね。
「こっちは…いいか」
「私は自分用に1着だけ…」
アナさん、買うんですのね。
「何着か普通の物を買いますか。このお姫様のサイズが分かれば…」
「あはは、言っても向こうで知り合いだったんなら身分関係なく触れ合える機会作れそうな気もするけど」
「だといいですわね」
「他寄っておきたいとこある?」
「私はある程度予め準備はして来ましたので皆さんが無ければ」
「まあこっちはこっちで準備出来てるからいざ!」
街の中を歩いて門へ向かう最中。
「んえ!?メルちゃんの店閉まってる!?」
「っと、これから向かう街に移転したらしいですね」
「よし、やっぱボクも街に入れてもらう」
お知り合いの方のお店らしいですわね。
深く触れずに街を出てしまいました。片道3日ほどなら戻ってこれますわよね。暫しの別れですわ。
前にフェリルさん、後ろに他2名がついて歩く。
3時間程歩くと…。
「サクヤちゃん、何か近づいてくる。絶対ボクより前には出ないで!アナ!ユーリア!後ろは任せた!」
「はい!」
「りょーかい!」
茂みからデカいイノシシが姿を見せる。
「私を半殺し、いえ9割殺ししたものより大きい…」
「何があったか知らないけどあの程度なら問題ないよ!ユーリア、エンチャントを!」
エンチャント、干渉魔法の基礎、物質など、主に武器や防具をを強化する魔法ですね。
そして突進を盾で受け止める。受け止められるものなんですわね。それ。
「アナ!アイシクルスピア!」
「はい!氷よ貫け!凍てつく氷槍、アイシクルスピア!」
ふよふよ浮かぶ氷の槍が傍から猪の腹を射抜く。
「グッジョブ!解体やっちゃうよ〜」
「うっ、そう言うエグい系ダメなので私はちょっと…」
血の臭いですらちょっと気になってしまうくらいですわね。
「分かった。んじゃ、やってくるね〜。アナはついてあげてて」
「承知致しました」
そう言うとあの大きいイノシシ持って行ってしまいました。なんて力…。
数分経って手を血で染めて戻ってくる。う、うわー。まあその程度なら大丈夫なんですけどちょっと衝撃的と言うか。
「とりあえず保存の処理もしておいたけど。個人的には夜食べたいかな」
「内臓は捨てたけど。どうしたもんかな。いつも通り焼く?」
「私、試してみたいものがあるんですけど」
「りょーかい!期待していい!?」
「試すのであまり…」
結局、フェリルさんの服と身体を洗わせ、少し進んで夜です。
夕食です。鍋にイノシシの肉、熟成とかそう言うのは置いといて鍋です。ボタン鍋です!というのもこの世界の調味料でたまたま味噌に近いモノがあったので試しに作ってみようと。ちょっと高かったですけど出汁も手に入りましたし。
まず鍋にダシの材料を入れ、火の通りにくい厚めの野菜や根菜などを入れます。
次に団子や肉を入れます。この地域なら団子は簡単に入手出来ます。団子は豆類、芋類、トウモロコシ類等の粉を温い塩水をぶち込んで丸めて冷ませば完成です。粉はブレンドする事で食感や味も変わるのでそこは好みですけど。私は芋多め、豆少しです。
とりあえず味見。こんなもんでしょうかね?多少濃い気もしますがまあ問題無い範囲です。
「大丈夫ですね。皆さん、出来ましたよ」
「煮るんだ」
「イノシシの類は筋肉質で身が硬く臭いが強いので消臭効果のあるものなどで臭いを飛ばして煮込むと柔らかくなると」
向こうでもこっちでも同じようですね。ならなんとかなりそうですわね。
「いただきまーす」
「あ…」
「あっつ!」
「そりゃそうなりますよ」
「でも肉の臭みも消えて焼くより柔らかくていいですね」
「それは煮るというより調味料の素晴らしさです。柔らかいのはそうですけど、まあ焼き加減次第ですね。まあこっちのが簡単ですよ」
桜井さんにスパイスからのカレーは止められましたが人並みには出来るのです。桜井さんや如月さんのレベルがおかしいだけです。まあスパイスからのカレーは確かに無理でしたけど。
「美味しい」
「良かったです」
「ボアにはこういう食べ方もあるのですね」
「焼いたものはあまり好きではないので」
この世界で何度か食しましたけど難しいですわよね、中々。
「私もそうですね。こちらの方が柔らかくて臭いも気にならず食べやすいです」
「え〜、焼いたやつガッツり食べるのいいよ?」
「あまり食べられないと言うかもたれると言うか」
「まあその身体だと、って言えないか。リトルスも結構大食いいるし」
「いるんですね」
そう言う方ってそもそもどう言う身体の構造をしているのでしょうか?まあファンタジー系の世界ですし物理法則ってあまり役に立たないと言うか一部無視するような事もあるのかもしれませんが。
とりあえずスープを飲みながら考えを巡らせる。
この世界に来てから私は見た目だけでなく心も変われたかもしれない。
生にしがみつき、死を身近に感じ、結局ビビリで護衛を雇ってはいますが、今までの私でしたら再び森に出るような真似なんてしなかったかもしれません。この世界であろうと力は味方せず、逃げて、人に甘えてはいますが、こう、前に向かって歩こうと思い、行動にはしています。それが実を結ぶかは分かりませんが。
「どしたの?遠く見つめてボーっとして」
「いえ、何でもありませんわ」
これ、モノローグしたら面白そうですわね。
「そう。そう言えばサクヤちゃんは芋派なんだ。美味しいけどトウモロコシ派かな」
「団子の材料の好みって割れますわよね。ちなみに豆も入ってますわ」
「あ、そうなんだ」
「芋類は他のに比べて作りやすいので。粘度も高くて。トウモロコシはかなり難しいので中々…」
「あ〜。なるほど。普段作らないから。ボクは」
まあ私もギルドで食べる事もそれなりにありましたが、芋類ベースでしたし。
「街はほぼ芋類ベースですね」
「そうそう、たまに豆混ぜてる」
自分はいつも通りの量食べて箸が止まる。
「私はお腹いっぱいですね」
「アナちゃんはまあ食べる方だけどサクヤちゃん少ないね」
「まあそこまで食べなくてもお腹いっぱいになりますね」
「大目に作っちゃったんですけど、と言うかお肉が圧倒的に多いんですけど大丈夫ですかね?」
「大丈夫。ボクがまだ全然余裕あるから」
とりあえず笑って返すしか無いですわね。
「っと、そうだ。ボク達が食べ終わったら近くにある川に行こうか。勿論ボク達が周囲の警戒はするし」
「川…ですか?」
「うん。確かフェルパーの村、今向かってる街の近くまで行かないとお風呂、温泉は無いんだよ。まあ今それが街の外にもあるのかは知らないけど。だからさ、一応川も近いし身体を洗った方がいいかなと。時期的にももうそろそろ川入っても大丈夫なくらいだし」
温かい湯に浸かったり浴びる事は出来なくとも身体は洗わないと衛生的に問題ありますわよね。しかも異世界で異種族である以上どんな病にかかるかも分かりませんし。
「なるほど、それならお願い致しますわ」
しばらく待って川へ向かう。本当に川の側歩いてたんですね。
「大丈夫だよ。今危ない獣や魔物の気配は無い」
そのようですわね。って!躊躇なく服脱げるんですわね。まあ私も脱ぎ始めてますけど。天然由来のボディソープのような何かを使って身体を洗う。
「あ、いいの持ってるね。使わせて?」
「どうぞ」
「森のフェルパー、ディアボロス、リトルス、エルフ、この4種族を束ねるリトルスの姫、一体何者なのさ。普通に考えたらリトルスの限界を超えてるんだよね」
「そうなのですか?」
「エルフは後から付いてきたから置いといてリトルスもまあ同族だから置いといて森で生活してるディアボロスってのは割と荒っぽいとか聞いた事あるし。フェルパーも強い部類の種族だからディアボロスと組んでも数で負けてりゃ普通は勝てる筈無いんだけどさ。英雄様が加わっていたとしても簡単には…」
「どうかなさいました?」
「やっぱそのリトルスに色々気になる事があってね。情報屋の紙面はボクも読んださ。刀剣術自体が強いのは疑問には思わない。問題は魔法能力だ」
「魔法能力ですか」
「情報によると件の戦いでチェイン系、しかもヒプノシスのチェイン形態を使っただとかパペッターで縛ったり。リトルスでそのレベルの魔法能力と近接戦闘術の両方を持ってるとなると本当にリトルス最強格だって思っていい」
「ヒプノシスのチェイン形態…」
「ヒプノシスは眠らせたり暗示をかけたりする高位の禁忌魔法。チェインってのは工作魔法で自分の発動魔法が条件を満たすと連鎖的に繰り返して同じ魔法を拡散発動させるようなヤバめに魔法」
フブキさんがかなり強い魔法使い(女性)。えっと、ちょっと理解がしづらいですけどまあなんとか。
「彼女がどんな力をどうやって手に入れ、英雄達を味方に付けたか」
「彼女は私の知っている範囲では頭の回る方で技術的習得能力と言うか物覚えの良い方と言うのは記憶しています。その英雄達の何方かが目を付け、鍛えでもすれば簡単に強くなる」
「なるほど。羨ましいよ。ディアボロスなのに魔法を使いこなせなかったボクと違って。まあ、それで責められる事も無かったし自ずとこう戦士やナイトって選択肢が出てきたってのも悪くないと思ってる。ディアボロスだって物理職強いヤツは強いからね」
「情報屋のアレには別の大陸で活躍したディアボロスの大剣を使う女剣士の活躍もありましたわ」
結城蓮さん、桜井さんとたまにいた方、私自身そこまで関わりのあった方でも有りませんが。如月さんとの方が男性では仲良かったですし。結城さんも女性…一体何があったんでしょうね。
「らしいね。その子とも一回会ってみたいもんだよ。まあ無理だろうけど」
「大陸規模の距離ですものね」
「っと、そろそろ出ようか。この時期だとあんま長く使ってると風邪引くから」
「ですわね」
服を替えて2人の待ってるところに戻ると。
「では、私達も行ってきますね」
「いってらっしゃーい」
「さてと、火眺めてるだけでも良いんだけどさ。サクヤちゃんはどうする?寝てて良いよ?ボクが警戒しておくし交替で2人にもさせるから。まあボクが夜間殆ど起きてるから2人が起きてる時間はそこまで無いけど」
「そこまで睡眠時間削って大丈夫なのですか?」
「ディアボロスは基本睡眠時間自体が短いんだ。1時間寝れば残りずっと動ける。美味しいご飯は要るけど」
何ですか!?そのハイスペック!
「す、凄いですわね」
「大体そんなもんだよ。2時間くらいだったり、30分くらいで十分なのもいるから、まあ差はあるけど」
夜行性とかそう言うのでは無く、どこか好きなタイミングで適度に寝れば問題無いらしいです。
「それではお言葉に甘えて」
「ゆっくり寝ていいよ。サクヤちゃんのペースに合わせるし」




